【連載】『~挑戦~ 逆襲への第一歩』 第5回 中澤彰太

野球

 昨季、初本塁打を放つなどの活躍でブレイクし、一気にスタメンの座を射止めた中澤彰太(スポ2=静岡)。しかしまだ成長段階。持ち前のシュアな打撃だけでなく、走攻守においてさらに磨きをかけている。ルーキーイヤーを振り返るとともに、さらなる飛躍に期待が懸かる2年目への意気込みを聞いた。

精神的変化が生んだ成長

――長期休暇に入り、最近はどんな練習をされていますか

最近は走ってばかりですが、個人的にはバッティングを重視して練習しています。

――調子はいかがですか

調子はいいです。

――それではまず昨年についてお聞きします。入学前の春季オープン戦から多くの試合に出場されてきましたが、振り返っていかがですか

チームに入って、周りからは「打ってるね」とか「うまいね」と言ってもらうことも多かったのですが、自分としてはそんなに調子も良くないですし、納得のいかない一年でした。

――春季リーグ戦で大学野球の雰囲気を味わって感じたことは

高校から出たての自分にとって高校野球の雰囲気とはまた違う雰囲気だと感じました。

――高校と大学ではどんなところが違いましたか

神宮(球場)って外野の後ろまで観客がいますよね。包み込まれているような感じがしました。

――代打や途中出場が多かったですが、そういった中で結果を残す難しさも感じましたか

あまり結果は気にせずに自分のプレーをしようと思っていたので、そういったことは感じませんでした。

――同じ野手では石井一成選手(スポ2=栃木・作新学院)も共に1年生ながらリーグ戦に出場されていましたが、石井選手の存在とは

いま練習でも石井と競ってやっているので、あいつには負けないようにと思ってやっています。他校の1年生にも負けないようにやっていきたいです。

――バットなど高校から大きく変わった部分への対応で気をつけたことは

守備面では特に変えているところはないですし、バッティング面では木のしなりを使って打とうということは心がけています。

――春は新人戦で苦い思いも経験されたと思いますが

リーグ戦にしても新人戦にしても、個人的にもチーム的にも悔しかったのが春でした。

――一悔しさが残る春を経て、夏場はどのような練習をされましたか

やっぱり春は1年生ということもあって先輩に頼っている部分があったのですが、秋のリーグ戦に向けて夏は自分自身が変わらなければならないと思ったので、バッティングのこともそうですが、考え方自体を変えていきました。

――そういった取り組みの中で夏季オープン戦など実戦の中で手応えは感じていましたか

そうですね。春はバッティングの面ではまだ対応できていないと感じていたのですが、夏から秋にかけては対応できてきたかなという手応えもありました。

――そして秋季リーグ戦の初戦の東大戦ではリーグ戦初ヒットが生まれました

その前の練習などでも調子が良かったので、自分のバッティングをしようと思って打席に入りました。それまでリーグ戦で1本もヒットが出ていなかったので、ほっとしましたし、そこから波に乗れていった気がします。

――その後も途中出場で結果を残されましたが、意識していたことはありましたか

自分のスイングをすることだけを意識してやっていました。

――すると立大1回戦で1番中堅スタメン抜てき。この試合はターニングポイントになったと思いますが、どのような意気込みで臨まれましたか

せっかくもらったチャンスだったので、ものにしようと思って臨みましたし、相手のピッチャーも1年生だったので絶対に負けたくないと思って気合いは入りました。

――スタメン起用はいつ頃知ったのですか

当日です。

――監督からスタメン出場を伝えられたときのお気持ちは

正直、びっくりしたのもありましたし、不安もありました。でも実際に打席に立ったらやってやろうという気持ちに変わりました。

――その試合では第1打席に安打で出塁し、その後先制のホームを踏みました

その試合はヒットを打つことよりも、絶対に塁に出ることを目標にやっていたので絶対に自分が得点に絡むんだという気持ちでやっていました。

――そして次の打席で本塁打。チームに勢いを与えたと思いますが

ホームランは狙っていたわけではないのですが、塁に出ようという意識の結果で生まれたのだと思います。1年生なのでいろいろと考えても何も起きないと思うので、1年生らしく元気にやって、チームを活気づけられたらという気持ちでした。

――その後はスタメンでの出場となりました。立大3回戦のサヨナラの好機では先輩から励まされる場面も見受けられましたが、先輩たちはどんな雰囲気で、どんな言葉をかけてくれるのですか

自分はとても緊張していて、あまり覚えていないんですけど(笑)、「自分のバッティングをしてこい」って言われました。できなかったのですが(笑)、(先輩たちは)優しかったです。

――4年生が引退となった早慶戦の舞台で感じたことは

もう4年生と試合ができないということはあまり実感が湧きませんでした。優勝はなくなっていましたが、4年生と戦って最後勝って終わりたいと思っていたので、勝って終われてよかったです。

――飛躍のシーズンとなった昨秋を総括すると、まず打率は2割5分でした。打撃面を振り返って

アウトになった打席もバッティングとしてはそんなに悪くなかったので、手応えはありましたが、やはり打率が残せていないので今季はしっかりと打率も残してチームに貢献していきたいです。

――また7得点を記録されていますが、これは1番打者としての役割を果たせたということではないでしょうか

一番意識していたところでした。出塁して(本塁に)帰ってくるというところまでは一番意識していました。

――盗塁を含め走塁面については

(昨秋は打順が)1番でだいたい初回は出塁することができていて、そうするとだいたいバントのサインが出るのでまだ自分勝手にはできなかったですね。盗塁への意識ももちろんあるので、この春は多くしていきたいと思っています。

――春から自分が一番成長したと感じた部分は

バッティングもそうですが、精神面で大きく変わったかなと思います。

――精神面で強くなれた要因は

人任せではなく、『自分が変わらなきゃ』という思いで野球をやれていたので、そこからだんだん変わっていったのだと思います。

――昨年経験することができなかった優勝への思いは

すごくあります。いま中村さん(奨吾主将、スポ4=奈良・天理)と一緒に試合や練習をやらせてもらったりしているのですが、自分もラストシーズンのつもりで頑張っていきたいと思います。

――昨秋、印象に残っている対戦した投手についてお聞きした際に星知弥選手(明大)と澤田圭佑選手(立大)の名前が挙がりました。同学年の選手へは特別意識をされていますか

意識します。負けたくないです。

――そういった他大の選手との交流も多いのですか

はい、よく連絡を取ります。「春は首位打者を取るから」というようなことを言ってくる人もいますし、絶対に負けたくないですね。

――一年間を通して自分が通用すると思ったところと、逆に課題だと感じた部分は

守備、走塁の面では上のレベルでも通用すると思いました。打撃もいまのままいけば通用するのではないかという手応えはあります。

――走攻守、三拍子がそろった印象がありますが、ご自身の中で一番好きなプレーは

全部好きです。打つのも好きですし、走るのも好きですし、これというのはないのですが、とにかく野球が好きです。

――安打のときはどんな気持ちになりますか

試合中はあまりうれしいという感情はないです。ホームに帰りたいなということは思うのですが、ヒット打って「よっしゃー」という気持ちはあまりないです。

――盗塁を決めたときも同じような気持ちですか

盗塁は決めたら「よっしゃー」と思いますけど、だいたいそういうときは打者が中村さんだったりするので、「中村さん、(ホームに)返してくれないかな」って考えたりしています(笑)。

――一年目の自分に点数をつけるなら

50点ですかね…。

――なぜその点数をつけられたのですか

数字だけで見ると2割5分ですし、4割打って首位打者をとるくらいのところを目指しているので、この数字はだめだなと思います。

憧れ・中村主将の存在

はっきりとした口調で答えた中澤彰

――野球を始められたきっかけは

もともと父親が野球をやっていたということと、仲のいい友達が野球を始めたので遊び感覚でチームに入ったというのがきっかけです。

――いつ頃から野球を始められたのですか

小4の終わりです。

――野球を始める前には少林寺拳法をされていたそうですね

はい。(少林寺拳法は)小4までで、それをやめて野球を始めたというかたちでした。あんまり痛いのは好きじゃないので(笑)。

――少林寺拳法は痛いのですか(笑)

はい、乱取りという種目なんですが、これは少し痛いです。

――守備面で外野を守るようになったのはいつ頃からですか

高3です。高2まではピッチャーとサードで、甲子園もサードとして出場しました。

――外野の方が好きですか

サードもやっぱり打球が速いので痛いじゃないですか。自分は外野の方がいいです(笑)。

――静岡高時代、2年時には甲子園出場を果たされましたが、甲子園の思い出は

一番の思い出はホームスチールされたことで、伝説を残しましたね(笑)。恥ずかしい記憶しかないです。

――そのホームスチールの場面はいまでも印象深いですか

自分はそのときサードを守っていたのですが、サードランナーがホームに帰るじゃないですか。つまり、そのホームスチールの張本人なので…。決められた時は本当にびっくりしましたね。

――高校3年時について

正直高校3年生の頃はそんなにすごいなという風に感じる選手もあまりいなくて、自分に自信があったんです。ただ大学に入ってその気持ちは変わりました。

――進路は大学進学の一択だったのでしょうか

いや、ずっとプロ志望でした。(高3時に)甲子園に行くことができたらプロを志望しようと思っていたんですけど、出場できなかったので大学進学を決めました。

――そのなかでワセダを選んだ理由は

自分が高校3年生の時にワセダは日本一になっていて、どうせ大学で野球をやるなら日本一の強いところでやりたいと思ったのでワセダを選びました。

――ワセダに憧れの選手はいましたか

中村さんです。

――いまはチームメイトになった中村選手ですが、一緒に練習して感じることは

すごいなと思います。(一緒に練習できる期間は)あと1年しかいないので、盗めるところは盗もうと思ってやっています。

――具体的にどんなところにすごさを感じますか

バッティングですね。考え方も他の人と違うと思います。

――そんな中村選手に対してどんな思いがありますか

練習でもいろいろと教えてくださいますし、プライベートでも仲良くしていただいて弟のように接してもらっています。それがうれしいですし、中村さんのためというわけではないですが、一緒に優勝したいです。

――ワセダでの初練習はいつ頃だったか覚えていらっしゃいますか

昨年の2月4日です。ちょうど一年前くらいですね。

――そのときのチームの第一印象は

一言で言うと大人なチームだと思いました。4年生だけでなく、2、3年生も大人だなと。

――当時印象的だった先輩は

東條さん(航前主将、平26文構卒=現・JR東日本)ですかね。すごく細かいプレーまでその都度プレーを止めて、アドバイスをしたりしていました。試合中も、自分がセンターから見ていて細かいところまで見ているんだなと感じましたし、自分もけっこう声を掛けてもらいました。

――今春入学される1年生がいま練習に加わっていると思いますが、1年生の姿は中澤選手の目にはどのように映っていますか

頑張っているなと思います。ただまだあまり関わりがなくてよくわからないのですが、自分は先輩に良くしてもらっていたので自分もされてよかったなと思うことは後輩にもしてあげたいと思っています。

――チーム内で特に仲の良い選手はいますか

先輩なら中村さんです。同期なら石井です。

――石井選手は学部も同じですが、一緒に学校に行かれたりするのですか

はい。石井とは授業全部一緒です(笑)。たまたま必修の授業が一緒だったので、あとの授業も一緒にしていました。

――学校の勉強はいかがですか

自分なりに頑張っています(笑)。

――寮生活は慣れましたか

そうですね。平日は門限とかもあるのですが、野球をやる環境としてはとてもいいと思います。

――ワセダの寮の良さは何でしょうか

室内グラウンドは寮からすぐのところにあるので、練習したいなと思ったらすぐに行けるところがいいです。多分一人暮らしだと、自主練習行こうかなとかあまり思わないかもしれないですけど、これだけ近いところに練習するところがあればやりたいときにやれるので野球には打ち込める環境です。

――自主練習は積極的に行かれているのですか

中村さんがよく自主練に行かれるのですが、それより行くようにしています。

「自分がチームの中心に」

中軸打者としてその打棒に期待が懸かる

――中村選手が主将となった新チームについて、雰囲気はいかがですか

とてもいいと思います。4年生は一人一人が自分の意見を言える人たちですし、そして自分たち(下級生)も意見が言いやすい環境をつくってくれるのでプレーがしやすいです。

――冬季オープン戦では3番という打順を務められていましたが

いままで1番か3番しか打ったことはないのですが、冬季オープン戦は1番が中村さんで、中村さんが塁にいる時は絶対に(ホームに)返してやるという気持ちでやっています。

――年末の冬季藤枝キャンプでは徳武定祐コーチ(昭36商卒=東京・早実)からも熱心な指導を受けていたそうですね

技術面もそうなんですが、新チームになってから1番や3番を任されるようになったのでチャンスや得点に絡むシーンが多くなってくると思います。精神的にも大きくなれるように指導してもらっています。

――いまのチームにおいて、自分に求められている役割とは何だと思いますか

技術的には得点に絡むことだと思いますし、プレー以外では元気を出していくことでチームを活気づけることだと思います。練習から一番声を出すようにやっています。

――3月上旬のロサンゼルスキャンプは米国の野球に触れる貴重な機会となりますが、どんなことを吸収したいですか

自分は外国人の方とプレーするのが初めてなんですが、外国人とやってどこまで通用するか試したいです。逆に中村さんは日本代表として外国人とのプレーを経験しているので、どう対応していくのかというところを生で見れるいい機会だと思います。いろいろと勉強させていただきたいと思っています。

――ご自身としては体格の大きい相手に対してどのように対応していくことをイメージされていますか

すごくパワーがあるイメージがあって、パワーではかなわないと思うので、技で勝負していきたいです。

――ロサンゼルスキャンプ後には宮崎キャンプなどもあり、春季リーグ戦に向けてさらに準備を進めていくことになりますが、目指していきたいところは

守備のポジション上もセンターということで、とても重要なところだと思います。下級生ですが、先輩にもしっかり指示を出せるようにしていきたいですし、『自分がチームの中心になってやっていくんだ』という気持ちを持ってやっていきたいです。

――ずばり2年目の目標は

首位打者プラス日本一です。

――最後に春季リーグ戦の抱負をお願いします

完全優勝したいです。いや、します!

――ありがとうございました!

(取材・編集 荒巻美奈)

中澤彰

◆中澤彰太(なかざわ・しょうた)

1994(平6)年6月10日生まれ。177センチ78キロ。静岡高出身。スポーツ科学部2年。一年間で大変だった授業についてお聞きしたところ、少し苦手だという英会話の授業を挙げられた中澤彰選手。ただ授業を通して「たしなむ程度(笑)」になったそう。ロサンゼルスキャンプではその成果が発揮できたでしょうか…??