これまで5試合を戦い、ついに迎えた秋季関東大学リーグ戦(秋季リーグ)最後の一戦。第1セットを落とした早大はその後2セットを連取して逆転するものの、第4セットで勢いに乗った都留文科大に一歩及ばなかった。2時間に及ぶフルセットの激戦の末、セットカウントは2−3(19−25、25−18、25−21、21−25、11−15)。この日までの「結晶」とも言える粘り強いバレーを展開したが惜敗し、現体制最初で最後のリーグ戦を4勝2敗で終えた。
第1セットは課題としてきた滑り出しで、基本的なプレーの堅実さが光った。安定した返球から山下日和(社3=千葉・市船橋)のクイックにつなぎ、6−3とリードする。しかし、レシーブの乱れからネット際のボール処理で失点すると8−8と並ばれ、以降相手の勢いを止めることができなかった。この試合もレフトを厳しくマークされ、リベロの神戸彩有(文構2=長野・松本県ケ丘)がブロックカバーに身を投げ出すも及ばず。12−15の場面からは5連続得点を許し、19−25でセットを先取された。
試合の主導権を握られたかのように見えたが、秋季リーグ最終戦にかける早大の思いは強かった。続く第2セット、中澤恵(スポ3=大阪・金蘭会)の力強いスパイクで先制すると、7−6まで両者一歩も譲らずサイドアウトを取り合う展開に。張り詰めた空気の中、状況を打開したのは藤井陽奈子(政経1=香川・高松一)だった。緩急を使い分けて連続で得点すると、10−6。相手ブロックの意識をライトへも向けさせたことで、サイドからの攻撃が決まり始める。神戸の見事なスパイクレシーブから中澤が豪快に打ち込むと流れに乗り、橋本彩里(教3=東京・早実)のAクイックで19−12。レフトが中央に切り込むコンビやブロックも立て続けに決まり、このセットを25−18で取り返してタイとした。
「みんなが輝けるように」トスを上げ続けた橋本主将
第3セットはこれまでの2セットと異なり、序盤に苦戦した。長いラリーを落とすと0−6と先行され、勢いづく相手両翼の前に4−12まで点差を広げられる。しかし橋本美久主将(社4=福島・郡山女大付)はコートの先頭で手を叩き、声を出してチームを鼓舞した。そして、苦しい場面にトスアップした先はセンターの山下。相手の流れを切ると意表を突くツーアタックも決め、崩さぬファイティングポーズをチームに示した。追いつきたい10−12の場面では、主将の姿勢に応えるように神戸と橋本彩が果敢なレシーブ。相手コートの隙を狙った秋重若菜(スポ1=大阪・金蘭会)のフェイントが決まると、13点目でついに同点とした。以降前衛に回った中澤が得点を重ね、19−16。終盤も追撃を振り切り、25−20でセットを連取した。
試合を決めたい第4セットだったが、中盤まで拮抗した展開となる。仕返しとばかりにツーアタックを決められ先制されるが、秋重と藤井、二人の1年生の活躍で8−8とついていった。しかし10−12の場面、再三のブロックも実らず長いラリーで失点すると、主導権が相手に移ってしまう。14−19と突き放されると、その点差を縮められず21−25でセットを落とした。
第5セット序盤も流れは相手にあり、2−5と先行を許す。タイムアウト後に山下が速攻を決めて連続失点を断ち切るが、相手もサイドアウトを落とさず詰め寄ることができない。6−8からピンチサーバーの南里和(商1=東京・女子学院)が相手レシーブを乱すも得点には結びつかず、7−12。1点ごとに喜びを爆発させる敵陣に気おされた。中澤のバックアタックで粘りを見せるも、反撃はここまで。11−15で第5セットを奪われ、1部昇格を目指した秋季リーグの最終戦を黒星で終えた。
神戸は何度も強打に食らいつき貢献した
新型コロナウイルスの影響で春季リーグがオープン戦のみの開催となり、秋季リーグが現体制で戦う唯一のリーグ戦となった。チームを支えたのは、4年生でただ一人の選手である橋本主将。「美久さんのために1部昇格を」と他の部員らは口を揃え、6試合の中でチームとして成長してきた。結果として目標としてきた全勝優勝、1部昇格には手が届かなかったが、橋本主将は「みんなが練習に励んでくれたからこそ、今日のこのフルセットという試合があった」と振り返る。コートの外から支えるスタッフ、そして連盟の一員として舞台づくりに奔走したもう一人の4年生・坂内歩美(政経4=埼玉・早大本庄)。チーム全員で残された早慶戦、全日本大学選手権を戦ってこの「結晶」を大きく育て、1点でも多く喜びを分かち合う。
(記事 平林幹太、写真 紀洲彩希・平林幹太)
セットカウント | ||||
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早大 | 2 | 19-25 25-18 25-21 21-25 11-15 |
3 | 都留文科大 |
スタメン | ||||
レフト 中澤恵(スポ3=大阪・金蘭会) レフト 秋重若菜(スポ1=大阪・金蘭会) センター 橋本彩里(教3=東京・早実) センター 山下日和(社3=千葉・市船橋) ライト 藤井陽奈子(政経1=香川・高松一) セッター 橋本美久(社4=福島・郡山女大付) リベロ 神戸彩有(文構2=長野・松本県ケ丘) |
試合後の集合写真。笑顔を浮かべた
コメント
橋本美久主将(社4=福島・郡山女子大付)
――フルセットで敗戦という結果になった今日の試合ですが、どのように評価していますか
1セット目を落としてしまい、そういう時はセットを続けて取られてしまうことが多いのですが、なんとか2セット目に自分たちで点を取って取り戻すことができました。3セット目も最初は走られてしまいましたが、そこから自分たちでどうにか頑張って巻き返すことができました。第2セット、第3セットと取り返すことができたというのは、チームとしてとても成長できたなと思います。
――やりたいことができていると感じさせるプレーが、リーグ戦の最初より多い印象でした。チームとして成長できたと感じる部分はありますか
ブロックが触ってチャンスにしたボールを、コンビにして決めきるというのが自分たちのやりたいバレーです。それが出せているセットは取れて、試合としての内容も良く、できない時にはやっぱり負けてしまうことが多かったです。なので、最初の頃の試合に比べると、みんなでそれを意識して、そういう風にやろうという意識統一ができて、実現できたセットもあったかなと思います。
――セット率の関係もあり、リーグ戦途中で目標としてきた1部昇格が厳しくなりました。気持ちをどのように切り替えて試合に向かいましたか
やっぱり全勝優勝っていうのが自分たちの目標でしたし、どうしても1部に行きたいという気持ちでこのリーグを戦っていました。しかし敬愛にストレートで負けてしまった時に、失セットが明らかに他大よりも多くなってしまって。優勝は厳しくなってしまいましたが、自分たちの1敗というところはどうしても守り抜きたい思いがありました。本当に辛いこともあっただろうけど、みんなが一つ一つの練習やプレーにすごく集中して練習に励んでくれたからこそ、今日のこのフルセットという試合があったのではないかなと思います。
――キャプテンとして戦った最初で最後のリーグ戦でした。今までと違う重圧などはありましたか
重圧はすごくあって、勝たなきゃいけないという意識があった試合がたくさんありましたね。それがあだとなって固くなってしまって、敬愛にストレートで負けるという試合があったのですが、その時は試合を控えた週の練習からガチガチになってしまっていました。私のトス回しで言えば、「絶対点数取らなきゃ」「勝たなきゃいけない」という意識から、エースだけにトスを上げてしまう場面などがあって、そういったところが悪い点だったなと思います。それについては後悔しているところが今もあります。
――秋季リーグは終わりましたが、まだ試合は残っています。これからの試合をどんなものにしたいですか
全日本インカレ(全日本大学選手権)まであと1カ月しかなく、1試合負けたらもう終わりになってしまいます。一戦一戦みんなで戦って、どうしてもコートの中ではみんなの笑顔が見たいです。点を取ることができないポジションだからこそ、やっぱりみんなが活躍している姿を見たいなと思うので、みんなが輝けるようにトス回しをしていきたいと思います。