【連載】関カレ特別企画 新体制対談『一新』 第7回 菖蒲敦司×佐藤航希

陸上競技

 長距離ブロックの仲良しコンビとして知られる菖蒲敦司(スポ4=山口・西京)と佐藤航希(スポ4=宮崎日大)の対談が今回3年ぶりに実現。出会って7年目になるお二人、その関係性に変化はあったのかーー。そして、今年度菖蒲は日本学生個人選手権でワールドユニバーシティゲームズ代表を決め、佐藤は西日本延岡マラソンで優勝を果たすなど互いに活躍を見せている。トラック、ロードでそれぞれ成長を遂げ、チームを引っ張る立場になったお二人にチームの現状と今後の展望についても語ってもらった。

※この取材は4月29日に行われたものです。

出会って7年ーー2人の関係性は「落ち着いてきたカップル」(佐藤)

質問に答える佐藤

――まずはお互いに他己紹介をお願いします

菖蒲 もう4年目にもなるので、別にいうことは特にないです(笑)。一周回って落ち着いてきたというか(笑)。相変わらず部屋に物が少ないですね。冬のシーズンだいぶ頑張ってくれたので今は結構休んでいます。明日久しぶりに早大競技会に出ると思いますが、冬の駅伝シーズンからかなりチームを引っ張ってくれていた存在です。

佐藤 入学時から特に印象は変わらず、4年目に突入しました。新体制になり、菖蒲は駅伝主将を務めますが、後輩とかに上から何か言うタイプではなくて、結果を出して背中で引っ張るタイプなので見ていて楽しいなと思います。

――お互いの好きなところはありますか

菖蒲 ラフな感じでいいんですよね? 

佐藤 難しいな(笑)。

菖蒲 えーなんかある?

佐藤 なんだろうな。まあ、気を遣わなくていいところですかね。

菖蒲 あー、確かに。

佐藤 気まずくならないのが一番いいのかな。落ち着いてきたカップルみたいな(笑)。

――お二人には『出会って6年、恋して3年』のキャッチコピーがありましたよね

菖蒲 あー(笑)。それは、いいね数とりたいなって言って(笑)。

佐藤 ウケを狙ってキャッチコピーを決めました(笑)。でも初めて会ったのが・・・いつだっけ?

菖蒲 高校1年生の秋、国体(国民体育大会)のときかな?

佐藤 その後もインターハイ(高校総体)とかちょくちょく同じ組で走っていました。国体で一緒に入賞してたまたま2人で7位、8位だった時、表彰式を待っている間となりだったので初めて会話をしました。次に会ったのが都道府県駅伝なのですが、終わってから一緒にダウンジョグをしていました。なんでその時に仲良くなったのかはあまり覚えてないですが、大学入ってからもコロナで解散時期が長い時、お互いにこまめに連絡を取っていました。そんな感じで付き合いも長いので、気を遣わなくていい関係ですね。

菖蒲 自分がご飯行きたいときとか、ジョグいきたいときとか、風呂いきたいときとか、一人で寂しいというときに一旦こいつに声をかけてみます。1番最初に声をかけるのが航希なのかな。それくらい気を遣わなくていい仲です。

――先ほど入学時からの印象について少しお話がありましたが、お互いに変化したと思うことはありますか

菖蒲 20歳過ぎた瞬間、彼はすごいお酒にはまって。

佐藤 (笑)。

菖蒲 それまでも確かに渋い系というか、男気あるというか、そういう雰囲気でしたが、20歳過ぎた瞬間にお酒が追加されてより男気が増したと思います(笑)。

佐藤 僕も最初は世間一般の方がイメージする菖蒲の印象で、ルックスがいい、かっこいいイメージでしたが、一緒に生活する中で内面とかいろいろ見て可愛いなと思う所もあります。ファンの方々が一緒に生活していたらこういう一面もあるんだとより好きになると思います。顔のわりに甘え上手というようなギャップを感じます。

――他の選手に比べて、やはりお二人はお互いに刺激をもらい合う存在、意識し合う存在なのでしょうか

菖蒲 2人でチームを引っ張っていかなければならないと思っているので、もちろん同学年として意識していますし、刺激はもらっています。

佐藤 他の学年の選手で自己ベストを更新したり
、優勝したりという結果よりも、やっぱり同期なので菖蒲が出した結果のほうが刺激を一番受けるのかな。

「あのレースを皮切りに」(菖蒲)

質問に答える菖蒲

――これまでの3年間を振り返って思い出に残っているレースやシーズンなどがあれば教えてください

菖蒲 共通してあげられるのは、2年春の早大競技会で走った5000メートルかな。あのレースを皮切りに2人が飛躍していったと思うので、2人で共通してあげられる印象深いレ―スになったと思います。

佐藤 僕も同じです。

――では3年間で辛かったことはありますか

菖蒲 僕はトラックを頑張りたいという思いで入部して、トラックは順調にこなせているという感覚がある中で、反対に箱根(東京箱根間往復大学駅伝)に2年間走れなかったので、そこは悔しいという思いがあります。トラックでいうなら去年の学生個人(日本学生個人選手権)でユニバ逃したのがだいぶ悔しかったので、そこでさらにトラック頑張らなきゃなという気持ちが強くなった感じがします。

佐藤 駅伝シーズンは2本とも外しているのでそこが悔しいというか、大学駅伝の難しさというか、洗礼を浴びたなという感じでした。

――花田監督とよくコミュニケーションを取られている印象がありますが、自分に合っていると思う指導があれば教えてください

佐藤 土日の朝練がないことです。強度の高い練習が土日にあるのですが、午前のポイント練習一回に集中できるという点と、午後の時間を見つけて自然にみんな走りに行ける余裕もでてくるので、すごくいい準備をして練習に挑めるきっかけになってるのではないかと思います。あと、今までは一日に何キロ走るという設定がありましたが、花田さんは1週間にこれくらい走るというように設定しているので、今日は多く走ろうとか、ポイント練習前だから少なくしようとか自分で工夫して習慣走行距離を走れるのはいいなと思います。

菖蒲 花田選手(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)自身が世界で活躍していましたし、実業団の監督もしていらっしゃったので、この選手はこういうことをしていたとか、経験談がかなり厚いです。そこを参考に指導していただけるのは、僕個人的にも世界を目指しているのですごくありがたいと思います。

――では次に新体制について伺っていきますが、今のチームの雰囲気は昨年と変わりましたか

菖蒲 僕自身、キャプテンとして昨年のチームの雰囲気を変えたいという気持ちで新年度を迎えたわけではありません。各選手それぞれ目標を持っている中で、上級生ができることは、やっぱり自然体に練習ができて過ごしやすい雰囲気を作ることだと思います。それが今いい感じにまわってるのかなという印象です。結構、下級生を中心にベストを出したり、優勝したりというのが増えて、良い流れがでているので、雰囲気を無理に変えるというよりは、むしろそのまま自然に雰囲気を変えずに練習に取り組めているのかなと思います。

佐藤 早稲田の選手自身が自主的に考えて動ける選手が多いというのがあって、上手くチームが回っている感じはします。もちろん、緩みがあれば(キャプテンが)チームを引き締めてくれますが、4年生から下級生に手を加えることもあまりないので、良いチームになっていると思います。

――長距離4年生はどういう学年ですか

佐藤 個じゃない?

菖蒲 確かに。去年に比べたら弱いですが、それぞれ個が強い学年なのかなと思います。

――では新しく入ってきた1年生について印象はいかがですか

菖蒲 僕はあんまり関わっていないので(笑)。航希とかはよくジョグを一緒にしててコミュニケーションをとっているのですごいと思っているのですが。どうなんですかね、正直よくわからないです(笑)。

佐藤 うーん。素直な子が多い気がします。推薦で入ってきた選手たちはもちろん力があって、早くからチームに馴染んできている感じはしますし、それ以外の選手も普段話していて頑張ろうという向上心を感じるのでフレッシュな気持ちがあってすごくいいなと思います。

――特に注目している選手はいますか

菖蒲 結果を見てもらうと分かるのですが、今年スポーツ推薦の子たちは結構強いですね。僕が期待しているのは、早実からあがってきた武田(知典、法1=東京・早実)ですかね。かなり良い練習ができていると思うので授業で忙しいと思いますが、どこかで良いタイムを出してくれないかなと思っています。

佐藤 俺も武田ですかね。一緒に練習する機会があった時にラストにくらいついてきたり、本数を増やした時も一緒にやったりすることがあるのでこれから急成長していく選手だと思います。

ラストイヤーにかける2人の思い

――取材時点で、佐藤選手はまだトラックレースに出場していないと思いますが、現在調子はいかがでしょうか

佐藤 正直、調子はなかなか上がっていません。昨年も6月くらいまで走らずに、夏合宿もあまり消化できず、という感じで駅伝シーズンが始まる前くらいからチームに合流して練習を消化できるようになっていたので。焦りとかはありませんが、まだ立ち上げきれてない感じですね。

――菖蒲選手はシーズンインからここまでのレースを振り返っていかがですか

菖蒲 学生個人までを第一クールというか、一周と捉えていました。ここまでは結構いい成績を残せたのではないかなと思います。やっぱり1番は学生個人(日本学生個人選手権)でユニバ(ワールドユニバーシティゲームズ)を決めるというのを目標にしていたので、それを達成できたのは一安心かなと思います。その反動で今は少し体調を崩してしまっていますが、これから関カレ(関東学生対校選手権)も控えていますし、それが終わったらセイコーゴールデングランプリや日本選手権などシニアの舞台が待っているので、そこに向けて練習を積んでいかなければいけないなと思います。

――佐藤選手は菖蒲選手のユニバ決定を受けていかがでしたか

佐藤 シーズンに入ってから練習であまり調子が上がらないというような話は聞いていましたが、しっかり試合をこなせていましたし、勝つんじゃないかなではなくて、勝つでしょと思っていましたね。もちろん嬉しかったですが、特に驚くこともなかったです。

――ユニバと時期が被ってしまうと思いますが、夏合宿はどのように過ごしたいですが

菖蒲 夏合宿に関してはちょっとまだ花田さんと話していないので分からないですが、少し出遅れるかたちになると思います。少し日数は減ってしまいますが、ユニバが終わってからは本当に泥臭くやっていかなければならないなと思っています。

――卒業後はどのような路線で活躍していきたいですか

菖蒲 僕は一貫して世界の舞台で戦いたいという思いです。入学時から箱根というよりはトラックで頑張りたいという思いが強かったのもあるので、卒業後さらに力をつけてシニアのレベルでしっかり勝ちきって世界の舞台に行けたらなと思います。

佐藤 マラソンが自分の能力を一番発揮できるので、卒業後実業団に進んでからもマラソンを主軸にしながら競技を続けていきたいと思っています。スピードとか自分に足りないところを補っていきたいです。

――最後に大学ラストイヤーの目標をお願いします

菖蒲 ユニバを決めるというのが、まず一つ僕の目標だったので達成できて良かったのですが、ここからさらにユニバでメダル争いができるように頑張っていきます。また、やっぱり駅伝で3番以内というのが今の結果から具体的に想像できるので、駅伝シーズンどこかで3番以内取れたらいいなと思っています。

佐藤 秋以降の駅伝シーズンが自分のメインになってくると思うので、そこでチームに貢献して昨年以上の結果を個人としても出したいなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 川上璃々)

◆佐藤航希(さとう・こうき)(※写真左)

2001(平13)年8月2日生まれ。168センチ。宮崎日大高出身。スポーツ科学部4年。前日に色紙に書く言葉を決めてきていたという佐藤選手。一発で書き上げ、「これまで書いてきた色紙の中で1番上手くかけた!」と満足したように色紙を持って帰っていました。後輩の面倒見もいいという佐藤選手、最上学年として結果でチームを引っ張ることができるか。得意とするロードシーズンに乞うご期待です

◆ 菖蒲敦司駅伝主将(しょうぶ・あつし)

2001(平13)年12月16日生まれ。168センチ。山口・西京高出身。スポーツ科学部4年。先日の学生個人でユニバを決めた菖蒲選手。かなり学生個人に集中していたということで終わったとたん体調を崩したそう。それくらいユニバに強い気持ちをかけていたことが伝わりました。果たして菖蒲選手は世界でメダル争いに絡むことができるのか、夏に行われるユニバにみなさん注目です!