第199回早慶対抗試合 6月14~15日 早稲田大学東伏見三神記念テニスコート
199回目を迎えた伝統の早慶対抗試合(早慶戦)。途中は雨天に見舞われるアクシデントがありながらも、両校の選手たちによる2日間の激しい戦いが繰り広げられた。1日目はダブルス、2日目はシングルスで計9試合を戦い抜き、早大は6勝3敗で慶大に勝利。4大会ぶりの男子優勝、そして2021年春以来の男女アベック優勝を成し遂げた。
男子ダブルスは3試合が同時に始まり、第2コートには栗山晃太朗副将(社4=東京・相生学院)と島笙太(スポ1=岡山・関西)が出場した。試合は序盤から互いに譲らない一進一退の攻防が続き、1セット目からゲームカウント5-5までもつれる。しかし終盤、レシーブに乱れが出てしまい、勝負所で痛恨の連続失点。続けざまにゲームを取られ、第1セットを落とした。次の第2セットも慶大の流れは変わらず、常に背中を追う展開。長いラリーを制した気迫プレーには盛り上がりを見せたものの、ゲームカウント4-6で第2セットを落とした。追い込まれた栗山・島組は、第3セットも苦しい展開となる。1-3で迎えた第4ゲームはラブゲームで反撃を見せるものの、その後は1ゲームも取れずに敗戦。早慶戦は黒星スタートとなった。

サーブを打つ栗山(写真奥)と島
第4コートでは前田優(スポ2=兵庫・西宮甲英)と本山知苑(スポ2=三重・四日市工)の2年生ペアが出場。第1ゲームは立ち上がりに苦しみ、ゲームカウント1-4の劣勢に立たされる。それでも驚異的な追い上げを見せると、こちらも5-5の大熱戦。惜しくも次の2ゲームを落とし、第1セットを5-7で取られてしまうが、粘り強さを発揮して会場を沸かせた。続く第2セットも接戦が続く。それでもゲームカウント3-3から一気に流れに乗った前田・本山組はブレイクを果たし、3連続でゲームを取る。第2セットを制し、ここで同点に戻した。第3セットからは雨天中断を経て室内での戦いとなったが、前田・本山組の勢いは衰えることを知らない。タイブレークへもつれた激戦を制し、貴重な2つ目のセットを獲得。 今年の早慶戦初白星へ王手をかけた。流れに乗った前田・本山組は周囲の声援を背に受け、第4セットも6-2で完勝。早大に初白星をもたらし、戦績を1勝1敗の五分にした。

得点を喜ぶ本山(写真左)と前田
華の第1コートには藤田大地主将(スポ4=兵庫・相生学院)と森田皐介(スポ3=福岡・柳川)が登場。今年の関東学生トーナメント(春関)で死闘の末に敗れた慶大の菅谷優作(4年)・有本響(4年)組とのリベンジマッチとなった。しかし最初のゲームでデュースの末にブレイクを許すと、その後も流れに乗れず、2-6で第1セットを落とす。それでも第2セットは立て直し、6-3の完勝。続く第3セットもゲームカウント4-2でリードし、勝利への機運は高まっていた。しかしここで雨天が襲い、試合は一時中断。他の試合の終了を待つ長い待機時間をすごした。すると中断明け、藤田・森田組は調子を崩してしまう。ダブルフォルトが相次ぎ3連続でゲームを取られ、4-6で第3セットは敗戦。しかし第4セットは流れ取り戻すと、4-3で迎えた第8ゲームは5度のデュースを繰り返す死闘となる。両者意地と意地のぶつかり合いとなる中、最後に上回ったのは藤田・森田組の執念。このゲームを制し、そのままこのセットを獲得した。セットカウント2-2で迎えた最終決戦、ミスが目立つようになった慶大に対し、完全に流れを制したのは藤田・森田組。第5セットを終始圧倒し続け、最後は森田の強烈なスマッシュで激戦に終止符を打った。長時間に及ぶ激闘で雪辱を果たし、これで戦績は早大2勝、慶大1勝。翌日のシングルスに向けて最高の流れで初日を終えた。

激戦を制した藤田(写真右)と森田
2日目、シングルスの先陣を切ったのは森田。雨の影響により、この日の男子戦は森田の試合のみ室内での開催となった。試合は力強いサーブと巧みなショットを武器に相手を翻弄(ほんろう)し、第1セットを6-3で獲得する。第2セットもいきなりブレイクの好スタートを切り、粘り強いレシーブで長いラリーを制した。このまま試合を有利に進めるが、勝利まであと一歩とした場面でキープに失敗。6-6となり、タイブレーク決着となった。タイブレークは互いに一歩も譲らない熾烈(しれつ)な戦いが続く。それでも最後は森田が粘り勝ち、第2セットを獲得。勝利に向けて大きく近づいた。森田はこの勢いそのままに、第3セットもブレイクを連発する圧倒。6-1で3つ目のセットを取り、早大に3つ目の白星をもたらした。

シングルスの先陣を切った森田
雨天が明けて屋外での試合が始まると、第4コートに本山が登場。絶妙なロブショットで2つのブレイクを奪い、順調に第1セットを獲得した。続く第2セットは同点で迎えた第9ゲーム、相手にブレイクを許して窮地に陥る。しかし幾度となくデュースを繰り返す死闘を制してブレイクバックに成功し、タイブレークに勝負を持ち込んだ。タイブレークでは開始直後に突き放し、最後は渾身のサーブが決定打。2連続でセットを奪った。流れに乗った本山は第3セット、いきなり2本連続でブレイクを果たす。6-1の完勝を収め、ストレート勝ちを飾った。

懸命にボールを拾う本山
ここまでの戦績は4勝1敗。4大会ぶりの勝利へ王手をかけたところで、早大は前田が登場した。前田は1セット目こそ1-6で落とすものの、続くセットでいきなりのブレイクを見せて復調。ゲームカウント5-1から相手にブレイクを許し、1ゲーム差まで詰められるが、なんとか6-4で逃げ切った。第3セットは互いにキープし続け、そのままタイブレークへ。タイブレークは激闘の末に8-6で勝利し、東伏見に前田の咆哮(ほうこう)が響き渡った。第3セットは3本のブレイクが飛び出しゲームカウント5-1でリード。5-3まで詰められるが、強烈なバックハンドで相手を振り切った。勝利に狂喜乱舞の前田はその場に崩れ落ち、仰向けで空を見上げる。この瞬間、4大会ぶりとなる早大の勝利が決まった。

早大に勝利をもたらした前田
第1コートでは昨日のダブルスで悔しい結果となった島が躍動した。セットカウント1-1で迎えた第3セットは、タイブレークとなる。この勝負所を7-3で圧倒する強心臓ぶりを見せつけ、ここで島が一足前に出た。そして第4セットも互いに譲らない展開が続き、試合はタイブレークにもつれる。日差しが差し込み体力も心配される中、ここでも島は圧巻のパフォーマンスを見せて第4セットを獲得。3-1で勝利を収めた。

ボールを捉える島
続いて登場したのは1年生の安藤雄哉(スポ1=神奈川・湘南工大附)。しかし、初の早慶戦はほろ苦デビューとなった。第1セットは早々からブレイクを許して3-6で落とすと、第2、第3セットも流れをつかめずにストレート負けの完敗。慶大が一矢報いる結果となった。

ガッツポーズを見せる安藤
最後を飾るシングルス1を戦ったのは遊川大和(スポ2=岡山・関西)。春関王者の慶大・菅谷を前に第1セットを落とすものの、第2セットは6-2で取り返す。ここで他の全試合が終了し、早慶の各選手が見守る中での試合となった。しかし第3セットは2-2の場面から相手にブレイクを許すと、そのまま2-6で一気にこのセットを取られる。追い込まれた第4セットも粘りを見せるものの、4-6でセットを落として敗戦。懸命に戦い抜いたが、王者の壁は高かった。これで早慶戦は全日程を終え、早大は6勝3敗。白星締めとはいかなかったものの、早大が4大会ぶりとなる早慶戦勝利を収めた。

相手の動きを伺う遊川
この2年間の鬱憤(うっぷん)を晴らす圧巻の戦いでリベンジを果たし、199回目の伝統に花を添えた早大。決して絶好のコンディションとは言えない中でも、選手たちの懸命なプレーは見る者に熱気と歓喜をもたらした。3年前に王座(全日本大学対抗王座決定試合)17連覇を達成した、王者・早稲田の再興へ。今年も早大庭球部は歩み続ける。
(記事:石澤直幸 写真:髙津文音、林朋亜、西塚奏琉)
結果
〇早大6-3慶大
ダブルス
D1○藤田大地・森田皐介3ー2(2-6、6-3、4-6、6-4、6-2)菅谷優作・有本響
D2●栗山晃太朗・島笙太0-3(5-7、4-6、2-6)眞田将吾・怜ジョーンズ怜音
D3○前田優・本山知苑3ー1(5-7、6-4、7-6(4)、6-2)石島丈慈・安藤凱
シングルス
S1●遊川大和1ー3(4-6,6-2,2-6,4-6)菅谷優作
S2●安藤雄哉0ー3(3-6,1-6,2-6)ジョーンズ怜音
S3○島笙太3ー1(1-6、6-3、7-6(3)、7-6(5))有本響
S4◯前田優3ー1(1-6,6-4,7-6(6),6-3)眞田将吾
S5◯本山紫苑3ー0(6-3、7-6(5)、6-1)安藤凱
S6○森田皐介3ー0(6-3、7-6(7)、6-1)古姓寛樹
コメント
藤田大地主将(スポ4=兵庫・相生学院)
ーーご自身の試合全体を振り返っての感想をお願いします
4年ぶりの勝利となり、素直に嬉しい気持ちで一杯です。今年度のスローガンである「ブレイクスルー」を体現できた2日間でした。今年度、良いスタートを切るという面においても早慶戦優勝は自信にして良いと考えております。しかし、今年度も王座優勝という大きな壁の先にある目標を叶える為には、まだまだチーム状況、実力共に不十分であると考えています。この結果に満足せず、一人一人が王座優勝に向けて日々小さな壁を打ち破りながら精進して参ります。
ーーダブルスは死闘となりましたが、勝因をあげるとするのなら何ですか
応援の力を借りて勝負することに尽きると思います。あとは、勝負時の思い切りが勝負を決めたと思います。常にポジティブに周りの声を聞きながら自信を持って戦うことで勝利に繋げることが出来たと思います。
ーー雨天による中断明けはかなり苦しんでいましたが、どのようなことを意識して修正しましたか
基本に忠実にプレーする事を意識しました。やはり相手も強い中で焦りはありましたが、最終的な勝利を見据えて戦う事で徐々に自分の実力を取り戻す事が出来ました。
ーー森田選手にメッセージなどあればお願いします
ダブルスでは4年生3人、3年生が1人の中で引かずに勝負している所が頼もしかったです。次のインカレは第3シードとして出場しますが、優勝出来る様に調整していきたいと思います。
ーー4大会ぶりの勝利ですが心境はいかがですか
199回という長い歴史の中で1回の勝利に貢献する事が出来て、素直に嬉しい気持ちで一杯です。3大会ぶりとなりましたが、最終的に勝つのは早稲田である事と部員全員がそれぞれの立場を全うする事を意識して、夏に向けて精進していきます。
ーー今後の意気込みをお願いします
自身は主将という立場でチームの方向性と勢いを加速させる役割を全うし、王座優勝に向けて全力で突っ走りたいと思います。早稲田大学硬式庭球部を名実共に日本一達成に向けて、全員全力で最後まで戦い抜きたいと思います。それと同時に今年度のスローガンである「ブレイクスルー」をしたいと思います。
前田優(スポ2=兵庫・西宮甲英)
ーーダブルスの試合を振り返っての感想をお願いします
正直苦しい試合でした。勝たなければいけない、落とせないというプレッシャーの中、中々調子が上がらず、序盤は相手の質の高いプレーに押されていました。しかし、ペアの本山と二人でエネルギーを出し、自分たちの試合だけに集中する事で徐々に良いプレーが増えていきました。3セット目のタイブレークでギアを上げれた事がここぞという時に取りれない去年の敗戦から大きく成長した部分かなと思います。応援やサポートしてくれた部員の力も非常に大きかったです。
ーーシングルスの試合を振り返っての感想をお願いします
試合を振り返るとスコア以上に追い詰められていた試合だったと思います。2セット目では、5ー1から5ー4、0ー40、3セット目にはタイブレーク4ー6とどちらも危ない場面がありましたが、最後は気持ちで勝ちきる事が出来たと思います。まだまだ課題は山積みですが、この様な接戦をものにすることが出来たのは大きな自信に繋がりました。
ーーシングルスでは1セット目を大差で落としましたが、どのようなことを意識して修正しましたか
正直落とした事自体はあまり気にして無かったですが、プレーの質が中々上がらない事や、相手の穴を見つけられない事に多少焦りを感じていました。でも普段からよくある事だし大丈夫か。と楽観的に捉える事が出来ていたのは振り返ってみると良かったかもしれません。
ーー第3セットのタイブレークを振り返っていかがですか
紙一重なポイントが多く、技術では無く気持ちでとる事が出来たタイブレークだと思います。緊張している場面程、守るのではなく、攻撃的なテニスを心掛けた事が良かったと思います。
ーー勝利の瞬間は地面に倒れ込みましたが、その時はどのような心境でしたか
ホッとしたことから体の力が一気に抜けて倒れ込んでました。仲間の歓声を聞いて嬉しさも噛み締めていました。
ーー大会全体を通じて手ごたえを感じた部分は
全体的に攻撃的なプレーを最近は心掛けて練習していた為、それが少し結果として出たので手応えを感じました。
単複共にネットプレーが上手くいっていたと思います。
ーー今後の意気込みをお願いします
今回の早慶戦が今年の最終目標では無く、インカレ(全日本学生室内選手権)やリーグ(関東大学リーグ)、王座を見据えた良いスタートラインだと思っています。今後は今回の早慶戦で明らかになった個人としての、そしてチームとしての課題を一つずつ地道にクリアしていくことに尽きると思います。また、今回の早慶戦で応援やサポートして頂けることへの感謝も改めて感じたため、この気持ちを忘れずに全員で王座優勝という最高の景色を見たいと思います。