5月6日 黒鷲旗全日本選抜大会/決勝 大阪・Asueアリーナ
ついに迎えた黒鷲旗全日本選抜大会(黒鷲旗)決勝戦の対戦相手は富士通カワサキレッドスピリッツ(富士通)。昨年の黒鷲旗では敗北し、天皇杯ブロックラウンドでは勝利した相手と今試合も互角の戦いが予想された。1セット目は序盤から攻守が噛み合い集中力高くプレーするが、後半は相手のパワープレーに押され危うい場面も見られた。しかし前半のリードが効き先制する。2セット目は相手のミスに救われデュースを制する。相手にリードを許した3セット目は点差を巻き返すことができずに献上するも、4セット目は相手を寄せ付けることなく大幅に点差を保ったまま取り切り、セットカウント3―1(25―21、27―25、21―25、25―12)で勝利。大学勢では初の黒鷲旗覇者に輝いた。
序盤から全員が集中力を保って始まった1セット目。OH徳留巧大(スポ2=長野・松本国際)が落ちかけたボールをなんとか足で拾い上げるプレーなど、ボールに対する執念が見ている側にも伝わってくる。7―4の場面ではセッター前田凌吾主将(スポ4=大阪・清風)が相手のスパイクをシャットしダブルスコアに。中盤は相手の調子も上がってきたのか取っては取られの展開になる。試合終盤には徳留、MB麻野堅斗(スポ3=京都・東山)、OP川野琢磨(スポ1=東京・駿台学園)が3枚ブロックで相手スパイクをシャットする好プレーで相手にプレッシャーを与える。相手も負けじと強烈なサーブで応戦したが、最後は徳留の鋭角スパイクが決まり、セットを先取した。
コート外のボールも果敢に取りに行く徳留
続く2セット目は、アタックライン上に刺さるOH佐藤遥斗(スポ3=東京・駿台学園)のレフトスパイクで1点目を獲得し、その後も徳留のパイプ、MB菅原啓(教3=山形南)の速攻で3連続得点し好調に滑り出す。しかし、相手の痛烈なパワープレーが守備陣を苦しめる。どちらも粘り強くボールを拾い、長いラリーも増え出したところで早大にミスも出始め、13―12のタイミングでタイムアウトを要求した。タイムアウト明けすぐに菅原が速攻を決め調子を整える。しかし、点差は開くことはなくデュース戦に。緊迫した局面で前田、麻野、佐藤が3枚ブロックで相手スパイクをシャットし25―24と一歩リードする。その後相手がスパイクを決めるも、焦りが出たのかサーブアウト。そして隙につけ入るように佐藤がブロックの間を攻めたスパイクを決め、27―25でセットを連取する。
スパイクを打つ佐藤
このまま取り切りたい3セット目。ミスを顧みず、決まると勢いが止まらない相手のプレーに揺さぶられる。麻野の速攻や川野の高い打点から繰り出されるストレートスパイクなどいいプレーが出るも、疲れからかプレー中の声出しが減り、ブロックに付かれる場面が増え後半へ。大差がついた場面で菅原の速攻、ブロックで3連続得点し、巻き返しの兆しが見えたが、点差を返せずセットを許した。気持ちを切り替えて臨んだ4セット目は麻野が前田と息の合った完璧な速攻を決め勢いづける。徳留のパイプ、菅原の速攻が次々と決まり、相手にプレッシャーを与える。リベロ布台聖(スポ3=東京・駿台学園)の低めの速いトスを徳留が打ち切る連携の取れたプレーや、佐藤が2枚ブロックを避けたコースでスパイクを打つなど、周りの見えたプレーで着実に点数を重ねる。点差を詰められることなく、25―12で最終セットを終えた。
バックトスをあげる布台
現行の大会形式では最後の開催となった黒鷲旗。昨年度のリベンジを果たし、さらには伝統ある大会の区切りの年に早大の名を刻めたことは、大きな自信になったことであろう。メンバーがそろわず、さらにはタイトなスケジュールであった中でも、今大会では日を重ねるごとに彼らのプレーが良くなっていったのが目に見えて分かるものであった。選手たちも自分たちの成長や新たな可能性を感じることができただろう。今週末からは春季関東大学リーグ戦が再開する。より難しい試合が増えていくだろうが、この大会で得た経験と自信を胸に、これからの戦いでも力を出し切れるはずだ。
(記事 井口瞳、写真 町田知穂)
大学勢初の黒鷲旗制覇となった
セットカウント | ||||
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早大 | 3 |
25-21 |
1 | 富士通カワサキレッドスピリッツ |
スタメン | ||||
アウトサイドヒッター 佐藤遥斗(スポ3=東京・駿台学園) アウトサイドヒッター 徳留巧大(スポ2=長野・松本国際) ミドルブロッカー 麻野堅斗(スポ3=京都・東山) ミドルブロッカー 菅原啓(教3=山形南) オポジット 川野琢磨(スポ1=東京・駿台学園) セッター 前田凌吾(スポ4=大阪・清風) リベロ 布台聖(スポ3=東京・駿台学園) |
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途中出場 | ||||
梶村颯汰(スポ4=東京・安田学園) 板垣慧(政経4=京都・洛南) 中上烈(スポ1=京都・洛南) |
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個人賞 | ||||
黒鷲賞 前田凌吾(スポ4=大阪・清風) 若鷲賞 川野琢磨(スポ1=東京・駿台学園) ベスト6 前田凌吾(スポ4=大阪・清風) ベスト6 麻野堅斗(スポ3=京都・東山) ベスト6 佐藤遥斗(スポ3=東京・駿台学園) ベストリベロ 布台聖(スポ3=東京・駿台学園) |
コメント
松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)
ーー黒鷲旗全体を振り返って
リーグ戦があって疲れている中、前田(凌吾、スポ4=大阪・清風)を中心に疲れを見せずにできたのは立派だったかなと思います。自分たちのやってきたことがどれだけ出せるかというテーマでしたが、富士通戦の3セット目や専修大学戦の1セット目はどうも受けてしまうというか、雰囲気の良くない時がありました。良かった部分と春季リーグ戦後半に向けての課題の両方があったので、大会としては良かったと思います。
ーー3セット目の劣勢の場面から切り替えて4セット目に臨めた要因は
徳留(巧大、スポ2=長野・松本国際)がキーなんですよね。彼が声を出さなかったり小手先のプレーをよくやるので、上手いけれど将来に通じないんですよね。そのあたりのことを口酸っぱく言いました。彼は持っているものが素晴らしいので、「しっかりやらないといけない」と気が付けば、チームが簡単に回るんですよね。彼はまだ2年生ですが、しっかりと要求高くしているので、その部分での気づきを早くしてもらえたら良かったんですけどね。
ーー新チームについて、春季リーグ戦の前半が終わった状態ですが課題と収穫は
今日もサイドアウトが取れないところがありましたので、課題にしてきたサイドアウトをしっかり取るというところと、取れない時はチームが全体的に静かになってしまうことが多いので、個の強さをしっかりと鍛えていかなければならないと思います。
ーー今日の試合でチームとして良かった点は
布台(聖、スポ3=東京・駿台学園)がリーダーシップと技術的、精神的なところで急成長していると思います。今日も彼が中心となって声を出したりしている中で、同じ高校の後輩の川野(琢磨、スポ1=東京・駿台学園)がそれに着いていくというかたちができてきました。なので、その2人がだいぶ成長しているという意味では、うちに足りなかった部分なので期待しています。
前田凌吾主将(スポ4=大阪・清風)
ーー優勝した今の気持ちは
この大会は歴史ある大会で、この形式では最後ということで、早稲田の名前を最後に刻めて良かったです。これをリーグ戦でも続けてやっていきたいです。
ーー黒鷲旗を振り返って
メンバーが揃わない状況や、春リーグと並行して開催されるという点で疲労感があり、まだできていないことやこれからやっていかなければならないことが見つかった大会でした。ただコートに入る下級生も多い中、よく頑張ってくれたので、僕がもっと頑張らないといけないと思ったので、リーグに向けて少し休んでやっていきたいなと思います。
ーー個人として振り返って
戦術のところでもっと相手よりも優位に立つことができるトス回しができないといけないと思いました。今日もVリーグのチーム相手でしんどい試合になりましたが、もっとできることがあったと思うので、そこを探してやっていきたいです。
ーー昨年度の黒鷲旗で負けた相手でしたが、リベンジを果たせたことへの思いは
去年負けたことは、その1年間(チームが)崩れる要因にもなったと思うので、しっかりと今日戦えたことは自分たちが成長した証だと思いますが、もっとできることもあったと思います。
ーー昨年度の黒鷲旗では受け身になってしまいましたが、今年は劣勢でも受けることなく勝利できました。その要因は
この黒鷲旗の期間中、1セット目があまり良くないという話があったのですが、今日は比較的1セット目で頑張って早稲田が試合を進められたのが良かったと思います。3セット目はまだ受けてしまう場面があったので、そこは反省点として、リーグでも起こりうる状況だと思うので、しっかりとやっていきたいです。
ーー春季リーグ戦後半への意気込み
上位のチームと当たって結構しんどい試合になると思うので、一回休んで頑張ってやっていきたいです!
川野琢磨(スポ1=東京・駿台学園)
ーー黒鷲旗全体を振り返って
連戦が続いた大会だったので、みんな疲労とかもあって思うようなプレーが出来なかった時がりました。決勝も難しい試合になったのですが、コートの中も外もみんなが盛り上げてチーム全体で最後はいいバレーができたのではないかと思います。
ーー2回目の黒鷲旗でしたが、高校の時と違いはありましたか
高校の時はSVリーグのチームもいて、胸を借りる立場で試合をしていたのですが、今回SVのチームがいないということで、優勝ができる大会になったので、大学生になって優勝する気持ちで頑張ってできたと思います。
ーー春季リーグ戦後半への意気込み
この後上位の大学と戦っていくので、しっかりこの大会の振り返りとケアをして、残りの試合を勝てるようにみんなで頑張っていきたいと思います。