第45回全日本女子選手権 | ||||
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早大 | 0 | 0-0(前半) 0-1(後半) |
1 | スフィーダ世田谷FC |
【得点】 (早大)なし (スフィーダ世田谷FC)47分:渡辺瑞稀 |
11月も終わりに差し掛かり、冬の訪れを感じる鳥取の地で第45回全日本女子サッカー選手権(皇后杯)の2回戦が行われた。1回戦を延長の末、辛くも突破したア式蹴球部女子(ア女)は、なでしこリーグ1部の強豪・スフィーダ世田谷FCと対戦。序盤から実力のある相手に対して粘り強く応戦するア女であったが、後半開始早々にフリーキック(FK)から先制点を奪われてしまう。その後は、相手の強度が高くコンパクトな守備陣形をなかなか崩すことのできないア女。最後まで1点が遠く、そのまま1-0で敗れ、皇后杯2回戦で姿を消すこととなった。
試合後うなだれる選手たち。2回戦の壁は高かった
前半開始直後からハイラインを敷く相手DFに対し、MF三谷和華奈副将(スポ4=東京・十文字)やFW崎岡由真(スポ1=浦和レッズレディース)が背後を狙えるよう、攻撃を組み立てるア女。11分にはその三谷が右サイドで仕掛けこの試合のオープニングシュートを放つと、13分にはルーズボールを拾った三谷が崎岡へパスを送る。崎岡はシュートまで持ち込めないが、こぼれ球を拾った三谷が再度右サイドで仕掛けクロス。これにMF築地育(スポ3=静岡・常葉大橘)がヘディングで合わせるも、ポストに嫌われてしまう。一方で15分を過ぎた辺りから主導権は徐々にスフィーダ世田谷FCへ。18分、29分とサイドを崩されゴール前でフリーでシュートを放たれてしまうが、いずれも枠外となり難を逃れた。流れを取り戻したいア女は38分、三谷がグラウンダーのクロスを送ると、ファーサイドからMF浦部美月副将(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)が合わせるが、うまくミートすることができず。互いに均衡を破ることができないまま前半を終えた。
ドリブルするMF笠原綺乃(スポ4=横須賀シーガルズJOY)
迎えた後半、試合は開始早々に動く。47分にア女陣内中央で相手にFKを与えると、キッカーが上げたクロス性のボールは、誰にも触れられずにそのままゴールへと吸い込まれてしまう。1点ビハインドとなったア女は55分、スローインから左サイドを崩すと、浦部、MF白井美羽(スポ3=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)とつなぎ、最後は崎岡がシュート。しかし相手DFの足に当たり同点とはならない。その後ア女は、左サイドの浦部の突破を中心に相手ゴールへと迫るが、なかなか得点機を生み出せず。逆に中盤以降は、地力に勝る相手の攻撃をDF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)を中心に何とか耐え抜く展開が続く。そのまま試合終盤まで劣勢を強いられたア女。ポジション変更も駆使して何とか1点を奪いに行くが、無情にも0-1のまま試合終了のホイッスルが鳴った。ア女の今季の皇后杯は2回戦敗退という結果に終わった。
サイドで好プレーを見せた浦部。ユース時代のよく知る相手と渡り合った
昨年の皇后杯でベスト16に入り、WEリーグ勢撃破まであと一歩へと迫ったア女。そんな昨年を超えるべく、再びWEリーグ勢撃破、ベスト8進出を目標に今大会に臨んだが、2回戦でなでしこリーグ1部の強豪に屈した。「自分たちが何もできなかった訳では無い」(後藤)、「受け身になるつもりはなく十分できると思ってやっていた。それは実際に(やってみて)いけると思えた」(浦部)となすすべなく敗れたわけでは決してない。それでも「今できることを最大限やった中で、点を取れなかったし、点を取られてしまった」(後藤史監督、平21教卒=宮城・常盤木学園)。スコアにも現れた相手との差は確実にあった。特に得点力については「今ある強みは強みとして、結果として得点になっていないので、得点から逆算した時に何が必要かを突き詰めていかなければいけない」(後藤監督)と、シーズン開幕前から一つの課題としている部分であり、関カレ(関東大学女子サッカーリーグ)では通用していても、この日のようなレベルの高い相手や一発勝負となる試合では、改めて1点を取ることの重要性を再確認させられた。
皇后杯も終わり、今季の試合も残すは大学選手権(インカレ)のみ。昨年は無念の2回戦敗退となったこともあり、何としても日本一奪還を成し遂げたいところだ。残り1カ月、やれることは限られているかもしれないが、今回再び突きつけられた得点力という課題に向き合う時間はまだある。「自分たちが積み重ねてきたもの、もっているものをどう得点につなげていくかというところを改めて整理して、インカレに向かいたい」と後藤監督。「簡単には切り替えられないかもしれないけれど、気持ちの面も技術の面も、1個だけじゃなく2、3個と上げていけるように、全員で頑張っていきたい」と後藤主将。全ては1月6日、西が丘のピッチで笑顔でトロフィーを掲げるために――。今季のア女の全てを懸けた戦いが今また幕を明ける。
(記事 髙田凜太郎、写真 前田篤宏、大幡拓登)
スターティングイレブン
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 16 | 丸山翔子 | スポ3 | スフィーダ世田谷FCユース |
DF | 2 | 夏目歩実 | スポ4 | 宮城・聖和学園 |
DF | ◎3 | 後藤若葉 | スポ4 | 日テレ・メニーナ |
DF | 5 | 田頭花菜 | スポ3 | 東京・十文字 |
MF | 6 | 浦部美月 | スポ4 | スフィーダ世田谷FCユース |
MF | 9 | 三谷和華奈 | スポ4 | 東京・十文字 |
MF | 10 | 築地育 | スポ3 | 静岡・常葉大橘 |
MF | 30 | 大山愛笑 | スポ1 | 日テレ・東京ヴェルディメニーナ |
FW | 7 | 笠原綺乃 | スポ4 | 横須賀シーガルズJOY |
FW | 8 | 白井美羽 | スポ3 | ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ |
FW | 28 | 﨑岡由真 | スポ1 | 埼玉・浦和レッズレディースユース |
→64分 | 26 | 千葉梨々花 | スポ1 | 東京・十文字 | ◎=ゲームキャプテン |
コメント
後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
――ここ数年の結果を含め、2回戦の壁の高さのようなものも感じる試合でした。振り返っていかがですか
スフィーダさんは特殊な戦術でやられているチームですが、それに対してしっかりと準備をして臨みました。もちろん危ないシーンはありましたが、ゴール前まで行けなかったわけでもチャンスがなかったわけでもないですし、やっぱり強さみたいなものがあと少し足りなかったという感じです。
――特殊な戦術、と言うところ含め相手に対してはどのような想定をし、実際にどのような印象を受けましたか
非常に切り替えが早い中であのハイラインの取り方は特殊で、スフィーダさん以外ではあまり見たことがないかなと思います。ただそれに対して準備してきた部分で、オフサイドに何回か引っかかってはいましたが、チャンスは作れていたので。やっぱりゴール前のところの強さがあともう一つ必要だなとは感じました。それから裏のスペースに(パスを)置いてくるというところは、徹底していましたね。ディフェンスのラインバックで田頭や夏目が触ることができず、後藤(若葉)がカバーに入ることで事なきを得ている。じゃあもう一つ早くラインバックできないのか、触れないのかというところや、セカンドボールを拾えるかというところが非常に重要だったと思います。もう一つはリズムを変えて後半には(パスを)つなげる時間帯もできていたと思うので、一度ディフェンスラインに落として、相手の縦に速いサッカーに合わせないサッカーとかが出来なかったか、ということ。相手のことをしっかりスカウティングしてきたからこそ、もう少し自分たちのサッカーをやれたら良かったかなと、それは私自身が選手たちにそこまで準備してあげられなかったところで、責任を感じています。
――今後は今日よく効いていたサイドの攻撃を極めていくのか、新たな攻撃パターンを模索していくのか、現時点ではどちらを最重要に考えていますか
今ある強みは強みとして、結果として得点になっていないので、得点から逆算した時に何が必要かを突き詰めていかなければいけないと思います。うちはサイドだけが強みではなく中盤の4枚も強みなので、じゃあそれを生かしてどんな攻撃をしていくのかというイメージが見える時と見えない時と、まだまだ差があるなと。サイドに関してはある程度かたちが見えているのですが、中盤を生かしきれていないので、どちらかに比重を置くというよりは、もちろん相手の戦術もあって、その中でサイドだけを使っていては封じられてしまった時に何も出来なくなってしまいますし、偏るのではなく相手を見て変えられるようにしていきたいです。
――皇后杯ベスト8を目標にしてきた中で、それが潰える結果となりました。チームの雰囲気、メンタリティ、サッカー面と目標に達しなかった理由みたいなものは何か感じますか
メンタル面が足りないとすると、例えばできるはずのことができない、とか最初の入りで慌てて失点してしまうとかになると思うんですけど。そういう意味では彼女たちがもっている、今できることを最大限やった中で、点を取れなかったし、点を取られてしまったという感じだと思います。私の中で今年のチームは、積み重ねてきたことをしっかりと出せるチームだと思っていて、逆に言えば想定外のことがあまりないチームで。それはこの子たちの強みだし、積み重ねてきたものは出せるんですが、かといって積み重ねてきていないものを出せるような、勢いとノリみたいなチームではないイメージがあります。だからこそ今日感じたような、例えば球際でコーナーキックにしてしまった部分、それはどのポイントを1ミリ直して、1ミリ早く降りてきて、1ミリ早く体を早くぶつければ良かったのか、という部分も、積み重ねていけば改善できる子たちなので。改めて、この皇后杯ベスト8というチャレンジは終わりましたが、力のあるチームとの試合から得られたものを、自分たちチームの積み重ねにいかに昇華していくかというところが、このチームの残り1つの目標に向けて最大限できることかなと思います。
――インカレまで残り1カ月間、どのようにチーム作りをしていきたいですか
ここから(チームを)大きく変えることは無いです。ただ昨年と違ってインカレまでに少し時間ができた分、今「得点をどう取るか」という課題を全選手が感じていると思いますし、自分たちが積み重ねてきたもの、もっているものをどう得点につなげていくかというところを改めて整理して、インカレに向かいたいと思います。
DF後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)
――今日の試合を振り返っていかがですか
自分たちが何もできなかった訳では無いのですが、これが現実で。もちろん皇后杯とインカレを自分たちは目標にやってきたから、この負けをインカレに、とは簡単には言いたくないけれど、自分たちには修正しなければいけないところ、課題がまだまだ沢山あるということを突きつけられた試合でした。
――前半は攻められながらもセットプレー、サイドから良い攻撃がありました。振り返っていかがですか
前半は比較的、相手の隙をついて大きなサイドチェンジから和華奈の特徴を生かして中に入っていくというところまでは行けていたのですが、美月のダフった1本くらいしかシュートに結び付きませんでした。良いかたちを作っていてもシュートまでいかないと勝てないし、ああいったセットプレー1個で決してしまうので。今年は最初から得点力というところが課題だったと思うんですが、サイドの和華奈(三谷)という武器でどう点を取るのか、それが封じられたらどうするのかというところを、インカレまであと1カ月もないですが、自分たちがやってきたことを突き詰めて整理して、精度を上げていきたいと思います。
――2年前の皇后杯2回戦と同じような、フリーキックでの失点になりました
自分たちの準備が足りなかったと思いますし、同じような形では2度とやられてはいけないと思うので、もう1度全員で声をかけてやっていきたいなと思います。
――システムに関しては色々と変化があった中でご自身のコンディション含めて今日の試合のプレーに関してはいかがですか
相手は裏に蹴って走ってくるというのは分かっていた中で、危ないシーンを作られながら(流れの中で)失点はしなかったというところは、ディフェンスラインとして収穫だと思います。ただ大学サッカーでもあのようなサッカーをするチームはありますし、これまで大学サッカーでは空中戦で育が競ってセカンドボールを拾って、ということができていましたが、やっぱり上のレベルになると通用しない部分もあると感じました。自分たち一人一人も上げていかなければいけないですし、相手の状況を見て判断して、プレーを変えるという力もつけていかなければいけないと思います。
――目標として掲げた皇后杯ベスト8、WEリーグ撃破というところは達成できないことになりました。何が足りなかったのか、現時点で振り返ってどのように感じますか
負けてからこんなことを言うのは悔しいし嫌ですが、やっぱり自分たち4年生は4年間やってきて、自分たちで掲げた目標だからこそ思いも強くて、そこにどうやって1、2、3年生を巻き込んでいくか。今年は1年生も多く試合に出ているけれど、試合に出る責任やもっと熱い気持ちをもたなければいけないと思います。今年「誇闘」というスローガンを掲げた中で、もちろん誇りの持ちかたは様々だしやっていないとは思わないけれど、いつものみんなを知っているからもっと求めたい。負けてから悔しがるなんて本当にもったいないし、ピッチに立っている以上1年生も4年生も関係ないので、まずは気持ちで変えられる部分やもっと熱くなっていいんじゃないかな、ということを含め、チームの雰囲気作りを考え直さなければいけないと思いました。あとはシンプルに1対1で勝てないことに関して、もちろんスフィーダの選手たちは個人のレベルが高かったと思いますが、そこに勝っていかないと自分たちは日本一なんて絶対に取れないと思うし、自分たちが今回突きつけられた現実を、練習から自分たちで競い合ってチーム内で上げていくしかないと思っています。チームのメンタル面、個人的なところにおいて、できていないことばかりじゃないけど、できていることは整理して、できていなかったことは1個1個改善していくしかないと思います。
――1カ月後にインカレが始まります。今すぐに切り替えるというのは難しいとは思いますが、どのように準備していきたいですか
やっぱり簡単には切り替えられるものではないですが、1番気持ちの強いはずの4年生がずっと引きずっていたらチームは良くならないと思います。残りインカレがあるので、今日のような出し切ることができない、負けたことよりも出し切ることができなかった悔しさを、2度と味わいたくないですし、本当にチーム全員が「自分が勝たせるんだ」というくらいの気持ちが必要だと思います。簡単には切り替えられないかもしれないけれど、そんなことを言っている暇はないので、気持ちの面も技術の面も、1個だけじゃなく2、3個と上げていけるように、全員で頑張っていきたいと思います。
DF浦部美月副将(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)
――2回戦敗退となりましたが、90分間を振り返っていかがでしたか
前半も後半も含めて左ワイドで起用していただいて、個人的にもシュートシーンはありましたし、えぐってゴール前まで行くチャンスもあった中で、最後決め切れなかったりシュート打ち切れなくて点を取ることができなかったのが、失点してしまったことよりも勝てなかった要因だと個人的には思います。今試合を振り返って出てきた言葉ですけど、率直に(WEリーグ撃破を)目標としていたところだったので、悔しいの一言です。
――公式戦では今季一番レベルの高い相手との試合だったと思いますが、実際に試合を通してどのように感じましたか
どういうサッカーをしてくるかというのもスカウティングもしっかりやってくれてチームに落とし込んでくれましたし、古巣というのもあり、個人的にも知っている選手や特徴を大体分かっている選手も多くて、受け身になるつもりはなく十分できると思ってやっていました。それは実際に(やってみて)いけると思えたので、やはり悔しいです。
――個人のプレーについてはどのような評価をしますか
前半は後半に比べて最初の入りのところでディフェンスラインに入ることが多かったですけど、前半の終わりごろや後半は左サイドで崩せるなという印象はあったので、いけるなという自信を持てました。でも最後のところがやはり足りなかったなと思います。
――得点力を上げるところはシーズンを通しての課題ですが、こうして無得点に終わってしまったことはまだまだチームの課題として得点力があるなと感じますか
はい。リーグ戦と違い引き分けはないので、これからのインカレを含め点を決められたら決めなければ負けてしまいますし、90分、延長で決められなかったらPKという戦いになります。そこはチームとしても個人としても、今に始まったことじゃないですが、もう大学最後の大会に懸けるしかないので、まだまだできることを最後の部分にこだわって積み上げていきたいです。
――皇后杯の目標であったWEリーグ勢の撃破を達成できなかった一番の要因は何だと思いますか
今日のスフィーダとの試合を迎えるに当たって、チームとしても個人としても一人一人が準備してこなかったわけではないですし、でもやはり今週の練習を振り返ってみても、一個一個のシュートやクロスの練習をこだわれていなかったり、そういった細部のところがこういった試合で出てくるというのを常々感じています。もう時間もないですし大きく変わることもないと思うので、そういう細かいところをこだわり抜き突き詰めてインカレに向かっていきたいです。