6月最終戦はスコアレス ひと月10戦の過密日程乗り越える

ア式蹴球女子
第28回関東女子リーグ戦 後期第2節
早大 0-0
0-0
東京国際大
【得点】
(早大)なし
(東京国際大)なし

 前日に引き続き35度を超える猛暑の中、関東リーグ後期第2節東京国際大戦は行われた。序盤は東京国際大のプレスに少々面食らったか、ビルドアップでミスが続いてしまう。前半終盤に立て続けに際どいシュートを放たれるが、GK石田心菜(スポ2=大阪学芸)がいずれも片手で反応し先制を許さない。後半に入ると、途中出場のMF三谷和華奈(スポ3=東京・十文字)が得意のドリブルで果敢にゴールに迫るが得点はならず。両軍攻め続けたが勝敗は決さず、0-0で試合を終えた。

 

ファインプレーでチームを救った石田。ここまで公式戦5試合を2失点に抑えている。全員で守る意識がア女の堅守を生み出しているが、やはり最後の砦となるGK陣の貢献は計り知れない

 

 6月の『異常日程』もようやく最終戦を迎えた。東京国際大は、前期こそア式蹴球部女子(ア女)も主力をスタメンにそろえて勝利したが、この日は高いテンションで序盤からア女に迫ってきた。前半は激しいプレスに苦しんだ中でなかなかシュートを打てず、一方的な展開を許してしまう。28分には右サイドを崩され、上がったクロスがゴールに向かう。しかしここは石田が落ち着いて弾き出す好判断。すると今度はDF小林舞美(スポ1=ちふれASエルフェン埼玉マリ)のロングフィードが相手DFの頭をかすめ、ライン裏に抜ける。これにいち早く反応し抜け出したFW生田七彩(スポ1=岡山・作陽)だったが、キーパーとの一対一を左に外し先制点とはならない。38分には鋭いミドルシュートを食らったが、ここも石田が片手一本でセーブ。続くCKの場面でもゴールに向かうクロスを石田がかき出し、難を逃れた。

 

2日連続でスタートリストに名を連ねた生田は、その快速と軽快な身のこなしで相手DFを翻弄したがゴールにはわずか届かなかった

 シュート一本にとどまった前半を終え、ア女は前日の試合でフル出場したMF三谷和華奈(スポ3=東京・十文字)を投入。「関カレよりもボールを持てるしスペースもある。それに期待をした」と後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)。69分には相手からボールを奪うやいなや、ゴール前まで持ち込み迷わずに右足を振り抜く。70分にも前線でうまくボールを収めた生田からパスを受けると、キレのある動きでカットインし、すかさずシュート。いずれもゴールとはならなかったが、瞬く間に相手の脅威となった。終盤に入っても、この日の気温に熱せられたかのごとく試合展開はさらに熱を帯びる。91分には、後半から中にポジションを移したMF大森美南(スポ3=東京・八王子学園八王子)が三谷のパスを受けてシュートを放つがブロックされた。最後まで攻め続けたが待望の先制点は生まれず、スコアレスで試合は決着。二日連続の劇勝とはならなかった。

 

起爆剤となった三谷。連日での出場については「やりたくてもできない選手もいる。学生スタッフなど支えてくれる人がいる。疲れとか言ってる場合じゃない」とプレーできる喜びと責任感を口にした

 

 「この6月を乗り切れたことが何より」(後藤監督)。ひと月で公式戦を9戦、戦い抜いた。当然けが人やコンディション不良者も相次ぎ、満身創痍の様相を呈している。この日の試合も、インカレ連覇や皇后杯ベスト8を基準に考えれば決して良い結果ではない。しかし指揮官は、苦しい状況下で勝ち点を積み重ねることができたことを何より評価する。苦しい夏は続くが、ア女は決して足を止めない。長いようで短い今シーズンを、笑って終えるために。

(記事 大幡拓登、写真 前田篤宏)

 

過密日程を乗り切ったことは確かだが、7月は8試合が控えている。暑さが増しているだけあって6月よりもタフな1カ月になるかもしれない。まずはこの過密日程がさらなるけが人を生み出さないことを祈るばかりだ

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 石田心菜 スポ2 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF ◎8 井上萌 スポ4 東京・十文字
DF 22 藤田智里 スポ3 神奈川・大和
DF 28 小林舞美 スポ1 ちふれASエルフェン埼玉マリ
MF 12 渡邊奈美 スポ4 埼玉・大宮開成
→HT 三谷和華奈 スポ3 東京・十文字
MF 18 白井美羽 スポ2 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 20 大森美南 スポ3 東京・八王子学園八王子
MF 29 阪本環 スポ1 日体大FIELDS横浜U18
FW 23 栗田彩令 スポ2 静岡・藤枝順心
FW 27 生田七彩 スポ1 岡山・作陽
◎=ゲームキャプテン

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――相変わらず人員不足の中での一戦になりましたが、今日の試合の感想を聞かせてください

 控えの選手が一切いないと言ってもいいくらいの状況でしたし、昨日90分出場した夏目は今日もフル出場で、三谷も45分戦ってくれました。しかも運動量を必要とする自分たちのサッカーを貫いてくれたので本当によく頑張ってくれたなと思います。

――三谷選手の後半からの出場は始めから決めていたのでしょうか

 後半からの出場は決めていたのですが、何分に出すのかは決めていなかったです。前半を終える頃に決めました。

――序盤は相手のプレスに苦しみ、ビルドアップで精彩を欠くシーンもありました

 入りのところは少し慌ててしまったかなという印象はありました。ただ結局はパススピードが遅かったり精度が低かったりと、自分たちのミスが招いた展開ではあったので十分修正は効くと思っていました。そこまで心配はなかったですね。

――石田選手の落ち着いたフィードでプレスを回避するシーンも多かったと思いますが、どのように評価されますか

 もちろんア女のキーパーにはビルドアップの能力を求めていますし皆よくやってくれていますが、石田は入学当初からビルドアップへの参加が非常にうまく、逆サイドにつないでいくのもしっかりとやってくれますね。中盤の選手につけたりもできますし、今日の最初は少し落ち着かなかった部分もありましたが、時間が経てばリズムを作ってくれるだろうと思っていました。セービングに関しても、入っていたら流れが変わっていただろう、というシュートをいくつも止めてくれました。

――CBで出場した井上選手も良いロングフィードをいくつも出していました。どのように評価されていますか

 アンカーもできる選手で、ダイナミックな展開もできるので彼女の良さが出た試合だったと思います。ただMFブラフ・シャーン(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)やMF築地育(スポ2=静岡・常葉大橘)、けがをしているDF後藤若葉(スポ3=日テレ・メニーナ)など展開力のある選手は多くおり、ア女にとってそれが持ち味にもなっています。今日は井上がそれを体現してくれたかなと思います。

――後半に三谷選手が投入され、攻撃の比重が右に大きく傾いたように思うのですが

 前日の試合でしっかりとフルで走り続けてくれたので、コンディション面では少しドキドキしていました。やはり関カレよりもボールを持てますしスペースもあるので、それに期待をして投入しました。本人は攻撃の形というより得点やアシストにならなかったことを気にしているかもしれません。彼女の能力を信頼していますし厳しいコンディションの中でできることをやってくれたと思いますが、本人はさらに上を目指しているんじゃないかと思います。

――けが人も多くなってきましたが、チームの状況についてどう考えておられますか

 もちろん今は苦しいですが、後期に爆発してほしい選手もたくさんいるので、今はそういう選手のためにもプレーできる選手たちが走ってくれることを期待したいと思います。

――今日出場した選手の中で後期に奮起してほしい選手といえば誰になるでしょうか

 もちろん全員ですね。去年は関カレと関東リーグで重複して出場する選手も多かったのですが、今季は4年生の方針で関カレにフルで出た選手は関東リーグではサポートに回るということを決めているんです。これをすることの意味は、多くの選手が試合に出ることでチーム全体が底上げできるということにあります。結局それが練習の中での強度や質にもつながりますし、ア女は決して2チームではないので、全員で高め合って成長してくれると思います。

――今季リーグ戦ここまで戦ってきていかがですか

 FW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)や三谷の縦突破は対策されることも多くなってきています。その中でも昨日に引き続き勝ち点を積み重ねられていることは、高く評価できると思います。関カレもまだ首位と比べて試合数が少ないので、後からジリジリと追い上げられると良いですね。ただやはりこの6月を乗り切れたことが何よりです。選手たちはできないことではなく、どうやったらできるかを頑張って日々考えてくれていますし、私たちも一生懸命考えていこうと思います。

 

DF井上萌(スポ4=東京・十文字)

――今日の試合に入るにあたって意識したことはありますか

相手が前からプレスをかけてくるチームだったので、最初は簡単に自分たちもそれに呑まれないように背後を簡単に狙って、落ち着かせて、しっかり回収して自分たちのやる後ろからつなぐサッカーをゲームプランとしてたてて臨みました。

――キャプテンとして意識したことはありますか

チームには年下の選手が多い中で4年生として、精神的な面でもみんなを支えたいなと思っていました。後ろから見えている分、みんなを鼓舞する声を出し続けようと意識しました。

――前半に比べて後半の方がボールを持つ時間が多かったと思いますが、どうでしたか

相手が立ち上がりからすごい勢いでプレスをかけてきたので、自分たちも慌ててしまいました。セカンドを拾えなかったことでボールが保持できなかったところが、前半慌ててしまった原因かなと。ハーフタイムで自分たちが一歩早く下がる、余裕を持ってプレーする一個早く予想するというふうに修正できた分、後半はボールが持てたと思います。

――後半はかなり両サイドにボールを散らしていましたが、両ウィングとの関係というのは意識していましたか

試合前のミーティングで史(後藤)さんがどこのスペースを使うかということが大事だという話をしてくれました。うちのウィングは速いし勝負できるので相手を寄せて逆、というのは話を聞いて、自分ならできると思っていたので、自分の特徴と相手の嫌なことを合わせられるようにしました。

――スコアレスドローという結果になりました。守備面では前半粘り強い守備もありましたし、後半は最後決めきれずと良いところ悪いところ両面あったと思いますが、この試合の結果についてはどのように考えていますか

土日連戦というのもあってチーム状況というのもある中で、ポジティブに捉えたいという風に思っています。勝ち点はしっかり取れたし守備陣も無失点にできたというのは結果として自分たちの自信に繋げたい。また、先週の南葛戦よりも一人一人が球際のところ、予測のところが速くなっていたので後半はインシアチブをとれたので成長できているなと感じました。

――選手の南葛戦は精神的にも不安定な部分もあって臨んだと思うのですが先週は改めてどのような試合でしたか

ドタバタでした(笑)。キックオフの5分前に到着し、東伏見で試合していたのでウォーミングアップはなしでしたし。給水タイムが2回あったので15分で区切ってみんなの集中力を15分ごとに刻んで持ちこたえたいという風に思っていました。前半0-0で満点、後半七彩(生田)が入った時に相手の嫌なことをするということをプランとして考えていました。

――先週は負けてしまいましたがポジティブな部分が多かったと思います

 移動しているメンバーも配信で見てくれていて感動したと言ってくれました。それよりも普段出られないメンバーが主体的に「自分たちが戦えるんだ」ということを自覚できたと思うので良かったです。

――昨日の話になると監督にインタビューした時に、勝因の1つに井上さんが中盤で躍動してたからだとおっしゃっていたんですけど、改めて昨日の試合はどのように振り返っていますか

頑張れたかな。自己評価はいつも低いんですけど、相手が疲れている中でフレッシュな人として入って、それこそ自分は派手なプレーできないので相手の意識をちらつかせてほころびを作ることを意識していて、わかなとかターゲットの選手に走らせることを意識していて、リズム変えたかったのでひなとかまほとかの位置を見ながらポジショニングを取って、ダイレクトを増やして相手の位置をずらして相手の逆を取るということを意識してプレーできたので良かったです。

――この2週間で4試合に出ていると思うのですが改めてこの過密日程を乗り越えてどのように感じていますか。

個人的にメンタルも落ちてしまう時期で、それをみんなに見せれないじゃないですか。4年生だし。そこを個人の葛藤と4年生の立場。ゲームに出たらキャプテンマークを巻かざるえないというそこのジレンマはよく乗り切ったなといま感じました。

――ここにきて築地さんがパフォーマンス上がったりということもあっていま関カレにスタメンで出れていないっいうのもあると思うんですけどこの中盤や最終ラインの争いというのはどのように感じていますか。

スローガンにもあるように自分たちが競い合うということが最後11月12月で層の厚いチームにするということを考えたら負けていられないし育のいいところを見習いたいしシャーンとか若葉とかベテランじゃないけど過去から経験を積んでいる方がいるからそのような人たちと切磋琢磨していきたいです。また、自分の良さは自分の良さとしてもっと確立していかなければいけないと、ブレていたら消えてしまうからそこは意識したいです。

 

MF三谷和華奈(スポ3=東京・十文字)

――今日の試合、45分間出場されていかがでしたか

 個人的には結果を残せなかったのがすごく悔しかったというのが率直な感想です。主力で出させてもらっている身として、点を決められなかったり突破しきれなかったりというところはもっと成長しないといけないなと責任を感じた試合でもありました。チームとしては先週は遠征もあって今週も2連戦という中で、人数が少ない中でも戦い切れて勝ち点をつかみ取れたのは大きな成果だと思うので、ポジティブに捉えてきたいなと思います。

――昨日フル出場してからの今節でしたが、きつさはありましたか

 正直きつかったんですけどメンバーに選んでいただいた身としては、今けが人が多くてやりたくてもできない選手もいるし、それこそ学生スタッフとか早スポさんもだし、いろんな人に支えてもらっていることは身にしみて感じているので、そういう面では疲れとか言っている場合じゃないなというのは思っています。その中で結果を残せなかったのは悔しいなと思います。

――ただ前半と後半を比べると三谷選手が入った後半の方が明らかに攻勢が強まっていました

 とにかく必死で。点が欲しかったのでどんどん前に積極的に仕掛けて、仕掛ければ相手も疲れるし、自然と自分たちのラインも押しあがるので、推進力を持って前に行って攻撃しようというのは意識して試合に入りました。

――普段とはメンバーが大きく変わる中で出場して、感じたことはありましたか

 自分はサイドハーフで受け手の選手ですけど、いつも理想のボールが来るわけでもないので。それは昨日の試合でもそうですし、どんなボールでも取るというのが要求した側の責任だと思っています。足を運んだりとか足を出さずに粘り強く守備をしたり、ベースは変わらないので、トライできる回数が多かったのは収穫だなと思っています。

――フェイスガードも取れて、本当にフルな状態でプレーできている今季のここまではどう振り返っていますか

 メンタルも技術も戦術のところもまだまだだと、率直に。個人的にはもっともっと上のレベルで戦うことを目標として掲げているので、そこから逆算した時には全然足りていないと思うので、しっかり見直していきたいと思います。

――具体的に数字の目標はありますか

 今季はまだPKの1点しか取れていないので、アシストはできているんですけど、前線の選手なら点は取りたいなと思うので、せめて昨季の点数よりは多く取りたいなと思います。

――少し先走った話になりますが、来季を考えたときに今日の前線のメンバーは4年生だけが抜けた状態でした。ここに関してはいかがですか

次の事も考えつつというところでも、自分だけじゃないですけど自分が前線の選手としてしっかり点を決め切れたりとかチャンスメイクを多くできたりと、もっともっと科数を増やしていかないとなと思っています。今は自分が伸びなきゃなという責任感はあるので、そこは目指していきたいです。

――今季序盤は後半の早い時間帯に交代されることが多かったですけど、最近はフルで出られるようになりましたけど、何かきっかけがあったと感じることはありますか

シンプルな走力はついたかなと自分では感じています。今までは全部仕掛けて、とか持ったらゴー、みたいな感じだったんですけど最近意識しているのは周りとの連携で崩したり、ここぞという時に自分の強みを出せるように試行錯誤しているので、それまで思うように抜けたり突破できなかったりというのはあるんですけど、そういう面ではいい体力の使い方ができているのかなとは思います。