【連載】『覇者で在れ』第1回 権田浬、渕上翔太、水野琉之介 

特集中面

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 初回は権田浬(スポ3=千葉・佐倉)、渕上翔太(スポ3=東福岡)、水野琉之介(スポ3=北海道・立命館慶祥)の3年生トリオが登場。今シーズンの水野は関東学生対校選手権(関東インカレ)で100メートル優勝、日本選手権で同種目6位入賞を果たした。一方で、渕上と権田は「ケガに苦しんだ」シーズンとなった。そんな彼らの上級生としての意識の変化や、日本学生対校選手権(日本インカレ)に向けての決意に迫る。

※この取材は8月26日に行われたものです。

――他己紹介をお願いします

水野 渕上翔太です。(大学入学後の)3年間、多くの時間を共に過ごしてきたのですが、練習などを見ていて彼以上に努力している人は、見たことがありません。練習の量もずば抜けているのですが、そこに対する考え方であったり、練習の質であったり、そのようなところで彼を上回るのは本当に難しいのではないかと思っています。本当に努力家で、1年生の頃から結果を出しているのは、普段の練習があってこその結果なのだろうと感じています。そのような面も含めて、僕は尊敬している選手です。

渕上 権田くんは、端的に言えば「くせ者キャラ」だと思います(笑)。その一方で、学年が上がり、言わなければいけないことが増えていく中で、「言うことは言う」を徹底してやっている人です。そのあたりは3年生としてあるべき模範的な姿だと思います。競技面でも、とにかくずっと走っている印象があります。(一般)受験をして入学してきましたが、 1年時から早速マイルリレー(4×400メートルリレー)のメンバーに選ばれていました。水野も僕のことを努力家と言ってくれましたが、僕からしたら権田も努力家の一人だとすごく感じています。(権田は)頭が良いので、練習の中でも頭を使っている場面が多く見受けられますし、納得がいくまで練習に愚直に取り組んでいる印象があります。

権田 僕から見た水野は1年生の頃、思うような結果を出せていなかったと思います。そのような中で、当時の先輩など、いろいろな人に自分から話を聞きに行き、どんどんステップアップしてここまで強くなった印象です。本当に愚直に陸上に向き合ってきていると思っています。水野が小学生の頃から陸上を始めて、ずっと真面目に取り組んできた結果、今ここまで強くなったのだと思います。とても真面目で愚直に(競技に)取り組んでいる選手だと思います。

――みなさんは同級生ですが、入学当初と現在でお互いの印象の変化はありますか

水野 渕上とは、高校の時に大学の合宿に参加した頃から面識があるのですが、最初は「ザ・真面目キャラ」といった感じでした。もちろん今も真面目ではあるのですが、最近はラフな部分がかなり見られてうれしいです。僕らが話す時は真面目な話をすることが多いのですが、最近は渕上の方からボケてきてくれたり、僕のボケに対しても鋭くツッコんでくれたり、部活では見られない面を(寮生活の中で)見ることができてすごくうれしく感じています。

渕上 権田は、入学してから(印象が)一番変化していない人です。良い意味でそのままでいてくれています。入学当初から関わりはすごく多いのですが、入部した時は(権田は)周りとのコミュニケーションを好まないタイプだと思っていました。それこそ入寮の時期がずれたというのもあったのですが、(休日も)外出することもあまりなく、周りと関わることがあまり好きではないのかなというのが1年目の印象でした。しかし、その印象は全く違いました。今は常に誰かといます(笑)。

権田 水野は人としてすごく厚みが増したと思います(笑)。競技力がすごく向上したというのもありますし、学年が上がって後輩との関わりも増えたというのもあります。 大竹(春樹、令7商卒)さんや井上(直紀前主将、令8スポ卒=現大阪ガス)さんなど(の先輩)とコミュニケーションをずっと取ってきていたのが水野だと思います。そのような人たちからいろいろなものを吸収して、人としての厚みが増してきたと思います。

――競技面について、練習や試合でお互いに刺激を受ける場面はありますか

水野 他己紹介でもあった通り、彼らは2人ともすごく練習を積むメンバーで、競走部の中でもずば抜けて練習量も多いですし、トレーニングなどもしっかりと考えているところは、日頃から刺激を受けています。追い込んでいる姿を見ると、僕ももう少し頑張らなければいけないと思います。彼らは1年時の頃から結果を出していて、僕は観客として見ることしかできなかったので、対校戦などで(2人が)活躍しているのを見ると自分自身ももっと頑張っていかなければいけないと思いました。彼らの活躍からもっと強くなりたいという向上心が芽生えて、自分の成長にも大きくつながったと思います。

渕上 僕と権田に関しては専門種目(400メートルハードル)が同じなので、練習ではほぼ毎回同じように走っていて常に刺激を受けています。(練習で)セットを重ねていくと、みんなのパフォーマンスが落ちていく中で、権田だけは落ちないです。体力面で負けられないのはもちろんですが、日頃から勝とうと思える練習ができることで、良い刺激を受けています。僕は小学生の頃からハードル競技に取り組んでいるので、固定観念にとらわれている部分が多いのですが、権田がハードルや走りについて後輩たちと話しているのを聞いて、「そのような考え方もあるんだ」と気付かせてくれる点でも刺激を受けています。

権田 渕上とは同じ種目をやっていて、1年時からずっとライバルとして走ってきたので、お互いに意識し合っています。渕上に関してはセット走が本当に強いので、後半の強さや冬季練習でも先頭を引っ張っている印象があります。僕自身は練習メニューによって得意・不得意があるので、渕上はすごいと思いますし、負けていられないと思います。部内で負けていたら部外(の試合)でも勝てないと思うので、お互いに刺激し合える良いライバルであり良い仲間だと思います。水野に関してはどんどんステップアップしていく中で、(周りからの注目度が)高くなってきたからこそ、トップを取り続けなければいけないという強さが練習の中でも見えます。それを後輩たちに対して背中で語る部分があって、かっこいいと思っています。

水野 ありがとう(笑)。

――上級生になり、下級生の頃からの競技への意識の変化はありますか

水野 1年生の頃は本当に何をやってもうまくいかないことが続いて、自分にしか集中できず周りがあまり見えていなかったと感じます。そこから2年生、3年生で結果が出る中、自己研鑽(けんさん)の部分は継続しつつ、競走部全体を見れるようになりました。競技力があるからこそ組織の課題や状態に気付く機会が増え、早稲田を背負っている責任感が芽生えてきました。競技力で後輩たちに背中で見せていくことと、(課題を)言語化して組織を支えることの両方へ意識がシフトできたのは良い変化だったと思います。

渕上 入学当初は世界へという思いを対談でも話しましたが、正直実感が湧いていませんでした。U20アジア選手権に出場し、優勝できたことはうれしかったのですが、世界への実感はあまり得られませんでした。1年目の日本インカレで(400メートルハードルで)48秒台を出すことができ、そこから世界へ視点が向いたことがこの3年間で一番の大きな変化です。昨年は(FISU)ワールドユニバーシティゲームズなど多くの海外経験をさせていただいた中で、競技の基準がよりグローバルなものになりました。また、早稲田という組織を考えると、1年目は先輩におんぶに抱っこの状態でしたが、今は責任感が芽生えてきました。やるべきことをしっかり継続していきたいです。

権田 僕は高校から陸上を始めた身でしたし、強豪校でもなかったので、(大学)1年時は先輩やコーチに教えていただき、組織の中に置いてもらっている意識が強かったです。学年を重ねるにつれて後輩も増え、下級生に質問されることが多くなったことが一番大きなターニングポイントでした。人に聞かれた時に「始めたばかりだから分からない」とは言えなくなって、自分で人の走りを見て話せるようになった時に、初めて自分の陸上に関しても自分で理解できるようになってきました。最近の練習でも、自分の足りないところや、できているところがしっかりと見えるようになったことが一番大きいです。

――今シーズン前半を振り返っていかがですか

水野 本当に貴重な機会をたくさん経験したシーズンだったと思います。昨年の関東学生新人(関東学生新人陸上競技選手権大会)で10秒19を出したことで、グランプリ(シリーズ)や日本選手権などいろいろな試合に参加する機会が増えました。一気に経験値が上がって思考がパンクしそうになることもありましたが、関東インカレで優勝することができましたし、その後の日本選手権で入賞することができました。昨年は200メートルがメインだった中で、今年は100メートルでしっかりと結果を残せたのは良かったです。4年生になる前に日本選手権の決勝の景色を見ることができて、陸上をやってきた中で一番すてきな景色でした。一生忘れられない経験ができ、後半シーズンや来年につながる大きなモチベーションになりました。

渕上 単純に苦しい時期だったと思います。シーズン始めから海外(遠征)などの貴重な経験をさせていただいた中で、4月1日からケガをしてしまい、3カ月ほど引きずったまま過ごしました。競技人生の中でもここまで長引いたことがなかったので苦しい時間でした。その中で関東インカレに出場させていただき7位という結果で、本来なら優勝を争わなければいけない立場でしたし、マイルリレーにも貢献できませんでした。背中を見せるという点では何も達成できなかった前半シーズンでした。だからこそ日本インカレへのモチベーションは高まっていますし、休んでいた時期に周りを俯瞰(ふかん)して見ることができたので、後半シーズンでしっかりと挽回していきたいです。

権田 僕も苦しい前半シーズンだったと思います。昨年の後半シーズンに肉離れをしてオフシーズンが明け、シーズンが始まってからもまた肉離れをしてしまいました。そこからなかなか復調ができず、コンディションが上がらない状態が続いて、関東インカレに関しても何もできず悔しい結果に終わりました。日本選手権にも出場させていただきましたが、自分が思い描いていた前半シーズンではありませんでした。ただ、苦しい中だったからこそチャレンジャー精神で下から這い上がる意識を持って、地道な練習にも取り組むことができました。この苦しさを日本インカレでリセットするつもりで、日本インカレには臨みたいです。

――今シーズンで特に印象に残っているレースを1本挙げるとしたらどのレースになりますか

水野 日本選手権の準決勝と決勝の2本がすごく印象に残っています。準決勝は周りから「死の組」と言われていて、桐生(祥秀、日本生命)さんや多田(修平、住友電工)さん、山縣(亮太、セイコー)さん、愛宕(頼、日本建設工業)さん、デーデー(ブルーノ、セイコー)さん、大先輩の井上さんも同じ組でした。その中で2着に入らなければならない、タイムでも良いタイムで入らなければ(決勝に)いけないというプレッシャーの中で、自己ベストを出して決勝に進めたことは大きな転換点でした。決勝の舞台では6位でゴールして、アジア選手権の切符は手に入らず悔しい結果ではありましたが、純粋に心から楽しかったと言えるレースでした。走るだけで楽しかったレースは他にはないくらいワクワクが止まらなくて、決勝の空気感の中で走れたことは、走る楽しさを改めて実感させてくれました。

渕上 僕は関東インカレです。素直にこれまでの中で一番怖かった試合です。普段はあまり緊張しないタイプなのですが、練習ができていない自負があったので、2時間の睡眠でしか試合に臨めず、手が震えるほどの恐怖を覚えた時間でした。これまではケガをしてこなかったので、「走れないのではないか」という不安要素を感じる場面がなかったのですが、(関東インカレは)決勝に残らないといけない責任感と、残れなかったらどうしようという怖さがありました。その中で気持ちを保って出場できたことや、対校戦としてうまくいかなかった悔しさも含めてすごく印象に残っています。

権田 試合全てを含めるとしたら、マウントサック(66th Annual Mt.SAC Relays)で走った試合が印象深いです。1週間アメリカへ遠征させていただき、少し体調を崩してしまったのですが、会場に着いて練習したらすごく調子が良くて「これはタイムが出る」と思って臨みました。結果としては散々だったので、どんな環境でも走れないと駄目だと感じました。また、U20で知り合ったアメリカの選手がすごく活躍しているのを見て、「なんであの選手はここまで活躍しているのに自分はできないんだろう」と劣等感を抱く瞬間もあり、一からやり直さなければいけないと強く感じました。

――夏合宿を終えて、現在のコンディションや調子はいかがですか

水野 前半シーズンはかなり調子が良い状態で終えられて、夏合宿を挟んで3本レースに臨みましたが、どれもうまくいかず、感覚をつかめない状態が続いていました。ここ最近は平地での練習を増やして前半シーズンのマインドで練習を続けることができ、悪くない状態まで仕上がってきています。日本インカレまであと1週間程度ですが、疲労を落としてスピードを上げていけば自ずと結果はついてくると思います。

渕上 今シーズンの中では一番良い状態です(笑)。3月下旬からなかなか全力で走れない日々が続いた中で、夏合宿をしっかり消化できましたし、トレーナーの方々にサポートしていただいたおかげで足が全く痛くない状態で走れています。コンディション的にもマインド的にも何をしていても楽しいです。あとは感覚を研ぎ澄まして、残りの日数でピースをそろえていければ良い状態で臨めると思います。

権田 練習していて感覚はとても良いです。夏合宿前までは本当に終わってしまったのではないかというくらい落ちていた時もありましたが、夏合宿を終えて以前よりも走れることや、前半シーズンで感じた課題と向き合えています。その課題を解決して(日本インカレに)臨めれば、自分が目指している目標に届くのではないかと思います。

――日本インカレでご自身に注目してほしいポイントを教えてください

水野 僕のレースの一番の見どころは中間走の伸びの部分だと思うので、40から50メートルあたりで前に出て周りを引き離してゴールする展開を見ていただきたいです。あとはリレーにも注目してほしいです。2走は周りを圧倒するような走りを見せて、次の走者にバトンを渡す区間だと思うので、2走での走りにもぜひ注目してください。

渕上 ラストの伸びに注目していただきたいです。今シーズンはまだ(自分らしい走りを)体現できているレースがないのですが、日本インカレではできると思います。後半の200メートルで先頭に駆け上がれるところが自分の持ち味であり練習してきた部分なので、それをしっかりと発揮したいです。また、マイルリレーに関しても個々が力をつけてきているので、勝ち切る姿を見ていただきたいです。

権田 レースの見どころは後半の走りになってくると思うので、後半の部分を見てほしいです。この夏にかけて後半を生かせる前半の走りを練習してきたので、後半で確実に勝ち切る姿を見ていただきたいです。マイルリレーに関しても春から夏にかけて個々が練習に取り組み、最高の布陣がそろっていると思うので、期待していただきたいです。

――最後に、日本インカレでの目標や意気込みをお願いします

水野 個人では(100メートルで)10秒0台での優勝を目指します。実力の高いメンバーが100メートルにそろっているので、しっかりと勝ち抜いて納得のいくタイムでゴールしたいです。4×100メートルリレーでも関東インカレの時よりも強い布陣で臨めると思うので、学生記録の更新と優勝を目標に頑張りたいと思います。

渕上 優勝しか狙っていません。タイムとしては(400メートルハードルで)48秒台を目標として、そこを達成できれば自ずと優勝がついてくると思うので目指していきたいです。リレーに関しても優勝を掲げていますし、1年目からずっと悔しい思いを共にしてきた森田(陽樹、創理4=埼玉・早大本庄)さんの最後のインカレなので、優勝して花束を持たせてあげたいです。

権田 チャレンジャーという立場から、最終的には最高のタイムで最高の場所に立てるように頑張ります。(400メートルで)森田さんを個人で輝かせることは僕が勝ってしまうのでできませんが、その分マイルリレーで一番輝かせたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材 永尾早渡、編集 國友咲)

◆水野琉之介(みずの・りゅうのすけ)

2005(平17)年4月22日生まれ。北海道・立命館慶祥高出身。スポーツ科学部3年。

◆渕上翔太(ふちがみ・しょうた)

2005(平17)年10月10日生まれ。東福岡高出身。スポーツ科学部3年。

◆権田浬(ごんだ・かいり)

2006(平18)年1月30日生まれ。千葉・佐倉高出身。スポーツ科学部3年。