まさに、両校の意地がぶつかり合った死闘だった。全日本大学選手権(全日本インカレ)準々決勝、大田区総合体育館で行われる準決勝への切符をつかむため、早大はきょう近大と対戦した。近大は関西大学リーグに所属し、秋は1セットも落とさない完全優勝を成し遂げた、まさに関西王者。全日本インカレのトーナメントが発表された時から、選手たちは「近大との試合がキーポイントになる」と口を揃えていた。1セットを先取して迎えた第2セットは35点を超えるジュースとなる接戦。この接戦を勝ち切るも第3セットを落としてしまう。しかし、第4セットは集中力を切らさず手堅いバレーを展開した早大が優勢に。セットカウント3-1(25-23、37-35、23-25、25-18)で勝利し、あすの準決勝へと挑む。
第1セットから拮抗した展開が続いた。今大会もエースとしての役割をしっかり果たしている鵜野幸也(スポ4=東京・早実)がラリーの末にスパイクを決めてまず1点目を獲得。このままリズムを作っていきたいところだったが、近大の安定したサーブレシーブと決定率の高いスパイクでなかなかブレークポイントを取ることができない。10点に到達するまでに2回のブレークに成功し、10-7と3点差をつけるも、近大のジャンプサーブに苦しみそこから3連続失点。11-11と同点に追いつかれてしまう。しかし、武藤鉄也(スポ3=東京・東亜学園)のサーブなどから少ないチャンスをものにしてなんとかリードを4点に広げると、そのままその貯金を生かして第1セットを先取した。
何度もピンチを救った鵜野のスパイク
続く第2セットは試練のセットとなった。試合序盤から3連続失点などを許して8-11と3点差に。しかし、ここでも武藤のサービスエース、村山のブロックでなんとか同点へと持ち込むと、得点差はそのまま広がらず縮まらずジュースへ。先にセットポイントを握っていたのが近大だったため、早大は近大のセットポイントを防がなければいけない苦しい時間が続いた。その均衡を破ったのは早大。26-26と同点の場面で鵜野が渾身のスパイクを決めて27-26とし、早大が一歩前に出た。今度は早大がセットポイントを狙う場面。しかし、近大の力強いスパイクに苦しみ、あと1点が遠い。34-34と10回のデュースの末、宮浦がスパイクミスを犯して34-35とされ再度ピンチに。しかし、これまで何度も接戦を勝ち切ってきた早大は諦めなかった。鵜野が角度のあるスパイクを決めて同点に追いつくと、今度は自身のサーブから渾身のバックアタック。36-35ともう1度早大が1歩前へ出た。再び、あと1点。痛いくらいの緊張感の中、鵜野がサーブを放つと、近大のセッターはこれまで何本も早大コートにスパイクを沈めてきたライトを選択。そして、それを見た藤中優斗主将(スポ4=山口・宇部商)、村山がそのスパイクを止めようと必死に手を伸ばす。鋭い音と共にボールが落ちたのは近大のコートだった。37-35。藤中主将の左手で近大のスパイクを仕留め、見事逆転に次ぐ逆転劇で第2セットも死守することに成功した。
第3セットは序盤に宮浦のサーブから4連続得点で勢いに乗りかけるも、試合中盤でボールのお見合いやレシーブミスなどの苦しい時間が続いた。終盤まで近大がリードする形で試合が進み、相手の2点リードを縮められない。武藤、鵜野の2枚ブロックで対抗するも力及ばず、23-25でこのセットを落とすことになった。第4セットは序盤に1度リードを許すも、すぐさま鵜野のスパイクで逆転。特に、相手のフローターサーブに乱されてサーブポイントを与えるかと思いきや、藤中主将がコートの後ろまで走って攻撃的なレシーブを返すと、ラリーの末に宮浦がバックアタックを決めた瞬間はこのセットで1番の盛り上がりを見せた。小林副将の緩急をつけたサーブでこれまでほとんど乱れなかった近大のレシーブ陣をついに崩し、値千金のサービスエースで9-7とすると、武藤・村山の打点の高いクイックなどから小刻みにブレークを重ね、4点のリードを保ったまま試合終盤へ。藤中主将のノータッチエースでダメ押しの20点目を決めると、最後は村山のスパイク、ブロック、スパイクと3連続得点で25点目を獲得。集中力、体力ともに抜群の安定感を見せた早大に軍配が上がった。
村山・上條のブロックに喜ぶ選手たち
第3シードの日体大がベスト16、第2シードの筑波大がベスト8で敗退と波乱の巻き起こっている今年の全日本インカレ。その中で早大はしっかり勝利を積んできている。早大のあすの相手はきょう中大に勝利した明大。連戦が続くが、選手たちはその体力消耗を見据えた練習をしてきている。精度の高いバレーボールを展開し、見据える先は決勝だ。
(記事 松谷果林、写真 杉山睦美、安岡菜月)
セットカウント | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 3 |
25-23 37-35 23-25 25-18 | 1 | 近大 |
スタメン | ||||
レフト 藤中優斗(スポ4=山口・宇部商) レフト 鵜野幸也(スポ4=東京・早実) センター 武藤鉄也(スポ3=東京・東亜学園) センター 村山豪(スポ2=東京・駿台学園) ライト 宮浦健人(スポ2=熊本・鎮西) セッター 小林光輝(スポ4=長野・創造学園) リベロ 村本涼平(法3=京都・洛南) |
コメント
藤中優斗主将(スポ4=山口・宇部商)
――きょうの試合を振り返って
前評判も高くて、実際にやってみても強かったですが、3セット目以外は落ち着いてできていたかなと思っています。
――これまでの3日間、毎日試合が終わると近大の試合を選手全員で真剣に見ていたのが印象的でした。どのような点を意識して観戦されていたのでしょうか
相手のスパイクのコースやセッターの特徴、チームの特徴などを見ていました。きょうも朝それについてミーティングをしました。主に確認したのはやっぱりスパイクのコースと、配球ですかね。
――近大のクイックについてはどう見ていましたか
クイックは決められはしましたが、そこまで気にしてはいないです。自分たちがサイドアウトを切ることができれば問題ないと思っていたので、そこまで焦りはなかったです。それよりは相手のオポジットをあんまり止められなくて。
――相手のサーブについて
サーブはそこまで強くなかったです。ちょっと返っている印象に繋がったのかなとは思いますが、まだBパスが多くて、セッターにいいボールを与えられていなかったので、リベロを含めて3人で隊形などを合わせていけたらと思っています。
――3セット目はボールのお見合いなど少し嫌な流れになりかけた所がありました
僕たちが崩れてしまう原因はあのようなボールから始まってしまうんですよね。なので、ああいう所をしっかり締めていかないとあすはもっと足元をすくわれてしまうと思いますし、踏ん張っていきたいです。
――第4セットはサービスエースが決まりました。サーブは固定の選手をずっと狙おうということだったのでしょうか
そうですね、近大の19番の選手を徹底して狙っていこうという話でした。僕のサーブはそれまでずっとAパス返されて、クイックなどで1本でサイドアウトを取られていたんですよね。だからどうしようかなっていう気持ちもあったのですが、最後サービスエース取れたのはよかったです。
――あすからいよいよセンターコートです
大田区(総合体育館)は昨年もやっていますし、あすは1面になるということでまずはコートに慣れていきたいです。相手はどちらにせよ1度は対戦経験がある大学なのですが、全カレ(全日本大学選手権)はまた違った形になると思うので、もう1度きょうの試合もチェックして、あすもミーティングをして、しっかり対応していきたいです。自分たちのバレーをやっていければと思っています。
小林光輝副将(スポ4=長野・創造学園)
――きょうはみなさんかなり気合が入っていましたね
一つのヤマ場としてみんな認識していましたし、きょう勝てば最終日まで残れるということで一つの大きな鍵になる試合だったと思います。
――カギとなる試合で1セット落としながらも勝利しました
相手もいいバレーをしてきていましたし、苦しい場面もありましたが、そんな中でも勝つことができました。自分としては、みんなに助けられた部分もありましたし、ベンチも応援してくれる方もアナリストも、全て含めて勝てた試合だったと思います。
――2セット目など、競り合う展開でも最後にセットを奪ったのは早大でした。良かった点はどのようなところですか
自分としてもゲームを組み立てる中で相手を見ながら組み立てることができましたし、1本目もかなり安定していたので組み立てもしやすかったです。接戦となってもしっかりサイドアウトを切ることができて、2セット目も取ることができたと思います。
――近大が速い攻撃をしてきていましたがそれに対するブロックを振り返って
今まではブロックとレシーブで考えていたのですが、相手の攻撃が速い分ブロックでなんとかしようとしてしまっていて、ブロックの漏れも出てしまっていました。その部分に関しては相手が良かったという面もあるので、次に生かしていけたらなと思います。
――良い場面でのサービスエースも出ましたが、ご自身のプレーを振り返って
サーブに関してはアナリストからのデータの中で、前に弱いというのが出ていました。アナリストからもらったデータを元にして、自分がそういったプレーが出せたので、そこは本当にアナリストのおかげだなと思います。トスに関しても相手を見ながら冷静に良い配球ができたと思います。
――早大の力を存分に出せた試合となったと思います
まだまだ100パーセントではないですし。決勝が一番良いプレーができると思うので、まだまだここから上げていきたいと思います。
――あすに向けて
あした特設コートにもなるので、全員で勝ちを取りに行きたいです。
鵜野幸也(スポ4=東京・早実)
――きょうの試合はいかがでしたか
春合宿で1度対戦させていただいたのが1回目で。その時にやりづらいと思っていた部分があったので、入りでプレッシャーを感じていたということも相まって個人的にはやり切れなかったなと。
――練習試合という形で対戦されたのですか
そうですね、向こう(近大)のオープンキャンパスの催し物の一環みたいな形で練習試合をしました。確か1セット落としてしまったんですよね。
――第2セットはかなりプレッシャーのかかるセットだったのではないでしょうか
正直、本当にプレッシャーしか感じていなかったです(笑)。何とかやるしかない、という気持ちで頑張りました!
――スパイクをミスした後も何度も小林選手が鵜野選手にトスを上げている姿が印象的でした
自分のミスで点数を吐き出してしまっていた部分もあったのですが、光輝(小林副将、スポ4=長野・創造学園)が自分を信じてくれて、自分(のスパイク)が良いという選択をしてトスを上げてくれているということがすごく伝わってきました。そこは何とかして決めるまでいかなくても、相手を崩せるようにできたら、と思ってスパイクを打ち込みました。
――サーブでは鵜野選手が狙われている場面が多く見受けられました
きのう、おとといよりは自分的にはパスは返せていたかなと思います。ノータッチで落とす場面があったので、そういうのは減らしていきたいですね。
――第3セットを落とした後の第4セットを振り返っていただけますか
(セットを落としてしまってから)次を取ろうっていうこともあって。あとは相手の動きも目に見えて遅くなっているのが分かりましたし、ここは一気に取り切ろうという意識がみんなに働いたのが良かったです。5セット目までいくと、気迫で勝負みたいなところになってしまうので。
――あすに向けて
学生の大会は最後なので、1試合でも長くいい結果を残せるように全員で頑張っていけたらと思っています。
武藤鉄也(スポ3=東京・東亜学園)
――きょうの試合を振り返って
きょうは元々苦しい戦いになるとは思っていたんですけど、近大が思っていたよりも粘り強くて、攻撃もしっかりしていたので、粘りの試合になったかなと思います
――きょうの試合にどんな意気込みで臨んだか
きょう勝てば最終日まで繋がるということで、4年生と少しでも長くやるためにきょうの試合必ず勝つという気持ちでした。戦ったことが無くて対戦しづらい相手だったのですが、そこに向けて、もちろん一戦一戦が大事なんですけど、特にきょうは大事な試合と思って臨みました
――競った場面でチームとしてどのような声掛けがあったか
まずはインプレー中にしっかり喋ろうということと、あとは、相手がやってくることに対して、データを元に、ブロック、ディグ、アタックを繋ぐことを意識していました。
――きょうのご自身のプレーを振り返って
そうですね、きょうはクイックはしっかり打ち分けられたかなと思います。でも、もう少しブロックで切ることが出来たらよかったなと。相手のライトのエースも高くて、レフトも早くてクイックも良くて・・・。そこはあんまり良くなかったかなと思います。
――明日の準決勝に向けて
明治も中央も同じ関東でやった事のある相手なので、対策はしやすいと思うし、逆にこちらの対策もされて厳しい戦いになると思うんですけど、チーム一丸となって、もちろん勝ち負けも大事ですが、しっかりと練習してきたことが出せるように、頑張ります。
村本涼平(法3=京都・洛南)
――きょうの試合はいかがでしたか
近大も良いバレーをしてきて、苦しい場面も多かったですが何とか我慢して自分たちのバレーが少しはできたかなと思います。
――近大の攻撃について
そうですね、思ったより近大のクイックは強くて。4セット目の1番最後だけ止まりましたけど、それ以外は全部決められたので、そこは最後まで対応できなかったですね。
――第2セットは接戦をものにしましたね
(点数を)取られても、自分たちがサイドアウトを取っていけばいつかチャンスが来ると思っていました。2セット目を取れたことがすごく大きかったです。
――選手のみなさんもやはり気合いが入っていたのでしょうか
近大は関西リーグも優勝して勢いに乗っているチームだったので、どうしても勝ちたかったですね。
――4セット目はこれまでの2セットに比べて比較的楽に戦えているという印象を受けました
向こう(近大)のミスが増え始めて、その分点差が開いていった感じですね。自分たちは同じようにプレーしていて、疲れとかは特に(感じませんでした)。4セット目の方が逆に早大の動きが良くなったかなと思います。近大はちょっと疲れが出たのかなという印象を受けました。ミスも増えていましたし。
――あすに向けて
きょうで苦しい戦いを経験できたのはとても良かったです。まずあすの試合でもう1度自分たちが1年やってきたことをしっかり出していきたいです。
村山豪(スポ2=東京・駿台学園)
――試合の振り返りをお願いします
早大も粘りのあるチームですが、近大もとても粘りのあるチームでした。最後まで粘り負けしないようにという試合展開の中で、早大が最後に一歩抜けられたという試合だったと思いました。
――全員かなり気合が入っている様子でした
自分は近大と全日本インカレで戦うのは初めてでしたが、4年生は3回くらい対戦していて、どれも接戦のいい試合になっていたというのもあると思います。自分は4年生と最後まで戦いたいという思いが強いので、その気持ちを存分に出せた試合だったと思います。
――近大のプレーで警戒すべき点はどこでしたか
近大はすごく速いコンビバレーをしてくるので、その速い攻撃に対してブロックでしっかりタッチを取るということを意識しました。
――実際にブロック面を振り返って
正直あまり対応できていなかったと思うのですが、勝負どころでタッチが取れたり、良い場面でブロックポイントが取れた点は良かったと思います。
――競り合う中でも随所に良いプレーが見られた試合だったと思います
4セット目から「もう一回みんなでまとまって行こう」という声が出ていて、早大らしくみんなで一つになって戦うということはできていたのかなと思います。
――Bクイックなどもかなり決まっていました
マークが来ていても決め切るというのが自分自身の課題だったのですが、きょうは大事なところで決めることができていたと思います。
――あすへ向けて
とりあえずベスト4に残れたことは良かったと思うのですが、これからが本当の戦いだと思います。チームで一丸となって、まずはあしたもしっかり勝ちたいと思います。
宮浦健人(スポ2=熊本・鎮西)
――きょうの試合を振り返って
きょうの試合はひとつヤマ場だと思っていたので苦しい展開だったんですけど、その中で勝ちきれたのはよかったと思います。
――ヤマ場、という言葉があったがチームとしてどのような意気込みで試合に臨んだか
絶対接戦になるっていうのは分かっていたので、その中でも勝てるようにデータ的な準備とか、試合前の準備とかだったりをしっかりやりました。
――きょうの自身のスパイクについて
競った場面で力が入ってしまいミスをしてしまったところもあったので、そこを次に向けて修正していければいいかなと思います
――第2セット、競った場面でチームとしてどのような声掛けがあったか
みんな攻めるっていう気持ちしかなかったと思うので、自分もとにかく攻めるっていう気持ちでいました。
――明日の準決勝に向けて意気込みをお願いします
明日も厳しい試合になると思うので、100%の力を出せるように頑張りたいと思います。