【連載】競走部 日本学生対校選手権(日本インカレ)特別企画 特集『Alll ONE(オールワン)』 第5回 西徹朗×盛岡優喜

特集中面

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 第5回には110メートル障害(トッパー)の第一線で活躍し続ける西徹朗(スポ4=愛知・名古屋)と関東学生対校選手権(関東インカレ)では110メートル障害と400メートル障害(ヨンパー)どちらも入賞を果たした二刀流ハードラーの盛岡優喜(スポ4=千葉・八千代松陰)が登場。これまで障害ブロックを率いてきて、ついに最上級生となった2人が今考えていること、そして日本インカレへ向けた意気込みを伺った。

※この取材は5月23日に行われたものです。

ーー相手の他己紹介をお願いします

西 盛岡優喜くんは、110メートルハードルと400メートルハードルをどっちともできる二刀流ハードラーです。関東インカレも110メートルハードルと400メートルハードルの2種目で入賞しています。短長ブロックも障害ブロックもまとめあげて、マイルリレー(4×400メートルリレー)でもアンカーを務めたりしています。チームの中でも、特に長い距離においてリーダーシップを発揮している選手だと思います。

盛岡 いいこと言われると(笑)。西徹朗くんです。副寮長をやっていて、学生自主の寮をまとめあげている存在でもあります。同じブロックでハードルを一緒にやっています。自分は400メートルハードルに重きを置いていますが、(西は)110メートルハードルというハードルのことをより専門としている種目をやっているので、ハードルの知識は部の中で右に出るものはいないのではないかなというぐらい、自分の中でのハードルの言語化が進んでいて、本当にハードルの一選手として尊敬できる選手だなと思っています。

ーー1年生の時もお2人で対談をしていただきました。あの頃から3年以上経って、お互いの印象の変化などはありましたか

盛岡 (当時は)一緒に過ごしてからまだ日が浅かったので、徹朗はよく喋るやつだなと思っていました。実際もよく喋るやつでした(笑)。印象変わらずです(笑)。

西 最初の方は静かで寡黙な感じなのかなと思っていましたが、こっちもよく喋るやつでした(笑)。

盛岡 お互いよく喋るやつでした(笑)。

ーー競技の面でお互いから刺激を受ける部分はどのようなところですか

盛岡 僕は110メートルハードルの練習を比較的多くはしないのですが、その中でも(西を)ふと見た時にいい走りをしていたり、自分がやりたいなと思っている動きをやっていたりすると、やはりすごいなと感じます。同じハードルでもフィールドは違いますが、400メートルハードルという方では、自分が一目を引くような走りができたらなと思いながら、実は徹朗のハードルを見ています。

西 (笑)。(盛岡は)基本ヨンパーメインですが、ハードルの走りの部分がすごく特徴的で、そこが強みになっていると思います。それができるので、110メートルハードルの時も、普通のトッパー選手と変わらないぐらいの動きをしたり、タイムを出したりしています。もういつか抜かれるのではないかと戦々恐々としています(笑)。ヨンパーからトッパーへの落とし込み、トッパーからヨンパーへの落とし込みがうまいなと思います。ダブルハードラーの特徴や強みを最大限生かしていて、シンプルにすごく尊敬します。毎回怖いので(笑)、インカレでは負けないように頑張っているという感じです。

盛岡 負けたら引退だもんね(笑)。

ーー今までの遠征先や合宿先で一番印象に残っている場所を教えてください

盛岡 僕は鳥取です。(読んでいる人に)鳥取県民がいたら申し訳ないですが、いいイメージではないです。大阪での関西実業団(関西実業団選手権)から鳥取での布勢スプリントへと、試合をはしごしたことがありまして、関西実業団に出場してから高速バスに乗って鳥取に行きました。到着してご飯を食べなければいけないとなった時には夜遅くて。9時前に着いて、よしご飯食べようと思ったのですが、何もなかったです。牛丼すらない、マクドナルドもやっていないみたいな感じでした。何を食べよう、となって40分くらい外をさまよい歩いて、たどり着いたのが、居酒屋という(笑)。もう二度と行きたくないと思いました(笑)。

ーー1人で行かれたのですか

盛岡 みんながもう先に移動していて、僕は連戦なので1人で動いていました。1人で鳥取の真夜中に残されて、本当に何もなかったです。

西 ブチ切れてるLINEがきました。「鳥取なんもない」みたいな(笑)。

盛岡 「なんでこんなに鳥取は何もやってないんだ、おかしいだろ(笑)」というのをLINEした記憶があります。

ーー西選手はいかがですか

西 たくさん遠征はしていますが、一番印象が強いのは中国の南京です。今年3月に行われた世界室内陸上の開催地で、初めて自分が日本代表として日の丸を背負った大会でした。日本代表で戦いたいという思いがずっとあった中で、それが1つ叶ったかたちになり、嬉しさがありました。それでもやはり、僕は予選でホロウェー選手(アメリカ)という世界のトッパーのトップをずっと張っている選手の隣で走って、まだ全然差があるなと思いました。逆に、この人たちも人間で、同じフィールドで戦っているのだというのを実感できたというのは、今自分の競技を考えた上では、すごくプラスになったのかなと思います。また、いろいろな種目の日本のトップ選手とも一緒に話すことができて、すごく楽しかったなと思っています。

ーー中国料理は食べられましたか

西 はい、餃子みたいなのを(笑)。

盛岡 みたいなの(笑)?

西 ホテルのビュッフェでいろいろ料理があったのですが、中国っぽいので言うと、餃子や小籠包かと思って食べたら中身が何も入ってなくて(笑)。ただ肉まんの皮だけを食べてる料理や、骨付き肉を煮込んだもの、豚肉ときくらげを炒めたものなど、とても辛いのが多かったなという感じです。

盛岡 美味しいとまずいの2つで言ってと言われたら?

西 美味しい。

盛岡 よかった(笑)。

ーー競技の話に移ります。まず、4年生になって気持ちの変化などはありましたか

盛岡 僕は、気持ちの変化は明確にはあまりなかったです。最後のシーズンだとは思いますが、何か特別新しいことをやるというわけでもなく、自分ができることを最大限やりきるというのを今までもずっとやってきたので、それと同じスタンスと気持ちでいます。でも、やはり最後なので、目指すべきところはしっかり目指していきたいです。最初に目指していた学生個人選手権(学生個人)でのユニバ内定は逃して、そこは自分の負けだと思うので、次は負けないようにします。日本インカレも控えていますので、日本インカレに向けて、部内でも渕上(翔太、スポ2=東福岡)などいますので、負けないように走れたらと思っています。

西 今までは試合が終わっても次の試合がある、来年があるという状況がずっと続いていました。最後の年ということで、負けたらもうその後雪辱を果たす機会もないですし、負けたままで終わってしまうというのはすごく感じています。やはり最後の1年だというのをしっかり実感して、冬季から取り組んできたというのはメンタルの変化としてありました。また、自分たちが一番上の学年なので、対校戦も自分が出て、できるだけチームに少しでもプラスになるように、と思っています。走りもそうですし、それ以外の振る舞いの面や応援でも、主将ではなくても自分ができることは最大限やって、少しでもチームを引っ張って、チームのプラスになれるように、というのは常々思ってやっています。

ーー盛岡選手は副将に就かれました。経緯を教えていただけますか

盛岡 まず主将が決まって、副将を置くか置かないかという話になった時に、井上主将(直紀、スポ4=群馬・高崎)的には置いてもいいのではないかという感じでした。

西 盛岡を副将として推す最大の要因は、いろいろな選手と対話していることでした。井上がトップで全体を引っ張るかたちで、それ以外の周りのフォローや人を気にかけるということを、井上の次にしているのが盛岡だったというのはあるかもしれないです。副将を置くとしたら盛岡だなというのはみんなの中にあったかなと思います。

盛岡 そのような感じで、井上が主将で、盛岡が副将で、みたいな感じで決まりましたね。

ーー今年は前半シーズンに主要大会が集まっていると思いますが、実際ここまでやってきて、過密日程の難しさは感じていますか

盛岡 はい。やはり調子を合わせるのがとても難しかったです。学生個人にピークを持ってこようと調整していましたが、その後は連戦というところで、静岡国際は動きがアップから悪くて、全然進まないな、重いなという感想を持ちつつ走っていました。実際レースもそんなに良くなくて、記録が出るフィールドで記録が出せなかったというのは大きく、自分の中でもう走ることがない競技場だったので、だいぶ悔しいなというのはありました。関東インカレは周りの応援もあって、自分を奮い立させる感じになりました。自分の疲労を抜きつつ、ピークを合わせて保つというのは連戦だと難しいなというのは痛感しました。

西 僕は学生個人、織田記念(織田幹雄記念国際)、関東インカレ、ゴールデングランプリ(セイコーゴールデングランプリ)とほぼ4週連続で大会に出場していました。もう最後のゴールデングランプリは完全にガス欠で、ガス欠しただけではなくて、もう自分の動きが崩れたりしているのを立て直せないという状況にありました。試合が詰まってるということは、休む機会や練習を積む機会に加えて、自分の悪い点を修正する機会やその後プラスに変えていくという機会がなく、すごく難しいと思います。また、試合に向けてコンディションを合わせていく中で、さらに自分の強化をしたり、技術力の向上に取り組んだりするのを同時並行で行っていくのはすごく難しいと思います。それでも、そのような中でタイムを残している人はいますし、しっかり勝っていく選手もいるので、やはりそこを言い訳にしてはいけないのかなというのは胸に刻みながらやっています。

ーー今シーズンをシーズンインからここまで、全体的に振り返っていかがですか

盛岡 前半シーズンのここまでで、自分の中で一番大きなポイントとして置いていた大会が学生個人でした。ユニバを目指していた選手でしたが、負けて逃してしまった選手になってしまいました。渕上と髙橋遼将(法政大)選手に負けて、狙っていくべきところで勝てなかったのは、陸上選手としても弱い部分だったと思います。勝たなければいけないというのがあった中で勝てなかったというのは、自分自身最後なので、だいぶ心残りです。日本代表で何かやったことがないので、やりたかったなというのがあります。なので、個人としては良くないなと思っています。胸を張って言えるような記録を残したわけでもなかったので、少し悔しい部分が大きいです。ですが、関東インカレで2種目しっかり入賞して、ハードルブロック長としてどっちにも関わっている時に2つ入賞できたというのは、ブロックにも良い影響を与えられたのかなと少しだけ思います。

西 僕は2月の1週目からやっているので、今シーズンはだいぶ長くなります。関東インカレ周辺までを前半シーズンと置くと、ユニバ日本代表内定と関東インカレで優勝、それにチーム全体の総合優勝がついてきたら良いなと思ってやってきましたが、どれも達成できませんでした。関東インカレも2番でしたし、学生個人でも3番というかたちで、勝負に勝てなかった、最高の自分を持っていけなかったというのはすごく悔しいところではあります。でも、そのような中で自己ベストを更新することができたり、曲がりなりにも世界室内日本代表として走ることができたり、ゴールデングランプリにも出場させていただいたり、良い部分もあったし、悪い部分もあったなという感じです。しかし、やはり一番悔しいのは、関東インカレで勝てなかったことです。僕が(2日目に)2番になって、その後みんなが2番を取り続けてという感じだったので、そこで(僕が)勝っていたらチーム全体でもっといい流れをつくれたのかなって思っています。その責任を感じています。インカレに出ることも大事ですが、やはりインカレで勝つというところが一番大事だと思っているので、そこを果たせなかったのが前半シーズンの中では一番悔しいことだなと思っています。

ーー日本インカレについて伺います。まず、最近のご自身の調子はいかがですか

盛岡 悪くないのではないかなと思っています。大切な試合が終わって一段落して、2週間ほど経ちましたが、練習もしっかり参加してケガなく積めています。昨年はケガを連発してうまく走れなかったので、そういうところは今シーズン防げています。前回は渕上と対談した数日後にケガをしてしまったのですが(笑)。体としっかり向き合いつつ、今調子が悪くないという状態なので、しっかりいいと言えるような状態まで持っていって、日本インカレは絶対に優勝できるようにします。

西 ゴールデングランプリの時は結構ボロボロでしたが、回復して練習もしっかり参加できています。自分のやりたいこともある程度できているので、その点は評価できますが、関カレ以降自分のやりたい動きを出力できていない状態が練習でも試合でも続いています。そこを完璧にするだけでは日本インカレでは勝てないと思っています。それができた上で、さらに何を上積みしていくかだと思っています。体の状態としてはまだ日本インカレで勝てるという土俵には立ってないなと思っていて、まだまだここから状態を上げていって、さらに強くしていかないといけないと思っています。

ーー練習で意識されている部分はありますか

盛岡 動きとしては、末端ではなくて中心からというのは常々自分の中で意識しています。自分の体に近い大きい筋肉を始動させて、その大きい筋肉で走っていく方が効率も出力も段違いなので、そういったところは自分の細かな動きになってはきますが、意識しています。人との関わり方というところでは、いろいろな人と話したいなと思っています。連戦だったので新入生とまだあまり話せていなかったのですが、ここ数日、少しずつ話せるような1年生も増えてきて、徐々にコミュニケーションを取っています。やはり3つ上の学年と話すのは怖いじゃないですか。僕も怖かったです(笑)。やはり1年生が怖いと思っていては話せないので、こちらからアクションを起こすのは大切だと思っています。陸上の話でなくてもいいので、雑談をしつつ、陸上についても話して、そういうコミュニケーションを密にしていきたいと思いながら行動しています。

西 動作の面に関しては、110メートルハードルは特にリズムが速いので、後ろで(足が)回っていたりしていると追いつかなくなってスピードも上がらないし、ハードルにぶつけてしまうので、体の前で足をしっかり動かすというのは冬季からずっと継続してやっています。ほかに心がけていることとしては、練習の雰囲気をつくることです。4年生は周りから見られている立場ですので、少しでもプラスの雰囲気を出したり、僕は特に声が大きく通っているので、声出して鼓舞したりしています。周りに対して見てるよ、応援してるよという意味を込めて声出しして、少しでも練習でもう1本いくことだったり、その1本の中でどれだけ後半いけるかだったりなど、そのような部分でサポートになれればと思っています。

ーーハードルブロックの雰囲気はいかがですか

西 110メートルハードル、100メートルハードルはずっとみんなが試合に出続けていて、出場する日にちもバラバラです。同じ日に2個(試合が)あったらバラバラにみんなが試合に出ているという状況もありましたが、関東インカレも終わって、全体でメニューをこなしていも、ある程度みんなの中で何をするべきかの意思統一であったり、目標の共有だったりはできているのかなと思っています。

盛岡 400メートルハードルの方は、イメージとしてみんな貪欲だなというのはあります。自分ができないことはとことん突き詰めて、逆に分からなかったら人に聞いています。(自分も)その人の走りを見ていた時に声をかけることをしています。当たり前ではありますが、その当たり前ができないと、やはり選手として成熟していけません。プライドが邪魔していると、得られるものも得られなくなってしまいますが、陸上を学ぶという姿勢において邪魔するプライドというのは全員なく、みんなが貪欲に走りもハードルもどっちも牽引していくようなブロックになってきていると感じています。

ーー日本インカレで自分の注目して欲しいポイントを教えてください

盛岡 ヨンパーは、僕はやはり最後が強みになってくるので、みんなが少し前にいた状態でもラスト100メートルでまくってくるところ。短距離であまりないような、ラストデッドヒートして刺し切るというような、エンターテインメントを提供できたらなと思っています。

西 強いて言うなら3台目以降のスピードが上がる局面での抜け出しだと思っています。スタートが速い方ではないのですが、しっかり1台目、2台目、3台目とスピードに乗っていって、4台目、5台目でトップスピードに乗って、そこで周りを少しでも置いていく、前に出た先行の選手にも追いついていくというところを見てほしいなと思います。あと応援ですね(笑)。自分は3日目で競技が終わって、4日目はずっと応援に回るので、誰よりも声を出して応援すると思います。岡山開催で、全員が応援に行けるわけではないと思うので、少しでも放送などに声を乗せられるように頑張りたいなと思います。裏の目的として、そこも見てもらえればなと思います!

ーー最後に、日本インカレへの意気込みをお願いします

盛岡 今シーズンは今のところ全部負けていて、渕上にも同期の遼将にも負けています。ずっと3番なので、日本インカレぐらいは手始めに1位とってみようかなと!1位を目指したいなという気持ちがあります。僕は陸上人生の中で何もタイトルをとったことがないので、最後ぐらいは1位をとってみたいなというのがあります。もちろんタイムを目指さなければいけないですが、やはり1位という順位を絶対にとりたいなと考えています。

西 早稲田の代表としてずっと出ている以上、難しいことかもしれないですが、勝つのは当たり前。その上でどうやって勝つか、どういう勝ち方をするかというところを極めて、突き詰めていきたいなと思います。

ーーありがとうございました!

(取材 佐藤結、編集 會川実佑)

◆西徹朗(にし・てつろう)(※写真左)

2004(平16)年2月5日生まれ。愛知・名古屋高出身。スポーツ科学部4年。

◆盛岡優喜(もりおか・ゆうき)

2003(平15)年12月16日生まれ。千葉・八千代松陰高出身。スポーツ科学部4年。