【連載】早慶女子クラシコ特集 第6回 対談:船木和夏主将×近澤澪菜副将

ア式蹴球女子

 近年で最も強く、最も個性のある世代をまとめ上げるリーダーがDF船木和夏主将(スポ4=日テレ・メニーナ)とGK近澤澪菜副将(スポ4=JFAアカデミー福島)だ。両者の主将観、副将観に迫ると共に、「なぜ大学日本一と皇后杯ベスト8を目標にするのか」、「現状に思うこと」など、今季のア女を語り尽くす。

※この取材は10月28日に行われたものです。

 

 

「なんだかんだ一緒に騒いでいるみたいな。それこそ、お茶目だなって(笑)」(近澤)

――お互いを紹介してください

船木 みんな見た目からわかると思うんですけど、まじでただのしっかりものです。見た通り。お母さん的存在ですね。

――みんなを取りまとめている的な

船木 なんか別に毎度毎度前に立って仕切るというわけではないけど、大事なところでまとめてくれます。自分ら4年の代は癖が強いからそれをなんだかんだまとめている、同じ方向に向けているのは澪菜だなって。必要な時に必要なことを言ってくれる感じですね。

――それは存在感がある。みんなの前で声を出すと鶴の一声のようにチームがガァーっと動く感じですか

船木 それは本当にありますね。みんなわかってるから。ふざけるんですよ。結構(笑)。意外と子供だよね(笑)

近澤 うーん、まぁまぁ(笑)。

船木 ただ真面目なだけではない。いろいろな代と仲が良いですし。そこは自分にはない部分です。コミュニケーション能力がすごい。

――船木さんの紹介をお願いします

船木 めっちゃ褒めたじゃん。褒めないことある?

近澤 いやー良さじゃないけどさ、和夏は一緒というか。もちろん統率力、みんなをまとめる力もあるし、俯瞰して客観的な視点から伝えるということもできます。それこそ、和夏も言っていまししたけど、うちの代は癖が強い人の集まりで、あんまりそういうのが好きじゃなさそうな雰囲気を出していますけど、なんだかんだ一緒に騒いでいるみたいな。それこそ、お茶目だなって(笑)。シンプルに意識高いなって。体のコンディションを整えるためのメニューがあったり、マグネシウムが含まれた水を飲んだり、自作の大きい魚が入ったお弁当を持ってきたりとか自己投資がすごいよくやっているなというイメージですね。

――お互いを選手としてはどのように見られていますか

船木 守護神でしかないです。本当に必要です。澪菜がいないと同期だから、ずっといるからこそそれを感じます。自分がディフェンスだからこそ、後ろは0で抑えたいじゃないですか。そこで後ろに澪菜がいると安心感が違います。緊張をしているのかわからないですが、緊張していなさそうじゃないですか。ブレないというか、やっぱ試合中にチームの流れが悪くても澪菜の1本のロングフィードで流れが変わったり、スーパーセーブで仲間も頑張ろうと思うのはすごくデカいと思います。(澪菜が)ア女の1番後ろにいるというのはほのつに強いし、同期にいて本当によかったと思います。

近澤 もう嫌だ〜この対談(笑)。

一同 笑。

船木 でも、本当だからね(笑)。

――船木さんは日テレ・東京ヴェルディメニーナや代表などで優秀なゴールキーパーと一緒にやってこられた中で近澤さんにしかないものはどこにありますか

船木 澪菜を知ってはいましたが、ア女で初めて一緒のチームになりました。JFAにいるというのは知っていましたし、すごく背の高いキーパーがいると。この恵まれた身体とフィードが凄いなと思います。比較するのも失礼だけど、高体連のキーパーってなかなかボールが飛ばないじゃないですか。大学同士の戦いになると目まぐるしく変わるじゃないですか。その中でキーパーのフィードはとても重要になります。それを持っていて、それが4年間経つにつれてパスになって行きました。本当に注目です。見てほしい!アシストとかしてるから!そんなキーパーいなくないですか。

――そうですね。僕、よくプレミアリーグとか見ますけど、その中でも今季は3人だけでしたね

近澤 3人いるんだ(笑)。

――でも、プレミアレベルで3人だけですからね

船木 それができると言うのが他のキーパーとの違いですね。

――今季、試合を見させていただいても、ハーフウェーラインを余裕で超えるキックをするキーパーは近澤さんくらいしかいないですね。大学の女子サッカーで。(コートを指差して)大体この辺で止まりますもんね

船木 そうなんですよ。それで正確っていう。

近澤 言うなよ(笑)

――小さい頃から自分の強みでしたか

近澤 いや、別に。結構、大学に入ってからキックが伸びるようになりました。なんなら、高校生の時は得意だけど他にもキックが得意な人がいっぱいいるのでそこまで秀でていると言う感覚はなかったですね。大学でだんだんと伸びていって、これが武器だよと言われるようになってから意識したという感じですね。

――キック向上させるんだという強い意志を持って大学で取り組んだという感じですか

近澤 いや、そこまではなくて。もちろん、自分の武器がキックなのはわかっているのですがそれだけではやっていけないのも分かっています。これを伸ばすぞと思ってやっているというよりかは全体的な底上げをしつつですね。特段意識してというわけではないです。

――船木さんの特徴については

船木 サイドを支配してくれるから、ゲームを作ってくれるんですよ。自分たちが保持する時間もそうだし、仕掛けるタイミングもそうだし。いいクロスでとか、サイド高い位置まで上がってて、最後打つんですけど。あぁいうところで流れが変わるし、チームの雰囲気としても勢いを持っていける部分があります。そこはやっぱり和夏がサイドにいればそっちの心配いらないなというくらい、あまり言わないし、あんまり選手としてよくないですけど、「こっちに和夏いるなら、あっちに集中しよ」みたいな部分があるくらい(笑)。それだけ信頼をおいている選手です。

――特に秀でている能力などはありますか

近澤 クロスと対人、守備の一対一とか。和夏が守備の一対一で負けているところ見てないし、クロスの練習とかも後ろから見ていて「今のめっちゃナイスボール」とか思うし、逆に自分が練習に入っていてキーパー入ってて、クロスを上げられた時も「今のちょー嫌なボール」と思うものばかり上げてくるので、そこはやっぱレベル高いなと思います。

――クロスの凄さというとスピードがすごいのか、曲がり方がすごいのかいろいろあると思いますが、特にどこが凄いですか

近澤 曲がり方ですかね。ピンポイントでいやーなところをついてくるみたいな感じ、ふわぁーと出てくるみたいな、「うわぁ、今の出れない」みたいな絶妙なボールを上げてくる選手です。

――船木さんご自身の中での1番の武器は

船木 やはり、クロスは大学に入ってからすごく自分の武器です。とりわけ足が速いわけでもなく、一対一で自分でガッと抜ける方でもないので、どちらかというと仲間をうまく使うであったり、組み立てるというのが自分は得意です。攻撃参加も自分の武器なので、やはりサッカーは点を取るスポーツでチームが点を取るために自分は何を伸ばすべきかと考えた時にサイドだしクロスだなと思いました。この4年間でクロスは練習してきました。ただ蹴るのではなくて、この状況なら速いクロスがいいとか、これなら巻いた方が良いとかいろいろ上手い選手を見本にして自分なりに選択肢が増やせるようにというのはやってきました。

――具体的に見ている選手は

船木 日本人で女子の選手だと清水さん(梨紗、ウェストハム・ユナイテッド)。プレミアならリヴァプールのアレクサンダー(トレント・アレクサンダー=アーノルド)とかマンチェスター・シティのカンセロ(ジョアン・カンセロ)のクロスを見てますね。

――側から見ていると左サイドバックの時はカンセロに結構近いなと思う時があります。監督も超現代的なサイドバックと言われていますが、モダンなサイドバックという自分のプレースタイルみたいなものを確立する過程にどのようなものがありましたか

船木 それはメニーナの時にサイドバックは外に張るものではないと知って、内にとって良いんだと。そこからマンチェスター・シティのサイドバックはかなり内をとっていたからそれをひたすら見てという感じです。ア女はこういう形でやれと言われているわけではないから、仲間の良さを生かしながら自分の良さも生かせるように考えながらやっていたらカンセロみたいな動きになって、ア女にはあってるかなみたいな感じです。

 

「ア女ってそういうキャプテンは必要ないんですよ」(船木)

――お二方ともリーダーですが、クールなリーダーと熱いリーダーという感じで違うリーダかなと思います。リーダー像みたいなところで意識していることはありますか

船木 リーダー像か…。とりわけ意識していることはない、なくはないけどア女は1人1人が自分に向き合える人たちだから、自分の思うキャプテンって中高の時ならやる気がない選手とか、揉めあいしてる時に出るイメージです。それがア女ってそういうキャプテンは必要ないんですよ。やってない人にちゃんとやろうよとか言うよりはみんながそれぞれいろいろ抱えていることがあって、チームが勝てないと自分に足りてない部分があると思える人たちだからこそ、マイナスな考えを持ちがちなところを押し上げるじゃないけれど、「常に上を向いて自分たちが目指しているのははここだよ、このレベルのプレーをしていくんだよ」と言うのをプレーと言葉で示すと言うのがア女としては必要だと思います。中々難しいですけど、自分は言葉で表現するのが得意ではないので。そう言う意識は今年はしていました。

――やってみての感触はいかがですか

船木 中々、ずっと言葉で言っていても結果として出ないときついなとは感じています。いくら言葉で前向きな声かけだったり、全員が切り替えてやっても勝てないと沈んでしまうと言うのはあるので、尚更、今年で勝つことの大事さと言うのは気づきました。今までは勝っても内容が良くないとダメだと思ったり、勝つために凄い必死な感じが好きじゃない、そっちのタイプではなかったのでなんでそこまで勝ちにこだわるんだろうみたいに思っていました。もちろん、勝つことだけではないのですがやはり勝っていくことでチームの士気は上がるということを感じました。今はチームが勝てるように盛り上げることを心がけていきたいなと思っています。

――近澤さんは副将という立場ですが、副将としてのあり方をどのようにみていますか

近澤 なんだかんだ副将をやるとなった時は和夏があんまり多く語るタイプではないけど、メラメラと闘志を燃やしながら先頭で、前で引っ張っていくタイプの主将になるのかな、なって欲しいなという願望がありました。自分は物事を俯瞰して見れるように一緒にガッガッと引っ張っていくというよりも和夏が引っ張って行ったところを後ろから押し上げていくような、チーム全体を良い方向に持っていけるような主将になりたいと思っていました。最近、勝てない試合や引き分けだったり、良いところまで持って行っているのにイージーなミスで負けるとかが続いています。その中でピッチ上に和夏がいない時にそこをもっと引っ張らなきゃというところの気持ちが複雑になってしまって暑くなってしまって。「いこういこうよ!」だけど、その分負けちゃった時の反動が大きくなりすぎてしまって、和夏は下向いちゃダメだよと言っているけど、自分としては「また出来なかった」ということが頭を占めてしまいます。そういう部分では当初思い描いていた副将とは違っています。今更、それに戻すわけにはいかないので、この形を正解として言って結果を出すしかないと思っています。少しずれてしまったけど、それが悪いなとは思ってないです。

――役職決めはどのように決まっていったのですか

近澤 立候補だったよね立候補で、それぞれ何でやりたいのかを話し合って、みんなで決めていったという感じです。

 

「改善する前に試合があって、試合をこなすのに精一杯になってしまいましたね」(船木)

――8月あたりから徐々に難しくなっていったと思います。開幕当初、延期が続いた時期もありました。今シーズン、ここまでで1番難しかった時期はいつですか

船木 皇后杯予選の時期がすっごい試合が詰まっていた時期があったじゃないですか。本当は8月はリーグがなくて。自分らと監督が描いていたものとしては、前期でいろいろ試してこれっていうサッカーを最初から作るのではなくてその年の良さとかがあるから前期でチャレンジしてという感じで。もちろん、結果もあるけど、結果だけにこだわらずに自分たちの可能性を前期で出して、それを8月に積み上げやインプットをして、9月から大事な試合があるからそこに向けてやっていこうとなっていました。それがコロナなどでうまくいかなくて、中断期間という中断期間がなかったことがきつかったなと。負けることは決して悪いことではなくて、向き合って改善して試合に挑めればプラスなことじゃないですか。それをやって改善する前に試合があって、次の試合の結果に囚われてしまうから前の課題がなくなってしまうという感じで試合をこなすのに精一杯になってしまいましたね。ケガ人も多かったし、仕方がなかったですが、そのようなことがあったので自分が試合に出れていないこともあって8月後半から9月がきつい期間だったかなと思います。

――近澤さんはピッチの中でキャプテンマークを着けてプレーされていましたが、8月、9月の期間はいかがでしたか

近澤 本当にそれこそ今、和夏が言ったように試合で出た課題を改善していこうねという前期で自分たちがしてきたサッカーを1回整理してからまたさらに積み上げていこうねというとこでうまく出来ていなかった部分がすごくありました。選手個人としてもチームとしてもうまくいかなかったですね。なんかうまく歯車が合わないなという感覚があって、目に見える結果として出ていたというのをどうにかしなくてはいけないけど、どうすれば良いのかというのがずっとありました。それを日常に表現していこうとした時に更に頭がこんがらがってしまって、「どうすれば良いの」という8月でしたね。

――個人的なところでいくとどのようなシーズンになっていますか

近澤 伸びている部分もあるのですが、それをうまく表現出来ていないもどかしさがあります。昨年だったら、「1回試合に出たことでこれにもつながった、今週意識したことがこれにもつながった、出来たわ」というのがかなりつづいていました。しかし、それが少なくなってしまっていて。それを悲観しているわけではないですが、割と大きい部分ですね

――船木さんは現在はチームから離脱されていますが、ここまでどのようなシーズンですか

船木 こういう期間がすごく多かったというのはあって、個人としてもこの1年がすごく大事だと思っていたし、チームとしても自分がピッチで引っ張ると意識していたこともあってすごく悔しいです。それを考えていても仕方がないからなるべく早く良いコンディションでやるというのと、試合を見ながら自分が試合に出たらこういうプレーをする、チームを引っ張ろうと考えながらやっていました。あと2カ月くらいしかないけど、今までできなかった部分をプレーで還元してみんながこれまで頑張ってきた分、自分は見ることしかできなかったからピッチで爆発させたいです。今までのことを振り返っていたら、申し訳ないという言葉しかないです。しかし、まだできることはあるのでそれでやるしかないというのがあるので闘志がメラメラしています。

――4年生の中でシーズンの目標としてインカレ優勝と皇后杯ベスト8WE撃破を挙げられいますが、この目標を決定された過程を教えてください

船木 昨年、インカレ優勝して自分たちも大学の日本一という景色を見ました。やはり優勝したいという気持ちが全員にありました。昨年優勝したから守らなきゃというよりも自分たちの代でチャレンジャーとして、今のア女のメンバーで初の日本一という感じです。昨年WEリーグができたので、プロのチームに勝ちたいという、もちろん大学で優勝するのは簡単ではないけど、自分たちの目標としてこれから先プロになりたい選手も早大には多いと思うからそこに向けてやっていくことでインカレ優勝には繋がっていくと思います。目標はデカく、叶えることができない目標ではないと思うので絶対自分たちの力なら果たせると思うというのでこのような目標を立てました。

――組み合わせも発表されました。スフィーダ世田谷のようになでしこで1番上なクラブではない、実現に近づいているかなと思いますが、今の所の手応えはいかがですか

近澤 この経験が生きるでしょう。生かすしかないでしょうという感じです。気持ちよくかった試合もあったし、内容が残念で勝てなかった試合もあったし、それを全部学びだと思います。リーグだからこそ経験できたことで、トーナメントとなった時にこの経験を全て生かして勝ち進むことが大事だと思います。

――勝ち負けでいくと昨シーズンと同じような感じですが、昨年と今年の違いというと四冠を掲げていたから全ての試合に勝たなくてはいけなかったというところを他の選手の対談で伺いました。四冠ではなくて、インカレと皇后杯に目標を設定したのはなぜですか

船木 そもそも優勝を目指していないから負けて良い試合があるわけではないです。関カレも関東リーグも1試合、1試合が大事です。じゃあ、優勝は目財していないから妥協するという集団ではないと思っています。1試合1試合が個人にとってはすごく大事で、全員がそう思っていたら無駄じゃない90分になっていたと思います。あえて、目標というかたちにするのはやめようとしました。関カレ前期はチャレンジ、チームとして固め図にいこうという話をしていたことも一因です。

――残り2カ月弱ですが、どのようなかたちで締めくくりたいですか

船木 もちろん目標は達成したいというのはあります。後悔はないようにしたい。チームとして同じ方向を向いて、今ある持ちうる力を全員が出して、組織として今のア女の力を出し切ってこれからの試合をやっていきたいという思いがあります。まだまだこれから時間はあります。実力は伸ばしていけます。あとはみんなが持つ100の力を100出せるようにするというのが大事です。そのために自分ができることをすれば自ずと結果もついてくると思います。結果だけに目が行かないようにしっかりと地に足をつけて1日、1日を大事にしていきたいなと思います。

近澤 自分たちが挙げている目標を達成するというのは大前提です。2カ月しかありませんけど、1日1日を大事にしてトライアンドエラーをしつつ、まだまだ選手として伸びていきたいですし、目標を掲げるために全員で同じ気持ち、同じ景色を見るためにモチベーションが高まるようなチームにしたいです。あまり気負うと昂って空回りしてしまうので、そこは見つつ悔いなく最後終われたと思います。

――守備から入るというかたちにしたのはどのような経緯でしたか

船木 昨年から言っていて、自分たちが流れが良い時はどのような時かという時に守備で相手に圧をかけて、相手陣地でボールを奪っている時というのがやはり良いと。受け身ではなくて、自分たちで手動で圧をかけて攻撃も回されて受動で思うのではなくて、自分たちでがんがんゴールにいくというのが自分たちの良さです。それをア女の良さとしている感じですね。

 

「作る上でも負けたくない。SNSでも早稲田の方がいいねが多いとか(笑)」(近澤)

――ここからは早慶戦についての質問をさせていただきます。現在は舞台を作り上げているという段階だと思います。この早慶戦を作るという部分に対してどのような意気込みを持って活動されていますか

近澤 早慶で作り上げるものだと思います。作る上でも負けたくないなと思いますね。SNSでも早稲田の方がいいねが多いとか(笑)。小さなところから勝っていきたいとあります。

――そこは11月以降に向けてのというところでしょうか。早慶戦をどのような舞台にしたいですか

近澤 みんなが輝く舞台にしたいです。作っている人もベンチにいる人も外から見ている人も、お客さんとしてきてる人もみんなで作り上げたいです。

――船木さんはどのような舞台にしたいなどはありますか

船木 やはり学生が作り上げているのが早慶戦ならではだと思っています。それを見ている人、きてくださる人に伝わるような早慶戦にしたいです。もちろん、やるまでにSNSなどいろいろな企画をして盛り上げているというのはすごいことですが、当日来てくださった方をそれ以上に盛り上げなくてはいけないというのがあります。もちろん、プレーの強度とかが大事だと思います。これだけ準備して生ぬるい試合だったらダメだと思いますし、無料で入っているけど、来てもらっているので、それこそ早稲田の価値は下げたくないので、早慶ともにプライドを持ってやりたいなと思います。

――観客も何百人も入ってという中でプレーされると思いますか、待ち遠しさや期待感はありますか

近澤 1年生の頃に等々力でやって、「うわーこんなところでできるんだ。」あのような大きなしっかりとしてスタジアムでお客さんに見てもらう試合はないので、自分も1度も早慶戦に出ていませんし、そこで久々にしっかりとしたスタジアムでお客さんも来てくれて最後の早慶戦という部分ではすごく楽しみな試合ですね。

船木 自分も1年生の時は出れなくて、2、3年は観客が入っていなくて。スタジアムでプレーするのはやはり違うんですよね。気持ち的な部分も含めて、本当にワクワクしています。

――同じスタジアムでも早慶戦だと違うなという感覚があるのですが、早慶戦に対してどういう印象がありますか

近澤 華やかな印象は正直ないです。1年生の頃は男女共催でしたが、女子の時間帯はそこまで多くの人が来ていなくて、男子で人が入って盛り上がっていました。2、3ではそんなにお客さんがいなくて。早慶戦はすごく華やかな舞台で伝統で、両校のプライドがぶつかってという試合ではあるけど、実際それをめちゃくちゃ体感したというのがありません。すごくプラスなイメージがあるわけではないけど、今年は早慶戦に対する思い、早慶戦ってこういうものなのかというものを知りたいなと思います。4年目で遅いですけど(笑)。

――船木さんをそのような思いはお持ちですか

船木 未知というか、何人入るかもわからないです。当日にならないと何もわからないというワクワク感を感じています。昨年はアウェーで観客も少ない状況でやっていました。SNSでいろいろやっていますけど、観客の方はどういう人たちが来るのか楽しみですし、当日までわからないというのが良いのではないかなと楽しみにしています。

――お二人とも、Uー19で国を背負って、日の丸をつけてアジア制覇というものに向かっていかれましたが、大舞台でプレーするという時はどのような心境ですか

近澤 自分は特段変わらないですね。多少の緊張は大きい舞台でやるということでありますが、でもそれで変わる部分はないです。プレーが変わるとかもないし、試合に対する気持ちはどれも一緒なので、自分はそこまでかなと思います。変化はないかな。

船木 そんないつも通りという感じがしますね。代表も背負っているから負けられないというのもあるけど、早稲田も早稲田であります。特別思っているのではないですが、気持ちはあったと思います。

――船木さんは早慶戦に出て復帰というのを目標に過ごされていると思いますが、どのような意気込みで過ごされていますか

船木 早慶戦に向けてやっていますけど、出れるのが当たり前じゃないというか、これまで自分がいない間にサイドバック陣は活躍していたし、すごく成長しているのがあります。自分が早慶戦に向けてやって当たり前に出れるとは思っていなくて、出れるなら4年、主将とか抜きに1人選手として試合に出ているので、責任を持ってやりたいです。それに恥じないプレーをするために今はリハビリだったり、できることをやっています。早慶戦は1人の選手として自分がやるべきことをやりたいと思っています。

――近澤さんはどのように魅せたいなどありますか

近澤 自分のストロングポイントであるロングフィードであったり、自分のパス1本で展開が変わるなどそういう部分で魅せれたらと思います。

――過去20年では1度も負けていません。無敗の歴史をつなげるという部分も1つの大きなテーマであると思います。この結果に対しての思いを教えてください

近澤 負けないは当たり前ですが、絶対負けちゃダメだと気負うのも違うなと思います。やることをやったら結果はついてくると思うので、いつも通りやりたいです。

船木 早慶戦だから特別ではなく、自分たちが積み上げてきた中の1試合で、学生が作り上げるという意味で、他とは違った感情だったりはあります。ピッチに立ったらいつも通りア女らしいプレーをしていけたらいいかなという感じです。

――早慶での注目選手をあげるとしたら、どなたですか

近澤 宗ちゃん(宗形みなみ、スポ1=マイナビ仙台レディースユース)かな。入ってきて当初からゲームに関わっていて、勢いもパワーもあるので中盤でゲームを作ってくれる選手でもあります。1年目の舞台で点をとって躍動してほしいなと思います。

船木 自分は美月(浦部、スポ3=スフィーダ世田谷)かな。今シーズン、長期離脱で試合に出れていなくて、昨年も試合には絡むけど定着してスタメンは取れていなかったというので悔しい想いがすごくあったと思います。最近、復帰してチームの雰囲気が変わったと思うし、吹っ切れていて同じサイドバックとして自分もこのくらい思い切りやりたいと思わせてくれた選手です。見ている人も美月のプレーを見て、勇気づけられるというか思うところがあると思うので、注目してほしいです。

――最後に早慶戦に向けての意気込みを一言いただいてよろしいですか

船木 観客が入るということで、初めてア女の試合を見る人もいると思います。ア女らしさを見せていきたいです。個人としてもピッチに立ったら見ている人を奮い立たせるというか、感動させる。自分のプレーで1人でも思う人がいたら良いなと思うので結果は勝つというのは当たり前ですけど、それ以上に楽しんで全員で一体感を持って早慶戦を作り上げれたらいいなと思います。

近澤 見にきてくれる人の前で今年のスローガンでもある「魅せろ」という部分、早稲田のサッカーを魅せながら歴史を紡いでいけたらなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・写真 前田篤宏、編集 水島梨花)

早慶女子クラシコに向けた意気込みを書いていただきました!

◆船木和夏(ふなき・のどか)(※写真右)

2000(平12)年8月10日生まれ。165センチ。日テレ・東京ヴェルディメニーナ出身。スポーツ科学部4年。ア女の主将を務める。現代的なSBで右も左も器用にこなす。U-19日本代表や大学選抜などあらゆる選抜活動に参加している。

◆(ちかざわ・れな)

2000(平12)年9月3日生まれ。179センチ。JFAアカデミー福島出身。スポーツ科学部4年。ゴールマウスでの存在感はプロにも引けを取らない。船木と同じくU-19日本代表や大学選抜で世界と戦った経験を持つ。