「怒涛(どとう)の5連勝」でつかんだリーグ優勝 寺尾は4打点の大暴れ 昨年の雪辱を果たすべく、全日本選手権へ/優勝決定戦

野球

東京六大学春季リーグ戦 6月4日 神宮球場

TEAM 合計
明大
早大 ×

◆バッテリー

◯伊藤樹ー吉田瑞

◆二塁打

小澤、渋谷

◆三塁打

なし

◆本塁打

なし

 昨秋に続き、東京六大学春季リーグ戦(リーグ戦)のすう勢は、優勝決定戦によって決することとなった。早大は初回、寺尾拳聖(人3=長野・佐久長聖)の適時打などで4点を先制するも、3回に先発・伊藤樹(スポ4=宮城・仙台育英)が5失点。逆転を許してしまう。それでも、5回に寺尾が再び適時打を放ち、逆転に成功すると、最終回に迎えたピンチもしのぎ切り、6-5で勝利。1939年以来となった2季連続の優勝決定戦を制し、三連覇を達成した。

 ここまで、13試合中11試合で2回までに得点を挙げている早大打線が、この日も序盤から襲い掛かった。初回、先頭の尾瀬雄大(スポ4=東京・帝京)が右前打を放ち出塁。続く渋谷泰生(スポ4=静岡)は内野フライに倒れたものの、小澤周平主将(スポ4=群馬・健大高崎)が一塁線を抜ける二塁打を放ち、1死二、三塁の好機を作る。明大が前進守備を選択し、絶対に先制点を与えない姿勢を見せる中、4番の寺尾は中前へと弾き返し、走者2人が生還。幸先よく先制点を奪うことに成功した。打者走者の寺尾が送球間に二塁に進塁し、なおも1死二塁の場面で、打席には早慶2回戦で満塁本塁打を放った前田健伸副将(商4=大阪桐蔭)。追い込まれながらもしぶとく右前に運び、寺尾をホームに迎え入れた。その後吉田瑞樹副将(スポ4=埼玉・浦和学院)にも適時打が飛び出し、この回4得点。打者一巡の猛攻で、一気に大量リードを奪うことに成功した。

初回に適時打を放った前田健副将

 早大の先発は、エース・伊藤樹。早慶2回戦から中2日での登板となった伊藤樹だったが、この日は初回から何度も140㌔台後半の直球を投げ込むなど気合十分。初回、2回と、3人で相手の攻撃を終わらせる上々の立ち上がりを見せた。しかし3回、先頭打者の福原聖矢(3年)に安打を浴びると、友納周哉(3年)にも完璧なセーフティーバントを決められ無死一、二塁に。その後、犠打と四球で1死満塁のピンチを招く。この場面で、伊藤樹はギアチェンジ。最速150㌔を記録するなど、明大打線を制圧しようとしたものの、岸本一心(3年)の犠飛で1点を返されると、続く榊原七斗(3年)には二塁打を浴び、2点差に詰め寄られた。なおも2死二、三塁で、打席に迎えたのは小島大河(4年)。これ以上の失点は避けたい場面だったが、初球低めに投じたカーブをすくわれ、3点本塁打を被弾。逆転を許した。

先発の伊藤樹

 なんとか援護したい打線はその裏、無死から寺尾が内野安打で出塁する。しかし、前田健副将のバントは勢いを殺し過ぎてしまい、打球は捕手の目の前でストップ。二塁、一塁と渡り、併殺でチャンスの芽をつぶしてしまう。続く4回にも、伊藤樹が併殺に倒れ、無得点。走者を生かし切れない展開が続いた。

 それでも5回、1死から渋谷が左中間を割る二塁打を放って出塁すると、小澤主将が右前打を放ってチャンスメーク。さらに盗塁も決め、1死二、三塁の好機を作る。なんとしても得点を奪いたいこの場面、寺尾が放った打球は、前進守備を引いていた明大内野手陣の後ろ、中前に落ちる2点適時打に。今季4番に抜擢された大砲は、この大舞台で3安打4打点を挙げる大活躍。適時打を放った直後には咆哮(ほうこう)を上げ、感情を爆発させた。試合後に小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)は、「今季一番成長した」とその活躍を評価。今後の早大を支える、新たなスターが誕生した。

5回に適時打を放った寺尾

 1点リードをもらった伊藤樹は、5失点を喫した3回以降は終始安定した投球を披露。6回までは被安打0と、明大打線をほぼ完璧に封じ込めた。それでも7回、1死から友納に二塁打を浴びると、次打者にストレートの四球を与え、1死一、二塁のピンチを招く。この場面で、伊藤樹は再びギアを切り替えた。初回に安打を浴びていた田上を空振り三振に斬って取ると、続く岸本は内野フライに仕留め、ピンチを脱出。続く8回には、榊原・小島の中軸コンビを封じ込め、早大が1点リードを保って最終回に突入した。

 8回までに球数は100球を超えていた伊藤樹。それでも、エンジの『11』を背負う男が、この場面で降板することなどありえない。小宮山監督は、最終回のマウンドを伊藤樹に託した。しかし、先頭の福原に中前打で出塁を許すと、犠打で1死二塁のピンチを作られる。この場面で、明大は岡田啓吾(3年)を代打に起用。なんとか抑え込みたい伊藤樹だったが、3球目を捉えられ、右前に抜ける安打を浴びてしまう。明大の走者が三塁を回り、同点のホームインかとも思われた。しかし、右翼手の石郷岡大成(社4=東京・早実)が強肩発動。ドンピシャの送球を吉田瑞副将に届け、走者を刺殺。同点のホームインを寸前で阻止した。その後、2死一塁となって迎えた田上の打球は石郷岡の定位置へ。9回のピンチをしのぎ切った早大が6-5で勝利。天王山を制し、春季リーグ戦制覇を決定付けた。

49度目の優勝を決めた早大

 1939年春季・秋季リーグ戦以来となった2季連続の優勝決定戦。当時早大は、1度目の優勝決定戦こそ制したものの、2度目の優勝決定戦では、慶大に0-2で苦汁をなめた。そこから86年が経ち、東京六大学野球連盟100周年を迎えた今年。雪辱を果たし、2季連続で優勝決定戦を制した早大は、連盟最速での優勝回数50回、そして、和田毅氏(平15人卒)、鳥谷敬氏(平16人卒)らを擁した2002年から2003年にかけての「早大四連覇」以来となる四連覇に王手をかけた。我々は、「歴史」を目撃している。

 さらに、6月9日には、全日本大学選手権が開幕する。昨年、決勝で青学大に敗れた舞台だ。「早大四連覇」の際にも、早大は、全国の頂点には手が届いていない。昨年味わった悔しさを晴らすために、そして、大先輩を越えるために。まずは、頂を制し、「覇者早稲田」を証明しよう。

(記事 林田怜空、写真 西本和宏)

※写真は早スポ野球班の公式Xインスタグラムでもご覧いただけます。

早大打者成績

打順 守備 名前
(中) 尾瀬雄大 .288 右安 一ゴ     左飛   右安     
(遊) 渋谷泰生 .414 二飛 三ゴ     左2   投犠    
(二) 小澤周平 .377 右2 三邪     右安   遊ゴ    
(左) 寺尾拳聖 .422 中安   投安   中安   二ゴ    
  松江一輝 .000                  
(一) 前田健伸 .239 右安   捕併   空三     二ゴ  
(三) 田村康介 .175 見三   空三   二ゴ     二ゴ  
(右) 石郷岡大成 .319 一安     投ゴ   二ゴ   左飛  
(捕) 吉田瑞樹 .250 中安     左安   二飛      
(投) 伊藤樹 .375 遊ゴ     一併   空三      

早大投手成績

名前
伊藤樹 2.44

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