フルセットで執念の勝利!いざ、センターコートへ

男子バレーボール

 熱気で溢れた会場には、一瞬の静寂も訪れることはなかった。あと、1点。加藤久典(スポ3=東京・早実)が放った、チーム全員の思いを乗せたボールが相手コートに落ちる。全日本大学選手権(インカレ)準々決勝。昨年涙をのんだこの場所で、早大戦士が歓喜の輪を作った。関西の雄・龍谷大との死闘をセットカウント3-2(25-21、21-25、23-25、25-21、15-12)で制し、準決勝進出。頂点が、見えてきた。

 第1セット、両校とも攻めのサーブで崩す強気のバレーを展開する。そんな中、喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)の2連続サービスエースで点差を広げると、その後は相手のミスにも助けられセット先取に成功した。しかし第2、第3セットは龍谷大の猛攻にかき乱されてしまう。福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)から「止められるまでこっちに上げろ」と指示を受けたセッターの山口頌平副将(スポ3=長崎・大村工)は、センターへの配給を増やし劣勢からの脱却を図る。それに応えるべく、福山と加藤が幾度となくクイックを決めるが、それ以上に強力な相手のサウスポーエースを止めることができない。立て続けに失セットを喫し、崖っぷちに追いやられた。

得点を挙げ、仲間から祝福される福山

 緊張の第4セット。気迫のプレーでチームを鼓舞したのは、やはり福山だった。序盤クイックやブロックポイントで得点を重ねると、それに負けじと喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)も強烈なバックアタックを放つ。さらなる起爆剤が投入されたのは、12-9と3点をリードした場面。得点の伸びない田中健翔(スポ3=熊本・鎮西)に代わり、加賀優太(商2=東京・早実)がコートへ。「ミスしてもいいから思い切りやろう」(加賀)。スパイクやサービスエースを決めては豪快な雄叫びを上げる元気印が、重苦しい状況を一変させ笑顔をよみがえらせた。最後は福山がサービスエースを決め、試合はフルセットへ。運命の第5セットはまさにシーソーゲームとなる。手に汗握る緊迫したムードの中、山口がブロックポイントを挙げ13-11。さらに運も味方し、相手の思わぬ連係ミスでついに王手をかけた。その後1点を返されたが、反撃はそこまで。終盤で集中力が光り、センターコートへの切符を手に入れた。

途中出場でムードを盛り上げる加賀

 喜びも束の間、あす迎え撃つは優勝候補・中大。喜入が「準決勝が事実上の決勝」と語るように、今大会のヤマ場となることは間違いない。最強軍団を倒し、日本一へと駆け上がる――。描いた青写真の完成はすぐそこだ。歴史的瞬間を、見逃すな。

(記事 川浪康太郎、写真 藤原映乃)


セットカウント
早大 25-21
21-25
23-25
25-21
15-12

龍谷大
スタメン
レフト 喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)
レフト 藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)
センター 福山汰一(スポ4=熊本・鎮西)
センター 加藤久典(スポ3=東京・早実)
ライト 田中健翔(スポ3=熊本・鎮西)
セッター 山口頌平(スポ3=長崎・大村工)
リベロ 後藤光明(社3=東京・早実)
コメント

福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)

――準決勝進出を決めたいまのお気持ちをお聞かせ下さい

きょねんここに来れなかったので、センターコートに戻ってこれたことにはほっとしています。あしたが一番大事な相手なので、そこでしっかりとパフォーマンスができるようにみんな調整してもらえばいいかなと思います。

――近大戦では相手エースに対してどのような対応を取っていましたか

いろいろ切ってくるというよりは向いた方に打ってくるので、それで向いた方にしっかりと基準をとってワンタッチをかけていけばというふうにしていけば楽になると思っていました。ブロックの位置だけはしっかりと確認しました。

――ブロックポイントが多かったことはそのような対策がしっかりとできていたからでしょうか

選考合宿とかでも一緒にやっていたので、打つところは大体分かっていました。ブロックに当ててくれたので、そこで点数を挙げれたのではないかと思います。

――龍谷大戦を振り返ってみていかがですか

1セット目は差をつけて取りましたが、2セット目はミスが多かったです。集中力というか久しぶりに5セットマッチを2試合やっているので、苦しい展開からフルセットにもつれてしまいました。とりあえずトーナメントなので勝ったから良いと思います。

――相手のセッターのトスワークに苦戦していたように見えましたがいかがですか

1セット目はみんな足が動いていてワンタッチをかけられていたのですが、どこからでも速いトスを上げてくるので2セット目以降からちょっとずつ相手のペースにのまれていきました。そこでしっかりとサーブで攻められれば良かったのですが、ちょっとミスとかも出始めてしまいました。でも、きょうはサーブレシーブがいつもより安定していたので、良い勝負になっていたのではないかと思います。

――第3セットからセンターへの配球が増えたように思います

頌平(山口副将、スポ3=長崎・大村工)には止められるまでこっちに上げろと言って指示しました。どうせブロックが来るならということで(トスが)高いのでずっとやっていたのですが、ちょっと読まれ始めていたのでまた速いとの組み合わせました。加藤(久典、スポ3=東京・早実)もずっと決まっていたので、真ん中に集めてそこからサイドにもう一回散らすように指示はしました。

――あすの中大戦への意気込みをお聞かせください

あしたが本番なので、この一年間やってきたことを全員が出した結果、勝ちが寄って来れば自ずと良い方向に進むと思うので、しっかりと休んでもらってあしたの一試合を集中したかたちでやれればいいかなと思います。

加藤久典(スポ3=東京・早実)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

近大戦で4セット、龍谷大戦でもフルセットとなり、全員のスタミナが課題でしたが、みんなちゃんと動けてたので、それが勝因だったのではないかと思います。

――ご自身のクイックの手応えについて

結構この大会を通して決まっているので、これを維持し、さらに高めていきたいです。

――ブロックの調子はいかがですか

ブロックはまだ本数が止めれていないので、もっと止めていきたいです。

――近畿大戦では、相手エースにどう対処されましたか

最後は絶対1番の鳥越裕喜さんに上がっていたので、そこだけは外さないようにしました。

――龍谷大戦での、相手セッターへの対策などありましたか

向こうはだいたい29番、5番で切ってきたのでみんなでそこだけは抑えようと意識しました。

――あしたの試合の意気込みを

あしたは中大戦ということで、全力でぶつかって勝ちをもぎ取りたいと思います。

加賀優太(商2=東京・早実)

――試合を外から見ていてコートの中はどのような雰囲気に見えましたか

正直、試合やる前から近大と龍谷大ときょう当たるだろうなと何となく思っていました。近大には負けたとしても龍谷大には負けないかなと思ってて、2、3セット目取られていましたが、自分の中でそんなに焦ってなかったです。

――加賀選手がコートに入って雰囲気が一気に変わったのですが、入る前に何か言われたことはありましたか

代わった健翔さん(田中、スポ3=熊本・鎮西)に「思い切ってやれ」みたいな、監督からもそうですけど全体的にお前は思い切ってやれば何とかなるよみたいな雰囲気だったので、別にミスしてもいいから思い切りやろうかなと思ってました。

――ライトでのプレーになりましたが、ご自身のプレーを振り返っていかがでしたか

ライトでの経験があんまりなかったので不安なところはあったんですですけど、相手のブロックが低かったのでキャッチが返ったときに中に切り込むサインばっかり頌平さん(山口副将、スポ3=長崎・大村工)が出してくれました。キャッチが返ればライトでも決めきれるかなと思ってました。

――調子は良さそうに見えましたがいかがですか

自分の持ち味は高さで、龍谷のブロックが低かったので相性は良かったと思います。

――あしたの試合に向けて一言お願いします

また出場する機会は必ずあると思うので、いつでも出れるように準備しておきます。

喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)

――準決勝進出を決めた率直な感想をお願いします

きょねん行けなかったところにいけるということでうれしい気持ちはあるのですが、試合自体はまだ終わっていないのでこの後のケアとあしたの入り方を気をつけたいです。あしたの準決勝が事実上の決勝というか、力の差的にはそういうことになるので、あした全部出し切りたいです。

――4回戦の近大戦は、やはりエースの対策がカギになりましたか

そうですね。高かったのですが、連戦なので相手も疲労が溜まっていて打点が落ちてミスも出てきていました。相手の打つコースを防いで、抜けてきたボールも決められてもボールにしっかり触って相手にストレスをかけるというかたちを意識して対策していました。

――1セット取られた後の第4セットはどのように気持ちを切り替えましたか

自分たちのバレーができれば負ける相手ではなかったので、一から、サーブレシーブからセンターをどんどん使ってやっていこうということで、気持ち的にはいつもと変わらずにできたと思います。

――準々決勝で当たった龍谷大は関西の大学ですが、どのような対策をして挑みましたか

相手の打つコースも明らかでしたし、どこにトスが上がっているのかという部分もデータをきっちりと出してくれていました。ブロックポイントも良いところで取れたので、自分たちがうまいことデータ通りに動けていたのかなと思います。

――龍谷大のキーマンであるセッターはいかがでしたか

うまいというか、スパイカーを奮い立たせる気持ちがあるセッターでしたが、センターと息が合っていない感じがあったので、やっているバレーとしては良いように見えるのですが、こういったバレーには負けてはいけないなというのは思っていました。

――バックアタックも決まっていましたが、ご自身のスパイクの手応えはいかがでしたか

連戦なのでジャンプ力が落ちてきた時に冷静にどう対処するか、そういう部分で飛べなくなった時の打ち方をもう少し工夫しなければいけないなと思います。

――フルセットの緊迫した試合となりましたが、特に第5セットはどのような心境でしたか

ここまで来たらやるしかないと。痺れる展開だったのですが、14点目に相手がぶつかったりと運も味方してくれて、いままでやってきた練習がそういう1、2点に生きてきたのかなと思います。

――あすの中大戦への意気込みを聞かせてください

自分たちのやってきたことを最大限に出すというのが最低の条件で、それ以上の動きができるようにコンディションを整えていきたいと思います。