「早大野球部の教えは『一球入魂』しかない」。先日の退任会見でそう語った小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)。8年間の監督人生を早慶戦抜きに語ることはできないだろう。それは今季で引退する選手たちにとっても同じことだ。3季ぶりの優勝は逃したものの、このカードだけは特別な意味を持つ。2季連続で目の前での胴上げを許すわけにはいかない。永遠の宿敵・慶大を倒し、小宮山監督と4年生の花道を、勝利で飾りたい。
早大の1回戦の先発は、髙橋煌稀(スポ3=宮城・仙台育英)が予想される。不動のエースとして君臨する今季は、ここまで自己最多の投球回を記録。先発陣の柱としてチームを支えてきた。しかし、本人はこの活躍を「70点」と自己採点。立大戦ではサヨナラ本塁打を浴びるなど、一球に泣いた悔しさも残る。慶大戦では100点満点の投球を披露し、4年生を勝利で送り出したい。

ここまで4試合に先発した宮城誇南(スポ4=埼玉・浦和学院)は、15回を投げて防御率5.25と苦戦。3年秋以降は勝ち星からも遠ざかっている。それでも、先発への思いは人一倍。「先発へのこだわりは誰よりも強い」と語る左腕は、最後の早慶戦で本来の投球を見せられるか。
1年間、早大投手陣をまとめてきたのが香西一希主将(スポ4=福岡・九州国際大付)だ。投手としては早川隆久(令3スポ卒=現楽天)以来となる主将を務め、チームをけん引してきた。今季は先発と中継ぎの両方で重要な場面を任され、調整の難しさを抱えながらも防御率2.25の好成績を残している。「早稲田の小さな大投手」が最後までその腕を振るう。
対する慶大は、何といっても渡辺和大(4年)の存在が大きい。絶対的エースへと成長を遂げ、プロ野球ドラフト会議ではソフトバンクから3位指名を受けた。明大3回戦で途中降板した影響が心配されるが、連覇に向けてこの男の活躍は欠かせないだろう。2回戦の先発には広池浩成(4年)が予想される。今季は4試合に登板し、防御率2.08をマーク。リーグ1位の成績を誇る。さらに、今季神宮デビューを果たした小宅雅己(1年)は5試合に登板していまだ無失点。経験豊富な上級生と勢いのある下級生がそろう投手陣を打ち崩したい。
打線のキーマンとなるのは德丸快晴(スポ2=大阪桐蔭)だ。春季リーグ戦では首位打者を獲得し、今季もチームトップの打率.3割6分1厘をマーク。今春の慶大戦では3試合で5安打を放つなど、相性の良さも見せている。強力な慶大投手陣を相手に、好機での一打が期待される。

早大打線の軸を担ってきたのは寺尾拳聖副将(人4=長野・佐久長聖)だ。左膝靱帯の損傷により、今季は開幕に出遅れた。復帰戦となった明大1回戦では代打で二塁打を放ったものの、その後は打撃が低迷。悔しさの残るシーズンとなっている。それでも、先発出場した試合では全て4番に座るなど、首脳陣からの信頼は厚い。不屈の主砲に、最後の早慶戦での奮起を期待したい。
一方の慶大は、チーム打率2割9分8厘を記録した今春に比べ、今季は2割5分8厘とやや苦戦。それでも、バランスの取れた打線は脅威だ。上位には小原大和(4年)や今津慶介(4年)といった経験豊富な打者が並び、中軸には中塚遥翔(3年)や一宮知樹(2年)といった一発のある打者が控える。切れ目のない打線を早大投手陣がどう抑えるか、注目が集まる。
野球選手としても、一人の人間としても「早稲田としてあるべき姿」を説いてきた小宮山監督。その教えを受け続けた選手たちは、口をそろえて感謝を語る。ついに幕を下ろす「小宮山早稲田」、そして「香西学年」の物語。最後の一球まで魂を込め、宿敵に立ち向かう。監督と選手たちが紡ぐ最終章を、その目に焼き付けよう。
(記事 平壮真)