やられたらやり返す!神大相手に終了間際の劇的『再逆転』&前回敗戦のリベンジ果たす!

ア式蹴球女子
第28回関東女子リーグ戦 前期5節
早大 0-0
3-2
神奈川大
【得点】
(早大)53・89分:髙橋雛、85分:吉野真央
(神奈川大)72分:平井杏幸、75分:吉田優菜

 ア式蹴球部女子(ア女)は21日、延期されていた関東女子リーグ(関東リーグ)前期5節を戦った。相手は今季関カレで土を付けられた唯一の相手である神奈川大。前半は両チームが攻め込む時間帯を作り、互いに堅守で無失点に抑える好ゲームとなった。試合が凄まじい動きを見せたのは後半。まずは53分にFW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)が速攻から先制点を挙げる。しかし72分と76分に失点を喫し逆転を許した。それでも85分、FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)が相手DFとの競り合いを制し同点に追いつくと流れはア女に。そして終了間際の89分、髙橋が再び得点し劇的逆転勝利を飾った。勝ち点3をもぎ取ったア女は関東女子リーグ2位に浮上。終盤に逆転し返すとともに、関カレ敗戦のリベンジを果たす最高の勝利となった。

 

3点目の直後に喜ぶ髙橋。引き分けや敗戦が目立った前期の関東リーグも気づけば2位。残すところあと3戦となっている

 

 前半戦に相次いだ故障者の復帰を待ちつつ、現状出場可能な選手が減っていく中、連日での試合に挑んだア女。それでも「関東リーグメンバーがすごく成長していた」(後藤監督)と、前日の関カレに出場しなかったメンバーの躍動もあり、立ち上がりからゲームを支配した。特に背後への動きから相手ゴールに襲い掛かる。5分にはDF井上萌(スポ4=東京・十文字)からFW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)へ、7分にはMF大森美南(スポ3=東京・八王子学園八王子)からFW生田七彩(スポ1=岡山・作陽)へそれぞれ完璧に抜け出したが、いずれも先制にはつながらず。すると試合は徐々に相手ペースに。29分には絶体絶命のピンチも迎えたが、GK丸山翔子(スポ2=スフィーダ世田谷FCユース)が体を張ったセーブでア女ゴールを守り抜く。ア女ペースから神大ペースに、前半は主導権の行方がはっきりした展開となった。

 

連戦で唯一2試合ともフル出場した井上。20日は失点に絡むプレーもあったがフィジカル的にも難しかったであろう今節は中盤で躍動。2点目を含めいくつかのチャンスを演出し、中盤では相手の攻撃の芽を摘み取った

 スコアレスに終わった前半とは打って変わって両者打ち合いとなった後半。ア女は53分、速攻から先制に成功する。髙橋がドリブルで持ち上がり、一度廣澤に預けたボールのリターンを、背後を取る形で受けるとそのままニアサイドを突破し得点した。その後互いに好機を迎えたが、ア女はわずか5分間で逆転を許した。72分にはサイドの突破から、76分にはFKから失点。終盤に差しかかる時間帯での被逆転で、相手の勢いに飲み込まれそうになる。この流れを食い止めたのが2失点目の直後に投入された吉野だ。85分、井上からのロングボールを収めると、相手DFとの競り合いに。「自分らしく突っ込むだけ」と気迫のヘディングでゴールにねじ込んだ。ア女は、同点弾に撃沈し勢いを失った相手に畳み掛ける。MF阪本環(スポ1=日体大FIELDS横浜U18)の糸を引いたかのようなスルーパスがペナルティエリア内の髙橋に届き左足を振り抜いた。時間は89分。鮮やかな攻撃から繰り出されたシュートに相手GKは一歩も動けずゴールイン。この『再逆転劇』に東伏見は熱狂の渦に包まれた。得点後その場で仰向けになった髙橋は「何が起きたか分からなかった。一瞬時が止まった」と振り返った。

 

吉野の同点ゴールは終盤の流れに大きく影響したと言える。持ち前の力強さが前面に出たゴールだった

 

 非常に痺れる試合になった。残り14分で逆転されたのにもかかわらず、終了間際に逆転し返してみせた。もちろん試合内容は満足できるものではなかったかもしれない。しかし今季のア女には苦戦を強いられたとしても最後の最後に何かを起こせる力がある。それは今節に限ったことではない。前日にも思うようにならない状況のなかラストプレーで同点に持ち込んだ。6月25日の帝京平成大戦、強敵との接戦でもラストプレーで勝ち越した。欧州王者のレアルマドリードが昨季CLでそうだったように、土壇場で試合をひっくり返すことのできるチームは強い。9月からは皇后杯関東予選も始まり、本戦やインカレを含め、ア女の今季の目標を達成するには一発勝負で勝ち上がる必要がある。「サッカーは最後まで何が起こるか分からないということをみんなで再確認できた」(髙橋)。今節、そしてこの土日連戦はア女の新たな成長がうかがえた最高の週末だった。

(記事、写真 前田篤宏)

 

9月からはトーナメント方式の皇后杯関東予選が始まる。まずは本戦出場に向けベスト4にたどり着きたい(写真は廣澤)

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 丸山翔子 スポ2 スフィーダ世田谷FCユース
DF 堀内璃子 スポ3 宮城・常盤木学園
→HT 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF ◎8 井上萌 スポ4 東京・十文字
DF 17 木南花菜 スポ2 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 22 藤田智里 スポ3 神奈川・大和
DF 28 小林舞美 スポ1 ちふれASエルフェン埼玉マリ
MF 20 大森美南 スポ3 東京・八王子学園八王子
MF 29 阪本環 スポ1 日体大FIELDS横浜U18
FW 廣澤真穂 スポ4 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
→68分 11 吉野真央 スポ4 宮城・聖和学園
FW 23 栗田彩令 スポ2 静岡・藤枝順心
FW 27 生田七彩 スポ1 岡山・作陽
→HT 10 髙橋雛 社4 兵庫・日ノ本学園
◎=ゲームキャプテン

 

スターティングフォーメーション

 

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――ハラハラドキドキの展開でしたけど、今日の試合振り返っていかがですか

昨日試合に90分出たメンバーはできる限り45分で交代しながら、というのがベースで、入りも非常に良かったですし90分出たメンバーはしんどい中で頑張ってくれたと思うんですけど、関東リーグメンバーがすごく成長してるなと感じた1試合でした。

――特に名前を挙げるとするならば

 難しいですよ。本当に全員の名前を挙げたいです。もちろん、特に2失点目のFKでというのは修正できるところなので、課題はありましたけど、それ以上に結果だけではなくて内容も自信にして欲しいですよね。

――前半の最初の流れを90分続けていきたかったところですけど、30分辺りから押し込まれるようになりました。戦況が大きく変わった理由はどう考えられますか

 そもそも最初の流れが良かった中でも守備でサイドハーフが押し出せていなかったり、(生田)七彩1枚で追ってるけど中盤が押し出せ切れていなかったりというのは結構あって、ただ(相手の)パスミスだったり(井上)萌が体を張ったりとかで相手の攻撃を切れていたので。押し込まれたときに、まだ少し慌ててしまって最初のようにボールを持ってずらして、というのができていたのが、なんとないパスミスだったりパスが弱かったりという部分がひとつですね。あと、サイドまでしっかりボールを運べているけど七彩にボールが入った後がなかったり。そうするとミドルゾーンで奪われるのでミドルゾーンからグッと攻められることが多くなってました。そこはハーフタイムに修正してる部分ですけど、そういうところがちょいちょい積み重なってきたのが、相手のペースにつながったのではないかなと思います。

――名前が出た井上さんは唯一週末180分出たなかでも、今日は中盤で目立つシーン多かったと思います。

 昨日みんな悔しい思いをしたんですけど、その中でも個人として悔しい思いをしてたと思います。失点シーンだけではなくてアンカーとして悔しいプレーが多かったなというところで、体力的にはきつかったと思いますけど、昨日の修正を今日やろうという彼女のモチベーションが見えた試合だったなと思います。相当しんどかったと思います。

――昨日出たメンバーは基本45分出場という中で、後半から出た吉野選手と髙橋選手が試合を大きく決定づけました

 ああいう力強さ、特に2点目なんかは真央らしいというか、「道を空けろー」みたいな。すごく真央らしいシュートでしたし、雛のゴールもああいうところでボールをコントロールしていいリズムで持つシーンもあってよかったです。彼女たちには(相手にとって)怖い選手になって欲しいです。ヒロ(廣澤)も前半はインサイドハーフで、彼女がボールを奪われないことで非常にいいリズムが作れました。(木南)花菜も昨日75分出てる(今節はフル出場)から2番目に多いと思うんですけど、ボールをサイドバックで落ち着けていい上がりをして、クロスも昨日のゴールにそのまま入ってしまったところをしっかり修正してくれたかなと(笑)。点を挙げた人が脚光を浴びがちですけど他の選手もよかったです。

――今後も重要な戦いが続く中で、6月にもかなり聞いた質問ですけど今時期のやりくりの難しさはどうですか

 私も頭悩ませますけど、なにより選手たちが頑張ってくれているので。チームとしてはここから皇后杯関東予選が待っていますし、その先の本戦やWEリーグ相手に向けても、やりくりが難しいとどうしても目の前の試合に目を向けがちですけど、昨日も今日もWEリーグ相手だったらどうなのと。「WE相手だったらあのカウンター一発でやられてるんじゃないの?」「この横パスはWEだったら奪われるよね」と。そういう基準を改めて持ってやっていかないといけない時期なので。どうしてもイレギュラーがずっと続いているとそうなりがちですけど、本来は合宿を経てそういうモードに入って行くべきところなのでそこは絶対にぶらしてはいけない、忘れちゃいけないところです。できる限りやっていかないと間に合わなくなっちゃうぞと、そういう危機感を持ちながらという感じですね

 

FW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)

――先制点と最後の逆転ゴールを決めて、勝利に大きく貢献しましたが、今の率直な感想を聞かせてください

 やっとチームに貢献できたなぁって。それしかないです。嬉しいです。

――やはり得点というものが大きかったですか

 そうですね。自分は何も貢献できていないなという悔しさもあったし、今日は途中交代で絶対勝ちたいという思いと前回の関カレの神大戦で負けて悔しいおもいをしていたので、絶対に負けられないという気持ちがより強くて、今日はゴールという形で貢献できたのでよかったです。

――まず先制点を振り返っていただいていいですか

 (廣澤)真穂とカウンター気味に、うまくいい距離を取りながら動き出したタイミングで真穂がいいところに流してくれたので、あとは足を振るだけでした。

――逆転ゴールは決まった瞬間はどうでしたか

 何が起きたか分からなくて。本当に入ったんだ、みたいな。一瞬時が止まったみたいな感じでした。そのあとみんなが寄ってきてくれて、本当に入ったんだなと。みんなで最後まで諦めずにゴールに迎えたのがあの1点だったので、みんなでつないだボールを決められて本当に良かったです。

――チームとしては76分に逆転されて、昨日と同じように苦しかったですけど、昨日はラストプレーで追い付き、今日は終盤に逆転して、流れはいいのかなと思います。

 サッカーって最後まで何があるか分からないということをみんなで再確認できたんじゃないかなと思うので、これからもそういう厳しい戦いになっていくと思うんですけど、最後までみんなで諦めずに点を取りに行くという姿勢を、自分自身もこれからも試合でもっと見せていけたらなと思います

 

FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)

――逆転されて、すぐに同点に追いついたというのは逆転できた大きな理由のひとつだと思います。同点ゴールは振り返っていかがですか

 チームが厳しい状況になって、自分はずっとゴールを狙っていましたし、ちょうど(井上)萌が自分の特徴を生かした裏へのボールを出してくれたので、あとは自分らしく突っ込むだけかなと。その通りにできて良かったです。

――最後はもつれあう形になりました

 最初はキーパーが出てきたのが分かったので浮かして入れたいなと思ったんですけど、距離が足りなくてヤバいと思って、DFが速度を緩めていたので行けると思って押し込みました。

――ピッチに入るときはどういう意気込みを持っていましたか

 (廣澤)真穂との交代ということで、チームもいい流れではなかったので、しっかり前で収めて攻撃の起点になれるようにと入って、しっかり起点になることができたしチャンスも作れたので良かったかなと思います

――チームとしても昨日に続いて終盤の苦しい流れから勝ち点を取り切っていて、いい流れだと思いますけど今週の2試合は振り返っていかがですか

 負けてる状態から同点とか逆転にひっくり返すのって先制するよりも労力が必要で、そういう勝負強さみたいなものはこの先絶対に必要になってくるので、そういった勝負強さを厳しい状況の中でもみんなで作りあげられているのはいいことだと思います。でも逆に失点を許してしまっている部分が課題としてあるので、もっともっと改善していければなと思います。

――これから過密日程が待ってますけど、意気込みはありますか

 ピッチに出れる人や関われる人はそれ相応の覚悟が必要ですし、みんな一人一人がチームのためにという思いでサッカーにおいても私生活においてもやっていければ絶対結果は出てくると思うので、チーム全体でいろんな面で頑張っていきたいと思います。