【連載】新体制対談『大胆』 第1回 水町泰杜主将×伊藤吏玖副将

男子バレーボール

 第1回にはエースとして攻撃面を担いながら、今年度はキャプテンとしてチームを率いる水町泰杜主将(スポ4=熊本・鎮西)と、鉄壁のブロックで守備の要を担う伊藤吏玖副将(スポ4=東京・駿台学園)が登場。冬の期間の練習や、今のチームの状況について伺った。

※この対談は3月11日に行われたものです。

お互いのこと

対談中の水町主将と伊藤副将

――まずお互いの紹介をお願いします

伊藤 泰杜は大の酒好きでよくプライベートとかで結構飲み行きますけど。プライベートに関しては、子どもみたいな可愛さがあって、本当に何歳なのかなって思うくらいです。バレーの時はスイッチが入って、逆にそういう一面があんまり見えないです。練習中とかも笑顔が少なくて、そのギャップがすごいなと思います。

水町 (伊藤選手は)歌が上手くて。僕はいつも伊藤堅って呼ばせてもらっているんですけど、吏玖の平井堅がすごく良くて。ぜひみんなに聞いてほしいと思います(笑)。

伊藤 本当にやめてほしいです(笑)。

――ちなみに何点ぐらい出せるのですか

水町 僕の中ではもう150点ぐらいです(笑)。

伊藤 本当に全然うまくないから(笑)。

水町 あとは、ミドルが今ちょっと人が少ないので、すごいリーダーシップ発揮して、周りの人に指示してもらっていて。試合中でも吏玖のブロックがあると安心感があるというか、絶対的壁みたいなところがあります。あと、吏玖がブロックシャットした時は自分のことのように嬉しいですし、それくらい僕にとってすごく大きい存在です。

冬の期間について

――最近のオフはどのように過ごしていましたか

水町 年末年始の長期休みは、実家に帰って、本当に何十年ぶりかの家族旅行に全員揃って行きました。

伊藤 長期休みというか月曜日がオフなのですが、大体オフの前日に飲んだりとかしてオフを潰す(笑)。

――冬の期間はどういった練習をしていましたか

伊藤 本当に基本練習中心で、あとトレーニングです。 筋肥大期と言って、その筋肉を大きくしようという期間で、とにかく回数をこなしました。とにかく追い込もうという時期だったので、1月、2月はトレーニングに重きを置いていました。きつかったですね。

――昨年の4年生が全日本大学選手権(インカレ)と天皇杯全日本選手権で引退した後のチームの雰囲気はどのような感じでしたか

水町 インカレで負けてしまったので、やはり一から作らないといけないとなりました。それが逆に良かったのかなと思って。ズルズルというよりかは新体制でパッと切り替えられたかなという感じがしています。

伊藤 僕らとしては、今のチームとして本当にそのやり方でいいのかなっていうのを考えて、今までやってきたことを少し変えてみたりとか、新しいことにどんどん挑戦しています。結構メンバーもガラっと変わったので新鮮な感じです。

――新しいことというのは具体的には

伊藤 練習のやり方を変えたりしました。効率化も大事ですが、実践を意識するとそれはどうなのというところをちょっと変えてみたりとか。パス練の中で、試合中にそういうシチュエーションがあるのかという話になって、実際のシチュエーションに近い形でトスを上げた方が良いという形になりました。

水町 打つところが決まっていると、 ボールが来ない方は突っているみたいな。そういうところを変えたくて、ずっと同じ出し方ではなくて出す場所を変えたりとか。それくらいですけど、それでもだいぶ意識の差が出ると思うので、変えられるところは変えて、ダメだったら戻せばいいという感じでやっています。

――水町選手は日本代表候補若手有望選手に選ばれましたが、心境はいかがでしたか

水町 新体制が始まったばっかりですし、やはりチームを空けることに罪悪感はありました。駿(布台、社4=東京・早実)と吏玖が残ってやってくれたのでありがたかったですし、同時に申し訳ないなという気持ちもありました。

――刺激を受けたことや学んだことはありましたか

水町 プレーに対する考え方が早稲田とは全然違うところもあって、そういう戦術もあるのかと戦い方を学ぶ機会にもなりました。フランスの方と対峙してみて、身体が大きいなりにもテクニックがあり、とても勉強になりました。

――自身の課題や強化したいポイントはありますか

水町 (ブロックが)2枚がっつりついたときにただシャットされて終わるのではなくて、打ち方をもっと工夫することが大事だと勉強になりました。そういう部分が1点を取るためにとても重要だと思うので、これからの課題ですし、頑張っていきたいと思います。

――伊藤選手は、その間はチームキャプテンという感じでしたか

伊藤 そうですね、代理みたいな感じでした。

――4年生の多くが抜けている中のチーム全体の様子はいかがでしたか

伊藤 4年生のプレーの中核を担う3人が抜けて、2、3年生はどちらかというと客観的に見て少しキャリアが少ない選手が多くて。できないことの方がたぶん多いので、一生懸命やろうという意識を結構感じました。 トレーニングに関しては泰杜とか、フィジカルモンスターが結構いるので、良い刺激になって。そういう良い先輩がいるから、トレーニングもみんな結構やる気になって取り組んでくれたと思います。

――伊藤選手は強化したいポイントや力を入れている部分はありますか

伊藤  強化したいポイントはクイックです。自分はそんなにスパイクが強くないので、打力をつけなきゃいけないと思います。あとは、セッターとのコンビの精度も上げなければいけないと思っています。クイックのバリエーションも相手にとって、楽な攻撃をしたくないなと思って。AパスのAクイックだけとかだと、相手にとってすごく楽です。相手のブロッカーから見たら色々動かれたら嫌だと思うので、もう少し工夫したいなと思っています。

新体制について

――主将、副将を決めた経緯は

水町 4年生でまず話し合ってとりあえず役職を決めて松井先生に話を通してって感じで。 でも、最初はもうめっちゃ沈黙だったよね(笑)。10分くらいこう(シーン)。

――自分で立候補というよりは、周りからの意見で決まった感じですか

水町 どっちかっていう僕はそうです。でも吏玖は僕が任命しました。

――伊藤選手から見て、水町選手のどのようなところが選ばれたのだと思いますか

伊藤 自分から見たら泰杜はプレーで引っ張れる存在だから、一個一個の発言とすごく影響力がありますし。早稲田というチームの中でも泰杜がキャプテンだったら、全員が同じ方向を向いて進めるのではないかなと思って。もちろん自分としての考えの中ではエースだし、高校からずっと1人で打って戦ってきて、正直あまりやらせたくない部分もありました。でも、チーム全員がその同じ目標に向かって戦うには、絶対的リーダーのような存在の泰杜に任せたいなと思いました。

――水町選手は伊藤選手を任命した理由はありますか

水町 僕が主将をやると決まった後に誰に副将をやってもらいたいかというか、一番近くで支えてもらうかとなったときに、ぱっと吏玖だろうなと思いました。それは人間関係的にという部分もありますし、プレー面でも大事な立ち位置で鍵を握ると思うので。 僕が1年生のときの4年生に村山豪さん(令3スポ卒=現ジェイテクト)がいらっしゃって、副将だったのですがガンガンチーム引っ張って、ブロックの指示出しも全部やってくれていました。僕はどちらかというと口下手ですし、言葉でガンガン引っ張るタイプではないので、プレーでできることなら引っ張って。吏玖もあまりガンガン言う立場ではないのですが、豪さんみたいにガンガン指示を出してプレーの中核を担ってくれたらなと思います。あと、シンプルに自分が相談しやすいということもあって吏玖にお願いしました。

――理想の主将、副将像は

水町 部員や選手としても、人間としても、周りから必要とされるような人材になりたいと僕はずっと目標にしていて。多分そういう信頼とかがないと、チームのキャプテンとかはできないと思いますし、そういうものがあってチームが同じ方向を向くものだと思っています。技術だけじゃないと思っているので、(部員が)気軽に相談できるような、そういう主将になりたいです。

伊藤 自分の中では、キャプテンはチームの大まかな統率とか指示出したりとか、口頭で引っ張ったりしているイメージなんですけど。キャプテンの手が届かないところをしっかり見てあげられるのが理想の副キャプテンかなと思っています。 泰杜が後輩に寄り添うって言っていたのもそうだし、一人一人をしっかり見なければいけないなと思って。プレーのこともそうですし、私生活もしっかり全員のことを知ってあげないと。もしその選手が悩んでいたりとかした時に、ちゃんと気づいてあげられるような、気づいてしっかり寄り添ってあげられるような人になりたいです。泰杜はどちらかというと厳しいことをあんまり言うタイプではなくて、結構諭すように指導するので、時には自分が少し厳しいことも言わなきゃいけないのかなという風に思っています。

――チームスローガン『大胆』ということでしたが、どのような思いが込められていますか

水町 インカレで負けて、一からのスタートとなったので、チャレンジャーという気持ちを忘れずに、小さくならずにダイナミックにプレーしたいということで、『大胆』という風につけました。その中には恐れないとか、接戦でも攻める気持ちを持つとかそういう意味もあるのですが、リスクを負ってでも攻めるという行動が取れるように、大胆なプレーができるようにという意味です。

――それはどのように決めましたか

水町 4年で決めます。これもね、めっちゃかかったよね。

伊藤 かかったね。

水町 なんかバーって(案が)出て。「良くね良くね!」「いや、これちげえだろ」みたいな(笑)。みんなが納得する形がなくて。なんか僕の意見はマジで通らなかったですね(笑)。

――ちなみにどのような提案をしましたか

水町 僕チームスローガンとか色々調べて、四文字熟語みたいなこと言ったら、「いや、それちゃうやん。泰杜はなんかずれてんだよな。」って駿とか言ってきました(笑)。

――伊藤選手は何をあげましたか

伊藤 自分があげたのが確か『大胆不敵』です。

――不敵は消えたんですね

伊藤 不敵は消えましたね。『大胆』良くねみたいな感じのことを多分泰杜が言って(笑)。それで良いねとなって決まりました。

水町 なんかみんな二文字にしたがるんですよね(笑)。そうじゃない?

伊藤 なんだっけ、大貴(山田、スポ4=静岡・清水桜が丘)だっけ?

水町 「いや、三文字はない。四文字もな。二文字なんだよな。」とか言って(笑)。

伊藤 なんて言ってたっけ(笑)。ずっと『責任』って言ってたっけ?

水町  『自立と責任』だ。 僕らがもう『自立』はまじないみたいな。とりあえず否定しかしない(笑)。

伊藤  そう。一生出てこない(笑)。

――今年の4年生はどのような代ですか

水町  仲は良いと思います。

伊藤  基本的に自分から見て、みんな結構優しいなと思っていて。なんか人にきつく言うとか毒のある言い方はしないから、どちらかというと優しく言うタイプですね。

水町  確かに優しいね。

――良いチームを作っていく上で、4年生全体で意識していることはありますか

水町 個人個人にもう少し目を向けようということです。この部活は組織でやっているので、どうしても4年生と1年生とか、上級生と下級生、試合出ている人と出てない人とかで区別されやすいことがあって。そういうことではなくて、1年生、2年生の下級生を構成しているのは個人個人なので、もっと一人一人に目を向けたいです。誰にでもチームでの存在価値とか役割とかって絶対あると思っていて、簡単に「どうせいても」みたいな考えになっちゃう人に対しても、「いや違うよ」って寄り添ってあげたいです。自己肯定感を高めるというか、もっとこのチームにとって、君は大事な存在なんだよということを気付かせてあげたいという(笑)。プレー以外でも一人一人にもうちょっと目を向けようという、本当にそんな感じです。

伊藤 4年生は基本的にチームを引っ張るとなったときに、下の1、2、3年生がこの4年生でこのチームだったら付いていきたいな頑張りたいなと、そういう風に思わせられるように、まず僕らがそういう姿勢を見せないといけないので、後輩への接し方とかただ厳しくしたところでたぶん不満がたまる一方なので。 泰杜の言ったことに近いですけど、ちゃんと個人のことをしっかり見た上で、寄り添ってあげたりとか、時には厳しく言ったりとか、そういう人との関わり方がすごい大事かなと思っています。

――今度新入生対談を予定しているのですが、これはお二人がルーキーとして入学したときぶりの企画です。もう最後の学年、4年生というところに何か感じるところはありますか

水町 いや、めっちゃ早いよね、マジで(笑)。

伊藤 めっちゃ早い 。

水町 永遠の1年生なんだけど(笑)。

伊藤 心ね(笑)。

水町 そう。やっぱり2年生にしとく、1年生きついから(笑)。めちゃくちゃ早いっすね。

――今までの学年とは感じることなどは違いますか

伊藤 全然違うよね。

水町 4年生になって何に対しても考えることが多くなって。

伊藤 特に2年生とかは後輩の指導で先輩から言われることもあるから、見なきゃいけないということもあるんですけど。3年生は自分としても良くなかったと思うのですが、ただチームのことを深く考えずプレーに集中していました。

水町 4年生に全振りしてたもんね。

伊藤 もっとこう、チームのことを考えて動けることはあったなと今考えると思います。

春リーグに向けて

――今年は新入生が多く入りますね

水町 多いです。

伊藤 8人。

水町 みんなでかい。

――様子はいかがですか

水町 毎年この時期はまだ高校生感が抜けないと思うのですが、僕らは入学前の高校生という風には別にもう接してないというか。今も新入生として1年生としても見ているので。なんかそういう意味では例年よりまじ気合入ってるよね。

伊藤 ガンガン質問してくるしね。

水町 すごいなと。

――今合流しているのは一部だとは思いますが、期待の選手はいますか

水町 期待の選手・・・でもみんなすごいもんな。

伊藤 みんな確かに本当にレベル高い。自分としては、駿台の後輩2人に頑張ってほしいなと思います。

水町 じゃあ、麻野堅斗(スポ1=京都・東山)上げとこか(笑 )。

――代表合宿で一緒だったと思いますが、いかがでしたか

水町 結構大人しめな感じではあって、でもプレーは本当にすごいです。楽しみですね。もう大貴とかいじり始めていて、大丈夫かなみたいな(笑)。

――現状、チームとしては1年生も含めてどのような練習していますか

水町 今は1、2月の基礎練習でやったことについて、個人と個人をつなげるところです。例えば、 セッターからスパイカーとか、レシーバー同士の関係とかで。ゲームも入ってきたら、 そこからはチーム作りという感じです。

――春季関東大学リーグ戦の目標を教えてください

伊藤 チームとしては勝ち負けにこだわらず、この時期は大胆にやっていこうという風になっていて。レセプションアタックをしっかり強化していく機会なので、そこをチームの目標に沿ってリーグ戦で戦いたいと思います。でも、負けたくはないので、絶対全部勝つつもりやろうと思います。

水町 今はミスしていい時期なので、ただのミスではなくて意図のあるミスは全然いいと思います。大胆に工夫して、荒く、大きくやりたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・写真 五十嵐香音 編集 荒井理沙、五十嵐香音)

ラストイヤーの抱負を書いていただきました!

◆水町泰杜(みずまち・たいと)※写真右

2001(平13)年9月7日生まれ。181センチ。最高到達点339センチ。熊本・鎮西高出身。スポーツ科学部4年。チームの中心として『存在感』を発揮して、勝利へ導きます!

◆伊藤吏玖(いとう・りく)

2001(平13)年11月14日生まれ。195センチ。最高到達点332センチ。東京・駿台学園高出身。スポーツ科学部4年。副将として水町選手を『支』えながら、コート上でもチームを戦術的に支えるミドルブロッカーを目指します!