津川、村上が800メートルで好記録をマーク! 東は競技生活最後のレースを終える

陸上競技

 「今年一年ずーっと我慢してきた大学生の今シーズンを締めくくり、今年で引退する4年生の4年間を締めくくるレースを開催します!」――日本学生対校選手権(全カレ)最中の9月初旬、横田真人氏が開催を告知したのは、東京陸協ミドルディスタンス・チャレンジ(別名『もうひとつのインカレ』)。以前特集した『VIRTUAL DISTANCE CHALLENGE(バーチャレ)』と同じく、横田氏が代表を務めるTWOLAPS TCが企画し、東京陸協主催で実現した中距離種目のみの公認記録会だ。早大からも6名の選手が800メートルに出場。400メートル障害を専門種目とする村上夏美(スポ3=千葉・成田)と津川瑠衣(スポ1=東京・八王子)が好記録をマークした。東陸央(社2=東京・早実)は、今大会を選手生活最後のレースに定め、慣れ親しんだ競技場を走り抜けた。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、今季学生アスリートの参加できる試合数は例年に比べ圧倒的に少なかった。日本学生対校選手権(全カレ)や、関東学生対校選手権(関カレ)は開催されたが、それらに出場できるのは一握りのトップ選手。そもそもこれらの大会の参加標準記録を突破する機会すら、ほとんど用意されなかった。男子800メートル1組に登場した島村英治(スポ3=宮城・仙台育英)は、故障の影響もあり今大会が今季最初で最後のレース。600メートル以降粘り切れなかったことを課題として挙げたが、2分切りの目標を達成し「来季に繋がる手応えをつかむことができた」と振り返った。

島村は故障から復帰し、今季初のレースを走り切った

 女子800メートル2組には藤崎紗羅(社3=東京・早実)と髙田真菜(商2=東京・早実)が登場。不調に苦しむ藤崎は、前半は設定通りのペースで刻んだものの、2周目に大きく減速してしまいベストから10秒以上遅いタイムでフィニッシュ。最終学年を迎える来季、復活が待たれる。髙田は先頭集団後方に付けたが、600メートル付近で遅れ、スパート合戦に加わることができなかった。続く3組には、400メートル障害を主戦場とする村上と津川が出走。ペースメーカーのすぐ後方につけた村上が60秒、津川が62秒あたりで400メートルを通過した。共に「最後は足が動かなくなった」と苦笑いで振り返ったが、津川が2分10秒06、村上は2分11秒96の好タイムを記録。「400メートルにも繋がるいい刺激になった」(村上)、「今季締めくくりのレースとして良かった」(津川)と、好感触を得て、シーズンを締めくくった。

専門外の種目で好記録をマークした津川

 男子800メートル3組に登場した東は、この大会を最後に選手生活を終えると決めていた。500メートル付近で前との距離が空いたが、「きつくなってから最低限粘ることはできた」といい、高校時代からなじみ深い競技場で最後まで走り抜いた。ゴール後は運営側から労いの言葉と共に花を受け取り、マイクを向けられると「楽しんだので、今度はマネジャーとして選手を支えられたら」と力強い口調で答えた。大学入学以降大きな舞台で活躍することはできなかったが、その瞬間会場の主役は間違いなく東だった。

レース後、晴れやかな表情を見せた東

 「選手ファーストで行われた素晴らしい大会」と藤崎が振り返ったように、この大会ではペースメーカーが各選手に希望のペースを確認するほど徹底したサポートを見せた。それに加え、選手と運営側の距離が近く、引退する選手一人一人を直接労うアットホームさ。TWOLAPS TCに所属するトップ選手がペースメーカーとして登場するエンターテインメント性。注目される機会が少ない中距離種目に特化した競技会が、他の種目の選手までも引き付け、これほどの盛り上がりを見せたことは、コロナ禍において怪我の功名というべきか。大きな可能性を感じさせる大会だった。これから冬季練習に入る5人も、「マネージャーブロックに転向して良かったと、自分自身が胸を張って言えるよう取り組んでいきたい」と口にした東も、この大会での経験を来季以降に繋げてほしい。

東と川島滉平(スポ4=茨城)を囲んで記念撮影

(記事 町田華子、写真 布村果暖、横澤輝)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

▼男子

▽800メートル

島村英治(スポ3=宮城・仙台育英)1分59秒88(1組3着)

東陸央(社2=東京・早実)2分03秒26(3組6着)

▼女子

▽800メートル

髙田真菜(商2=東京・早実)2分17秒06(2組5着)

藤崎紗羅(社3=東京・早実)2分24秒03(2組9着)

津川瑠衣(スポ1=東京・八王子)2分10秒06(3組4着)

村上夏美(スポ3=千葉・成田)2分11秒96(3組6着)

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コメント

島村英治(スポ3=宮城・仙台育英)

――今大会の目標は

2分を切ることでした。

――タイムについてどう評価しますか

関カレの参加標準記録からは4秒くらい遅くなってしまったのですが、5月半ばから8月終わりまでの3ヶ月間くらい怪我で走れなくて、2ヶ月弱練習してからのレースだったので、自分としてはなんとか目標を達成できて良かったですし、次に繋がる手応えもつかむことができました。冬季練習を乗り越えて、来シーズンは関カレ標準を切って臙脂を着て試合に出たいと思います。

――レースプランは

ペースメーカーについていって、最後絞り出せたらと思っていました。

――ご自身の走りを振り返って

400メートルの通過は意外と余裕を持って走れたのですが、600メートル以降いきなり辛さが来てしまって、最後足が動かなくてタイムが落ちてしまったので、そこで上げられればなと思いました。

――今季は試合数が限られていましたが

怪我で走れなくて、この大会が今季最初で最後だったので、こういう大会を作っていただいた分、記録を残して来シーズンに繋がる走りをしたいと思ってレースに臨みました。

――来季に向けて意気込みをお願いします

僕は二浪して早大に入ったのでそのブランクもあるのですが、そういうものもすべてはねのけて、4年生としておととし強い選手が抜けてから中距離が弱くなったというイメージを払拭していきたいと思います。

藤崎紗羅(社3=東京・早実)

――きょうの目標を教えてください

2分16から17秒をターゲットにして走りました。

――レースプランはありましたか

今シーズンは怪我もなく、継続して練習が出来ていたのですが、思うような走りが出来ていなかったので、1周目(の400メートル)を66秒くらいで抑えて、2周目をイーブンペースで走りたいと考えていました。

――レースプランは実行できましたか

1周目のペースは目標通りだったのですが、2周目のスピード維持が出来なかったので、その部分を磨き直したいと感じました。

――ご自身の走りを振り返っていかがですか

今シーズン全てのレースにおいて、このままの状態で陸上競技を終えたくないという気持ちが残っているので、最後後悔なく競技を終えられるようにまた頑張っていきたいです。

――今シーズンはレースが少なかったと思います。やはり難しいシーズンでしたか

試合数の少なさや練習環境が限られるなかでしたが、そのことをプラスに捉えることで課題点を見つけたことや、陸上以外の部分でもチャレンジをして、そのことが上手く陸上に繋がったこともありました。なので、大変ではありましたがいい機会だったと感じています。

――今大会はいつもと違うアットホームな雰囲気の中で行われました。どのように感じましたか

スタッフやペースメーカーのサポートを含め、選手ファーストで行われた素晴らしい大会だと感じました。私自身ろうの友人がいるのですが、その友人もスタッフ全員からとても親切なサポートを受けていたので、このような大会がもっと増えればいいなと感じました。

――今後の目標を教えてください

来シーズンは大学最後の年であり、そこで陸上競技を終えることも決まっているので、最後まで悔いなく走れるように頑張りたいと思います。具体的な目標は、髙田と一緒に関東学生対校選手権(関カレ)の決勝に残ることです。

村上夏美(スポ3=千葉・成田)

――専門外の種目でしたが出場した目的は

昨年800メートルに出場して2分10秒の記録を持っていたので、それを更新したくて出場しました。

――目標には少し届きませんでしたが、要因は

昨年は一人で走ったレースだったので、前について走るというレースがしてみたくて今回参加してみたのですが、連戦やレース展開があまりわかっていなかったことが影響して、前半でちょっと速いなと思って、ラスト100メートルは結構きつかったです。

――レースプランは

400メートルは62秒で入って、ついていってラスト100メートルで切り替えようと思っていたのですが、結構足が動かなくなってしまったのでそこは課題だなと思いました。400メートルにも繋がる冬季練習みたいな感じで、いい刺激になりました。

東陸央(社2=東京・早実)

――きょうの目標を教えてください

ペースメーカーがつく貴重な大会だったので、設定されたペースにしっかりついていくことを目標にしていました。ですが個人的には記録というより、楽しんで走ることの方が大きな目標でした。

――ご自身の走りを振り返っていかがですか

タイムで見ると記録はあまりいいものではなかったですが、600メートル付近できつくなってから最低限粘ることは出来たと思います。

――今シーズンはレースが少なかったと思います。やはり難しいシーズンでしたか

試合がないという状況でしたが、練習はどのような状況下でも出来ることだと思うので、淡々と自分のやるべき練習は積めたと感じています。

――きょうのレースを最後にマネージャーに転向されると伺いました。レースを終えて今の気持ちはいかがですか

とてもきついレースだったのですが、応援に来てくれた同期や声をかけて下さった先輩方など、競技を終えてみて色々な人に支えられているということを改めて強く感じられました。なので、きつかったですがとても楽しかったです。

――この大会を引退レースに決めた理由などはありましたか

今年度最後の記録会ということや、中距離ブロックから多くの選手が出場するということが理由になりました。先輩である飯島さん(陸斗、令2スポ卒)が主催に携わっているということもあり様々な縁を感じて、この記録会を最後のレースにしようと決めました。

――今後はどのような形でチームを支えていきたいですか

選手として大学で活躍することは出来なかったのですが、今後はスタッフとして学生陸上界を引っ張っていく早稲田大学競走部というチームを支えられるよう、より一層頑張りたいと思います。

――今後の目標はありますか

マネージャーブロックに転向して良かったと、自分自身が胸を張って言えるよう取り組んでいきたいです。そして、選手の皆さんをしっかり支えられるような存在になりたいです。

髙田真菜(商2=東京・早実)

――きょうの目標を教えてください

今シーズンのベストが2分12秒だったので、それに近いタイムを出したいと考えていました。

――レースプランはありましたか

ペースメーカーの設定タイムが、1周目(の400メートル)64秒だったので、1周目64秒、2周目68秒で走りたいと考えていました。

――レースプランは実行できましたか

同じ組に1周目63秒希望の選手がいたので、入りは63秒になったのですがそのままついていきました。600メートルまでは設定タイム通りだったのですがそこから落ちてしまったので、その部分が課題だと感じました。

――課題は後半の走りということですか

そうですね。コロナの情勢もあり、豪華なペースメーカーがつくレースはあまりないですし、きょうは天候も良かったのでタイムを狙いたいと思っていました。後半のバックストレートの部分から、自分の弱さが出たと感じています。

――今シーズンはレースが少なかったと思います。やはり難しいシーズンでしたか

シーズン自体が始まるのも遅くて、一旦自分の中で冬季練習として練習を積みました。その影響かシーズンが始まった当初は自分の中でも調子が良く、2分12や13秒も出せていて、去年のシーズンベストも更新することが出来たのですが、徐々に練習の貯金がなくなって、貯金がないままの状態で全カレや関カレなどの大会に出場することになってしまいました。今回のレースもそのような状態で終わってしまったので、あまり上手くいっていなかったと感じています。

――今大会はいつもと違うアットホームな雰囲気の中で行われました。どのように感じましたか

音楽などもかかっていて、自分はあまり緊張せずに臨めたので良かったと感じています。開催していただけてありがたかったです。

――今後の目標を教えてください

全カレのA標準が2分11秒なので、そのタイムを突破してA(標準)で出場することです。そして、その先の入賞も狙っていきたいと考えています。

津川瑠衣(スポ1=東京・八王子)

――専門外の種目でしたが出場の目的は

練習でテンポ走を行っていた時に、あまりにもテンポの作り方が800メートル向きだったということで、先生から出るように言われました。

――具体的な目標はありましたか

全カレの参加標準記録を突破することを目標にしていました。監督からは2分8秒くらいで走ってこいと言われていたのですが、400メートルや400メートル障害とは違う疲労の感じ方で、最後足が動かなくなってしまいました。

――レースプランは

1周目をペースメーカーの卜部さん(蘭・積水化学)について62秒くらいで入ることを想定していて、それくらいだったので良いペースで入れたのではないかと思います。

――後半の走りについては振り返っていかがですか

少しブロックされて前に出るのに時間がかかってしまったので、そこが800メートルの難しさだなと感じました。

――きょうの調子は

木南道孝記念で不甲斐ない走りをして、今回がシーズン最後の試合だったので、最後はいいレースだったなと思えるような走りで終わりたいなと思っていました。欲を言えば2分10秒を切れたら良かったなと思うのですが、今季締めくくりのレースとしては良かったのではないかと思います。