宿敵撃破で悲願の17連覇達成! 「俺たちが王座だ!」/男子決勝

庭球男子

 「俺たちが王座だ!」。愛媛の夜空に響く歓喜の声をあげたのは早大庭球部男子だ。団体戦の大学日本一を決める全日本大学対抗王座決定試合(王座)。大会16連覇中の早大は2回戦、準決勝と快勝し進出した決勝で、これまで幾多の熱戦を繰り広げてきた宿敵・慶大と対戦した。結果はダブルス2-1、シングルス3-3の計5-4で早大が勝利。絶対王者ゆえの重圧を跳ね除け、王座17連覇の偉業を成し遂げた。

 ポイント間に話し合う増田・池田組 チーム1勝目を挙げた

 サーブを返球する吉野とペアの山口 抜群のコンビネーションで勝利した

 「俺たちが王座だ!」メンバーの全員がそう叫んで円陣を組んだ早大。タブルスはここまでの2戦と変わらず、D1が丹下将太主将(教4=東京・早実)白石光(スポ4=千葉・秀明大秀明八千代)組、D2が増田健吾(社4=東京・早実)池田朋弥(スポ3=愛知・誉)組、D3が吉野郁哉(スポ3=兵庫・西宮甲英)山口柚希(スポ2=鹿児島・鳳凰)組のオーダー。慶大もこれまでと変わらず、D1に藤原智也・下村亮太朗、D2に有本響・菅谷優作、D3に白藤成・高木翼を入れてきた。早大は、D2とD3で白星を挙げ、勝ち越して午後に入ることができた。

 D2はここまで安定した戦いを見せている増田・池田組。序盤こそ緊張が見えたものの、サーブと積極的な前衛で相手を圧倒していく。相手のミスもあり、終始流れを渡さずに第1セットを獲得する。第2セットも安定感は揺るがなかった。序盤から5ゲームを連取すると、勝利が見えた高ぶりか、1ゲームを落とすが、その後は冷静に対処。広範囲を守り、コースを突いたボレーで短時間で勝利を収めた。

 D3の吉野・山口組は試合開始早々ブレークを許しリードされる展開となったが、試合が進むにつれて調子を上げていく。3ー4で迎えた8ゲーム目では初めてブレークし、4ー4まで持ち込んだ。最終的には4ー6で第1セットを落としたが、次のセットに向けてポジティブな兆候を見せた。第2セットは調子を上げてきた吉野・山口組のペースで試合が進む。吉野が抜群の反応速度で華麗なボレーを決めれば、山口がサービスエースやコート後方にコントロールされたロブショットを決めるなどして6ー3で獲得した。最終第3セットは試合が展開するにつれて個人の調子、コンビネーションともに高まった吉野・山口組が流れを渡さず、6ー1で獲得。なんとしても勝ち越したいダブルスの大事な大事な2勝目を持ち帰った。

 一方、D1は苦戦を強いられた。特に慶大・下村のサーブに苦しめられ、一気に4ゲームを与えてしまう。「ラケット振るぞ!」と互いを鼓舞し、5ゲーム目から3ゲームを連取するも、スマッシュやボレーのチャンスを取り切れず、3ー6で落としてしまった。第2セットは互いにゲームをキープし合う展開に。しかし、高い精度のサーブを誇る慶大からブレークするのは難しかった。7ゲーム目でリターンをストレートに抜かれ、ブレークを許すとその後もブレークバックはできず。長くペアを組んできた2人の大学生最後のダブルスを、惜しくも勝利で終えることはできなかった。

 試合に勝利し、笑顔を見せる小久保

 バックハンドを打つ山口 チームを勇気づける4勝目を持ち帰った

 2ー1で勝ち越して迎えた午後のシングルス。3試合を取れば勝利となるが、上位層へのプレッシャーを減らし、戦いやすくするためにも先に試合に入るS3、S4、S5でリードしたいところだ。

 S3は高畑里玖(社3=兵庫・相生学院)が、関東大学リーグ(リーグ)で、接戦の末勝利した林と激突した。1ゲーム目からストローク、スマッシュで仕掛けていくが、ネットにかけ、ブレークされてしまう。その後は互いにゲームを取り合い、4-5で迎えた10ゲーム目の、あとがない場面。林の強打を拾って打ち上げるが、強風にボールが押し戻され、ボールはわずかにネットに。第1セットは奪われてしまった。第2セットは序盤を2ゲーム連取し、幸先のよいスタートかと思われたが、その後慶大も2ゲームを連取する。ロングラリーでは攻める場面、守る場面、さまざまな引き出しでプレーを展開し、安定感を見せてセットを奪い返した。勝負の第3セット、序盤のゲームをつかんで流れを引き寄せたいところだったが、1、2ゲーム目を取られる。3ゲーム目は相手のミスも重なりブレークするが、4、5ゲーム目も慶大に与えてしまう。そして、ゲームカウントは4-5に。あと一歩で勝負が決まる場面でも諦めない強い姿勢を見せ、5-5まで持ちこたえた。隣のコートで吠える山口の声が響く。しかし、そこから2ゲームの連取を許し、敗戦となった。疲労困憊(こんぱい)の高畑は、しばらくベンチから立ち上がることができなかった。

 S4の小久保蓮(スポ3=愛知・名古屋)も決して簡単な試合ではなかった。第1セットは互いに流れを奪い合う展開だった。オフコートでは穏やかな表情の小久保が大きく叫び、正確なストロークを配球していく。相手の今鷹もハリのあるプレーで得点のチャンスをモノにし、タイブレークへ。緊張からか、ダブルフォルトをする相手に対し、小久保は落ち着いてプレー。相手に流れを渡しかける場面もあったが、接戦の末、7-5で獲得した。第2セットも小久保は崩れない。1ゲーム目こそブレークされたが、その後は小久保がゲームを獲得していく。守備範囲の広い小久保は、相手の放ったドロップショットをチャンスに変えてしまう。左右に振られても諦めずに追いかけ、この試合を勝ち取った。小久保はうれしそうな笑顔でコートを後にした。

 S4の渡部将伍(教4=東京・早実)はリーグで敗れている下村と対戦。強烈なサーブを軸に展開する下村に対して、豊富な運動量で粘り強く返球していく渡部だったが、序盤に許した4ゲーム連取が響き、3ー6で第1セットを落としてしまう。続く第2セットは2ゲームを連取し、渡部が先にリードする展開になった。それでも下村のパワフルなサーブは健在。じわじわと差を詰められ、逆転を許す。渡部も相手の頭上や横を抜くショットで会場を沸かせたが、3ー6で力尽き、リーグのリベンジはならなかった。

 2巡目には、まずS6とS2、そしてS1が試合を行った。ダブルスで良い勝ち方をしたS4の山口は序盤から熱い思いをたぎらせ、いきなり3ゲームを連取する。徐々に調子を上げてきた菅谷に5ー5まで持ち込まれたが、自身の声や部員の応援を力に変え、気迫を見せた山口が7ー5で第1セットをものにした。続く第2セットは強打に加え、前後への揺さぶりをかけて相手を翻弄(ほんろう)した山口が5ゲーム連取。6ゲーム目こそ落としたが、6ー1で獲得。団体戦勝利に王手をかける4勝目を2年生の山口が持ち帰った。

 優勝を決定づける1勝を掴み、空を見上げる丹下

 S1は丹下と慶大・白藤の主将対決となった。先に始まっていたS4を早大が取り、4ー3としていたため、丹下が勝利すれば早大の勝利、そして王座優勝が決まる大一番となったこの試合。第1セットの1ゲーム目は丹下があっという間にキープ。それでも団体戦勝利のためには絶対に負けられない白藤は力強いストロークを絶妙なコースに打ち込み得点を重ね、4ゲームを連取。その後、丹下が追い上げを見せたものの、第1セットは4ー6で白藤が獲得した。丹下にとって落とすことが許されない第2セット。1ゲーム目こそブレークを許したが、直後にブレークバック。その後もダウンザラインやサービスエースなどで次々に得点し、試合を優位に進めた丹下が6ー3でこのセットを獲得した。コート脇には両校の部員が集まり、主将対決の緊張感が最高潮に達する中で迎えた運命の第3セット。注目を一身に集める中で丹下はさらに調子を上げ、2ゲーム目から3ゲーム連取。このリードを保ったまま迎えた5ー2のマッチポイント。最後は白藤のショットがアウトになり丹下が得点。フルセットの激戦を制し、早大の王座優勝を決定づけた。丹下はガッツポーズをした後、空を見上げ、王座17連覇という偉業達成の喜びを噛み締めた。

 激闘を終え、慶大・藤原と握手を交わす白石

 団体戦としての勝負は決まったが、白石と藤原(慶大)のS1は全員が応援に詰めかける、熱戦となった。ラリーが続く中で攻守が切り替わる、ワンプレーが長い展開となったこの試合は、気持ちを途切れさせないで戦う必要のある、タフな一戦だった。ここまでの戦績を踏まえると、白石のほうが精神的にも有利かと思われたが、チャレンジャーの藤原も熱いプレーを見せた。第1セットは白石のミスも増え、第5ゲームで許したブレークが尾を引き、そのまま藤原が獲得した。第2セットは白石が藤原の爆発的なストロークに丁寧に応戦し、応援も味方に、白石が奪った。最終セットも、藤原の集中力は高かった。互いにポイントを取り合うが、ゲームカウントは3ー5に。諦めかける白石に対し、「こっから、こっから!」「このままじゃ終われないよ!」と、応援の声が響く。仲間の熱い声援にギアを上げ、9ゲーム目をあっという間に獲得した白石だったが、コートチェンジを挟んだ10ゲーム目は藤原が丁寧にポイントを取り、S1は敗北した。「ごめん」と謝る白石に対し、チームメートは肩を叩いてその健闘をたたえていた。エース・白石に勝利して大学テニスを終えてほしいと願う早大と、3年の藤原が白石にリベンジを果たしてほしいと願う慶大。両校の思いは、慶大に軍配が上がった。

 連覇の重圧を背負い戦ってきた部員たち。その重圧から解放されたかのように表彰式では笑顔を爆発させた。試合に出場する選手だけでなく、ベンチコーチとして選手を鼓舞する者や応援に徹する者など全ての部員が一丸となって掴み取った栄光だ。この大会をもって4年生は引退。学年を問わず連帯するチーム力や土壇場でも力を発揮する精神力といった部の伝統を受け継ぐ後輩たちに連覇記録の継続が託された。「俺たちが王座だ!」。来年もこの言葉を笑顔で叫ぶため、早大庭球部の新たな挑戦が始まる。

(記事 佐藤豪・田島璃子 写真 佐藤豪・田島璃子)

 

※出場選手と4年生のコメントはこちらから

 王座17連覇を果たした男子部 「俺たちが王座だ!」の掛け声で写真撮影

結果
◯早大 5ー4 慶大
D1 白石・丹下 藤原・下村
3-6、4-6
D2

増田・池田

有本・菅谷
6-2、6-1
D3

吉野・山口

白藤、高木
4-6、6-3、6-1
S1

白石

藤原
3-6、6-3、4-6
S2

丹下

白藤
4-6、6-3、6-2

S3

高畑

冷水
4-6、6-3、5-7
S4

渡部

下村
3-6、3-6
S5

小久保

今鷹
7-6(5)、6-3
S6

山口

菅谷
7-5、6-1