【野球】小宮山悟監督インタビュー「香西は素晴らしいキャプテン」2026年秋季早慶戦前特集

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 今季限りで退任する小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)。3季連続でV逸となった秋季リーグ戦をどう見たのか。8年間の集大成となる早慶戦を前に、今季の振り返りと慶大との最終決戦への思いを聞いた。

※この取材は11月2日にオンラインで行われました

5点のリードをリードと思えなかった

ーー現時点で勝ち点2です。今季を振り返って
 最初のカードの法大3回戦で、5点のリードを守れずに負けて勝ち点を落としたところから、ちぐはぐな感じになってしまいました。あの3回戦が、この秋の苦戦のすべてかなと思っています。

ーー逆転負けを喫した法大3回戦の敗因は
 5点のリードをリードと思えなかった投手陣ですね。越井、香西と投げて、エラーで2点を取られて、さらに打たれて走者をためて、中村心大(スポ1=東京・早実)が同点3ランを浴びて。野球の怖さというのかな。学生たちは高い授業料を払ったけど、今後の糧にしてもらえればと思っています。

ーー「リードと思えない」とは
 自分に自信を持てないというのかな。皆さんにどう見えていたか分からないけど、恐る恐る、びくびくしながらピッチングをしていたので。5点のリードがあったら、ど真ん中に投げても押し切れる。そんな展開なのに、こわごわ投げているというのは、チーム状態かなという気がします。

ーー3回戦では、髙橋煌稀(スポ3=宮城・仙台育英)を先発ではなくリリーフで起用しました。その意図は
 負けたら終わりなので。先発で使うと、おそらくもたないからです。短いイニングをしっかり抑えるということで、本来ならリードした展開で使いたかったけれども、同点になったところで使わざるを得なかったということです。

ーー今季の戦いに点数を付けるとしたら
 結果、優勝を逃しているので、あまりいい点をあげてはいけないのかもしれないけど、ひょっとしたら勝ち点3で優勝、というシーズンになりかねない秋なので。それで言うと、早慶戦に勝って勝ち点3にしておけば優勝できたじゃん、というシーズンだから、そこまで悪いシーズンということではないと思うんですよ。ただ、彼らが持ち得る能力を最大限に発揮できたかということで言うと、及第点をあげるわけにはいかない。かなり厳しい点数になりますね。

ーー春は勝ち点1でした。そこからの成長は感じますか
 立教には今年1つも勝てませんでしたけど、それ以外は互角の戦いなので。卒業して20年、30年たった時に、自分たちはこうだったという話をする時に、そこまでひどいという印象にはならない可能性があるとは思っています。本当はそれじゃダメなんだけどね。

ーー良くならなかった点、良くなった点を挙げるとすれば
 点を取る方法が思うようにならなかったというのが最大の反省点で、一方で、つまらない点の与え方をしてしまっているところを改善できずにいたのも反省点です。良くなったことは、これといって特にはないですよ。ただ、死に物狂いで何とかしようという姿勢が、ところどころで垣間見えたのは評価してあげたいと思います。

ーー「つまらない失点」とは、失策絡みの失点ですか
 エラーが多いし、フォアボールも多いしね。一体全体、毎日練習で何をしてるんだよ、という話じゃないですか。見ている人がそう受け止めるような試合展開が多いのが残念ではあります。

ーー立大2回戦では5失策を記録しました
 難しい状況などいろいろあると思うので、何とも言えないんですけど、事前の準備を怠っていた証拠だと思っています。常に口が酸っぱくなるくらい、そういうことを教えてきたつもりなのに、それができなかったというのは、指導力不足だと思っています。

ーー「事前の準備」とは、具体的には
 ありとあらゆることを想定して試合に臨まないといけないわけですよ。例えばグラウンドコンディション。雨の後の人工芝はスリッピーな感じになるので、打者の打球が芯を食ったのか、先なのか、詰まったのかによって変化があるということを踏まえた上で、守備位置に就かなければいけない。さらに言えば、濡れたボール、滑る可能性があるボールをどう送球するか。そういうグラウンドコンディションでの練習を重ねてきたにもかかわらず、試合になると準備してきたものを発揮できない。そういうことが多々あったという話です。

早稲田に風が吹いた

ーー明大3回戦が東大戦の後に回り、香西一希主将(スポ4=福岡・九州国際大付)、安田虎汰郎(スポ3=東京・日大三)、髙橋煌の順に先発しました。髙橋煌を明大3回戦に回す意図があったのですか
 失礼な言い方をすると、東大相手に抑えられないピッチャーは、六大学野球じゃ無理です、という位置付けで。東大さん相手にふざけたピッチングをしてくれるな、というつもりでいますので。春の越井が2回で何点取られたのかな。そんなピッチングをしているようなやつが試合に出ちゃダメなんだ、という話なんです。とりあえず間隔も空いていたので、先発はこの2人にやってもらう。明治3回戦を取らないと優勝が消えるという状況だったので、そこに煌稀を使う、という話です。

ーー東大戦で完封勝利を挙げた安田の投球の評価は
 立ち上がりは少し不安でしたけど、しっかりとしたピッチングをしてくれました。狙ったところにボールをコントロールできれば、シャットアウトできる相手だと思っていますので、それで言うと、しっかりとしたピッチングをしてくれたということですね。

ーー雨で日程が流れたことは、幸運だったと感じますか
 正直、早稲田に風が吹いたと思いました。

ーー野手では、東大戦で大越塁(人2=福岡・東筑)を起用しました。その理由は
 東大相手に、そこまで追い込まれるような展開になることはないという中で起用して、経験を積ませて視野を広げるため。次年度以降のことを考えて、ということですね。

ーー中村俊瑛選手(人2=兵庫・滝川)の起用も同じ理由ですか
 一緒です。

ーー立大2回戦では、プロ志望届を提出した選手を全員起用しました。どのような思いで送り出しましたか
 もう最後のアピールの場なので。かといって、いいピッチングをしたところで評価が変わることはないと思いましたけど、本人たちの中で踏ん切りがつくだろうと思ったんです。そこでピシャッといけば、指名漏れした時に「くそっ」という気持ちが増すでしょうし、そうすれば早慶戦でもいいピッチングが期待できる。逆に思うようにならなかったら、プロなんて高望みしたな、という反省ができる。そういうことです。

ーー結果的に5人とも指名漏れとなりました
 そもそも無理だということは本人たちに伝えていましたので。プロはそんなに甘いところじゃない。「プロなめんなよ」というせりふを常に彼らに浴びせていました。ただ、今の現行ルールだと、志望届を出さないイコール自分で自分の夢を捨てるということなので。それをしたくないということでしたから、万が一、ひょっとしたら、という一縷の望みを託すということで、志望届の提出を認めたというところですかね。

ーー最近は中軸が固まってきました。手応えは
 3、4、5番は、ずっと一緒のつもりでいます。もともと能力のある3人なので。唯一心配なのは寺尾ですね。3年の春がピークで、そこから思うようになっていないので。ただ、早慶戦までの空いている週にオープン戦を2試合やって、その中で3年春の時のような形の打撃が見受けられたので、早慶戦は期待しています。

ーー今季の早稲田のMVPを挙げるとしたら
 難しいね。それぞれ頑張っているとは思いますが、具体的な数字ということになるとどうかな。上級生で、やっぱり結果をある程度残していますし、一生懸命やってきたことが報われているという感じはしますけど。

ーー岡西佑弥副将(スポ4=智弁和歌山)は守備の成長も見られます
 夏にだいぶノックを打ちましたからね、彼に。こってり絞ったので、成果が表れているとは思いますけど、本当にMVPとして表彰してはいけないレベルのシーズンです。

最大限の敬意を払うなら、やっつける

ーー監督として最後の早慶戦が近づいてきました。現在の心境は
 毎年、秋は4年生にとって最後のシーズンなので、監督退任ということではありますが、心境としては同じです。彼らに常に言っているのは、勝つか負けるかで、その後の人生が大きく変わるよと。申し訳ないけど、春の早慶戦は勝とうが負けようがどうでもいいんです。勝たなきゃいけないんだけど。でも秋に関しては、本当に勝たないと卒業後もずっと悔やんでも悔やみきれない。そんなことになるので、とにかく勝てと彼らには伝えています。

ーー最後だから、退任だから、という思いはあまりないのですか
 特にはないですね。というか、その翌週にはヤクルトとの連盟の試合もあるし、月末にはオール早慶戦も甲子園であるし。11月30日で退任ということで、そこまでいろいろな行事が結構な数あって、それに追われる感じです。

ーー慶大は優勝が懸かっています。優勝を阻止したいという思いは
 ちょっとね、ひっくり返してやろうとは思っていますけど。春に完全優勝したチームで、秋も優勝に近い位置にいるわけですから、強いのは強いと思うので。ただ、その強い相手が苦しんで、なおかつ早稲田にやられて優勝を逃した、みたいなことになると、慶応の皆さん、三田の皆さんが2026年の秋を忘れることができない、そんな年になるはずなので。ましてや優勝したにもかかわらず天覧試合で負けているので、彼らの中では優勝が少し薄くなっていると思うんですよね。なので、早稲田としては、慶応義塾に対して最大限の敬意を払うとなると、やっつけるということになると思います。

ーーやっつけるためのキーマンは
 これはもう、4年生が最後にどれだけ死力を尽くしてやれるかだと思っているので、4年生の諸君に期待しています。下級生は、その4年生のために身を削って貢献してくれるものと信じています。

ーー今の4年生は、期待に値する準備ができていると感じますか
 それで言うと、我々の期待通りではない。とてもじゃないけど、称賛に値する練習をしてはいません。ただ、だからといって、やっぱり負けましたなんてのは許されないので、何とか一泡吹かせたいと思っています。

ーー香西主将への期待は
 あいつの中で、キャプテンというのは多分まったく頭になかったことだと思うので、1年前に彼をキャプテンに据えた時は、どれぐらいのキャプテンシーで、という不安はありましたけど、実際は本当によくやってくれたと思います。特にチーム状況が良くない中で、本当に心が折れそうなところがいくつもあったと思うんですよ。それを何とか奮い立たせて、チームを鼓舞するということで言うと、勝っていないので、なかなか周りは評価してくれないのかもしれないですけど、素晴らしいキャプテンだったと個人的には評価しています。

ーー最後に、読者へのメッセージを
 3連覇の後、低迷期に突入する危険性があるから頑張れ、と尻をたたいたつもりですけど、やっぱり3連覇のふわふわした感じが抜け切れなかったので、苦戦を強いられ、思うような結果が出ず、皆様ががっかりするようなシーズンをここ3シーズン過ごしました。いい時があったら必ずその反動があるので、悪い時期にどっぷり浸かったけれども、可能性を見いだせる、そんなチームになったと思っていますので、近い将来、また逆襲が成功すると信じています。後任の足立監督(修氏、昭61教卒=長野・松商学園)がどんな野球をするのか、学生たちが理解して、春のキャンプで理解を深めてリーグ戦に臨むんでしょうから、今までやってきたものがガラッと変わる可能性があります。そのガラッと変わったものにも対応できるだけのタフな選手たちに育てたつもりでいますので、何とかしてくれるでしょう。そう思っています。

(取材・編集 石澤直幸)

◆小宮山悟(こみやま・さとる)
1965(昭40)年9月15日生まれ。千葉・芝浦工大柏高出身。1990(平成2)年教育学部卒業。現早大野球部監督。

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