【連載】 全日本大学選手権直前特集『To infinity and beyond』第3回 森佳央理×宮田綾乃×森昌美×佐久間絢菜

女子バレーボール

 主将、主務、アナリスト、学連。四選手が全く役割の異なる重役を担い、その役割を存分に果たす中でこのチームは成長を続けた。いよいよ迎えるは四年間の集大成となる全日本大学選手権(全カレ)。どんなに苦しい状況下でもチームを先導し、笑顔あふれる女子バレーボール部を作ってきた四年生は最後の大会で最高のパフォーマンスを見せてくれるだろう。そんなスーパーウーマンの四選手にお話を伺った。

※この取材は11月18日に行われたものです。

「視野の差と時間の流れの速さが変わった」(佐久間)

選手とは異なった視点からスポーツの真理を語る佐久間

――まず右隣の方の他己紹介をしていただけますか

森昌 森佳央理です。身長175cmです。体脂肪率がチームで一番低い女の子です(笑)ここ二週間はたくさん泣いて、二重の幅が広がりました(笑)よろしくお願いします!

森佳 宮田綾乃です。すごく我が道を行くタイプです。『宮田綾乃』っていう芯が強い子です。一人っ子だからそうなったんじゃないかな?っていう分析を同期でしています。絵がめっちゃ上手です。この辺りでいいお店ないって聞いたらすぐに教えてくれます。人間Siriです。社会人になってもこの能力は活用されるでしょう。以上です。

宮田 佐久間絢菜です。二年生から学連を担当しています。身長など諸々はパンフレットでも書かれていないからいいとして…

佐久間 (宮田に割って入り)最高到達点は私身長160cmくらいなんですけど

宮田 勝手に自己紹介始めるじゃん(笑)

佐久間 いいじゃん喋りたいんだから(笑)160cmなのに最高到達点が200cmって公式パンフレットに書かれて学連の事務所で波紋が広がりました。

森昌 綾乃クビじゃん(笑)

宮田 気を取り直して。チームにいた最初の一年間で数々の伝説を残しました(笑)

森昌 1年生の時にアイシング作る用のビニール袋を準備しないといけないんですけど切らしてしまっているのを当日の朝に気づいて、そしたら絢菜が「ちょっと行ってくるわ」とだけ言って表参道から歩きに歩いて六本木まで買いに行きました。それで気を良くして、そもそもビニール袋を忘れたことを内緒にしないといけないのに、自慢気に先輩たちに「私六本木まで歩いてきたんすよ」って話してて結局怒られました(笑)

佐久間 切らしたことはしょうがないし、買いに行く努力はしましたって言わないとね(笑)

宮田 宮田綾乃って言われたけど、『佐久間絢菜』の方が強いです。そんな彼女です(笑)

森昌 半分自己紹介だよね(笑)

佐久間 森昌美です。偏食でたまに夜なのにきょう一食しか食べなかったとか歯磨き粉しか口にしてないって時があります。なんとか生きてます(笑)夜中の3時とかに不意にラインをしてもたまに返ってきます。あとはなで肩でハンガーみたいな肩をしてます。

森昌 生活習慣がやばいやつじゃん(笑)

佐久間 なんだろうな。芯は持ってるんですけど、柔らかい雰囲気というか人に嫌な感じを与えないような雰囲気を常にまとってます。授業にあまり行かないことでも有名です(笑)

――第一印象と今の印象が違ってたりしませんか

森佳 昌美は思ってたよりも色々言います。

佐久間 もうちょっと穏やかで何も言わない子かなって思ってました。

宮田 無気力に見えた(笑)

森佳 それが熱いものを持っている子でした。

森昌 熱くなる時にしか熱くならないけどね(笑)

森佳 熱くなるものが少ないよね。熱くなれるものに対しては熱い。だけど他のことには興味もないみたいな感じだよね(笑)

――他の皆さんは比較的第一印象と今も一緒ですか

森佳 絢菜はもっと真面目だと思ってた(笑)

宮田 私ももっとしっかり者でって感じだと思ってた(笑)

森佳 自分たち入部がバラバラなんで、4月は私と絢菜の二人だったんですよ。それでリーグの初日に熱を出して一人で色々とすることになって帰りの電車で泣きました…(笑)

――入部のキッカケは何だったんですか

森佳 私はスポ推だったんで。早稲田を選んだキッカケはもともと大学でバレーをする気はなくて、浪人してでも大学に入ろうかなって高校生活を送ってたんですけど、

森昌 初耳なんどけど(笑)

森佳 そうだったんですけど、本当に行ける大学ないぞと進路の先生に言われてからバレーするしかないなと決めて、いくつか迷ってたんですけど、教職が取れるのとスポーツを学べるのは早稲田だけだなって思って早稲田に入学しました。

佐久間 私はもともとスポーツを見るのが好きで、早稲田か慶応に行きたかったんですよ。ずっと野球を見てきたので慶応に行ったら野球部のマネージャーをやろうと思っていたんですけど、ご縁があって早稲田に入学しました。早稲田は野球部がマネージャーを取らないって知っていたので、何か違う競技でもいいからスポーツに関わりたいなと思っていて、初めは早スポ(早稲田スポーツ新聞会)に入ろうと思っていたんですけど、偶然当時住んでいた寮のルームメイトだった先輩がバレー部の方で、お話を聞いたり見学に行ったりする中で今まで自分はずっと同じことを続けた経験がないので、大学時代にこれだけは頑張ったと言えるものがあってもいいのかって思ってバレー部に入りました。なんでスポーツは一切やったことないんですよね(笑)

森昌 私はずっと明治の競争部のマネージャーがやりたくてずっと明治を目指してたら早稲田に受かってびっくりして、とりあえず見学は競争部とバレー部だけ見ました。でも、ずっと明治の競争部のマネージャーになる気でいたからどうすればいいかわからなくなって…。スポーツをサポートすることは興味あったし何か頑張れることが欲しかったから、一番好きなバレーなら自分も好きな気持ちを持続させてできるなって思ってバレー部に入りました。

宮田 いろんな要素があったんですけど、私も大学に入ってバレーを続けようとは全く思ってなくって、そもそも実力や経験から部活に入るっていう選択肢を切り捨ててたんですよ。そこから新歓でバレー、バドミントン、コーラスと色々なサークルを回ったんですけど、サークルの自由参加っていうところが合わないなって思って、やるんだったら全員同じ方向に同じ想いの強さで向かっていきたいって感じた時に私ってサークル合わないんだ、無所属でいこうってところからスタートしたんですよ。一年生の夏休みは高校のバレー部に行って、一つ下の引退まで練習に付き添ったんですけど、そういう活動をしていく中でやっぱり部活っていいなって思ったんですね。その後、OASIS(早稲田大学ジャズダンスサークル)の公演に行ったんですけど、その時の公演のテーマが「あなたの行く道はここであっているのか」みたいなテーマだったんですよ。その日そのメッセージに感化されて、私の生きていく道はここで合っているのかって考えた時になんで私、部活いいなって思っているくせに大学で部活をするって考えなかったんだろうなって思い始めて、周りにも早実出身で実力に関係なく部活をやっている友達はいたので、やっちゃいけないなんてないんだなって思い、OASISの公演が終わった帰りの電車でバレー部にメールを送りました。その後に部に見学に行き、バレー部に入部しました。

――最高学年になって一年の頃と比べて意識の違いはありますか

森佳 全然違う。

佐久間 時間の流れが圧倒的に早いですね。私は一年生の頃はチームにいて、それ以降はチームから離れたところで活動させてもらっているんで感覚的な違いはあるのかもしれないですけど、一年生の今の時期とかは先輩は怖かったし、何かにシャンとしながら背筋が伸びる思いでやっていて、目の前のことを全力でやるだけで先に何があるのかとか見えてなかったし、毎日毎日その日暮らしだったなって思うんですけど、今は自分の仕事をやればいいだけじゃなくって後輩の仕事のチェックだったり、上手く分配して期日までに仕事を終わらせたりだったりとか役員さんと話すだったりが一年や二年スパンで仕事をしている感覚があって、そこの視野の差と時間の流れの速さが変わったなと思いました。

宮田 絢菜と一緒で、下級生の時は目の前のことだけをって感じでしたけど、今は自分が頑張るより他人を頑張らせる方が難しいと思ってそれを意識してやるようになったと思います。

――四人それぞれが全く違う役職についている中での難しさはありましたか

宮田 それぞれが同じような立場がもう一人いてほしいって思うことが辛い時なんかはあったんじゃないかなって思います。

森佳 でも、人数が多い学年は多い学年の悩みっていうのがあると思うから、いい意味で考えると自分の役職に責任を持ってできていると思います。ただそれぞれがそれぞれすぎるので、しっかり自分のやっていることを共有しようねっていうのは新体制になってから言っていました。

――もうそれから一年が経とうとしていますが、振り返ってみていかがですか

宮田 他の学年はどうかわからないけど、喋る方だったよね。

森佳 連携は取れてると思っているけど…。考え方とかで割れることはないです。どういう状況でも結論が一緒でまとまってたかなって思います。

森昌 お互いが近いところにいれたのは良かったと思います。

――どういうチームを作っていこうと思われましたか

森佳 去年のインカレが終わってからコートの中で主力だったメンバーが一気に抜けて、毎年のことなんですけど人がいないところからスタートして、それでも勝っていかなければならないので、人がいないとか背が小さいとか言い出せばきりがないと思うんですけどそこを理由にせずに覚悟を持ってやっていこうっていうのを新体制になった時のミーティングで言いました。でも、自分たちも1年生の時は新4年生にこういうことでやっていきますって言われても、「へぇ」って感じで思ってたからそうは言っても下級生が「じゃあ、やろう」っていう風にはなってなかったんじゃないかなって思います。そういったところから始まりました。

――下級生の頃に見ていた4年生のイメージと今4年生になった自分を照らし合せてみて印象の違いはありますか

森佳 今になって先輩たちはこういう風に考えてきたんだなっていうのはすごくわかります。それまではわからなかったから。

「自信を持って欲しい」(森昌)

時に鋭いツッコミを入れながら温かい口調で話す森昌

――チームを引っ張っていく中で一番難しさを感じたのはどういうところですか

宮田 新チーム始まってから最初の方がしんどかったよね。

森佳 ずっとじゃない?

宮田 ずっと難しくはあるんですけど、まず三役を決めるところから後輩に目標を伝えてついてきてもらうこととか。

森佳 でも、どの月を思い返してみても全部辛いですね(笑)目標に対して結果が出せてないから余計にだとは思うんですけど、振り返ると全部辛いです。

――成長を感じたところはありますか

宮田 私は早関戦で佳央理も怪我で出れなくて、3年生以下のメンバーでやった試合がフルセットまでもつれて勝った試合だったんですけどそれが一番印象に残ってます。

森佳 ベンチで見てたんですけど、見てる方がきついなって思いました。

――秋リーグ(秋季関東大学リーグ戦)も序盤は富澤選手(結花、スポ=東京・文京学院大女)を欠いた中での試合が続きましたが、その時も試合を通してのチームの成長は感じましたか

森佳 試合をするごとに結束力が高まっていったっていうのは自分も感じているしみんなも感じていると思います。

佐久間 運営側からの意見で後輩が言ってたんですけど、「同じくらいのレベルの大学のチームが一堂に会して試合をする機会って実は少ないんですよ」って言われてなるほどなって思いました。自分たちは都内の大学なんでちょっと出て行けばチームの力が同じであったり上であったり下であったりといろんなチームと試合ができるんですけど、都心から外れたとこにある大学や地方にある大学はリーグには所属していて、そういうチームがどこと試合をしているかって高校生だったり地域のチームだったりと練習試合しているって状況で「リーグ戦ってすごい貴重な機会なんですよね」って言われた時は、自分たちもこの一回一回の試合を大事にしないといけないなって感じました。だからこそ試合を通してみんなが一致団結していっているのは見ていて嬉しかったし、同じレベルの大学のチームと試合をしていくっていうのはこんなに結果につながるんだなって見ていて思いました。だからこそ運営をする側としてもしっかりしなきゃいけないんだなって身が締まる思いでした。

――後輩との関わり方で意識したことはありますか

宮田 めちゃくちゃあります(笑)

森昌 私の場合は、コートに入っていてもいなくても選手それぞれが自分の悩みと戦っていて、それを聞いて指示が出せるわけじゃないけど、意外とみんな悩みを話す機会ってないし、特にコートに入っていない選手はコートに入っている選手を支えたいっていう思いがあるから、そうなるとコートに入っていない選手たちの悩みはどこにいくんだっていうことになるんで、そういう時に一緒に考えてあげたいなって思ってます。

宮田 昌美がアナリストとしてもアドバイスしている姿を見るようになりました。

森佳 一人一人の秋リーグから出たデータをプリントアウトしてそこにコメントを書いたものをそれぞれに渡しフィードバックしてくれています。動画とかでは見るんですけど、そこから自分の傾向であったりを分析するのは難しいので、数字として見える形で比較できることは次にとるべき解決策が分かりやすくなったって後輩たちも言っています。

森昌 個別に年に何回かデータを出すんですけど、特に秋は入れ替え戦で負けてしまって結果は残らなかったかもしれないけど、後輩がどんどん変わってきたっていうのは事実だし、それぞれが頑張って成長したっていうことを主観ではなく客観的な事実として伝えられるから自信を持って欲しいということは伝えようとしてきました。

――選手からもデータがあることが自信につながったという声は聞かれましたよ

宮田 泣いちゃう泣いちゃう(笑)

森昌 嬉しい(笑)

森佳 データがあることで会話も盛り上がるしね

「チームがうまく回るために自分の存在がある」(宮田)

『宮田綾乃』という軸をブラさず、独特な表現を交えて語る宮田

――森(佳央理)選手は下級生主体のコートの中を引っ張っていくにあたり意識されたことはありますか

森佳 春リーグの入れ替え戦が終わるまではついてこいみたいな感じでした。ずっとこのスタンスは変わってなくて、決められなかったら自分の責任だし、負けても自分の責任っていうのは常にあります。そういう心境の中試合をやっているんですけど、ただついてこいって言っていると後輩がどこに悩んでいるのかとか、どうしたいのかとか自分以外にコートに入っている人たちそれぞれに意見があって、それを春の入れ替え戦が終わった時に寄り添って聞けれてなかったなって気づきました。みんな高校までに全国の中でも結果を残して自分たちで考えてやってきた人たちだから、それぞれ考えを持っているのは分かっていたので春の入れ替え戦が終わってからはたくさん意見をもらうようにしました。私はセンターだからレシーブができない分後輩たちにフォーメーションのこととか聞いていかないといけないし。そういう感じで秋からは試合中に後輩の意見に臨機応変に対応したので、本当に後輩に助けられました。だけど、それと同時に聞くことに気を使いすぎてしまったっていうのも事実で、春までに言えていたことが言えてない場面があったなってことに秋の入れ替え戦を終えて気づきました。意見を聞こうとしている反面、自分自身のことを見つめる時間があまりなかったなと反省したので今は自分と向き合っている最中です。あと結花には本当に助けられましたね。自分は言葉を出すことが下手なのでそこを結花がフォローしてくてたりとか、コートの中に四年は一人だけど副将としてチームを引っ張ってくれました。なので本当に感謝です。

――宮田選手は主務として後輩との関わり方で意識されたことはありますか

宮田 春は私にとっての先輩っていう存在はうまくなきゃいけないとかカッコよくなきゃいけないっていうのが前提にあったんですよね。だから後輩より下手な自分だったりとかうまく言葉を出して叱れない自分に自分なんて先輩失格だって後輩に対して恐れ多いような感覚を持ってしまったんですよね。それでうまく回ったらよかったけど、春は負けてしまったし自分自身も結果を残せていなかったので、同期にもアドバイスや指摘だったりとか時には怒られて、コーチにはカッコをつけるなと言われてもう一度自分を考え直しました。そこからカッコをつけないでいこうと決めて、秋からは佳央理を見習って「ごめん私分からないんだけど教えて!」みたいなことを後輩にカッコつけずに言えるようになって、いい意味で変なプライドを捨てられたなって思います。後輩のことを自分よりうまくて怖い存在だと思っていたんですけど、後輩も人間だし考えもあって悩みもあるんだからそこを昌美みたいにちゃんと聞いてあげないといけない、チームがうまく回るために自分の存在があるってことを考えられるようになりました。

――成長したなって思う後輩はいますか

宮田 出た、毎年恒例(笑)

森佳 絶対聞かれるなって思って本当に考えていたんですけど、よく先輩たち一人に絞れていたなって思うんですよね(笑)

森昌 無理じゃない?

森佳 一年間後輩たちが怪我だったりポジション変更、それこそ結果が出ない中で頑張ってきたのを見てきたから。もう四年は頑張るしかないんですけど、一、二年や三年もですけど頑張るモチベーションを作るってすごく難しかったと思うんですよ。その中でも自分たちについてきてくれている姿を見てたから、本当に絞れなくて…。でも、自分の立場のことを考えたら結花ですね。結花さんには韓国ドラマのDVDを貸していただき、私がバレーで落ち込んでいる時には韓国ドラマを見て癒され(笑)。部活中もチームのことは自分だけじゃなくて結花と一緒に考えてきたし、自分が三年生の時は何もしていなかったことを考えても三年生なのにこんなに私を助けているんで来年の結花が頼もしすぎてしょうがないです。

宮田 果菜(村山、教2=東京・国際)レシーブうまくなったよね?

森昌 確かに。

森佳 あとは裕利恵(井上、スポ2=岡山・就実)の打力。あの子高校まではずっとリベロで大学入ってからアタッカーになったんですけど、今年はキーマンのような存在になりましたね。裕利恵が決めるセットは勝っているので。だから二年後が怖いねって話をコーチとしてました。大学からスパイクを打ち始めて二年でこんなにうまくなっているんだから四年になったらどうなるんだろっていうのを話しています。

森昌 もう全員出てきちゃいそうだよね(笑)

森佳 あと唯(吉崎、スポ2=東京・三田)と諒(谷内尾、スポ2=東京・国際)。最初は私とトレーナーが連絡とっていたんですけど、それをその二人に一任しました。時々二人とトレーナーのメールでのやり取りを確認するんですけど、本当に頑張ってくれています。二年生って四年生に対して発言するのって難しいと思うんですけど臆せず言ってくれるし、自分は知識がない分本当に助かっています。

――春を振り返っていただけますか

森佳 反省しかないよね。

森昌 自分のこと精一杯だったなって思います。

佐久間 どこのチームもそうだったなって思います。私は立場的に他の大学と関わる機会が一番多い運営っていう立場でいろんな大学から今のチーム状況を聞くんですけど、春は代替わりして自分たちについてきてもらうチームを作ることにどこの大学も必死なので、みんなもそうだったのかなって思うんですけど、勝つことに必死で自分のことに精一杯で視野が狭くなっちゃうっていうのは必然的なことなので悪くいことではないのかなって思います。私にとっては春は1部で学連の人も多いし、自分たちの代は同期も多いので10人くらいでリーグを回すっていう感じでほとんど仕事はなくて精神的には私が一番余裕あったかなって思いますね。だけど、同期が頑張っているのはもちろん知っているし1部に残留してほしいことは自明なんですけど、入れ替え戦をする可能性が見えてきたら、秋は私が2部リーグを回すかもしれないっていうことを考えないといけなくて。その中で毎週試合会場に向かってチームメイトにいらない心配をかけないように声をかけて、試合が終わったら秋リーグに向けて2部の日程を組んだりする日々でした。同期が頑張っているそばで2部の試合のことなんか考えさせたくないけど、2部は人が少ないので運営に行かなければならない、だからそっと抜けて2部に行くみたいなことをしていた時が今年一番辛かったです。

森昌 私はコートに入っていない分どうアプローチしたらいいかわからないし、とりあえず同期がヤバいなってずっと感じてました。

森佳 それぞれがそれぞれの方向で悩んでいて、そこは共有しようって言ってたんですけど、悩みのベクトルがみんな違う方向を向いているので、その悩みに寄り添ってわかるよって言うことはできないって感じでしたね。

宮田 そんな春でした。

――秋は2部リーグ優勝を飾りましたがいかがでしたか

森佳 そうですね。優勝は嬉しかった。だけど、その先に目標があったからそこまで喜べはしなかったですね。

宮田 すぐに入れ替え戦だって感じだったよね。

森佳 こんなに優勝したことに対して心の底から気持ちが湧き上がらなかったのは初めてかもしれない。

森昌 トロフィーもらいに行くのも忘れてたもんね(笑)

佐久間 逆にすごいなって思っていました。通常運行で勝つチームを見るのが久しぶりというか、勝って喜んでいるみんなを見るっていうのは単純に嬉しかったしみんな生き生きしているなって思いました。勝っていると勝ち癖がつくっていうのをよく聞くけど、それを肌で感じることができた秋でしたね。

森佳 自信がつきましたね。

「やりきったって心の底から言えるバレーボールをしたい」(森佳)

言葉の節々に力強さがあった森佳

――早大バレー部を通して成長できたと思うところはありますか

佐久間 色々あるんですけど、一番自分の中で変わったなって思うところはバレー部に入ってないと出会えなかった人って何百人いるんだろってところですね。同期にも出会えてないし、後輩や学連の人間、役員さんやバレーを通してできた友達といったつながりを考えるとバレーに出会ったことで自分の人生が大きく変わったなって思います。それとみんな一度はもうやめてやるって思ったことあると思うんですけど、たくさん仕事が降ってきて、かつ自分のプライベートなことで忙しい時に優先順位つけて自分の中で割り切ってできるようになったことが成長かなって思うし、それもバレーを通して出会った多くの人のお陰で成長できたのかなって思います。

森佳 中高はバレーをするために入ってバレーのことしか考えないっていう環境でした。だからこそ今までは周りのことを考えたことがあまりなかったんですけど、大学は初心者や帰国子女だったり半数以上が一般入試で入った人たちの中で、ただバレーのスキルだけを学ぶっていうことじゃなくて、いろんな人の価値観であったり考え方を吸収することができたかなって思います。自分の中の選択肢が増えましたね。特に四年目はチームが勝つためにはどうしたらいんだろうってずっと考えてきて、その中で周りにどういった影響を与えることができるのかっていうのを自分を見つめながらできたので、一年の時の自分と今の自分を見てみたら性格が全然違うんだろうなって思います。

森昌 私は大学入るまでの受験や部活は自分が頑張った分だけ結果が出れば良くて、自分で掲げた目標に対して頑張れたら周りがどうであろうと満足できていたけど、大学に入ってチームスポーツのサポートに入った時にこれまでとは全然違うアプローチをしなきゃいけないところから考え方が変わって、自分以外の人のために初めて頑張りたいと思うことができました。アナリストを始めた頃は自分がデータを出さなければならないであったり先輩になったら後輩の話を聞かなければならないっていう使命感があったんですけど、どんどん後輩の話を聞きたいし、自信を持って戦ってほしいからデータを出したいって義務ではなく自分の意思でチームのために何かしたいって思うのが素になってきてそこが成長かなって思います。アナリストってコートの上にいて全体を見渡せる位置にいるから、コートの6人だけじゃなくて多くの人がこの試合に懸けているっていう光景をずっと見てきたことで視野が広がったなとも思います。

宮田 私は部活に入って『世の中の正解は一つじゃない』ってことがわかりました。極端なことをいうと私にとってバレーボールをやっている人はスパイクを打って点を決めている人だったんですよ。だから高校時代は視野が狭い中、自分の考えの下でやっていたんだと思います。高校時代に目を向けられなかったコート外の人間に、大学に入って自分がなってから、今までは試合に出るのが全てだと思っていたけど、勝つための貢献の方法は一つじゃない、っていうことが学べました。

――全カレの目標をお願いします

森佳 一回戦の高知工科大に勝ったら二回戦で日体大に当たるんですよ。そこがみんな思っている通り山場になるので、1部の相手に勝ち切るっていうのが目標です。でも、新体制になった時に日本一を目標に頑張っていこうって決めたんで、その軸をぶらしたくないのでまずは日体大にしっかり勝ち切る、その先にある次の試合を全員で戦っていくっていうのを入れ替え戦が終わってから全員の共通意識の中、頑張っています!

――集大成となる全カレに向けての意気込みをお願いします!

宮田 カッコつけないでやりきります!

森佳 このチームで戦う最後の試合だから、このチームで勝ちたいっていうのが一つと自分がやりきったって心の底から言えるバレーボールをしたいと思います!

佐久間 視点が違っちゃうと思うんですけど、自分が運営であったり色々なことを通して培ってきたものや知識を全て使い果たして最後の大会頑張ったっていうのが自分の意気込みです。チームは負けた瞬間に終わりになるんですけど、私は運営としての役割が12月2日まで続くのでできるだけ長くチームと一緒に戦いたいなって思います。なのでみんなを待っています!

森昌 データが得点を決めるわけじゃないけど、選手に目の前の一点を少しでも取りやすい環境でプレーしてもらうために、やってきたことを変えず最後の一点までやりきりたいと思います!

――ありがとうございました!

(取材・編集 遠藤伶)

大学最後の大会に向け意気込む選手たち

◆森佳央理(もり・かおり)(※写真中央左)

1997年(平9)2月20日生まれ。身長175センチ。群馬・高崎女子高出身。スポーツ科学部4年。センター。一年時からコートに立ち続け、自身最後のリーグ戦となった秋リーグでは、最優秀選手賞を受賞した正真正銘のチームの顔である森佳央理主将。技術面、精神面と大きな成長を遂げた四年間だったと振り返りますが、一年時から今もなお変わらないものは可愛らしいふくらはぎだそうです。笑顔、プレーでチームを引っ張る森佳央理選手の活躍を刮目せよ!

◆宮田綾乃(みやた・あやの)(※写真左)

1996年(平8)8月6日生まれ。身長158センチ。東京・早稲田実業出身。
政治経済学部4年。主務・レシーバー。プレーヤー兼主務として八面六臂の活躍を見せた宮田選手。練習中に歯が折れてしまうほどバレーに対して熱い想いを見せる宮田選手は、内定先の歓迎会で行ったカラオケで秋リーグのMVで用いられた「ワタリドリ」(Alexandros)が流れた瞬間、号泣し内定先の方々にドンびかれてしまったそうです。ワタリドリのように全カレの舞台で羽ばたく宮田選手を応援しています!

◆森昌美(もり・よしみ)(※写真右)

1997年(平9)1月27日生まれ。身長169センチ。神奈川・大和高出身。
文化構想学部4年。アナリスト。生活習慣が悪くなるほど身を粉にしアナリストとしての役割を全うしている森昌美選手。データに熱中しすぎるあまり最近水道が止まったそうです。森昌美選手の公共サービスをも止める熱い想いは選手に届き、全カレでの大躍進につながるはずです!

◆佐久間絢菜(さくま・あやな)(※写真左)

1996年(平8)4月16日生まれ。身長161センチ。茨城・茗渓学園高出身。
文化構想学部4年。連盟。見た目によらず数々の伝説を生んできた佐久間選手。今回の対談では真面目にあふれ出る想いを語っていただきましたが、LINE上ではアイコンがトーマスであるため、どんなに真面目なことを話されても説得力がまるでないそうです。最後まで笑顔で大会を運営する佐久間選手にも注目です!