変化にチャレンジする早稲田 中大下し優勝に望みをつなぐ

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2020 第94回関東大学リーグ戦 第19節
早大 2-0
1-1
中大
【得点】
(早大)1’ 鍬先 祐弥、19’ 阿部 隼人、51’ 水野 雄太
(中大)90+2’髙岸 憲伸

 前節順大にショッキングな敗戦を喫し、優勝へ黄信号が灯った早大。優勝に向けもう負けられない状況の中、関東大学リーグ第19節で最下位に沈む中大と対戦した。試合は開始早々の1分に早大がMF鍬先祐弥(スポ4=東福岡)のゴールで先制すると、19分にMF阿部隼人(社4=横浜F・マリノスユース)、51分にMF水野雄太(スポ2=熊本・大津)のゴールで順調に得点を重ねていく。前節5失点と崩壊した守備陣も、試合を通して高い集中力を披露。終了間際に1点を失ったが、最少失点で切り抜け試合終了。2試合ぶりの勝利で、優勝に首の皮1枚つなげた。

貴重な追加点をあげた阿部

 前節から5人のメンバー変更、そして4-4-2へフォーメーション変更し試合に臨んだ早大。外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)はこの意図を「順大さんや立正大さんが早稲田のウィークポイントを分析してきて、自分たちが変わっていかなきゃいけないというところで、そこにチャレンジした」と説明したが、この狙いが見事に的中する。1分、鍬先が相手DFのクリアボールに反応し、右足を振りぬく。ボールは低い弾道でゴール左隅に突き刺さり、早大が先制に成功。前節は出場停止でチームが大敗する姿を見ることしかできなかった悔しさを、ゴールという最高の結果で晴らした。さらに19分には右サイドの高い位置でボールを奪うと、そこから一気にショートカウンター。MF倉持快(人3=神奈川・桐光学園)のパスを受けたMF田中雄大(スポ3=神奈川・桐光学園)が敵を引き付け、左サイドフリーの阿部にラストパス。阿部が放ったシュートはゴール左に吸い込まれ、早大が追加点を獲得。攻守で中大を圧倒し、2-0で前半を終えた。

ゴールを奪い歓喜の輪を広げる選手たち

 後半は何としても得点を奪いたい中大が攻勢を強め、FKなどから早大ゴールに迫る。しかしDF杉山耕二主将(スポ4=三菱養和S Cユース)、GK山田晃士(社4=浦和レッズユース)を中心とした守備陣が粘り強いディフェンスを見せ、得点を許さない。すると51分、守備陣の粘りに攻撃陣が応え、早大に3点目が生まれる。田中のパスを受けた水野がゴール前に侵入し左足一閃。ボールはキーパーの手をはじき飛ばし、ゴールに吸い込まれた。

 3点をリードした早大だったが、その後も一歩も引かず、攻撃的な戦いを続けた。しかし多くのチャンスをつくりながらも4点目は奪えず、逆に試合終了間際の92分にはゴール前の混戦からネットを揺らされ失点。あと数分守り切れれば公式戦6試合ぶりとなるクリーンシートでの勝利だっただけに悔やまれる失点となったが、「新しいチャレンジをしていて、できるだけ多くの選手にこの状況を体感してほしいという狙いもあった。(中略)致し方ないというか、点差があったからできたチャレンジだったので想定内」と、外池監督は決して悲観しない。試合はそのまま終了し、早大は2試合ぶりの勝利となった。

 2試合ぶりの勝利で優勝に望みをつないだ早大。明大より2試合消化が多い状況ではあるが、勝ち点3差で首位に立っている。まだ自力優勝の目はないが、勝ち続けることが明大への最大のプレッシャーとなるだろう。そして、次戦はいよいよ早慶戦だ。今季は例年とは異なりリーグ戦と定期戦を兼ねて行われるイレギュラーな形ではあるが、負けられない戦いであることには変わりない。リーグ優勝、定期戦9連覇、そしてなにより、“早稲田”の誇りのために――。変化・チャレンジを恐れない早大が、最大のライバルを打ち破る。

(記事 稲葉侑也 写真 手代木慶、山崎航平)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 山田 晃士 社4 浦和レッズユース
DF ◎5 杉山 耕二 スポ4 三菱養和S Cユース
DF 大西 翔也 スポ3 浦和レッズユース
DF 17 工藤 泰平 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 25 小倉 陽太 スポ1 横浜F Cユース
→77分 14 植村 洋斗 スポ1 神奈川・日大藤沢
MF 鍬先 祐弥 スポ4 東福岡
→70分 28 丹羽 匠 スポ2 ガンバ大阪ユース
MF 19 倉持 快 人3 神奈川・桐光学園
→83分 46 平田 陸人 商2 埼玉・早大本庄
MF 阿部 隼人 社4 横浜F・マリノスユース
→86分 柴田 徹 スポ2 湘南ベルマーレU18
MF 13 杉田 将宏 スポ3 名古屋グランパスU18
MF 11 水野 雄太 スポ2 熊本・大津
→70分 10 加藤 拓己 スポ3 山梨学院
FW 田中 雄大 スポ3 神奈川・桐光学園
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
早大 40 19 13 44 17 27
明大 37 17 12 33 16 17
順大 35 19 11 34 30
駒大 29 16 36 28
桐蔭横浜大 27 17 26 22
国士舘大 26 18 28 29 −1
慶大 22 19 20 27 -7
立正大 21 17 27 29 −2
筑波大 19 17 21 31 -10
10 法大 17 13 21 19
11 専大 10 17 12 25 52 −27
12 中大 17 12 22 37 −15
※第19節終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――前節、順大に0-5の大差で敗戦を喫した後の試合となりました。どのような修正をして臨みましたか

順大の時もいい意味で学生らしいというか、立正大との試合も含め、自分たちもああいう試合がこれまでになかったので、なかなか疲労が取れていないということを理解しないで試合に入ってしまって、順天さんへのリスペクトはとてもあったんですけど、自分たちのところから崩れていく、そういうコンディションしか作れていなかったので、そういう現実と向き合うというところをしっかり整理しました。もう一つはやっぱり、またこの日々状況が難しくなっている中で、改めて一日一日を大事にして、また優勝が見えてきたり、あと何試合だとかいうのを計算していますけど、我々は最後まで全力で走り抜ける、そういったことをしっかり整理をして、そのためには今走っていなきゃいけないし、逆に走っていたからこそ躓いたり、順大戦のような試合があったと思うので、変にネガティブに捉える必要はないかと。ちゃんと頭を整理して、対中央というところで向かったんですけど、これまで積み上げてきたもので、自分たちの良さとか強みとかを逆にこのくらいだという風に捉えすぎていたところもあったと思うので、今日の試合の入りみたいに、もう一度自分たちで走るという部分、相手に圧力をかけるというサッカーのひとつの姿勢みたいなものを追求しようというところで、今日4-4-2でスタートしましたが、小さな前線の4人がしっかり頑張って、ダブルボランチもそこに対してきっちり機能していた、と。これまでの自分たちを否定するわけではないですけど、もう一度見直して、ここから何を上積みして、順大さんや立正さんが早稲田のウィークポイントを分析してきて、自分たちが変わっていかなきゃいけないというところで、そこにチャレンジして今日を迎えて、それが少し体現できたかなという風には思います。

――杉田を1トップ、小倉を1ボランチの4-1-4-1にした時間帯がありましたが、意図はどのようなところだったのでしょうか

かなり前線の選手には負荷がかかるプランだったので、だいたい15分から20分くらいを目安にそのかたちにして、しっかり引き込んで中で奪おうというところがあったんですけど、その切り替わるところがなかなかうまくいかなくて、中央さんはアンカー脇を使うところが上手なので、あそこから侵入されたという意味では、そこは難しい時間帯だったという風に思います。

――前節出場停止だった鍬先選手が戻ってきて、早速ゴールも決めました

またこれでクワの存在というのを強く感じる試合になったと思いますし、今日は開始15分でどれだけ圧力をかけて、というところで言うと、チームにとってはかなり大きく、自分たちの戦い方だったり展開のタイミングで勇気と自信を与える、素晴らしい活躍だったと思います。やっぱりクワがいるといないとでは大きく違うなと改めて感じました。プロフェッショナルな選手だと感じます。

――終盤、中大の猛攻に遭い1点を失いましたが、失点をどう捉えていますか

1失点してしまったという感じかなと思ってます。ただ我々も3-0という状況の中で、新しいチャレンジをしていて、できるだけ多くの選手にこの状況を体感してほしいという狙いもありました。ダブルボランチや前線の選手が変わり、新しいシステム、メンバーで試行錯誤しながらだったので、致し方ないというか、点差があったからできたチャレンジだったと思うので、そこは想定内という風に捉えていいかなと思います。

――次節は早慶戦となります

特別な意識しかないので、本当に誰が何と言おうと慶応には負けられないですし、それは今のチーム状況とか抜きにして、大学サッカーや大学スポーツをけん引する両校という自負がどちらにもあると思いますし、今回はリーグ戦のひとつという歴史の中でも初めての取り組みの中で、多くの中継も新しいかたちでやらせてもらったり、難しい状況の中でも部員や関係者が尽力して有観客で行いますし、ビッグマッチとなると思います。その中でも今日のようなチャレンジができたというのは、一つ大きな成果、手応えにもなりましたし、前向きにあと一週間を過ごして絶対勝ちたいなと思います。

MF鍬先祐弥(スポ4=東福岡)

――試合を振り返っていかがでしたか

中大さんは後ろからボールを保持して、ビルドアップに優れたチームだということは分かっていました。自分たちとしては前半の入りから相手に圧力をかけて、なるべく前線で(ボールを)奪ってショートカウンターという狙いがありました。前半後半通して結構うまくいったかなと思います。でも、奪った後のショートカウンター、ゴール前の質はまだまだこだわらなければいけないなと思っています。

――前節はご自身が出場停止という中で、チームの敗戦をどのように受け止めていましたか

あの日は中2日ということで、外から見ていて率直にみんな疲労もあって体が重そうだなという感じで覇気もなかったです。自分も観ていて悔しかったし、自分が次出るなら勝たないと、自分の存在価値がないと思っていました。この試合勝つというのを大前提として、個人として結果を出したいという想いが上手くプレーに反映されたかなと思います。

――そんな中で前半先制点を決め、チームに流れを引き寄せました

前節の敗戦から、自分が勢いを作り出すということを意識していたので、そういった中でいい位置にボールがこぼれてきたので気持ちよく受けて、入ったので良かったです。

――ゴールパフォーマンスをされていました

あのポーズはムバッペのポーズなのですが、結構好きで(笑)。(ゴールを)決めたらやろうと決めていたのですが、ちょっと恥ずかしくて控えめになってしまいました(笑)。

――前半加藤(拓己、スポ3=山梨学院)選手がいない中で、攻撃の組み立て方は、どのように考えていましたか

今日は前線に杉田(将宏、スポ3=名古屋グランパスU18)だったり、田中(雄大、スポ3=神奈川・桐光学園)だったり、前線にはいるものの間で受けたり、間にランニングを起こせる倉持(快、人3=神奈川・桐光学園)だったり、水野(雄太、スポ2=熊本・大津)だったりがいたので、そこは間を狙いつつまず裏ですね。相手のラインを下げさせるというのを意識していました。

――攻守の切り替えについてどのようなことを意識していましたか

やっぱり自分のボランチのところで、ポジションの切り替えだったり球際だったり、反応が遅れてしまうと、相手はうまいので一気に流れを持っていかれたりピンチを迎えるなということは感じていました。そこを小倉(陽太、スポ1=横浜FCユース)や前線は特にみんな反応が良くて、球際だったりセカンドボールというところで相手を圧倒できたなかなと感じています。

――とてもいい流れで早慶戦を迎えます。意気込みを聞かせてください

慶応さんは、全員がハードワークできてすごくいいチームだと思っています。自分たちとしては、慶応さんの勢いだったり堅い守りを崩すだけの勢いを、今節うまくいったようにもう一回前半の入りから出していきたいです。前季も負けている相手なので、早慶戦という大舞台で勝って、喜びを分かち合いたいと思います。