第6回には早大男子4×400メートルリレー(マイル)の要を担う、森田陽樹(創理3=埼玉・早大本庄)、渕上翔太(スポ2=東福岡)、権田浬(スポ2=千葉・佐倉)が登場。関東学生対校選手権(関東インカレ)では個人種目で入賞を果たした3人が描く日本学生対校選手権(日本インカレ)の展望とはーー。
※この取材は5月24日に行われたものです。
互いを尊敬し合う関係性

対談中の渕上
ーー右隣の方の他己紹介をお願いします
森田 渕上は真面目です。競技面に関してももちろんそうですが、人として真面目だと思います。尊敬できる部分も多くあります。
渕上 権田は400メートルと400メートル障害を両方していて、大学では本当に数少ない選手です。僕は1種目しかできないので、どちらもできることを尊敬しています。受験期のブランクがあったにも関わらず、昨年はU20世界選手権に出ていて、人一倍練習している印象が強いです。後輩の指導もしてくれていて、周りがよく見えてると思います。普段はおちゃらけも入ります(笑)。
権田 昨年僕が(大学に)入ってきた時には森田さんはケガをしていました。そこから一気に45秒台を出して、大学陸上で一気に頭角を表しています。単純に努力がすごいと思っています。スポーツ科学部ではなくて、所沢キャンパスにも通っていないので、練習に参加できない中でも、個人で練習をしています。所沢キャンパスでの練習も、一つ一つひたむきに取り組んでおり、ストイックですごい先輩です。
ーーオフはどのように過ごしていますか
森田 普段はオフがあまりないです。理工学部なので平日は西早稲田キャンパスで勉強をして、部活をしに所沢に行って、という感じです。部活がない月曜日と、集合がない金曜日も授業はあるので、学校が始まってからはオフを意識した生活は送っていないです。
渕上 僕は全休の日がないです。授業が月から金まであり、教職の授業では本キャンパスの方に行っています。 日曜の空いた日に、たまにみんなでご飯に行きます。1カ月に1回カラオケに行くかどうかという感じです。はっちゃける、みたいなことは冬季練習が明けてから今はなくなっていると実感しています。
権田 僕は2人と違って、金曜日が完全に授業もないし、練習の集合もないという状態になっています。ただ、外に遊びに行くことは本当にないです。基本的にずっと部屋で映画を見たり、YouTubeを見たり、本読んでたりしています。
ーー今まで言った遠征先で、最もお気に入りの場所を教えてください
森田 昨年のYogiboアスレチック(Yogibo Atheletics Challenge Cup)の際に、同期の関口裕太(スポ3=新潟・東京学館新潟)の実家に泊まったのですが、その時に行ったご飯屋さんがとても美味しくて、そこが今ぱっと思い浮かびました。見たことがないくらい大きいサイズのシュウマイと餃子があって、また行きたいと思う場所です。
渕上 思い出に残っているのは、昨年の関西実業団(関西実業団選手権)の時に行った大阪です。帰りに、551を方面が違ったのにわざわざ買いに行って、新幹線で食べながら帰りました。試合が終わってからはたこ焼きを食べに行きました。食べ物面で印象に残っているのは大阪です。
権田 昨年富士北麓(富士北麓ワールドトライアル)に行った時に、河口湖に行ったのが本当に楽しかったです。
収穫も課題も得たシーズン前半

対談中の森田
ーー今シーズンの振り返りに移ります。連戦が続いていますが、今年特有の日程の過密さに難しさなどは感じていますか
森田 感じています 。日本インカレやユニバーシアード(ワールドユニバーシティゲームズ)がかかった学生個人選手権(学生個人)など、例年と違って日程が前倒しになっており、早めに仕上げなければいけない部分があったと思います。そのような中でも、7月の日本選手権などのために、できるだけ長いスパンも見据えていく必要があるところは難しく思っています。
渕上 僕も同じように思っています。連戦の中で、試合が終わってから次の試合までに一段落する過程がなかったので、気持ち的な余裕が無かったです。次も頑張らなければ、となってしまって、良くも悪くも結果に一喜一憂できなかったと、試合ごとにすごく感じています。
権田 昨年の秋シーズンは試合続きで、自分は体力が足りず、かなり擦り切れてしまった印象があります。今シーズンが忙しいということは昨シーズンから分かっていたので、そこをしっかり乗り越えられるように、冬季練習を通して体力づくりを意識してきました。比較的走れているのですが、やはり大会を経るごとに少しずつキツさを感じています。もちろん休むことも大切なのですが、キツい練習を入れないとどうしても次の試合で走れなくなるので、どこに重い練習を入れていくか、という取捨選択がすごく難しいと思っています。
ーー多種目、多日程に出場することが多いと思います。モチベーションの維持など、意識していることを教えてください
森田 インカレは4日間開催で、僕は400メートルとマイルにエントリーしています。最初は400メートルから始まるのですが、決勝が早い種目というのもあり、そこでの勢いや流れもあるので、まずは1点でも多い得点を個人で持って帰るということがモチベーションになっています。3日目、4日目はリレーに集中できる状態です。優勝しか評価されないようなチームであるので、なんとしてでも優勝する、という意思がモチベーションとしてあります。
渕上 自分は3日目と4日目が主になっています。特に対校戦は、応援がありがたいと思っています。走る時は正直苦しい気持ちもありますが、大勢の応援があると、頑張ろうと思えます。同時に、各種目に3人、リレーに4人しか出られないという中で自分が走らせていただけているので、重みもありますが、その分頑張らないといけない、という気持ちの方が勝っています。それがモチベーションにつながっているというふうに自分の中では思います。
権田 400メートルとヨンパー、どちらも400メートルを走る種目で、それにマイルが加わってくると、4日間で6、7本と、非常に多い本数を走ることになります。もちろん気持ちの部分がすごく擦り切れてきて、最後の方は本当に泣きそうになります。関東インカレの400メートルでは、決勝に出たかったという思いがあったのに準決勝で負けてしまいました。「このままでいいのか、ここで負けた悔しさを次のヨンパーで取り返そう」と、悔しさを次の種目につなげていました。
ーーまず、学生個人選手権の振り返りをお願いします
森田 学生個人に照準を当てることを一つの目標に冬季練習に取り組んでいました。ユニバ(の出場権獲得)を狙っていたということもあり、その日に体の調子を合わせようと考えていました。結果としては4位でユニバの出場はかないませんでした。悔しい結果に終わってしまいましたが、調子を持っていくことはできたので、それまでの過程は評価できると思っています。予選、準決勝、決勝と、戦い方としても、想定していた通りの展開ができ、そういうところを遂行できたというのは一つ評価できるポイントだと思います。僕は1年生の時に出場したU20日本選手権でも400メートル4位で、昨年の日本インカレも400メートル4位でした。表彰台にも上がれないし、僕の中で4位という数字がまとわりついてくるな、また取ってしまったなという印象です。ユニバ出場を決められなかったのが本当に悔しいという感想です。
渕上 僕は2位でユニバの代表には選んでいただいたのですが、世界陸上を目指す中で、学生内では負けないというところを今年の目標の一つとして掲げていたので、その目標が学生個人で崩れたことがすごく悔しかったです。六大学陸上(東京六大学対校)や、トラックゲームズinTOKOROZAWAで49秒台が2回出ていたので、48秒に仕上げていけるという自信が自分の中でありました。そういった中で、競技場のコンディションなどいろいろ加味される部分はあったのですが、49秒50しか出なかったことが悔しく、もどかしさをかなり感じていました。ラウンドを踏んでいく中でうまくいかなかったと感じていた部分を決勝では修正できて、49秒台でまとめたところだけは唯一評価できると思います。それ以外の部分では、準決勝ではかなり冷静さを失った走りをしましたし、はまりきってないというのがずっと自分の中にありました。まとまりのない試合となってしまって、これまでの自分の課題を何一つとして改善できなかった試合だったと思っています。
権田 やはりもう悔しい、不甲斐ない、何してるんだ、という感想です。大学入学前から世界で戦うことを意識していたので、世界に立ち向かうための切符を1つ落としてしまったというところに関して、本当に不甲斐ない気持ちです。冬季練習を経て明らかに昨年より実力がついてきていて、間違いなく勝てる体にはなってきているのに、それを自分がコントロールし切れずにタイムもそのまま出せないという状況が、400メートルに関してはずっと続いています。そこを修正して、タイムや順位を見直していきたいと思います。
ーー次に、関東インカレの振り返りをお願いします
森田 僕は400メートルで5位という結果に終わりました。率直に悔しいですし、また表彰台に絡めなかった、というところもあります。いくらグランプリシリーズで走れたり記録の面で早かったりしても、勝つことが本質だと思います。記録はあくまで指標です。僕の先輩が、あくまで勝つことが本質だという話をよくされていたのですが、その通りだと僕も感じています。決勝に出るようになって、得点を持ってくるのは大前提として、そこでいい順位で帰れないという部分は弱さだと思います。そこを今後修正し、強さを求められるような選手になれるようにしていきたいと思っています。個人としては、入賞はしましたが、納得のいく結果ではなかったというのが正直な印象です。マイルに関しては、初めて早稲田のマイルを走ってくれる後輩たちがいてくれたので、過密スケジュールの中で新しい人を使うことができたことがチームとしても良かった点だと思っています。ただ、決勝では勝てなくて2位という結果に終わってしまい、悔しいという言葉で終わりにしていいのか分からないです。僕は1年の時にマイルメンバーの6人に入れてもらって、関東インカレ、日本インカレ、日本選手権リレーも走らせてもらいました。僕が大学に入ってからはまだ一度も早稲田がマイルで1位に輝いていなくて、東洋大や筑波大など、いつもどこかに負けて2位に終わってしまいます。関東インカレも2位だったので、そこについて考えなければいけないと思った大会でした。
渕上 個人に関しては、また2位か、と正直呆れた部分がありました。1位の法政大の高橋くんに、学生個人でも負けて、静岡国際でも負けて、手も足も出なかったです。 自分の感触としては、これまでよりいい状態で迎えることができて、正直48秒台は見えてくると思っていました。 準決勝の前にコーチとも話して、少し攻めていこうとしたのですが、レースで思い通りの展開ができず、そこから冷静さを失って、またガチャガチャしてしまいました。50秒10というタイムで、守りに入って何もできずに終わったなと思います。収穫が無かったとは言い切れないですが、収穫があまり無かったレースをしてしまったと感じています。 対校戦では1点でも多く持ち帰るというところで、そこで足りなかった部分もあります。優勝を取りたかったからこそ取れなくてすごく悔しかったと思っています。マイルに関しては、予選で少しアクシデントがありましたが、対応して予選を通過できたというところのみは、かなり評価できる点だと思っています。準備していたからこそいろいろな対処ができたと思います。決勝に関しては、森田さんに先頭でバトンを持って来ていただいたにも関わらず、自分のところで2位に落ちて、3走、4走に負担をかけてしまいました。昨年と同じような展開だったというところで、すごく悔しいです。何かを変えなければいけないという点がわかったのはいいのですが、それを実行していかないと日本インカレでも勝てないと思っています。
権田 まず400メートルは、昨年の日本インカレから出場してきて、やっとここまでつくり上げてきたので、絶対に勝つ、決勝に絶対に出るというつもりでした。学生個人でできなかったところを修正したいと思っていたのですが、修正し切れずに同じような崩れ方で準決勝で負けてしまいました。ここから後半シーズンに向けて絶対に課題を修正しないと、間違いなく400メートルを走る選手としては潰れてしまうと感じました 。ヨンパーに関しては、僕としては初戦ということもありましたし、とにかくリラックスして、今自分ができることをやり切ろうと考えていました。元々僕はハードルが苦手で、そこの部分を心配していたのですが、関東インカレが始まる2日前にアプローチをしてみて、間が空いていたからか飛べて、ベストを狙っていこうと臨みました。大学生の大会としては、初めて個人で決勝に立ったので、その部分に関してはすごくドキドキわくわくしていました。決勝が始まる前は落ち着いていて、何も考えていませんでした。緊張もせずに臨んだのですが、走り出してみると力んでいたのか、予選、準決勝でできていたハードルが一気に崩れていって、どんどん落ちていく感じがありました。結果は6位ではありましたが、今まではホームストレートに入った時に前の人たちを食えるか、となると少し厳しい部分があったのが、今回の決勝の場面ではいける、と感じました。なので、日本インカレなど今シーズンの残りの試合で、しっかりとヨンパーもタイムを出したいです。また、世界の決勝で走るという目標があるので、そこに向かって挑戦もしていきたいです。
「もう勝つしかない」

対談中の権田
ーー全日本インカレでの、自分のここを見てほしいというポイントを一つずつ挙げてください
森田 僕は今シーズンに入ってから、決勝で納得のいく走りができていないので、決勝での強さを見てほしいと思います。決勝での強さは自分に課している部分でもあります。自分が勝てる展開と負ける展開が自分の中でわかってきています。いつもラスト80メートルくらいのところで失速してしまい、そこに周りの選手との差を感じている部分があるので、そこに関する強さを求めて、勝ち切るというところを見てほしいと思います。
渕上 やはりレース展開として自分は後半型の部分があります。前半はこんな感じでいいのか、と思われるような走りをすると思うのですが、そこから先頭に駆け上がっていく部分をぜひ見ていただきたいと思います。早稲田のヨンパーは、ラストのところで出てくるという特徴があります。少し見ていてハラハラするとは思うのですが、絶対に先頭で帰ってくるので、そこを見ていただきたいです。
権田 今の自分の現状としては、準決勝で頑張って決勝に行くしかないという、決勝まであと少し、というレベルだと思っています。だからこそ、何かを起こせるなら僕だと想います。何かおもしろい展開が起きるなら、僕が何かをすることになると思うので、そこを見ていただきたいと思います。牙城を崩すような、「(決勝に)え、なんか権田きた」 みたいなところを見ていただきたいと思います。後半の走りに関しては、僕自身トップレベルのものを持ってると自負しているので、後半のガンダッシュも見ていただきたいです。
ーー最後に、日本インカレに向けて意気込みをお願いします
森田 個人目標は、400メートルに関しては、もちろん優勝を目標にしています。表彰台を逃しているのもあって、今度こそはという思いが強いです。1点でも多くチームに持って帰ってくることを目標にしています。マイルに関しても、もちろん目標は優勝です。ずっとタイトルを取れていないので、なんとしてでも取って、早稲田が強いという印象を崩さず、より圧倒できるような強さを求められるチームにしたいと思っています。まずは勝つ、ということを目標にしています。
渕上 目標は(400メートル障害とマイルリレーで)2冠することです。やはり2冠と2連覇です。ヨンパーは昨年優勝したというところもあるので、(結果を)考えすぎないようにもしています。マイルリレーは勝負どころにいつも自分が絡んでしまっているというのが事実なので、そこの部分を個人としては払拭したいです。また、チームとしては総合優勝を掲げているので、そこに貢献することも目標としています。 ヨンパーに関しては、やはり世界陸上の参加標準記録を切ることも狙い、かつ優勝を取っていきたいというふうに思います。
権田 400メートルに出るのかヨンパーに出るのか、それともどちらにも出るのかというのは、まだ完全には決め切れていないところです。どちらの種目に関しても、自分の実力的には、準決勝レベルだと思っています。ですが、そこからアグレッシブに決勝に進出し、決勝で「権田がきた」となるような走りをしたいと思っています。マイルに関しては、勝つしかないと思います。昨年の関東インカレでも勝てず、日本インカレでも勝てず、日本選手権リレーも勝てず、今年の関東インカレも勝てませんでした。もう次は勝つしかないです。僕のところで一つでも勝ちに近づけるようにします。森田さんが何走になるか分かりませんが、間違いなく日本トップの走りで帰ってきます。森田さんが優勝に王手をかけて、そこからは僕たち後輩の力で完全なるチェックメイトができればなと思います。
ーーありがとうございました!
(取材 石本遥希、佐藤結 編集 髙杉菜々子、佐藤結)

◆森田陽樹(もりた・はるき)(※写真右)
2004(平16)年10月15日生まれ。埼玉・早大本庄高出身。創造理工学部3年。
◆渕上翔太(ふちがみ・しょうた)(※写真中央)
2005(平17)年10月10日生まれ。東福岡高出身。スポーツ科学部2年。
◆権田浬(ごんだ・かいり)
2006(平18)年1月30日生まれ。千葉・佐倉高出身。スポーツ科学部2年。