現役とOBが夢の共演、8年ぶりに定期戦を制す

男子バレーボール

 秋季関東大学リーグ戦(秋季リーグ戦)の閉幕から3週間、全早慶明定期戦が開催された。全日本大学選手権(インカレ)が約1カ月後に控えているため、調整の機会としても重要度の高い今大会。全慶大戦では藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)が好調をアピール、全明大戦は得意のセンター中心のバレーで快勝した。それぞれセットカウント2-0(25-23、27-25)、2-0(25-21、25-20)で2勝を収め、同大会8年ぶりの優勝を果たした。

 昨季2部に降格した慶大だが、全早大相手に粘り強く応戦してきた。第1セット序盤はサイドアウトの取り合いでリードをなかなか奪えない。しかし、14-14の場面で福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)にサーブローテが回る。ここで放ったのは秋季リーグ戦の後半から試しているジャンプサーブ。チーム方針通りに積極的に攻め、速いスピードで相手コートを襲う。サービスエースを2本決めるなど、全慶大をこれで突き放しそのまま逃げ切った。第2セットからは、かつてFC東京で活躍した元Vリーガーの伊東克明(平12卒)らを投入する。現役とOBが同じコートに立ち、新たな化学反応を見られるのもこの定期戦の魅力の一つ。「純粋に楽しかった」(伊東)と語るように、引退してもなお色あせることのないプレーで会場を沸かせた。試合はジュースにもつれ込むも、藤中が25-25から2連続でスパイクを決め、ストレートで全慶大を下した。

ジャンプサーブを放つOBの伊東

 全明大戦も初めは拙攻が続くが、中盤に連続得点で点差を広げると、センターからの多彩な攻撃で全明大を翻弄(ほんろう)する。この日は多少サーブレシーブが乱れても、セッターの山口頌平副将(スポ3=長崎・大村工)はセンターからの攻撃を多用。福山、加藤久典(スポ3=東京・早実)は高い決定率を誇り、藤中や喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)もセンターからバックアタックを決める場面が目立った。第2セットでは一転、サイド中心の攻めに切り替える。また、全慶大戦の反省を踏まえて改良したブロックも功を奏した。短い期間の中で修正したことが結果にすぐ表れたのは、今後につながる収穫となったはずだ。

相手のブロックが完成する前に、クイックを打ち切る福山

 長らく全早慶明定期戦の優勝から遠ざかっていたが、今回実に8年ぶりとなる優勝を成し遂げることができた。慶大が2部に降格し、明大もことしは思うような成績を残せていないため、この結果は妥当かもしれない。しかし、3試合いずれも内容は伯仲したものであり、どう転んでも不思議ではなかった。関東大学リーグ戦で敗れた中大などに勝たなくてはインカレの頂点は見えてこないが、そのためには格下の相手を圧倒することも求められてくる。試練の1カ月、どれだけチームを理想のかたちに近づけられるか。

(記事 谷口武、写真 吉澤奈生)

セットカウント(対全慶大)
全早大 25-23
27-25

全慶大
スタメン
レフト 喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)
レフト 藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)
センター 福山汰一(スポ4=熊本・鎮西)
センター 加藤久典(スポ3=東京・早実)
ライト 田中健翔(スポ3=熊本・鎮西)
セッター 山口頌平(スポ3=長崎・大村工)
リベロ 後藤光明(社3=東京・早実)
セットカウント(対全明大)
全早大 25-21
25-20

全明大
スタメン
レフト 喜入祥充(スポ2=大阪・大塚)
レフト 藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)
センター 福山汰一(スポ4=熊本・鎮西)
センター 加藤久典(スポ3=東京・早実)
ライト 田中健翔(スポ3=熊本・鎮西)
セッター 山口頌平(スポ3=長崎・大村工)
リベロ 後藤光明(社3=東京・早実)
コメント

伊東克明(平12卒)

――久々の試合だったと思われますが、プレーの出来のほどはいかがでしたか

全然ですね(笑)。いま自分がやれることぐらいはできたかなと思いますけれど、プレーで現役に貢献しようとも思っていませんでしたし。自分が学生の時にこうしていれば良かったと思うことや、社会人としてバレーをやって自分が経験したことを選手に伝えられる場になればいいなと。それが最後優勝というかたちで終わったので、僕は満足しています。

――バレーボールの試合というのは現役を引退して以来でしたか

そうですね。5年ぶりです。

――きょうに向けてどのような調整をされましたか

大学に平日通ったりはしました。学生とは初対面で、いきなり顔を合わせて試合ができるわけでもないので、コミュニケーションを取ったりしました。きょうはお互いにいい雰囲気でプレーできたと思いますね。

――全慶大戦の第2セットはフル出場されました

純粋に楽しかったです。現役と交流を深められる機会もなかなかないので、それが試合というかたちで深められて、現役とプレーすることもバレーボールをすることも楽しいなと改めて感じました。

――全早大のキャプテンを務められたわけですが、現在のチームはどのように映りましたか

僕がキャプテンをやったのは一番年上だからという理由ですが。(現チームは)いいものを持っていますけれど、改善できるところもいくつかあると思います。4年生のプレーヤーが1人ということで、4年生がコートにいないときに引っ張る人がいなくなってしまうことがありました。改善点は多いと思いますが、大きな可能性のあるチームだなと映りました。

――気になった選手などはいましたか

みんな素晴らしいものを持っているので、それを安定して出せたらすごくいい力になれると思います。

――早大時代の4年間を振り返っていかがでしたか

もっといろいろ考えながらバレーをしていれば、もっといろいろできたなと思います。学生はそういった面で未熟なので。

――インカレ(全日本大学選手権)を控えた後輩たちにメッセージをお願いします

力はあると思うので、あとはそれを試合で出せるかどうかです。メンタル的な面が多いと思いますが、そういったところを試合に出ているプレーヤーに限らず、試合に出ていない人、ユニホームを着ていない人、そして監督、コーチ、スタッフも一丸となって優勝を目指していけば、可能性は十分にあると思います。

福山汰一主将(スポ4=熊本・鎮西)

――全慶大との試合を振り返ってみていかがですか

全カレ(全日本大学選手権)前で格下相手に負けられないので、そこを意識していました。全カレに向けてサーブとファーストブレイクをしっかりと切るということをやってきたので、そこをやろうと思っていたのですがまだまだサイド陣の決定率不足が目立つので、そこら辺もしっかりと二段トスをはっきりとリバウンドを取るなり、打ちにいくなりしてくれれば効果率も上がると思います。それらをもうちょっと一人一人意識していかないといけないのかなと思います。

――全明大との試合ではブロックが良かったと思います。

慶大との試合を見た時にレフトの人たちがブロックに当てて飛ばしていたので、その対策だけしたら結構楽にはまってくれました。その点でブロックを引っかけてちょっと相手もイライラしていたと思います。そこで通過点を落としてくれたのでしっかりと止められたのではないかと思います。

――きょうはご自身のサーブが良かったと思いますが振り返ってみていかがですか

天皇杯(予選)の方が入っていたので、もう一回感覚からしっかりと作って精度を上げていこうと思います。

――きょうは元VリーガーのOBの方と共にプレーされていかがでしたか

リベロの福田さん(誉、平14卒)はかたちが非常に良くてレシーブとかサーブレシーブも結構返っていて、レフトの伊東さん(克明、平12卒)もリバウンドなどはっきりしていてこちらとしてもフォローに入りやすかったです。そこら辺のメリハリは現役の人たちよりもやはりうまいと思いました。

――全日本大学選手権に向けての調整の進み具合はいかがですか

練習試合などを多めに入れてサーブでしっかりと攻めてファーストブレイクで切るというかたちをもう少し確立していこうと思っています。もう予定は入っているのでその練習試合までにどれだけサーブの技術を高められるかというのがまず一つ。サーブレシーブが返れば流れが良かったときとかするする切れたので、しっかりと連続得点を取れるようなチームをつくれればまだ全カレでも戦えると思うので頑張りたいです。

藤中優斗(スポ1=山口・宇部商)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

インカレに向けた試合ということで難しい部分もあったのですが、自分たちはサーブとレセプションをしっかり返すということを目標にして臨みましたが、途中途中甘い部分が出てきてしまったので、そういった部分をインカレに向け修整していかなくてはと感じた試合でした。

――サーブで攻めていました

チームの方針としてサーブで攻めることを心がけていたので、そこができたかなと思います。

――全明大戦では決定率が高かったですが

これまでつなぐようなプレーをしてしまって思いっきりできていなかったので、力を込めてしっかり打っていこうと心がけていました。自分自身終盤に全く決まらなくなってしまったので、最初から最後まで決め切れるようにやっていかなくてはいけないなと感じました。

――インカレに向けて個人として改善していきたい点はありますか

やはりもう少しサーブレシーブを安定させることと、スパイクでしっかり貢献したいです。後はセンターの攻撃を生かすのがワセダのバレーなので、バックアタックに力を入れて取り組んでいこうと思います。

――インカレへの意気込みを教えてください

福山主将(汰一、スポ4=熊本・鎮西)を最後に日本一にさせてあげたいという気持ちが全員とても強いので、残り1カ月切っていますけれど、練習からしっかりと取り組んで、最後に福山主将を笑顔で終わらせてあげられるように頑張ります。