12月に開催される天皇杯全日本選手権(天皇杯)ファイナルラウンドへの進出を懸け、関東ブロックラウンドに出場した。2セットを先取したチームが勝ち進む今大会、早大は同じ関東1部リーグに所属する筑波大と対戦。1セット目は序盤からリードし10点差で先取するも、2セット目の20点台から怒とうの追い上げを食らい落としてしまう。3セット目はミスが重なり、流れを取り戻すことができず。セットカウント1-2(25―15、25―27、26―28)で敗れ、4年ぶりに天皇杯ファイナルラウンドへの出場権を逃した。
1セット目は「ブロックとディグ(※1)で対策ができた。トータルディフェンスの形がハマった」(岩本大吾、スポ3=兵庫・市⽴尼崎)。ミドルブロッカーを中心にブロックをそろえ、スパイクのコースを絞ったり、ワンタッチを取って威力を緩めたりすることで、フロアディフェンスが機能。攻撃に余裕が生まれ4-3から4連続得点し、先にタイムアウトを取らせた。その後も大塚達宣(スポ3=京都・洛南)や荒尾怜音(スポ2=熊本・鎮西)らの好守備や佐藤玲(社3=東京・早実)のセットアップから展開される多彩な攻撃が光り、終始主導権を握る。25-15と10点差をつけ、このセットを先取した。
コートキャプテンとしてチームを引っ張る岩本(左)
2セット目からは「相手がスパイクのコースを変えてきたこともあり、それに対応できなかった」(松井泰二監督、平3人卒=千葉・八千代)。これにより、ブロックとディグの関係を徐々に崩され、ミスも目立ち始める。序盤から早大が一歩リードしていたものの、サーブミスを連発し、なかなか点差を広げられず。22-21から相手の速い攻撃で連続得点され、23-24で初めてリードを許した。早大も粘りを見せたが相手の勢いを止められず、25-27でこのセットを落とした。悪い流れを断ち切りたい3セット目だったが、終始相手に一歩リードされる展開に。相手のミスや伊藤吏玖(スポ2=東京・駿台学園)のサービスエース、岩本、大塚のブロックで4連続得点し、11-10と一時逆転するも、サーブミスや反則、サービスエースなどで連続失点し点差を広げられてしまう。20点台に突入してから同点に持ち込むが、サーブミスやスパイクミスが散見され流れを引き寄せられず。26-28とし、天皇杯ファイナルラウンドへの出場権を逃した。
3セット目にサービスエースを決めた重藤
「現実は甘くないというのを自ら示した」(松井監督)。1セット目はブロックがそろってフロアディフェンスが安定し、多彩な攻撃で10点差をつけて勝利した。しかし、2セット目からは相手にスパイクのコースを変えられ対応しきれず。ブロックの間からスパイクを打たれることが多くなり、徐々にディフェンスが崩され連携ミスが目立ち始めた。「誰がフェイントボールのフォローをするのか、また、いいディグが当たったときに速いトスにするのかハイボールにするのか、セッターとスパイカー、それ以外の5人の意思疎通ができていなかった」(岩本)。さらに『レシーブを崩す』『相手スパイカーの選択肢を減らす』といった6人それぞれのサーブの役割が崩れ、今回の試合で21本のサーブミスが出た。「攻めるタイミングやボールを落としてはいけない場面を理解する状況判断を間違ってはいけない」と松井監督。今週行われる秋季関東大学リーグ戦の筑波大との試合では、今大会の敗北を糧に戦いたい。
(記事 西山綾乃、写真 宮下幸)
※掲載が遅れて申し訳ございません
(※1)ディグ…スパイクレシーブ
セットカウント | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 1 | 25-15 25-27 26-28 |
2 | 筑波大 |
スタメン | ||||
アウトサイドヒッター 大塚達宣(スポ3=京都・洛南) アウトサイドヒッター 水町泰杜(スポ2=熊本・鎮西) ミドルブロッカー 岩本大吾(スポ3=兵庫・市立尼崎) ミドルブロッカー 伊藤吏玖(スポ2=東京・駿台学園) オポジット 重藤トビアス赳(スポ3=神奈川・荏田) セッター 佐藤玲(社3=東京・早実) リベロ 荒尾怜音(スポ2=熊本・鎮西) |
コメント
松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)
――今日の試合を振り返っていかがですか
1セット目はうまく行ったのですが、2セット目の途中のサーブミスから始まって、自分たちの流れを相手に渡してしまいました。ゲームを理解してほしい選手が何人かいますね。状況判断を間違っていたのでまだまだだと思います。
――1セット目はブロックとディグの関係が良かった印象を持ちました
ブロックの位置取りは良かったですよね。それに対して2セット目は相手がスパイクのコースを変えてきたというのもあって、それに対応できませんでしたね。来週の土曜日に対戦することもあって、どんなことができていてどんなことができていないのか見たかった試合でもあるので、予想以上にできていないことが分かって良かったですね(笑)。
――ミスで取られてしまった点数が多かったですね
多かったですね。
――焦りから出たミスでしたか
自分たちでかたちづくっていかないといけないのですが、すぐに点を取りに行きたがるというか。基本通りにやればいいものを、慌てて点を取りに行こうとすることが多いですね。
――3セット目は主導権を握られていましたが、20点台では接戦に持ち込みました
追い上げたとしてもその次に対応できるような戦術はなかったので、それがばらばらになっていたら勝ち切れないですね。大塚(達宣、スポ3=京都・洛南)が入ってきたばかりでまだ鍛えられていないので、課題は見えてきました。できていないけども、そこは良かったと思います。
――今日見えた課題は何ですか
チームのルールと言いますか、「次はここで攻める」とか「ここのボールは落としてはいけない」とかが決定されていませんでしたね。
――最後まで粘って落としてしまいましたが、そこはやっぱり取りたかったところですか
勝てばいいんだけれども、ここで勝って気を緩められたら困るのでね。「現実は甘くない」というのを自ら示しましたよね。
――来週の秋季関東大学リーグ戦でも筑波大学と対戦しますが、修正したいことは何ですか
サーブですね。ネットのサーブミスが多すぎますね。
岩本大吾(スポ3=兵庫・市⽴尼崎)
――今日の試合を振り返っていかがでしたか
筑波大が1試合終えた後だったので(早大が)不利な形だと捉えていて。アップも複雑な中、1セット目がかなりいい形で入れてチームとしてはかなり良かったんですけど、2セット目以降で消極的なプレーが目立ち始めて取るところも取れなくて。それでも大塚(達宣、スポ3=京都・洛南)が帰ってきて2週間でここまでできたのは良い収穫だったと思います。ここからもっと練習して詰めていければもっと良いバレーができると思います。全日本インカレに向けて今日負けたことを反省して頑張っていきたいと思います。
――筑波大学の特徴や印象を教えてください。
ずっと速いバレーをするチームで、もちろんサイドもしっかりしていてミドルもちゃんとしているんですけど、ブロックとディグで対策ができたと思います。トータルディフェンスという形がハマったのが1セット目ですね。やるべきことをやれば自分たちがいいゲーム展開を作れるというのがわかったのでいい収穫でした。
――1セット目は10点差つけられましたがブロックとディグの関係がいいように見えました。落ち着いてプレーできていましたか
そうですね、一応。ミドルだけじゃなくて前衛と後衛が連携を取りながらブロックすることができていたと思います。そこはサーブからの展開も含めて良かったと思います。
――柳田歩輝選手(筑波大)と垂水優芽選手(筑波大)が結構決めていた印象がありましたが、やはりマークされていましたか
ミドルに決められる分にはある程度許容して、状態が悪くなったときにこっちで狙って点を取りました。
――2セット目はミスで取られた点が多くあったと思いますが、焦りはありましたか
初めての環境だったからか、サーブミスがチーム全体で目立ってしまいました。6人のそれぞれのサーブの役割が崩れてしまったときに、立て直す力がまだなくて。これからサーブの打ち方もチームで考えていきたいと思います。
――松井先生にお聞きしたところ、自分たちのすべきことができなかったとおっしゃっていたのですが、チームの中で何が敗因だったと思いますか
おそらく松井先生がおっしゃっていることはチームのコンセプト的なことで、例えばフェイントボールができるだけブロッカーの後ろにいる選手が触るとか。それこそサイドアウトの局面に関しては時間を割いて練習してきたのでよくできていたのですが、サーブを打ってディグアタックするというトランジションの場面で練習がちゃんとできていなかったのもあって、そういうところの連携ミスが出たのだと思います。逆にいいディグが当たったときに速いトスにするかハイボールにするかとか、セッターとスパイカー、それ以外の5人がまだ一つになれていない、意思疎通ができていないように感じたので、これから仕上げていきたいと思いました。
――2セット目の最後の最後に追い上げられましたが、チームの中ではどのような話し合いがされていましたか
(相手は)後半ミドルが少なくなるということを踏まえて、どういうバレーをしていくかについてと、自分は変わらずサイドアウトを取り続けることとチャンスを逃さずチーム一丸となって粘って点を取るという声掛けをしていました。
――サーブを誰が取るのかというお話をされていましたが、衝突する場面が見られましたね
大塚選手が帰ってきて3人の連携だったり、前後ろの連携も6人でできていないということもあってそこがブレたかなと思います。そこを詰めていきたいです。
――3セット目についてお聞きします。3セット目もミスが多くチームに焦りが見られましたが、2セット目を引きずってしまっていましたか
僕はコートキャプテンとしての立場上、気持ちをぶらさないというのは意識してやっていましたが、例えばセッターの佐藤(玲、社3=東京・早実)がけじめをつけられないまま選択ミスをしてしまうということもあったと思います。引きずっていたわけじゃないですが、1セット目のプレーを継続できなかったということを最後まで引きずってしまって苦しい展開になったと思います。
――松井先生も判断ミスをなくしたいというお話をされていました。岩本選手自身、この試合で判断ミスというのはありましたか
僕としては2セット目にチームとしてのサーブミスが多い中で自分が攻めに行く役割ではないのにもかかわらずサーブミスを出てしまって、他のサーバーに心地よく打たせられなかったことです。
――来週も筑波大と対戦しますが、意気込みをお願いします。
全日本インカレ(全日本大学選手権)で学生日本一を取ることを目標にやっているので、切り替えて修正するところは修正して来週に臨みたいと思います。