【連載】競走部 日本学生対校選手権(日本インカレ)特別企画 特集『Alll ONE(オールワン)』 第9回 井上直紀×大川寿美香×山口智規

特集中面

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 第9回は井上直紀主将(スポ4=群馬・高崎)、山口智規駅伝主将(スポ4=福島・学法石川)、大川寿美香女子主将(スポ4=東京・三田国際学園)が登場。チームの顔として競走部をけん引するこの3人に今シーズンの振り返りと、111代目の集大成となる日本学生対校選手権(日本インカレ)への意気込みを伺った。

※この取材は5月23日に行われたものです。

ーー右隣の人の紹介をお願いします

大川 井上直紀です。競走部の主将として行動でも結果でも引っ張ってくれる存在です。誰よりも自分の行動と言動に責任を持っている姿勢から、部員たちはついていきたいと思っているのではないかと感じています。

ーー私生活ではどのような人ですか

大川 寮が違うので分からないこともありますが、抜けているところもあるとは聞いています。また、後輩を連れて外に行ったり、最近ではコーヒーにもはまっていたりと、オンとオフをしっかり分けている人だと思います。

ーーそれでは、井上選手が山口智選手の紹介をお願いします

井上 山口智規くんです。駅伝主将として頑張っていると思います。印象は子供っぽいと思います。

山口智 はい(笑)。

井上 大人の大川と比べると対照的だと思います。ただそれはプライベートの方で、競技に対しては真摯に向き合っています。1年生の時と比べたら、最近接していてすごく成長したと感じています。関東インカレ(関東学生対校選手権)も2種目出て、日本インカレも2種目エントリーしていてと、トラックシーズンは大車輪の活躍です。駅伝シーズンでも、しっかり走ってくれると思います。

ーー続いて山口智選手が大川選手の紹介をお願いします

山口智 女子主将の大川選手は下の選手たちとしっかりコミュニケーションをとって、率先して練習にも取り組んでいます。この2人は、主将らしい姿を見せてくれていると思います。加えて、お酒が好きで、ノリもよくて、人間味があるのですごく接しやすいです。

大川 暴露された(笑)。

ーー1年生のころの印象と今の印象を教えてください

山口智 (井上に)陸上どうだったっけ?

井上 そんな足速くなかったね。

山口智 と思っていました(笑)。いやいや違います(笑)。

井上 印象は変わんないんじゃない?変わんないけど、足の速さだけは速くなったみたいな(笑)?

山口智 でも、丸くなったのではないですかね(笑)。まだとがりもあるけど、1年生の時はもう少しあったかなと。

井上 ちょうど大川と昨日話しました。最近は練習でも伸びやかに楽そうに走っているのですが、入ってきたときはすごく辛そうな走りをしていてこの人大丈夫かなと思ったのが正直な第一印象です。1年生のころはしっかりコミュニケーションをとることもなかったのですけど、今はすごくいい子だなと思います。

井上 僕はとがっているので(笑)。

大川 山口智は1年生の頃、教養演習が同じでした。駅伝に出る前はクラスの皆からすごく応援されている選手でしたが、かといって仲が良かったわけではないので、話した覚えがないのが正直なところです。今となってはそれこそ、関東インカレ前は自分がプレッシャーで押しつぶされそうな時に、山口智がラインでゴリラのスタンプを送ってきてくれて笑わせてくれて(笑)。駅伝主将としての一面が増えて、人としてすごく変わったな、頼もしい駅伝主将だなと思っています。

ーー今まで行った遠征先で印象に残っている場所を教えてください

大川 私はベルギーです。大学2年生の時に行ったのですが、海外遠征が初だったこともあり、こんなにも文化が違うのだと知りました。(現地の人の)人柄も日本とは全く違うので、競技力の面でも成長できましたし、異文化からも学ぶことが大きかったと感じます。

山口智 僕はオーストラリアです。海外慣れしたのもありますし、2カ月間一番長い期間行かせていただいたからです。海外の選手と今までで一番長く交流できました。日本の選手とは少し違い、オーストラリアの選手は陸上だけでなく、自分の人生を楽しんでいました。僕もすごく充実していました。

ーー美味しかった食べ物はありますか

山口智 オージービーフのステーキが美味しかったです。

ーー井上選手はいかがですか

井上 海外遠征を始めとして沢山遠征に行かせていただいていますが、陸上競技をするために遠征するわけなので、結果がついて回ります。なので、僕は結果が悪い時は基本的に何も買わずに帰ってきます。優勝することができた今年の織田記念(織田幹雄記念国際)くらいしかいい思い出がないです。今年の広島で、大前さん(大前祐介監督、平17人卒=東京・本郷)がおごってくれた広島焼きはすごくおいしかったです。

ーー現在の役職に就いた経緯を教えてください

井上 皆が主将をやっていいよと言ってくれたのでやったというかたちです。今、僕は主将をやっていますが、4年生中心にいろいろなことをやってもらっています。僕が特段何かをやっているというよりかは、皆で運営しているかたちなので、本当に感謝しています。

山口智 僕も同じ感じですかね。

井上 駅伝主将何か(理由)あるんじゃないの?

山口智 いやー。

井上 僕が山口智を凄いなと思ったのは、彼が海外遠征中に、僕がゼミ室で超音波をしていたら、下級生がケガをしたみたいで。それに対して日々の練習が記載されているスプレッドシートを海外遠征中も見ていた山口智が、個人的にその下級生に連絡していたらしいです。「すごい!(山口智が)駅伝主将じゃん!」って思いました(笑)。

山口智 (選ばれた理由は)人間性ですかね(笑)。冗談です、冗談です(笑)。学年で話し合って、推薦してもらって上に立たせてもらっていますが、4年生一人一人が自覚をもってやってくれています。

ーー大川選手はいかがですか

大川 私も最終的には同期に認めてもらって女子主将になりました。一番最初の(女子主将になろうと思った)経緯としては歴代の女子主将の川村さん(川村優佳氏、令6スポ卒)、鷺さん(鷺麻耶子氏、令7スポ卒)の姿を見て、お二方に覚悟を感じたからです。女子があまり強くないところから、どんどん人数も増えて強くなっていくところを見て、今まで女子の総合優勝をしたことがない中で、自分の力でどこまでできるのかを試したいと思ったのが最初の動機です。ただ、自分の思いだけではなくて、同期の同意があって、最終的に選んでいただきました。

ーー今シーズンのこれまでの振り返りをお願いします

山口智 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)、都道府県対抗男子駅伝と、駅伝が終わって、その後にオーストラリアに行かせていただきました。最後のレースは、疲労もあって結果はよくなかったですが、日本選手権1万メートルに向けてやっていたので、そこはあまりマイナスに捉えなかったです。ただ日本に帰ってきて寒かったのと、雨の中ハードな練習をしたらアキレス腱を痛めてしまいました。そのため、一番合わせたかった日本選手権に出られなくて、歯車が狂ってしまい、学生個人もだめでした。関東インカレは何としてもチームに貢献しようと思った中で、1本いいレースができたので、これから上げていければと思います。

井上 自分としては想定していた通りに進んでいるので順調だと思っています。1年生から3年生までたくさん失敗をしてきて、その失敗を糧とした経験が生かされていると感じています。この後、日本インカレと日本選手権という大事な試合が2つありますが、そこに向けていいアプローチができています。

大川 大学2年生の時に出した自己ベストを更新して、57秒台が出たのは一つ評価できるポイントだと思います。ただ、自分の目標である勝ち切ることが達成できていないので、もどかしく悔しい気持ちの方が大きいです。だからこそ、日本インカレに向けて今できることを一つ一つ行っていきたいと思います。

ーー続いてチームとしての振り返りをお願いします

井上 4月の六大学(東京六大学対校)で、女子は優勝できたものの、男子はできなかったので、男子は悔しい気持ちで関東インカレに向かうというかたちでした。関東インカレでもチーム一丸となって総合優勝を目指した中で、トラック優勝を取れたことは評価しつつも、総合優勝を逃したのが課題です。また、優勝種目が短長通じて一つもなかったので、勝ちきることができなかった、優勝して早大の存在感を関東インカレで示すことができなかったのも課題です。ただ、個人個人としてはグランプリシリーズや記録会でタイムを上げている選手が多いので、すごく楽しみです。そのため総合優勝に向けて、いい準備ができていると感じます。

大川 女子に関しては競技力の高い選手がケガに苦しんでいて、想定外のことが多かったと感じています。その中で上級生が力を発揮し、それを見た下級生が負けじと頑張るというように、一体感を生み出すことができてるのは強みだと思っています。女子も総合優勝を掲げていますが、口だけではなくて、一人一人のパーソナルベストや昨シーズンの結果を踏まえた根拠に基づく目標設定を、4年生中心で行ってきました。ケガから復帰できる選手もいますし、(総合優勝に向けた)期待は大きいです。

山口智 長距離ブロックは4年生は故障者がほとんどで、4月全く走れない選手が多く、チームの足並みがそろわなかったです。下級生がしっかり結果を残してくれたことで、早大の存在感を放ってくれました。そこに対して情けないながらも、箱根の総合優勝を目指している中で、下級生が盛り上がっているのはチームとしていいことだなと感じています。ただ、ユニバ(ワールドユニバーシティゲームズ)の代表に選ばれた琉胤(鈴木琉胤、スポ1=千葉・八千代松陰)、哲(佐々木哲、スポ1=長野・佐久長聖)、工藤(工藤慎作、スポ3=千葉・八千代松陰)以外はなかなか納得がいかない結果なので、そこは反省していかないといけないかなと思います。

ーー『One早稲田』の達成度は今のところどの程度でしょうか井上 『One早稲田』というスローガンを掲げて、111代目としてスタートした中で、すごく一体感を持って進めていると思います。一体感を練習のグラウンドで持つのもそうですが、部員が様々な大会で結果を出して、それがチーム全体で相乗効果としていい影響を与えることができているので、『One早稲田』を体現できていると感じています。あとは日本インカレと箱根駅伝で総合優勝を取れれば、100パーセントになると思います。

ーー日本インカレに向けて意識していることや最近の調子を教えてください

山口智 日本選手権が7月にあるので、そこに1番のピークを合わせるために6月は取り組みたいと考えています。もちろん日本インカレも譲れない大会で、僕はチームに貢献したかったので2種目出たいと考えていました。花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)から5000メートルと1万メートルでいくかと言われましたが、5000メートル、1万メートル走ってまた日本選手権で5000メートルは難しいので、短い1500メートルと5000メートルからアプローチすることになりました。(長い距離を走る)箱根の動きの感覚が若干抜けていなかったので、スプリントの方からアプローチをすることで、だんだんと状態が上がっています。

井上 個人としては東京世界陸上を目指しているので、7月に行われる日本選手権で3番以内というところは絶対条件になります。4年間の全てを世界陸上に捧げてきたので、日本インカレでは今の課題をラウンドを通して改善していく機会にしたいです。また僕は対校戦で1回も勝てていないので、優勝したいという思い。それに加えて、日本インカレが行われる岡山は、中学校3年生の時に開催された全中(全日本中学校選手権)で優勝して、自分の人生を変えてくれた場所です。その場所で、主将としてエンジを背負って戦えることも何かの運命だと思っているので、そこで優勝して日本選手権に向けて弾みをつけたいです。

大川 私自身も勝ちきるということを第一に考えています。その他で、400メートルをトータルでまとめられる力というのを今準備しています。自分の強みである前半のアプローチはもう完成形に近いかなと思っていますので、最近の練習では後半最後まで落ちずに、ライバルの千葉(千葉史織、スポ2=宮城・仙台一)に勝ちきるようにしています。そういった細かいところに着目しながら日々課題を消化しています。そして、これだけきつい練習を乗り越えてだめなら仕方ないと思えるくらい、追い込んで追い込んで日本インカレを迎えようかなと思っています。

ーー日本インカレで注目してほしいポイントはありますか

大川 私の強みである前半からのしなやかな走りには注目していただきたいです。今までは後半埋もれてしまっていましたが、伸びやかな走りで400メートルを一瞬で駆け抜けることができると思いますので、やはり全てに注目してほしいです(笑)。

井上 走りのところで言ったら、自分の強みである後半の伸びと、今課題になっている前半を改善した姿を見ていただければと思います。あと、選手紹介は真顔な感じなのですが、勝ったら笑顔が出ると思うので、笑顔を皆さんに見ていただけるように頑張りたいです(笑)。

山口智 ラスト100メートルが勝負と言われますが、あれはただのタイミングなので、どこで自分が仕かけに行くかを見てほしいです。

ーー最後に、日本インカレへの意気込みをお願いします

山口智 関東インカレと違って、1部2部もないですし、全国からランナーが集まってきますが、駅伝の前哨戦として駅伝主将としての役割を果たしたいです。また、4年間でエンジの重みに、時間を重ねていくことでより一層気づくことができています。日本インカレでは、駅伝で勝つために、まずは1500メートル、5000メートルで勝てたらなと思います。

井上 日本インカレは4年生として戦う最後の試合になります。同期や後輩、先輩のおかげで充実した思い出がありますが、やはり日本インカレでは結果を残したいです。111代目が総合優勝した代として、語り継がれるような大会にしたいと思います。

大川 111代目として、『One早稲田』で戦ってきた中で、やはり数字の1はすごく重要視しています。私たちには1番しか似合わないと思いますし、総合優勝できるだけのメンバーが集まっていると自負しています。自分自身の勝ちきるところも含めて、強い早稲田を私たちの競技を通じて、皆さんにお届けできたらと思っています。

ーーありがとうございました!

(取材 佐藤結、編集 飯田諒)

◆井上直紀(いのうえ・なおき)(※写真中央)

2003(平15)年9月16日生まれ。群馬・高崎高出身。スポーツ科学部4年。

◆山口智規(やまぐち・とものり)(※写真左)

2003(平15)年4月13日生まれ。福島・学法石川高出身。スポーツ科学部4年。

◆大川寿美香(おおかわ・すみか)

2003(平15)年11月12日生まれ。東京・三田国際学園高出身。スポーツ科学部4年。