土壇場で追いつかれるも吉田瑞副将が10回に本塁打 『総力戦』制し勝ち点死守!/明大3回戦

野球

東京六大学春季リーグ戦 5月20日 神宮球場

TEAM 10 合計
早大
立大

◆バッテリー

宮城、髙橋煌、佐宗、田和、安田、◯伊藤樹ー吉田瑞

◆二塁打

なし

◆三塁打

なし

◆本塁打

吉田瑞(1号ソロ)

 前日、伊藤樹(スポ4=宮城・仙台育英)がノーヒットノーランを達成し、劇的なサヨナラ勝ちで第2戦を制した早大は、絶対に負けられない3回戦に臨んだ。試合は初回、寺尾拳聖(人3=長野・佐久長聖)と田村康介(商4=東京・早大学院)の適時打で3点を先制する。2回に2点を返されたものの、5回に2点を奪い返すと、その後8回にも1点を追加。3点リードで9回裏に突入した。しかし、ここで痛恨の3点本塁打を被弾し、試合は延長戦へ。それでも10回、吉田瑞樹副将(スポ4=埼玉・浦和学院)が本塁打を放つと、伊藤樹も適時打を放ち、2点の勝ち越しに成功。裏の守りを伊藤樹が三者凡退で締め、8-6で勝利。総力戦となった早明戦を制し、勝ち点を3とした。

 初回、先頭の尾瀬雄大(スポ4=東京・帝京)のゴロは遊撃手に捕球されたものの、これを相手遊撃手が送球エラー。この間に尾瀬は二塁まで進塁し、無死二塁という絶好の先制機を手にした。その後2死三塁として、打席には前日サヨナラ打の寺尾。寺尾はセンター前へとはじき返し、先制点をもたらした。さらに前田健伸副将(商4=大阪桐蔭)が左前安打で続き、2死二、三塁に。田村も甘く入ったスライダーを捉えて中前に運び、寺尾と前田健副将が生還。初回から3点の先制に成功した。

先制打を放った寺尾

 この日の先発は、1回戦にも先発した宮城誇南(スポ3=埼玉・浦和学院)。先制点をもらった直後の初回を三者凡退とし、幸先良いスタートを切った宮城だったが、2回、ヒット2本で2死一、二塁のピンチを招くと、四球を与えて満塁に。なんとか序盤のピンチをしのぎ切りたかったが、代打の八谷晟歩(3年)に中前安打を浴び、2点を失った。それでも、今季好調の田上夏衣(2年)を内野ゴロに打ち取り、ピンチを脱出。3回にも得点圏に走者を背負ったものの、同点打は許さない。結局この日の宮城は、3回2失点でマウンドを降りた。初めての中1日での先発となった宮城。本調子ではない中でも最悪の結果を回避し、最低限の役割を果たして見せた。

先発した宮城

 4回、先頭の前田健副将が右前安打で出塁し、犠打と内野安打で1死一、三塁の好機を作った。しかし、吉田瑞副将は三飛に倒れ、2死とされる。ここで小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦広大柏)は先発の宮城に代えて岡西佑弥(スポ3=智弁和歌山)を代打として起用。この場面で追加点を奪い、試合を優位に進めたい早大だったが、岡西は二ゴロに倒れ、絶好機を逃した。

 それでも5回、1死から石郷岡大成(社4=東京・早実)が遊撃への内野安打で出塁すると、小澤主将が左前安打で続き、再び1死一、三塁の好機を作る。この場面で打席に立った寺尾が再び単打で走者を迎え入れ、追加点を獲得した。さらに、2死二、三塁とすると、田村の打席で相手にバッテリーエラーが発生。三塁走者の小澤主将が悠々とホームを陥れ、5点目を奪った。

 4回からは髙橋煌稀(スポ2=宮城・仙台育英)が今季初登板。先頭と次打者を三振に斬って取り、明大打線を三者凡退に抑えて見せた。しかし、続く5回、先頭打者に出塁を許すと、続く打者にもバスターを決められ、無死一、二塁のピンチを招く。すると、小宮山監督は左打者が続くこともあり、佐宗翼(スポ1=石川・星稜)をマウンドに送り込む。緊迫する場面でのリーグ戦初登板となった佐宗は、榊原七斗(3年)に適時打を浴びたものの、その後の打者を抑えきり、2死までこぎつけた。次打者の木本圭一主将(4年)が右打者のため、小宮山監督は田和廉(教4=東京・早実)にスイッチ。田和は木本を内野フライに打ち取り、何とかこのピンチを脱出した。

リーグ戦初登板となった佐宗

 そのまま田和は6回、7回と回またぎで登板。6回は三者凡退に抑えたものの、7回には先頭打者に出塁を許し、次打者も野選で出塁させてしまう。その後2死までこぎつけた田和だったが、四球を与えて満塁とされた。この場面で田和は大きくギアチェンジ。今季最速となる151㌔を複数回記録する気迫の投球で木本主将を遊ゴロに打ち取り、明大に同点打を許さない。この絶体絶命のピンチを抑えきった田和は、何度も咆哮をあげ、この一戦に懸ける気持ちを感じさせた。

7回のピンチを抑えた田和

 打線は8回、代打で出場した德丸快晴(1年=大阪桐蔭)が相手の失策で出塁し、1死二塁のチャンスを獲得。打席には今季不調の尾瀬が入る。尾瀬はしぶとく右前に運び、早大に追加点をもたらした。9回の攻撃は三者凡退で終えた早大。3点リードで試合は9回裏に突入した。

今カード初安打が適時打となった尾瀬

 9回のマウンドに登ったのは、前の回から登板していた安田虎汰郎(スポ2=東京・日大三)。今季も防御率1点台と安定した投球を続けていた安田だったが、先頭の田上に中前安打を許すと、次打者には死球を与え、無死一、二塁のピンチを招いた。続く打者を二ゴロに打ち取り、1死とした安田だったが、続く小島大河(4年)への初球、完全に甘く入ったチェンジアップを右翼席に運ばれ、痛恨という言葉では表現しきれない同点3点本塁打を被弾してしまう。次打者にも中前安打を浴びたところで、安田は降板。前日ノーヒットノーランの快投を見せた伊藤樹がマウンドに登った。連投となった伊藤樹だったが、立大戦での劇的なサヨナラ負けが脳裏に浮かんだのもつかの間、一塁併殺打で難なく相手の流れを断ち切った。

前日のノーヒットノーランに続き連投した伊藤樹

 延長戦に突入した早大。この回の先頭は吉田瑞副将。「甘い球を一発で仕留められて良かった」と振り返った吉田瑞副将の放った打球は、大きな放物線を描いてスタンドイン。このカードで獅子奮迅の活躍を見せている伊藤樹を援護する大きな1点を獲得した。さらに1死から尾瀬が中前安打で出塁すると、犠打と申告故意四球で2死一、二塁とする。すると、伊藤樹に右前適時打が飛び出しさらに1点を追加。大きな1点を自らのバットで奪った伊藤樹が、その裏のマウンドにも登った。

10回に値千金の本塁打を放った吉田瑞副将

 10回裏、伊藤樹は、先頭打者を左飛に、次打者を一邪飛に打ち取る。明大は投手への代打として内海優太(3年)を起用。前日まで4番としての出場を続けていた内海を、伊藤樹は難なく高めの釣り球で三振に斬って取り、ゲームセット。熱戦を8-6で制した早大が、大一番で勝ち点1をもぎ取った。

 1回戦を落としながらも、2回戦を伊藤樹のノーヒットノーランで制し、総力戦となった3回戦をしぶとく勝ち切った早大。残すリーグ戦は早慶戦のみ。宿敵相手に2連勝を飾り、春季リーグ戦を締めくくりたい。

(記事 林田怜空、写真 西本和宏)

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早大打者成績

打順 守備 名前 10
(中) 尾瀬雄大 .283 遊失 一ゴ     見三 二ゴ   右安   中安
(右) 石郷岡大成 .325 三飛   見三   遊安 右飛   遊ゴ   一犠
(二) 小澤周平 .348 二ゴ   空三   左安   二ゴ 四球   故四
(左) 寺尾拳聖 .378 中安   空三   右安   右安 遊ゴ    
  安田虎汰郎 1.000                    
  伊藤樹 .333                   右安
(一) 前田健伸 .237 左安     右安 二ゴ   左安   右飛 二ゴ
(三) 田村康介 .188 中安     投犠 四球   見三   見三  
(遊) 大内碧真 .185 三飛     一安 二ゴ   見三   中飛  
(捕) 吉田瑞樹 .297   遊ゴ   三飛   中安   空三   左本
(投) 宮城誇南 .500   二ゴ                
  岡西佑弥 0.333       二ゴ            
  髙橋煌稀                    
  佐宗翼                    
  田和廉 0.667           犠三振        
  德丸快晴 0.222               二失    
  山口力樹                   一邪
  松江一輝                    

早大投手成績

名前
宮城誇南 3 2.25
髙橋煌稀 1 0/3 9.00
佐宗翼 0 2/3 0.00
田和廉 2 1/3 3.18
安田虎汰郎 1 1/3 4.32
伊藤樹 1 2/3 2.50

コメント

◆吉田瑞樹副将(スポ4=埼玉・浦和学院)

――ホームランを放った10回の打席を振り返っていかがですか

 カウントは追い込まれていましたが、甘い球が来てくれました。そこを一発で仕留められて良かったです。

――明大戦は毎試合で安打を放ちましたが打撃好調の要因を挙げるとするならいかがですか

 金森栄治助監督(昭54教卒=大阪・PL学園)をはじめとした指導者の方々に親身になって指導していただいた成果だと思います。

――どのようなアドバイスを貰っていますか

 常々言われていることですが、短いスイングで速く振るということです。もう1回原点に帰るということでやっています。

――今日の試合は継投がカギとなりましたが、リードをする際に意識していたことはありますか

 明大打線はホームランが出ると怖い打線だったので、なるべくボールカウントを先行させないように、怖がらずゾーンへ投げることをピッチャー陣に言っていました。

――勝ち点獲得となりましたがこの明大とのカードを振り返っていかがですか

 苦しい試合でしたが何とか勝ち取ることができました。次につながる良い試合だったと思います。

――次戦への意気込みをお願いします

 慶大戦で連勝して良いかたちでリーグ戦を終えられるように、これからもしっかり準備していきたいと思います。