雪辱誓う全日本 六大学100年の歴史を背負い、目指すは日本一のみ/全日本大学選手権展望

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 6月9日、全日本大学選手権(全日本)が開幕した。昨年の全日本では、決勝で青学大に敗れた早大。昨春の雪辱を果たすべく、まずは明日、東亜大との初戦に臨む。

伊藤樹が軸の投手陣

 早大投手陣は今季、東京六大学春季リーグ戦(リーグ戦)チーム2位となる防御率3.19を記録。その原動力となったのは、エース・伊藤樹(スポ4=宮城・仙台育英)と宮城誇南(スポ3=埼玉・浦和学院)だ。伊藤樹は、明大2回戦でノーヒットノーランを達成すると、以降全試合に登板。連投が続く中でも同期間防御率2.25をマーク。先発として安定した投球を見せるだけでなく、早明3回戦、早慶2回戦では終盤にリリーフとして登板し、チームのピンチを幾度となく救ってきた。宮城は、立大2回戦でリーグ戦自身初完封を挙げるなど、今季大きく成長。早慶2回戦では6回2/3を投げて自責点5と不本意な投球に終わったが、全国の舞台で本領発揮なるか、要注目だ。

今季6勝を挙げたエース・伊藤樹

また、全日本は決勝まで進めば7日間で4試合を戦うことになる過密日程。リーグ戦で多く登板した安田虎汰郎(スポ2=東京・日大三)、田和廉(教4=東京・早実)以外のリリーフ陣にも期待がかかる。注目は、フレッシュトーナメントの慶大戦で先発し、6回9奪三振1失点の好投を見せた髙橋煌稀(スポ2=宮城・仙台育英)。初回から150㌔を計測した未完の大器が、ゲームチェンジャーに名乗りを上げる。

リーグ戦好調の打撃陣 全日本の舞台でも躍動なるか

 野手陣は、今季リーグ1位の打率2割9分4厘をマークするなど、リーグ戦を通して好調をキープ。獲得した四死球はリーグ最多、喫した三振数はリーグ最少と、アプローチの良さも光った。中でも注目は、今季覚醒を果たした寺尾拳聖(人3=長野・佐久長聖)。リーグ2位のOPS1.163を記録した主砲は、昨年の全日本後に、「まだまだ自分の力が足りない」と悔しさをにじませた。あの屈辱を拭い去ることができるのは、同じ全国の舞台だけ。自らの成長を示し、チームを全国の頂に導くことができるか。

優勝決定戦では4打点の活躍を見せた寺尾

 また、全日本ではDH制が採用されている。DH起用の筆頭候補は、スーパールーキー・德丸快晴(スポ1=大阪桐蔭)。立大3回戦でチームに流れを引き戻す3点本塁打を放った若武者は、規定未達ながらもOPS1.078をマークする衝撃のデビューを飾った。そのパワーはチーム屈指。全国の猛者を相手に、その打棒を遺憾なく発揮することができれば、おのずと秋季リーグ戦でのスタメン起用も見えてくる。チームの将来を担う主砲候補の躍進に期待大だ。今春のリーグ戦で不調に陥った尾瀬雄大(スポ4=東京・帝京)には復活への期待がかかる。今春、打率2割8分8厘に終わった尾瀬。打率2割台でのフィニッシュは2年秋シーズン以来。チームの火付け役が、このまま終わって良いはずがない。第1打席から相手投手陣に襲い掛かり、早大に流れを持ってくるのは、この男だ。

青学大に雪辱誓う

 他の出場校で最注目は、やはり前年の覇者・青学大だろう。打線の柱は、小田康一郎(4年)を置いて他にいない。ここぞという場面での勝負強さが光るクラッチヒッターは、打率こそ2割7分7厘にとどまったものの、本塁打3本を放って本塁打王に輝いた。また、エースの中西聖輝(4年)は、今季70回1/3を投げて防御率1.41と圧巻の投球を披露。昨年の決勝で早大を苦しめたヴァデルナ・フェルガス(4年)や鈴木泰成(3年)も健在であり、投手陣は十分な陣容を誇る。

 全国の猛者が集う全日本。もう「あと一歩」はいらない。己の実力を存分に発揮し、頂点へと駆け上がれ。

8日の開会式で「日本一を取る」と決意を述べた小澤周平主将(スポ4=群馬・健大高崎)

(記事 林田怜空)