栄冠掴みかけるも…まさかの逆転負けで悔しい2位入賞

ア式蹴球男子
アミノバイタルカップ2020 第9回関東大学トーナメント大会 兼全国大会予選
早大 0-0
1-1
延長前半0−2
延長後半1−0
流通経大
【得点】
(早大)88’加藤 拓己、120+1’杉田 将宏
(流通経大)90+4’伊藤敦樹、95’加藤 千尋、104’伊藤 陸人

超過密日程の中掴み取った、4年ぶりの大一番。アミノバイタルカップ(アミノ杯)決勝で、早大は流通経大と対戦した。序盤から両者チャンスを作るも得点こそ奪えず、こう着状態のまま迎えた88分。FW加藤拓己(スポ3=山梨学院)が、PKから貴重な先制点をあげる。しかし、そのまま試合終了かと思われた90+4分、流通経大にPKを献上。土壇場で同点ゴールを奪われ、試合は延長戦に突入してしまう。延長前半に2得点を許すと、延長後半の猛攻もMF杉田将宏(スポ3=名古屋グランパスU18)のゴールで1点を返すにとどまりタイムアップ。手中に収めかけた栄冠は、無情にもするりとこぼれ落ち、涙の2位入賞となった。

落ち着いてPKを沈めた加藤

はじめにペースを掴んだのは流通経大。活発に前線からの守備を行う流通経大を前に、早大はビルドアップに苦しむ場面が散見された。しかし16分、21分と立て続けにピンチを迎えるも、それぞれDF杉山耕二(スポ4=三菱養和S Cユース)主将、鈴木俊也(商2=東京・早実)が体を張った守備をみせ、得点は与えない。すると、徐々に早大も攻撃の糸口を見つけはじめる。両サイドバックが高い位置を取り攻撃を組み立てる流通経大に対し、ボールを奪うや否や、サイドに空いた広大なスペースにボールを展開。杉田やFW水野雄太(スポ2=熊本・大津)がドリブル突破を見せ、幾度となく好機を演出した。31分にはパスミスからGKと一対一の場面を与えるも、山田晃士(社4=浦和レッズユース)がファインセーブでゴールを守り抜く。一進一退の攻防をみせ前半を終えた。

後半も開始から両者とも譲らない展開。早大は55分、水野のクロスから決定機を迎えると、一方の流通経大も77分にクロスから決定機を創出。しかし得点の生まれないまま、迎えた88分。MF田中雄大(スポ3=神奈川・桐光学園)がサイドでタメを作り、マイナスの位置にポジションを取った倉持へとパスを届ける。フリーで放った倉持のシュートは、相手DFの手に当たりPKの判定。これをエース加藤が落ち着いて沈め、ついに均衡を破る。

得点を決めた加藤を祝福する早大ベンチ

残る時間はわずか。逃げ切りを図る早大は流通経大に押し込まれる展開に。迎えた90+4分。ゴール前での混戦から、ボールは早大の選手の手に当たり、またもやPKの判定。「山田がいる」という大きな声がベンチから響いたが、祈りは届かず。豪快なシュートがゴールネットに突き刺さり、試合は土壇場で振り出しへ。アディッショナルタイムは3分の表示。ラストプレーでの失点であった。

延長戦に入り、足が止まり始めた両チームであったが、先に得点をあげたのは流通経大。95分、コーナーキックの流れから放たれたミドルシュートは、ゴールポストに当たりゴールに吸い込まれた。遂にリードを許すことになった早大。前線への圧力を強めるが、104分にカウンターから追加点を献上。2点のビハインドは、既に100分以上走り続けた早大イレブンに重くのしかかった。120+1分に杉田が1点を返すも、反撃はここまで。目前に迫っていた優勝の二文字。しかし、あまりにも残酷な結末となってしまった。

「自分たちが至らなかった、ということを現実として受け入れなければならない」と、杉山は唇を噛んだ。ラストプレーでの失点。悔やんでも悔やみきれないのは確かだ。しかし、明大戦(●0−1)の敗戦、慶大戦(●0−1)の敗戦、そして駒大戦(●0−1)の敗戦。今季の早大は、敗戦を糧として成長を重ねてきた。「今日の敗戦があって良かったと思えるように」(MF鍬先祐弥、スポ4=東福岡)。流通経大に借りを返す舞台は準備されている。全国大会の舞台で、必ずや一段と成長を遂げたア式の姿が見られるはずだ。

表彰写真

 

(記事 橋口遼太郎 写真 初見香菜子、手代木慶、山崎航平)


早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 山田 晃士 社4 浦和レッズユース
DF 柴田 徹 スポ2 湘南ベルマーレU18
DF ◎5 杉山 耕二 スポ4 三菱養和S Cユース
DF 22 監物 拓歩 スポ2 清水エスパルスユース
→️延長前前 17 工藤 泰平 スポ4 神奈川・日大藤沢
DF 26 鈴木 俊也 商2 東京・早実
→️HT 大西 翔也 スポ3 浦和レッズユース
MF 鍬先 祐弥 スポ4 東福岡
MF 田中 雄大 スポ3 神奈川・桐光学園
MF 13 杉田 将宏 スポ3 名古屋グランパスU18
MF 25 小倉 陽太 スポ1 横浜FCユース
→️71分 28 丹羽 匠 スポ2 ガンバ大阪U18
FW 11 水野 雄太 スポ2 熊本・大津
→️64分 19 倉持 快 人3 神奈川・桐光学園
FW 10 加藤 拓己 スポ3 山梨学院
→90+2分 18 鈴木 郁也 社4 F C東京U18
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)(囲み取材より一部抜粋)

――非常に結果となりましたが、改めて後半の最後のシーンについてどのように感じていらっしゃいますか

あの時間帯に得点できたので、ゲームをどう締めるかというところだったと思うんですけど、我々としてはより注意深くやらなきゃいけなかったところだと思いますし、それはピッチ上のメンバーたちも感じてたと思いますけど、ハンドでPKを獲得していたというのがあったので、よりああいう場面でその部分は気をつけなきゃいけないなというのは選手たちも感じてたと思いますが、逆に得点できたというところで緊張がほどけてしまったのかな、と。カウンターの場面でもそうですが、そういう隙が得点したことによって生まれてしまったのかなと思います。

――延長前半に2失点を喫しましたが、後半の悪い流れを断ち切れなかったという部分があったのでしょうか

そうですね、選手交代の部分でもイレギュラーがありましたし、そういう中でああいう時間帯で得点をし、ラストワンプレーで失点してしまったというダメージは正直にあったんじゃないかなと思います。

――交代の部分では加藤を先制直後に代えて逃げ切りを図ったと思いますが、延長で加藤がいなかったというのは影響したのではないでしょうか

彼はセットプレーの守備のところでも効いていましたが、ただ当然かなり疲労もしていましたし、そこはある意味予定通りというか、そこはしっかり引き継ぐということも含めてチームで共有していたので、それを体現できなかったというところはあると思いますが、チーム全体にあった隙というのが原因だと思うので、その交代だけがすべてだとは思わないです。

――リーグ戦は優勝争いをしていてという部分で、この負けを切り替えてというところが大事かと思います

今日流経さんは非常に逞しく鍛えられていて、今日こういう試合をさせてもらったので逆にこの準優勝という僕としては誇るべきものもあると思いますし、ただこの敗戦で得たものも大きかったしそのダメージ、ショックの部分と、流経さんという非常にタフなチームと戦えたことによる財産も絶対あると思うのでその悔しさがあることが今後のリーグ戦だったりに必ず生きる、そういう経験でもあると思うのでしっかりリカバリーをして我々として今日の流経さんを見習うというか、それを乗り越えて糧にしていきたいです。

――また土曜には試合があり、リーグ戦も佳境に向かっていくと思います

週末には桐蔭横浜戦があり、明治戦もここでありますが、正直選手たちは非常によく戦っていると思いますし、サッカーとしての厳しさと向き合うのは必然と言えば必然だとは思うので、その中でいよいよシーズン佳境迎えていくと思うので、そういったところを自分たちの目指してるものになるように、それを体現できるようにもう一回挑戦していきたいなと思います。

杉山耕二(スポ4=三菱養和S Cユース)

――悔しい結果となりました。今のお気持ちを教えてください

今年はタイトルを猛烈に意識して積み上げてきました。それだけに素直に悔しいという思いがあります。

――一度リードを奪った中で、延長戦に突入しました。気持ちの面で難しさはありましたか

そこは感じていなかったです。そしてそれを感じさせないように僕自身は意識をしていました

――具体的にこの試合に向けてどのような準備をしてきましたか

流通経大は攻守共に強度が高く、質も高いチームであるということはスカウティングを通してわかっていました。そこの強度の部分で早大が上回れるか否かで試合の結果もわかれてくると考えていました。ただ相手の攻撃にストロングがある分、カウンターがチャンスになるということもスカウティングの中でわかっていました。そういったシーンは何度か出せたのではないかと思います。スカウティングという面では準備は間違いがなかったかなと感じています。

――流通経大の攻撃の圧力が強かった中で、相手のサイドバックが上がったスペースを使うという狙いが見えていました

それは狙っていた形でした。前半後半通じて、相手のサイドバックが高い位置を取った場合は背後のスペースを意識していました。またそこを使ってゴール前まで行き決定機を作ったシーンもあったかと思います。何度かチャンスがあった中で1つでも決められていたらという思いもあります。

――以前のインタビューで、取れるタイトルは全て取りたいというお言葉がありました。今日の悔しい思いはどこにぶつけていきたいですか

まずはこの悔しさを受け入れなければならないと思います。まだまだ流通経大を上回るだけの力はなかった、自分たちが至らなかった、というのは現実としてあるので、まずはそこをしっかりと受け入れる必要があります。ただ今目指すところはリーグ制覇と全国制覇なので、そこに向けてもう一度、結果を取るための日々の積み上げ、積み重ねを意識していきたいなと思います。

――この先リーグ戦、そして全国大会へと試合は続きます。どのような思いで臨んでいきたいですか

今日試合をして、次の試合が土曜日に来ます。今シーズンは本当に止まる時間が無いので、悔しさはありますしなかなか難しいですが、後をひかないように。いい意味で切り替えて、まずは土曜日のリーグ戦に向けて全員でリカバリーをして、いい準備をして臨めればなと思います。

鍬先祐弥(スポ4=東福岡)

――悔しい結果となりました、今のお気持ちを教えてください

正直悔しいです。自分たちのやりたいサッカーという気持ちです。それは流通経大さんが素晴らしかったということに尽きると思います。ただ、それでも自分たちがそれを乗り越えるだけの力が足りないと思ったし、個人としてもチームを勝たせるプレーが1試合通じて全くできなかったので、非常に悔しいです。

――後半一度リードを奪った中で延長が決まりました。気持ちの面の切り替えは難しかったですか

正直、1点入った時に勝ったという気持ちが生まれた事は事実です。しかしそれが隙だったのかなと思います。延長に行くことに関してマイナスな、ネガティブな気持ちではなかったですが、確実に流れは向こうに行っているのを感じていました。その中で自分の力や、チームとしても、その流れを引き寄せる事ができなかったのが、延長での2失点、敗北につながったと思います。

――延長戦、かなり足にきている姿もみられました。その中でどのような思いでピッチに立っていましたか

負けている状況で、運営をしている一年生であったり、応援してくれている部員のためにも走り切らなければいけない、戦いきらなければいけないという気持ちでやっていました。ただ体は正直というか、疲労もあって。言い訳にはしたく無いですが。そういった中でプレーの質も落ちてしまいました。また1からという気持ちで練習に励みたいと思います。

――どのような準備でこの試合には臨みましたか

ひとつはチームとしてこれまで積み上げてきたものを体現して、相手よりも1点でも多く得点を奪って勝つということを、みんなで共通認識として準備してきました。また、自分たちの今年の目標がリーグ制覇、そしてタイトルを取るという事だったので、やはりそこはみんな意識していましたし、準備をしてきたつもりでした。ただ、まだまだ足りないなというのは強く感じました。

――終了間際には1点を返しました。この悔しい思いはどこに繋げていきたいですか

まずは土曜日、すぐに試合があります。リーグ制覇をするためには1試合も負けられないので、まずは今日の負けを引きずらない事が大事だと思います。連戦も続くので、全員でリカバリーをして準備をしていきたいと思います。

――最後にリーグ戦、全国大会への意気込みをお願いします。

今日の敗戦があって良かったと思えるように。またみんなで一つになって、リーグ制覇と日本一に向かって突き進んでいきたいと思います。

加藤拓己(スポ3=山梨学院)(囲み取材より一部抜粋)

――本日の試合を振り返っていかがですか

シンプルに流経さんが強くてうちが弱かったというただそれだけですし、あの時間帯に先制することができて、でもしっかりラストワンプレーで追いついてくる流経さんの勝負強さだったり、延長に入ってから2点を取ってくる辛抱強さ、前への推進力という部分で本当に流経さんが勝ったなと思っています。

――試合を通じて、チームとして流経大の圧力を感じていたように見えました

自分はワントップで、アピアタウィア選手とマッチアップすることが多くて、一つひとつの強度の部分がすごく高い、そういう部分に対してトレーニングの質の高さを感じましたし、そこがさっき言った勝負強さのところにつながってくると思っています。今日本当にただ一つ、今まで自分たちが行ってきたトレーニングがまだまだ甘かったこと、流経さんのほうが自分たちよりも気持ちが強かったということ、圧力という言葉で言ってしまえば簡単ですけど、そういう部分が流経さんは素晴らしかったなと思います。

――ラストプレーはコーナーキックからのPK献上というところで、今日は加藤選手が相手のコーナーキックをことごとくはじき返していましたが、加藤選手が交代して失点につながってしまったなという印象があります。ピッチの外から見ていていかがでしたか

本当にラストワンプレーで、中にいた選手は恐らく自分がこの一試合通じて感じた難しさより、相当な難しさを感じていたと思いますし、やっぱり流経さんの得点をしなければいけないという思いがらすととても強かったと思うので、仮にあそこに自分がいてもはじけなかった可能性もありますし、ピッチのあの時間に出ていた選手たちがやりきれなかった、でもそこだけの責任ではないですし、ベンチの選手たちも油断せずに試合終了の笛が鳴るまで本当に戦う気持ちがあったのかどうか、という部分もそうですし、そこがまだまだ足りなかったと思います。そこがもっと一体になっていれば仮に自分じゃなくても、身長が低い選手であってもはじけるボールだったと思いますし、その一瞬の気の緩みだったのかなと思います。

――相手の両CBがJ1のクラブに内定している選手で、関東大学リーグでもかなりレベルの高い相手だったと思います

普段のリーグ戦の中でも、Jリーグ内定している選手たちとマッチアップする機会を得ていますが、その中でも今日の二人は本当に素晴らしい選手だったというのが率直な感想です。でも自分でもできた部分はあったし、前半の部分でアピアタウィアに勝てない、でもそこで挑み続けるというところで、後半は競り合い方も変えたりしてある程度勝てるようになったりして、自分自身もそこの二人がJ1クラブ内定選手だからといって、引く気持ちはなかったですし、自分自身もこれからプロの世界に出ていく中で、まだまだもっともっと上のレベルの選手たちと戦っていかなければいけないので、今日の二人に止められているようではまだ甘いし、そこに対してもっと圧倒的な力を出せる選手になっていかないといけないなというのは今回の二人のCBに気づかせてもらったなというのはあります。