【連載】『~挑戦~ 逆襲への第一歩』 第3回 重信慎之介

野球

 昨秋の立大3回戦、サヨナラ勝ちの立役者となった重信慎之介(教3=東京・早実)。持ち前の俊足と勝負強い打撃で、今季は主力としての働きが期待される。昨年度を振り返ってもらうとともに、今季への意気込みを伺った。

※この取材は2月12日に行ったものです

調子は最高

――現在、練習を積んでいる段階だと思いますが調子はいかがですか

調子は最高です。

――冬季練習はどんな課題を持って取り組まれているのですか

守備の送球面なのですが、ただ強い球を投げるのではなくて、相手の取りやすい球を投げることを意識しています。

――打撃面では

フォームを固めることですね。

――つらい練習はどういうものがあるのですか

とりあえず振り込みというのがあって、ひたすらバットを振っています。一日、だいたい1500回くらいですかね。これは個人的には結構好きです(笑)。他だと、コロコロノックというのがあります。名前の由来は選手がコロコロ倒れていくからで、ひたすら左右に振られるノックです。これはきついです。

――冬季練習では米国に行かれますが、どんなことを吸収したいですか

日本にない戦術とか向こうの選手の考えとかを学べればと思います。

――ケガの予防のために取り組まれていることはありますか

なるべく週2回、治療に通うようにしていますね。違和感とかなくても疲労がたまれば必ず行きます。あとはストレッチですね。

諦めない大切さ

昨季を振り返る重信

――昨季は1年間で大きく成長されたと思うのですが、振り返っていかがですか

1年生の間は代走ばかりだったので(スタメンで)出たいなという思いがあってスタートしました。その結果、春季リーグ戦からスタメンで出られたので、向かっていくかたちでできていました。ただ、最終的に春季リーグ戦の早慶戦だけは打てなかったという理由から出られなくて、早慶戦は別物ですし、すごく悔しかったです。

――春季リーグ戦の後半で調子を落としてしまった原因はどうお考えですか

いつでも打てると思うくらいすごく調子が良くて、それがちょっと隙になったかなと思います。研究されたとかは感じていないです

――早慶戦で悔しさを味わって、その後夏はどんな練習をされたのですか

本当に悔しかったので、死に物狂いという感じでした。(練習は)きつかったですけどもともときつい練習は嫌いではなかったので、結構(自らを)追い込めました。

――何か変えられた点はありましたか

夏はコーチや岡村猛監督(昭53二文卒=佐賀西)の指示でレフト方向に打球を流す練習をしました。打撃フォームもしゃがむんじゃないかくらいの低い体勢になって打つというかたちでやっていましたが、なかなか上手くいきませんでした。なので元に戻してみた結果、すごく良くなりましたね。でも流し打ちの感覚はつかめましたし、フォームも再確認できたので遠回りではありませんでした。

――秋季リーグ戦に入ってからはいかがですか

春に悔しい思いをして秋に臨んだのですが、最初はベンチスタートで東大戦も代打で出て三振してしまいました。自分としても今季はつらいなと思ったのですが、いつ誰がケガするか分からないですし、いつ出番が来てもいいように自分のやれることは100パーセントしていました。その結果、立大戦でチャンスが巡ってきてそこで自分のやってきたことを120パーセント出せました。その後も(試合に)出続けられて早慶戦で2打点して、自分の中では腐らずやることの大事さを実感できました。また自分の調子が落ちてきたときに、気持ちをどう上げていくのかという方法も学びました。

――秋季リーグ戦は、はじめは出場機会も少なかったと思うのですが立大戦からスタメンに名を連ねました。その際は岡村監督から何か声をかけられましたか

さっき言った小さく構えて流すというのを夏からずっとやっていたんですけど、前日にいきなり「いままで通り打て」と言われました。バットも太くて重いのを短く持っていたんですけど「細いのを長く持って、小さくならないで打て」と言われたんですよ。でもそれがすごくうれしくて、(試合で)使うぞとは明言されなかったのですが、何かあるなとは思いましたね。

――立大戦の3回戦はやはりターニングポイントになりましたか

なりましたね。あそこがポイントでした。でも、(立大)2回戦に出て1安打したということも3回戦につながりました。2回戦はすごく悩み抜いた末での打撃フォームで7球粘っての安打だったので本当に気持ちで打った安打でした。あれがなければその後もなかったと思うので、3回戦も象徴的なのですが、自分の中では2回戦の右前安打が大きかったですね。

――立大3回戦のあとは取材とかも多かったのでは

そうですね。甲子園ではあったのですが、大学入ってからは初めての囲み取材でした。

――取材は緊張しましたか

いや全然、緊張しませんでした。

――立大戦の後の法大戦などでも打点をあげるなど勢いを感じました

立大戦前は自信も少しなくなってきたところで、春にあった向かっていく気持ちも少し薄れていました。でも立大戦で自分がまだ終わっていないぞというのをアピールできましたし、自分の中でもまだいけるというのを感じたので、その後勢いが出てきました。

――早慶戦の1回戦は2打点を挙げる大活躍でした。春の悔しさはやはり原動力になりましたか

それは間違いないですね。1年生の時から早慶戦をベンチで見ていて、ずっと出たいなと思っていました。それで春にやっと(早慶戦に)出られるかもと思ったら、自分の実力のなさで出られませんでした。スタメンのラインナップってバックスクリーンに出るじゃないですか、秋の早慶戦で自分の名前がそこに出た時に「よっしゃ!」と思いましたね。

――早慶戦では9番ではなく、それまでなかなか結果が出なかった上位打線で結果が出ました。大きかったのではないですか

言われてみればそうですね。あまり意識はしていなかったです。打席に入ったら打順とかではなくて自分のポイントをしっかり守ることしかやれることがないので、それを徹底したら結果が出たという感じですね。

――秋の打率は規定には届かなかったのですが3割4分5厘と好打率を残されました。打率に関してはどう捉えられていますか

自信になりました。

――打率は気にされますか

気にしますね(笑)。気にしないと言ったら嘘になります。打率がいいと試合前に(気持ちが)乗れるので、気持ちいいじゃないですか(笑)。

――打率もそうなのですが、勝利打点もしっかり残されていますよね

得点圏に打席が回ってくることが多いなと感じましたね。春も秋もチームとして得点圏で結果を残せていないのが課題なので自分としても得点圏の打席は意識してやっていました。

――チームとして課題の得点圏打率が重信選手はすごく良いのですが、その要因は何だと考えられていますか

岡村監督にも「なぜ君は得点圏で打てるの?」と言われましたね。自分の考えなんですが、全体練習っていうのはあくまで確認作業なんですよね。自分の練習というのはその後の個人練習でそこで自分の弱点を改善して、さらにどういう動きをしているのかを確認して、いかに自分と向き合うかというのが大事だと思います。その面では誰よりも(自分と)向き合ってきたつもりです。そこが投手と対戦する際に気持ちで負けない要因というか、自信になっていますね。

――守備の方では初めて年間を通して外野を守りました。1年間通していかがでしたか

送球に関してはすごく良くなりました。もともとフライに対して苦手意識はなかったのですが、春より秋の方が「うまくなったね」と色んな人に言われました。

――うまくなったというのは具体的には

落下地点にはいるのがうまくなったと言われました。練習の成果ですね。もちろん慣れもあるのですが。

狙うは首位打者

俊足巧打の重信が神宮を駆け回る

――現在のチームの雰囲気はいかがですか

向かっていく方向性はみんな同じ方を向いていると思います。ただ、まだキャンプも入ってないので全体としては固まってないです。でも状態としてはいいです。

――中村奨吾(スポ4=奈良・天理)主将になって変わった点などはありましたか

自分が3年生になったというのもあるのですが、比較的下級生が意見を言いやすいような雰囲気はあります。

――練習での中村主将の存在は

あまり声を出して引っ張っていくタイプではなく、プレーで引っ張っていくタイプの主将です。

――チーム内でライバル視している選手はいますか

いないですね。自分をどう磨いていけるかということを意識しているので。

――実力のある後輩も入ってくると思いますが

いや、それも気にしないです。そこはぶれません。

――来季、打ちたい打順とかありますか

1番です!

――即答ですね。なぜですか

かっこいいからです。

――1番を任されたときはどういう役割を果たしたいですか

1番で安打を打って(塁に)出るというのはかっこいいですけど、1番の役割は塁に出ることなので四球でも死球でもいいので塁に出たいです。自分が塁に出れば盗塁もありますし相手は絶対に嫌だと思うので、塁に出る事に徹したいです。

――塁に出た後のその盗塁への意識は

かなりありますよ。盗塁王を狙いたいです。

――来季の個人の目標を教えてください

首位打者と盗塁王です。

――首位打者や盗塁王のライバルになりそうな選手はいますか

首位打者だと立大の大城滉二とか、中村主将とか小野田(俊介、社4=東京・早実)さんですね。盗塁王だと明大の福田周平さんですね。明大の選手はけっこう走ってくるので。

――その明大は春秋連覇をされました。どんなイメージがありますか

追い込まれてから強いイメージです。打席だとツーストライクから強いですし、3点ビハインドで残りイニングも少ないところから逆転してきますし、第3戦にもつれ込んだら負けないです。

――明大以外に意識しているチームは

ケイオーは別物として、やはり立大ですね。法大も主力は抜けたんですけど、結構いい選手はいますよね。どこも侮れないです。

――チームとしての目標は

春秋連覇です。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石丸諒)

重信

◆重信慎之介(しげのぶ・しんのすけ)

1993年(平5)4月17日生まれ。172センチ、68キロ。東京・早実高出身。教育学部3年。外野手。右投左打。取材の日も遅くまで居残りで自主練習をしていた重信選手。外野のバックホームでの送球練習や打撃のフォームを固める練習をしていたそう。豊富な練習量が重信選手を支えています。