高くそびえ立つ筑波大の「カベ」、そこに差し込むいちるの光

女子バレーボール

 所属リーグを2部から1部に上げてついに始まった秋季関東学生リーグ戦。早大にとって待望の初戦に立ちはだかったのは春の王者・筑波大の高くそびえ立つ「カベ」であった。筑波大の高い打点から振り下ろされるスパイク、反撃を許さない高いブロックに圧倒される。セットカウント1−3(18−25、18−25、26−24、19−25)。試合は落とした。しかし、数字だけでは分からない、次に繋がる確かなものがこの試合にはあった。

 1部で迎えたリーグ戦、試合開始の号砲を鳴らしたのはやはり、エース森佳央理(スポ3=群馬・高崎女)の右腕だった。森のコースに打ち分ける正確なスパイクでポイントを先取し、その後も順調に得点を重ねるが、身長180cm越えをそろえる門守たちが立ちふさがった。捕まればただでは帰してはくれない。3連続でブロックポイントを取られ、6連続ポイントを献上してしまう。そこからは中盤にブロックアウトを取り、自分たちのリズムをつかみかけるも終盤に1部の高さ、力強さを見せつけられ勝負あり。第2セットは第1セット終盤の流れのまま乱れが生じ、開始から7連続ポイントを奪われてしまう。しかし、今の早大は昔の早大ではない。馬場泰光監督(平8人卒=京都・洛南)が選手の成長を称揚しつつ振り返るように、早大特有の粘りのバレーで簡単に引き離されない。最後は自力の差が出てセットポイントを取られてしまったが、次セットに夏に積み上げて来たものの開花を予感させる第2セットとなる。

 コースにスパイクを打ち分ける森

 そして、第3セット。ついに花開く。先制点こそ筑波大に取られたものの第1、第2セットのような大崩れはしない。「レシーバーは絶対に落とさない、スパイカーはそれを絶対に決めるという気持ちが生まれ好循環を生んだ」と芹澤友希女子主将(スポ4=茨城・土浦日大)が語るように、相手の力強いスパイクをチーム力で拾い、それを早大の誇る強力な二枚看板、森は夏に鍛えた速攻、富澤結花(スポ2=東京・文京学院大女)はチームとして取り組み、強化したバックアタックを決め、二人合わせて18得点。その攻撃を牛耳る芹澤友希は丁寧なトスに加え、自らツーアタックを決める。終盤は筑波大に粘られるものの、ここもエース森が嫌な流れを断ち切り、最後は自身のサービスエースで勝利。攻守がかみ合い春の王者を相手に1セットを返す。「自分たちのチームの雰囲気はいい」(森)と語った際に見せた笑顔に夏場で得た1部でも戦えるという自信が伺える。

 まだわからない。希望が見えた第4セット。しかし、想像以上に覇者の「カベ」は高かった。スパイクはブロックを貫き、高いブロックが早大の攻撃のリズムを狂わせる。最終ポイントもブロックで決まり、1部のレベルの高さを思い知らされた。だが、このセットにも次へと繋がる布石はあった。春からポジションが変わり練習にひたむきに励み、日々進化を続けてきた中川知香副将(スポ4=神奈川・川崎橘)が躍動し、このセットトップの7得点を取った。

 攻撃の多彩さに磨きがかかった富澤(奥)

 馬場泰光監督がこの夏に掲げた3つの課題のうちの1つ。笑顔で戦い抜く、強い気持ちを持つこと。この課題は最も達成され、そして早大の新たな強みとなったもののように感じた。まだまだ先の長いリーグ戦。黒星で幸先の悪いスタートを切ってしまったのだろうか。いや、それは違う。試合中、そして試合後に見えた選手たちの笑顔が物語っているように、敗北こそしたが、確固たる勝利への自信が今後のリーグ戦の明るい未来を示している。

(記事 遠藤伶、写真 宅森咲子、吉澤奈生)

セットカウント
早大 18-25
18-25
26-24
19-25

筑波大
スタメン
レフト 中川知香(スポ4=神奈川・川崎橘)
レフト 富澤結花(スポ2=東京・文京学院大女)
センター 浅野泉里(文4=岐阜)
センター 森佳央理(スポ3=群馬・高崎女)
ライト 井上裕利恵(スポ1=岡山・就実)
セッター 芹澤友希(スポ4=茨城・土浦日大)
リベロ 河治えみり(社1=北海道・旭川実)
コメント

馬場泰光監督(平8人卒=京都・洛南)

――東日本インカレの後はどのような練習をされてきましたか

まず一つはサーブです。春すごく(サーブが)弱かったので、そこをしっかり攻めるということでサーブの練習には時間を費やしました。それから、一人一人は強くないのでどうやってチーム力を上げるかということで、夏は3つ課題を掲げてやってきました。1つはローテーションごとにどのポジションで誰が何をするのかという振り返りをしました。もう1つは連続失点を無くすということ。これもローテーションごとに連続失点があるという傾向が出ているので。そこをしっかり潰そうとしました。あと3点目は笑顔で戦い抜く、強い気持ちを持つということ。この3つを徹底してやってきました。

――きょうの第2セットでは連続失点も見受けられましたが

そこはやっぱり相手の高さだとか、自分たちの弱さが出てしまったのですけど、今までだったら離されっぱなしだったと思うんですが、きょうは食らいついて、最初の失点から少しずつ(点差を)詰めていけて。そこは選手たちを褒めたいなと思ってます。

――チームは東日本インカレの後どのように変化しましたか

ポジションを少し変えました。これはローテーションごとの分析をした時に、今までは富澤(結花、スポ2=東京・文京学院大女)と森(佳央理、スポ3=群馬・高崎女)を対角にしていたんですけども、4年生の中川(知香、スポ4=神奈川・川崎橘)の打力がかなり上がってきて。結果としてスコアも上がってきたので、ここは思い切ってウィングスパイカーを中川と富澤の対角にすると。それで森と浅野(泉里、文4=岐阜)をミドルの対角にするということで、そこのポジションを変えました。これを変えることによって、今までは森がエースだし、富澤がエースなので、やっぱりそこ二人の対角かな、というところで発想を変えて、しっかりデータに基づけばこのポジションで十分戦えるんじゃないかということで。きょう少しは良い兆しが見えたのかなと思います。

――今のチームの雰囲気はどうですか

とてもいいと思いますね。やっぱり1部リーグで絶対勝つという強い気持ちを持ってますし、そのためにしっかり途中も笑顔を出しなさいと。そこで下を向いたら何も出来ないよ、ということは言い聞かせてきたので、そこはしっかり主将の芹澤(友希、スポ4=茨城・土浦日大)中心につくりあげて、最後まで戦ってくれたなと思います。

――春の最後にもインタビューさせていただいたかと思いますが、その際選手それぞれに技能をプラスワンしてほしいと仰っておられましたが、その点に関しては

それは今でも継続していて。例えばきょうは井上(裕利恵、スポ1=岡山・就実)がスパイクで1点取ったり、浅野がBクイックでクイックに入ったりと、後は森と中川についてはブロックもいいものが出てきましたので、みんな一つどころかさらにレシーブ、ブロックも上げてプラス1.5くらいは実力をつけてくれたんじゃないかなと思ってます。

――バックアタックなど攻撃のバラエティも増していたように見えましたが、それも夏の間意識したことだということでしょうか

そうですね。バックアタックを打ってるのは森と富澤になりますけど、それも何故かというと、前衛の攻撃が弱いんですよね。弱いローテーションをどうやって乗り切るかといった時に、学生自らバックアタックを使った方がいいんじゃないかと。そういう発想が出てきたので、そこは個人としてのプラスワンのみならず、チームとしてプラスワンになっているというように見ています。

――ではきょうの試合を振り返ってみていかがでしたか

よく頑張ったと思います。ただやっぱりフルセットまで戦い抜きたかったなとは思っていて。相手は春(春季関東大学リーグ戦)優勝、それから東日本インカレでも優勝しているチームですけど、やはり最後は勝たないと、我々としては満足できないので。そういった意味ではきょうは50点。あしたしっかり勝ち切るといったことで、チームを波に乗ってですね、この秋のリーグで上位に食い込みたいと思います。

――きょうの対戦に当たって試合のプランはどのように立てていましたか

まずリベロの選定にあたっては、うちは二人リベロがいるんですけど、レセプションを重視するのか、ディグを重視するのかということで。やっぱり1部リーグは早くて高くて力が強いので、我々が勝てるのは長いラリーを続けて最後に泥臭くもぎ取るって形だとおもったので、ディグをメインにメンバーを構成しました。そこできょうの河治(えみり、社1=北海道・旭川実)のレシーブ力というのは相当光っていたと思いますし、そこは作戦通りだったかなと思ってます。

――秋リーグの展望をお願いします

やっぱり何勝だとか何位だという目標を掲げても難しいのかなと思っていて。我々は最下位からのスタートで、全部上位の学校ですから、とにかく笑顔で。どんなにやられても立ち向かっていく勇気。この笑顔と勇気さえできればセットも取れるし、1勝も近づいてくると思うので、学生たちも何勝ということではなく、目の前の一つ一つのプレーに集中しようという目標を掲げてますので、展望としてはその一つ一つがやり切れるかどうか。ここが大事かなと思ってます。

芹澤友希女子主将(スポ4=茨城・土浦日大)

――主将として臨む最後のリーグ戦、初戦を終えられた感想をお願いします

一部リーグはスピード、高さなど二部リーグと違いましたが、自分たちは一部リーグで勝つために夏に練習を積んできたので、その練習を自信にし、心を一つにして勝とうと思い試合に臨みました。

――夏を乗り越え、攻撃のバリエーションが増えたように見えましたが、その辺りご自身どのように感じておられますか

自分自身の課題としては、相手のブロックを見てトスをあげたりツーアタックをすることでした。それが、練習試合などの実践を通して、相手のブロックを減らすことや空いているところにトスを上げることができてきたので、今後もできるように頑張っていきます。

――春の王者筑波大学の高さに対して意識したことは何ですか

やはり、自分たちは高さではなかなか勝てないので、レシーブで粘り切って勝つことをやってきました。今日改めて高さでは勝てなくても、粘り続ければ戦えることがわかったので、自信につなげていきたいと思います。

――セッターとしてトス回しで意識したことは何ですか

森や富沢のマークがキツいっていうのは最初からわかっていたことなので、この夏にやってきたブロックを視野に入れてトスを回すことを意識しながらできるだけブロックを減らそうと思ったんですけど、一部のチームはブロックが二枚ついてきてアタッカーにとっては厳しいスパイクとなるので、森と富沢には丁寧なトスをあげることを意識しました。また、中川も頑張っているので各選手にしっかり決め切ってもらえるようなトス回しをすることを心がけました。

――森選手、富沢選手が躍動し、セットポイントを取った3セット目を振り返って、何か2セット目までとは違う変化が何かチームにありましたか

粘りが出て、レシーバーは絶対に落とさないっていう気持ちだったり、スパイカーはそれを絶対に決め切るっていう気持ちが生まれたことがチームにとって好循環になって、粘りという早稲田の強みを活かせたと思います。

――主将としてこれから続いていくリーグ戦の目標をお願いします

目の前の一戦一戦を全力で戦うことはもちろんですけど、四位以内ということを目標に、この夏にやってきたことを活かして、なかなか一部リーグの対戦相手は勝たせてくれないとは思いますが、気持ちを一つにして全員で勝ちにいきたいと思います。

中川知香副将(スポ4=神奈川・川崎橘)

――秋リーグ開幕前はどのような準備をされてきましたか

チームではサーブ、サーブレシーブの強化です。個人としてはスパイクのコースを打ち分けることをテーマに掲げて練習してきました。

――この秋リーグは最後のリーグ戦となります

最後ということでやはり緊張しています。慣れないポジションで戦うことになった最後のリーグですが、やるしかないと思います。今まで自分たちは1部の舞台で勝っていないので、どうしても1部で上位に入りたいという気持ちは強いです。

――同期の4年生たちで話し合われたことはありますか

はい、自分たちが暗い顔をしているとチームもそうなってしまうので、4年生がチームに与える影響は毎年すごく大きいと思うし、まだまだ全然足りませんが明るく盛り上げていこうというのはみんなで話しました。

――チームの視点から試合内容を振り返って

すごく流れを持ってこれた良い場面もあったのですが、やはり出だしが押されてしまいました。そこで連続ポイントを取られてしまったし、まだ粘り足りないところがありました。それでも良い部分もたくさんあったので、そこは継続しながら細かいミスを修正して、1部の高いブロックにも対応できるようにブロックフォローも練習していく必要があると思います。良いところもありましたが、反省しなくてはいけないところも多かったです。

――3セット目は特に良い場面が多く見られました

やはり3セット目は立ち上がりからしっかりできてこちらからミスを出さなかったからこそ取れました。あれがいつでもできるようになると良いと思います。

――やはり課題は立ち上がりなのでしょうか

はい、立ち上がりと連続ポイントを簡単に許してしまうところですね。いかにサイドアウトを取るかをこれから追求していきたいです。

――ブロックアウトを意識している印象がありましたが、個人の視点から試合内容を振り返って

序盤で思い切りクロスに打ち込んでブロックにつかまるというケースが多くて、やはり自分の今の経験や身長では抜くことが難しいと思ったので、自分が春リーグから武器としていたブロックアウトを取るスパイクを選びました。自分のモチベーションも上がったし、得点に結び付けられると思ったので、終盤はずっと狙っていました。

――これから強豪と対決するであろう秋リーグをどのように戦っていきたいですか

ミスを出さないと言ってしまえばすごくネガティブに聞こえるかもしれませんが、粘って粘って受け身にならずに攻めていければ今回の3セット目のように良い形でできると思うので、粘り負けをしないということを大事にしたいです。あとは色々なことに挑戦するということです。2部から上がってきて、相手は格上なのでチャレンジャー精神を忘れず全員で戦っていきます。

森佳央理(スポ3=群馬・高崎女)

――本日開幕戦となりましたが、夏の間はどのような練習をされてきましたか

春で1部に上がれたのですが、やはり技術的な差もあるということは分かっていて、秋でしっかり戦い抜くためにもチームで考えました。一人一人サーブやレセプションなど種類は違うのですがチームで5000本を達成し、リーグを迎えるというのを掲げて、それが自信につながりました。あとは個人的にはサーブとブロックを練習しました。5000本はアウトしたりミスしたらカウントに入れないので多分倍くらいやっていると思うのですが、一人一人が納得のいく5000本を達成しました。

――では個人的に取り組んだサーブとブロックの成果はいかがですか

きょうもサーブポイントがあまり出なかったのは悔しいところです。でも、いままでは狙ったところに入れるという感じだったのですが、いまは狙ったところに強く打てるようになったので、そこは成果だと思います。

――きょうの相手である強豪・筑波大へはどのように対策されましたか

ブロックが高いと言われていたので、とりあえずブロックをゆっくり飛ぶというのを意識しました。あとは拾い負けしない。ブラックに当たってブロックフォローが来ることは分かっていたので、「ブロックフォローを徹底しよう」とチームで言っていました。

――では、今回の早大のブロックはいかがでしたか

最初は対戦したことがなかったので、相手がどんなコースを打ってくるか分からなくてそれでタイミングなどずれたのですが、試合中に声をかけて修正しながらできたと思います。

――森選手は秋も攻撃の要として動いていますが、自分の攻撃に関しては

バリエーションは春とかわっていないのですが、春は速攻の決定率が悪かったので重点的に速攻の練習をしました。ブロードとかセミじゃなくて早いCクイックなどを重点的にしました。

――第3セットの終盤は森選手が3連続得点をとりました

とても緊張しました(笑)。でもやるしかないという感じで。ここで変にブロックに当てて出そうとか考えても駄目だと思って。自分の持ち味は思いっきり打つことだから、思いっきり打ちました。

――きょうは試合の内容が良かったと思うのですが、あしたの

自分たちのチームの雰囲気はよかったと思うのですが、あした対戦する松陰大は今日の筑波大と真逆で早い攻撃で、真っ向勝負というよりブロックアウトをするというチームです。そのチームに対して自分たちが早く慣れて、まずは早いコンビをさせないサーブで攻めることを意識していきたいと思います。

富澤結花(スポ2=東京・文京学院大女)

――きょうの試合を全体的に振り返っていかがでしたか

格上の相手だと思うんですけど、良い試合が出来てすごく良かったと思います。

――スパイクはどうでしたか

まあまあ(良かった)です。

――春に比べてバックアタックが増えたと思いますがその点に関しては

春も呼んでいたんですけど、上がる本数が多かったり、今はレシーブを上げて見られることが多くて使ってくれたりすることが多いので、いっぱい攻撃パターンができていいと思います。

――3セット目、早大は先行していましたが良かった要因は

自分たちのミスがすごく少なかったというのが、さっき外から良かったと言われて。やっぱり攻めるミスは良いけど、弱気なミスを自分たちで出さないように次も頑張りたいと思います。

――きょう得た課題は何かありますか

2部の時より1部の方が相手のブロックが高いので、その高いブロックに対してどうやって決めるかとかどうやって攻撃していくかもっと考えたいなと思います。

――夏の期間で強化してきたことは何ですか

夏はケガをしていて、あまり練習出来なかったというかコンディションが悪かったんですけど、そのぶん思いっきりやろうというメンタルは強くなったかなと思います。

――あしたの松陰大に向けて意気込みをお願いします

きょうみたいに相手のミスが出るまで粘って粘って強気で全員で戦っていきたいと思います。