粘りとチーム力でつかんだ勝利!来期につながる1部残留を決める

女子バレーボール

 絶対に勝って1部の舞台を残す――。その執念が実を結んだ。秋季関東大学リーグ戦(秋リーグ)では1部校相手に全敗を喫し、入替戦にまわった早大。この日は2部リーグ1位の大東大と対峙(たいじ)した。2部に逆戻りして、1年間やってきたことを無駄にするわけにはいかない。意気込む早大だったが、プレッシャーに飲まれセットカウント1-2と追い込まれてしまう。しかし崖っぷちで迎えた第4セットで、ついに早大が真価を発揮した。声を掛け合い、スパイクが決まるまでレシーブを続ける粘りのバレーでじりじりと差を広げ、このセットを奪うと試合は最終セットへ。連打で点を重ね、セット奪取に王手をかけると、最後は森佳央理(スポ3=群馬・高崎女)が右手を一閃。強烈なスパイクが決まると、試合終了のホイッスルが響いた。セットカウント3-2(25-21、18-25、21-25、25-18、15-10)で勝利し1部残留を決めると、歓喜に包まれる会場の中心で、選手たちは固く抱き合い喜びをかみ締めた。

 大東大と対戦するのは、まだ早大が2部に所属していた春季関東大学リーグ戦(春リーグ)以来のことだった。春リーグでは森と富澤結花(スポ2=東京・文京学院大女)の二人のエースにぴったりとマークを付けられ、なすすべなく敗れたが、この日は一味違った。1部で戦う上で、相手ブロックを分散させるべく打力を上げた浅野泉里(文4=岐阜)や中川知香副将(スポ4=神奈川・川崎橘)が攻撃に打って出ると、森や富澤も打ちやすい環境ができあがりスパイクが決まっていく。中盤にブロックポイントを連続で決めると完全に流れをものにし、不意を突いた相手のツーアタックにも見事反応する粘り強さを見せた。最後は井上裕利恵(スポ1=岡山・就実)の相手の配置をよく見たサーブが相手コートで上がらず、サービスエースでこのセットを奪った。

素早いスパイクで得点を奪った浅野

 しかし大東大も黙って引き下がりはしない。2部リーグで春、秋リーグ連続でスパイク賞を受賞した西條華子(2年)を筆頭に反撃を開始される。早大も相手レシーブをダイレクトで撃ち落とす森や、相手ブロックを弾く素早く強いスパイクを決める浅野の働きで互角に試合を展開するが、18-18の場面で出たサーブミスから連続失点をしてしまう。タイムアウトを取るもはねのけ切れないプレッシャーから動きが鈍り、1点も返せずセットを落とす。続く第3セットでも1部に昇格しようとする相手の執念に圧倒され、序盤から離される。2段トスでもしっかりとスパイクを決める富澤の活躍で追いつくも、相手の攻撃が上回り、失セット。セットカウント1-2と後のない状況に追い込まれてしまった。

強烈なスパイクを連発した森

 追い込まれて迎えた第4セットだったが、この日の早大は気合の入り様が違った。それが最も顕著に表れていたのは、チーム内の声掛けだろう。普段より大きな声を出し、お互いを鼓舞する姿が見られた。「練習でやってきたことをやろう」。もう後がないプレッシャーを跳ね返すように、いつも通りの一番いいプレーをできるように。選手たちは声を張り続けた。これが功を奏し、早大のプレーに粘り強さが戻ってくる。「いつもなら腰が高く落としてしまったボールも振り返れば必ず上がっていた」と、浅野も満足げに振り返ったように、森のスパイクで得たリードを縮めさせないため、選手たちはコートを駆けまわってレシーブを上げ続けた。「執念ですね」(芹澤友希主将、スポ4=茨城・土浦日大)。さらに的確な場面でのピンチサーバーの導入などもあり、着実に点差を開くと最後は中川がブロックアウトを決め、試合はフルセットに突入。最終セットでも森が攻撃の口火を切り、先制すると富澤、浅野が続く。防御の面では芹澤や河治えみり(社1=北海道・旭川実)の意地のレシーブが上がり、粘り続けて相手のミスを誘う好プレーが見られた。14点を先取し、最後の1点。芹澤がトスを託したのは森だった。「絶対に勝ってやるという気持ちだけで打った」(森)。その強烈なスパイクは相手レシーブを弾き、コート外に落ちる。試合終了の笛が吹かれ、選手たちは目に歓喜の涙を浮かべた。早大の1部残留が決まった瞬間であった。

喜びを爆発させる選手たち

 「プレッシャーはすごかったですけど、楽しくできました」。芹澤は自身最後のリーグ戦を終えてこう振り返る。試合を楽しむこと。これは馬場泰光監督(平8人卒=京都・洛南)が指標の一つとして掲げる『強い気持ちをもって、笑顔で戦い抜くこと』にも通ずるものがある。試合中、そしてセット間も笑顔を絶やさずに、いい雰囲気の中で戦えたことが、この日の勝利に繋がったのであろう。気持ちで相手に打ち勝つイメージはできた。ことし果たせなかった1勝を、来春こそ。一丸となってつないだ1部の舞台で、選手たちは挑戦を続ける。

(記事 坂巻晃乃介、写真 川浪康太郎)

セットカウント
早大 25-21
18-25
21-25
25-18
15-12

大東大
スタメン
レフト 中川知香(スポ4=神奈川・川崎橘)
レフト 富澤結花(スポ2=東京・文京学院大女)
センター 浅野泉里(文4=岐阜)
センター 森佳央理(スポ3=群馬・高崎女)
ライト 井上裕利恵(スポ1=岡山・就実)
セッター 芹澤友希(スポ4=茨城・土浦日大)
リベロ 飯田友美(商2=長野・諏訪清陵)
リベロ 河治えみり(社1=北海道・旭川実)
コメント

芹澤友希主将(スポ4=茨城・土浦日大)

――1部残留おめでとうございます。今の率直なお気持ちは

本当に嬉しいの一言です。

――負ければ降格という試合でしたが、プレッシャーはありましたか

プレッシャーばっかりで、押し潰されそうでした(笑)でもやっぱり、勝ちたいという気持ちが強くて。自分は何もできてなかったんですけど、後輩の力とか同期の力をすごく感じて、本当によかったなと思います。

――飛び込んでレシーブする場面も何度も見られました

絶対落とさないという気持ちがすごく出て。執念ですね(笑)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

色々な課題が見つかった試合なんですけど、気持ちという部分では1部で戦ってきた自信が出せたと思うし、絶対負けないっていう今年のチーム力が出せた試合だったなと思います。インカレまでに詰めていける部分はブロックだったり、レシーブの精度を上げるとかいう事を見直していくべきだなと思いました。

――国士舘大戦の後のインタビューでは1部に残留することが後輩に残せることだと言っていましたが、今後輩にかけたい言葉はありますか

後輩に助けてもらってばっかりで、国士舘大戦で負けた時にもう一度4年で話し合って、絶対ここで負けたらダメだと思って。もう一度気を引き締めてやらないとこのままじゃ負けるっていう風に監督にも言われて、この4日間は本当に死ぬ気で頑張ってきました。それに後輩たちも付いてきてくれて。らいねんも1部で戦っていけるという残せるものもあったので、よかったです。

――試合前にチームに声掛けなどはされましたか

やってきたことを信じようということで。本当にこの4日間は本気でやってきて、ボールも絶対に落とさないという気持ちでいたので、それを信じるのみだと言いました。あと、楽しんでいこうという風に声を掛けあって。セット間でも後輩たちが「絶対勝ちますよ!」とか言ってくれて。それが心強かったなと思います。

――やはりきょうは楽しんでできましたか

そうですね。プレッシャーはすごかったですけど、楽しくできました。

――では最後にインカレに向けて意気込みをお願いします

抽選の結果が出て、初戦は東北福祉大という強い相手ではあるんですが、自分たちが一年間やってきた粘りやチーム力を発揮できれば、必ず結果が付いてくると思うので。きょうの試合で上がった課題をチームで共有して、詰めていければなと。全カレではここまでやってきたみんなと一試合でも多く試合ができるように、頑張っていきたいなと思います。

中川知香副将(スポ4=神奈川・川崎橘)

――1部残留おめでとうございます。今のお気持ちは

後輩に1部の舞台を残せて、とりあえずほっとしています。

――きょうの試合は振り返ってみていかがですか

本当に自分はダメダメだったんですけど、周りのみんなの支えで乗り越えられた試合だったかなと思います。

――打ち込んでいる場面も多かったと思いますが、ご自身としては納得がいっていないということでしょうか

そうですね。まだまだできるので、頑張ります。

――きょうは負けたら降格という試合でしたが、プレッシャーなどは

プレッシャーしかなかったです(笑)

――ブロックアウトを決める場面もありましたが、これは1部の経験が生きたということでしょうか

最初はずっとクロスに打ってて。練習ではブロックアウトをやってたんですけど、結花(富澤、スポ2=東京・文京学院大女)とかには「ブロックアウトどんどんしていきましょう」とか、「練習してきたことを出そう」と言ってもらえて。冷静になれました。まず練習してきたことをやって、テンションを上げていこうという感じでした。

――第4、第5セットではプレーに執念のようなものが感じられました。変化などはありましたか

本当にみんな負けたくないという一心で。そういう気持ちが全面に出ていたのがよかったのかなと思います。

――追い込まれてから粘りを発揮したという感じですね

そうですね。最初からやらなきゃだったんですけど。

――では最後にインカレへの意気込みをお願いします

相手がどうこうとかじゃなくて、この一年間自分たちがやってきたことをどれだけ出せるかだと思うので、悔いが残らないようにチーム全員で頑張りたいと思います。

浅野泉里(文4=岐阜)

――1部残留おめでとうございます!今の率直な感想は

眠れないくらいきのうからドキドキしていたので、本当によかったの一言に尽きます。

――試合の立ち上がり、チームの雰囲気はいかがでしたか

1部で戦ってきたということもあって、最初は3ー0で勝つイメージでいました。そうはいかなかったですが、自分たちがリーグ戦(関東大学リーグ戦)でできなかった粘りや覇気を最後の方で出せて、いいかたちで終われてよかったです。

――前の試合で日大が勝利し異様な雰囲気となっていましたが、精神的な影響はありませんでしたか

日大が勝ったということで会場が盛り上がっていて、その時に、絶対に私たちは落ちないという思いが湧いてきて逆にピリッとした雰囲気になったので、個人的には火をつけてくれたかなと感じました。

――第4セットから勢いが増しましたが、何か変えた部分はありましたか

1点ずつ詰めていって、やられたらやり返すということをやれば勝てると分かっていたので、まずは落ち着いて1点ずつ取っていこうということを声掛けしていました。

――いつも以上に声も出ていた印象ですが

みんなの必死さが全然違うし、いつもなら腰が高く落としてしまったボールも振り返れば必ず上がっていたので、それで勇気を持って打つこともできたし、ブロックも一生懸命飛ぼうという気持ちになって、みんながみんな相乗効果でできたいい試合になりました。

――ご自身のプレーを振り返って

とにかく捨て身で、上がってきたら相手の嫌なところにきれいに打ち抜くというイメージを持っていました。最後の方失速してしまったのですが、当初の目標は達成できたかなと思います。

――1部残留を決めた今、改めて最後のリーグ戦を振り返っていかがですか

私は全て通して出たのが初めてだったので、すごく貴重な経験でした。入部当初は、自分はスポーツ推薦でもないので絶対(メンバーに)入れない気もしてたんですよ。だけど、入ることができたので、自分の夢もかなったし、1部で戦いきったことも自分の誇りにして、また次のステップにいきたいです。でも悔しい部分の方が多かったので、次のインカレ(全日本大学選手権)にぶつけたいと思います。

森佳央理(スポ3=群馬・高崎女)

――1部残留おめでとうございます!今の率直な感想は

本当にホッとしています。それだけです(笑)。

――試合を決めた最後の1点は森選手のスパイクでした

あの時は、絶対に勝ってやるという気持ちだけで打っていて、コースとかよく分かんないですけど、とりあえず思い切りたたきました。

――試合後、目には涙がありましたが

中盤で2、3セット目を取られた時に、4年生も後輩も声を掛けてくれて、勝ちたいという気持ちを最後まで通し切れた結果が勝ちにつながったと感じました。あと苦しいところで4年生が決めてくれたので、本当によかったです。

――第4セットから勢いが増したのは声掛けなどが要因ですか

そうですね。あのセットを取らなきゃ終わりだったので、ミスしてもいいから思い切りいこうということで、3セット目を押されてしまった分、やり返そうという気持ちで切り替えて臨めたのがよかったです。

――改めて今季を振り返っていかがですか

今季は秋1部に上がって、でも思うようにプレーできなくてもどかしかったのですが、結果的に来年も1部に残ることができたのはよかったです。ただ、リーグ戦(関東大学リーグ戦)は11連敗という結果だし、インカレ(全日本大学選手権)の初戦も東北福祉大という強いところなので、チーム全員の体のケアをしっかりして、格上の相手にどう臨むかをこの3週間くらいで、4年生の先輩方を中心に詰めていきたいです。