収穫得るも、課題浮き彫りに

陸上競技

 関東学生対校選手権(関カレ)の選考を兼ねて、28日、第1回早大長距離競技会が行われた。男子5000メートルでは武田凜太郎(スポ1=東京・早実)を始めとしたルーキー三人が1位から3位を独占し、1万メートルでは田中鴻佑(法4=京都・洛南)ら3人が自己新記録を更新。また、3000メートル障害では鈴木洋平(スポ1=愛媛・新居浜西)が9分26秒1を、女子5000メートルでは納谷恵(文3=青森東)が18分45秒3を記録した。

 男子5000メートルの主役に躍り出たのは、ルーキーたちだった。ペースメーカーである竹澤健介(平21スポ卒=兵庫陸協)のペースについていくことができていたのは平和真(スポ1=愛知・豊川工)、武田、浅川倖生(スポ1=兵庫・西脇工)の三人のみ。細かい順位変動はあるものの、スタートから三人で固まっている状態はなかなか変わらなかった。しかし、2400メートルで竹澤が抜けるとそこからレースは動く。「(ペースメーカーが抜けた後、)どういった走りをできるかというレースだった」と選手たちが語るように、本当の勝負はここからだったのだ。すでに先頭に立っていた武田はペースをやや落としながらも、独走態勢を築き始める。一方の平と浅川はそろって失速。後続とは距離を保ちながらも、3600メートル過ぎには武田に10秒差をつけられていた。4000メートルからもう一段階ギアを上げた武田が、自己新記録にあと3秒というタイムで最初にゴールラインを越える。浅川はタイムを上げるべくスパートをかけ、前を走る平を猛追。二人は同着でレースを終えた。

大先輩である竹澤(右端)についてレースを進めるルーキー3人(右から平、武田、浅川)

 1万メートルの序盤は、一人目のペースメーカーである田口大貴(スポ3=秋田)が集団をやや遅めのペースで引っ張っていく。臼田稔宏(基理3=長野・佐久長聖)ら6人が等間隔で田口に続き、そのまま3200メートルまで進んでいった。6000メートルを過ぎると、チームメートを声で鼓舞して田口が離脱。以降、二人目のペースメーカーである志方がペースアップを図った。すると、集団の後方で様子をうかがっていた高田もペースを上げ、志方の後ろにつく。一方で序盤から先頭に立っていた臼田稔は、じりじりと後退してしまう。志方が8000メートルでペースメークを終えた後も高田は先頭を走っており、そのまま変動無くレースは終わりを迎えるかと思われた。しかし、そのままでは終わらなかった。田中鴻がラスト1周で、他大の選手とスパート合戦を繰り広げたのだ。激しいつばぜり合いを演じる二人。ラスト400メートルの勝負の末、軍配は田中鴻に上がった。先々週の日本体育大学長距離競技会に引き続いての自己新記録更新に、田中鴻はガッツポーズをし、喜びを爆発させた。

ラスト400メートルで動きを切り替え後続を突き放した田中鴻

 5人の選手が自己新記録を更新した今回の競技会。収穫もあったが、課題も浮き彫りになった。多くの選手が口にした「スタミナ不足」という課題。これは、関カレで勝利を収めるため、またこれから記録を更新していくためにも克服しなければならないものだ。関カレまでに残された時間はあと2週間。この期間でいかに課題を克服できるかが、関カレにおいて勝負のカギとなることは間違いない。

(記事 目黒広菜、写真 加藤万理子)

◆結果

▽女子5000メートル

納谷恵(文3=青森東) 18分45秒3

▽男子3000メートル障害

鈴木洋平(スポ1=愛媛・新居浜西) 9分26秒1

▽男子5000メートル

武田凛太郎(スポ1=東京・早実) 14分14秒3

浅川倖生(スポ1=兵庫・西脇工業) 14分31秒0

平和真(スポ1=愛知・豊川工) 14分31秒0

中村駿介(社2=愛知・岡崎城西) 14分35秒0 自己新記録

藤沢怜欧(スポ2=神奈川・多摩) 14分44秒9

臼田康一郎(商1=長野・佐久長聖) 14分46秒0

山田侑矢(スポ3=三重・伊勢) 14分55秒7

徳留駿(法3=埼玉・早大本庄) 14分56秒9

藤岡孝彰(商2=東京・早実) 15分00秒2

関口直人(商4=埼玉・浦和) 15分14秒8

安田匡(商2=福島・安積) 15分23秒6

小林快(社3=秋田工) 15分25秒1

箱田幸寛(スポ1=広島・世羅) 15分30秒5

▽男子1万メートル

田中鴻佑(法4=東京・早実) 29分28秒2 自己新記録

高田康暉(スポ2=鹿児島実) 29分35秒6

臼田稔宏(基理3=長野・佐久長聖) 29分42秒0 自己新記録

中村信一郎(スポ2=香川・高松工芸) 29分56秒1 自己新記録

三浦雅裕(スポ2=兵庫・西脇工) 31分35秒8

◆コメント

田中鴻佑(法4=京都・洛南)

――きょうはどのような気持ちでレースに挑みましたか

レース自体が記録会だったのでそれほど練習メニューとして合わせていた訳ではないのですが、関カレの選考も兼ねていることは自覚していたので、気持ち的にはきっちり結果を出さないといけないと思って挑みました。

――日体大記録会に続いてベストを更新しました

目安にしていた29分30秒を切って、しっかりラスト(ペースを)上げることができた点に関しては、今までなかなかそのようなレースができなかったのでよかったです。ただ8000メートルをすぎて一回落ちてしまったので、まだ課題はたくさんあると思います。

――その課題に対して、どのように修正していくつもりですか

関カレなど他大学の強い選手と戦う場面になると、後半で上がるようなレースになると思うので、今回みたいに後半でペースが落ち着いてしまうような展開をしていると勝負できません。そこは練習でカバーしていくしかないと思います。

――きょう最後にペースを上げられた要因は

今回のレースにしてもとにかくついて行って、ラストどこまで勝負できるかというのを考えていました。途中ペースが落ちたのは、ただ単純に力がなかったから落ちたと思っています。最後400メートルで、そこで一回気持ちを切り替えて思い切っていけたことがよかったのかなと思います。

――ペースメーカーとして田口選手と志方選手の調子は

田口に関していうと、最近安定感がありますし十分チームトップの実力があるなと感じています。志方は箱根が終わってからなかなか彼自身うまくいってない部分があったと思いますが、きょうのレースできっちりペースメークできたっていうことに関しては、僕らから見てもすこし調子が戻ってきたのかなと思いますし、彼も自信になったと思います。

――トラックで好調を維持する秘訣は

昨シーズンから故障せず練習が積めていたのですが、その分オーバーワーク気味になって一回走れなくなったりと調子の波が2、3月ありました。でもそこでも休まず練習ができたことがいま形となって結果となっているのかなと感じています。まだ少しずつですが、安定して結果につながってきているのかなと思います。

――最後に、関カレに向けて意気込みをお願いします

まだメンバーに入れるかわかりませんが、入るのが目標ではなく、ワセダとして代表として最終学年として、点数をとるためにできることをきっちりやっていきたいなと思います。

高田康暉(スポ2=鹿児島実)

――きょうのレースを振り返って

きょうのレースの位置付けとしては、毎年関カレの選考になってはいるのですが、ペースメーカーが抜けてからしっかり走るようにということを考えていました。この間の日体大でも前で走って、前で走る感覚というのはいい感じについています。ただ切り替えがやはり最近うまくいかないなというのは感じています。でも、それなりにいい感じはあって、ついていければどこまでもいけるという感じです。関カレへはハーフを練習していくことになると思いますが、最後までしっかりついて、もっと泥臭いというか高校生の頃のように粘り強さをしっかり身につけられるように、これからの練習や気持ち作りをやっていきたいと思います。

――最初は後ろの方で走っていましたね

そうですね。やはり力んでしまいます。今回はペースメーカーもしっかりつくので、レース感というよりはペースメーカーが抜けるまで余裕を持って、そこからレースを、という感じで走りました。5000メートル以降しっかりレースをしようと思っていたので、最初はアップというわけではありませんが、力むと走れないし、ペースも遅かったので、しっかり楽に後ろでうかがいながらという感じで走りました。

――ペースメーカーがついてのペースというのはいかがでしたか

ペースは45秒前後で、田口さんがいい感じで引っ張ってくださりました。そのあとは8000メートルまで志方さんがペースアップしていたのですが、(ペースが上がったことを)全然感じないくらいに良い感じで走ってくださって感謝しています。本当にそのままペースメーカーがいればどこでもいける感覚なのですが、強さというのは自分で行けないとダメなので、そこがやはり課題でした。

――田口選手が抜けたあたりから前に出ていました

そうですね。志方さんが前に行くところで、いまのうちに(志方選手の)後ろにいようと思って行ったのですが、そしうたらすぐにもう残り2000メートルあたりになってしまいました。それ以降ペースは落とさずに行けたのですが、一番先頭が上げるとなったときに上げられませんでした。そこをしっかり、そういう練習というか勝負に対してもっと気持ちを持っていかないといけないなと思いました。

――それでは、今回のようにワセダの選手ばかりが走るというレースはどういう感覚なのですか

きょうは練習の一環というわけではありませんが、気持ちでは試合のひとつということで持っていったので、そんなに意識はしていませんでした(笑)。他のレースとあまり変わりはありませんね。

――では、次のレースとなる関カレに向けて一言お願いします

やはり1年から練習ができていて試合に繋がらないというのはいけないと思っています。1年目はまだ5割くらいしか出せていなかったのが、いまは6割7割と少しずつ力を出していけるようになってきています。さきほど相楽コーチとも話していたのですが、もう一皮剥けられるような場として関カレでしっかり入賞、上位を目指して、本当の目指す姿という自分を作るきっかけにしたいです。

武田凜太郎(スポ1=東京・早実)

──きょうのレースを振り返って

3000メートルまではOBの竹澤さん(健介、平21スポ卒=兵庫陸協)に引っ張ってもらって、その後どういった走りができるかというレースだったのですが、3000メートルでペースメーカーが抜けたときに少しきつくなってペースが落ちてしまったのが反省点かなと思います。

──どのようなレースプランを立てていましたか

3000メートルまでは余裕を持って走って、そこからペースを上げていければいいなと思っていました。

──プラン通りのレース運びはできましたか

3000メートルから4000メートルで少しペースが落ちてしまったので、プラン通りの走りはできませんでした。

──ペースが落ちた原因はどのようなところにありますか

単に実力不足やスタミナ不足ということがあると思いますし、一人になったときに自分で押していける自信もまだ身についていないというのもあると思います。

──ペースメーカーが抜けてからは独走でしたが、良かった点などがあれば教えてください

3000メートルまでは自分が思っていたよりも余裕を持っていけましたし、ラスト1000メートルも(ペースが)上がって終わっているので、良くできたかなと思っています。

──最近の調子はいかがですか

悪くないと思いますし、練習もちゃんと積めているので良いと思います。

──これからのレースに向けて目標などがあれば教えてください

関カレは1メートルに出場すると思うので、この前29分1ケタだったので、28分台を最低でも出したいと思いますし、その先に日本学生対校選手権のA標準が待っているのでそこをしっかりと切れるように頑張っていきたいと思います。

浅川倖生(スポ1=兵庫・西脇工)

――今日のレースを振り返って

3000メートルまで竹澤さん(健介、平21スポ卒=兵庫陸協)に引っ張っていただけるということで、そこまでついていって、そこからの2000メートルが勝負だと思っていました。前の2つのレースではそこから大きくペースを落としてしまったので、そこからの2000メートルをどれだけ粘れるかということを意識してレースに臨みました。

――今日のレースプラン、目標タイムがあれば教えてください

3000メートルを8分30秒で通過するということだったので、ゴールタイムを14分10秒から20秒で、ラスト2000メートルを5分40秒から5分50秒の間で行こうというふうに思っていました。ただやはり練習で走り込めていなかったということもあって、ラスト2000メートルで大きく失速して、14分30秒ほどでゴールになってしまいました。

――次の試合に向けての意気込みをお願いします

これからインカレのシーズンで短い距離でのレースが多くなると思うので、きょうは5000メートルでしたが、1500メートルなどにもしっかり合わせていって、別の競技でも勝負できるようにしたいです。

平和真(スポ1=愛知・豊川工)

――今日のレースを振り返って

関東インカレに向けた最後のレースだったので、手応えを掴んで、関東インカレにつなぎたかったのですが、残りの2000メートルで失速してしまいました。

――原因はなにか感じていますか

練習不足だと感じているので、しっかり練習しなければと思いました。

――今後の抱負を聞かせてください

関東インカレのメンバーになったからには、チームに貢献していかなければならないと思うので、頑張っていきたいです。