【連載】王座直前特集『挑む』 第4回 杉田栞主将×乾和歌主務×加藤梨々子副将

庭球男子

 第4回は杉田栞主将(社4=埼玉・山村学園)、乾和歌主務(文4=奈良)、加藤梨々子(スポ4=山口・野田学園)の4年生3人組が登場。各々が役割を持ちながらチームを引っ張り、団体戦では試合に出ないながらもサポートや応援としてチームを支えてきた。そんな3人が語る王座への思い、チームへの思いとは。

※この取材は11月5日にリモートで行われたものです。

「みんなポジティブにテニスに取り組めているというのは杉田の熱さが大きな要因」(乾)

リモートではあったが、3人とも同じ画面で出てもらった

――最初に皆さんのそれぞれの印象についてお聞きしていきたいのですが

一同 (笑)

――他の2人から見て杉田さんの印象はいかがでしょうか

加藤 熱い。

 熱くない?

杉田 めちゃくちゃ恥ずかしい(笑)

 優しい。

加藤 うん。

 アクのない人。

加藤 平和な感じ。

――どういったところで平和だなと感じますか

加藤 相手の立場に立って発言とかをするタイプなので、平和に物事を解決するタイプ。これで合ってる?(笑)なんだろう、平和な……

杉田、乾 (笑)

――続いて乾さんの印象はいかがでしょうか

杉田 ばか正直でばか素直という感じです。

 (笑)

杉田 誰よりも常に全力で1年生の時から部活に取り組んでいらっしゃったので(笑)。誰よりも声は大きいしサポートも一生懸命だし。

加藤 そうだね。声は大きい。

――それを聞いて乾さんはどう思いますか

 その通りだと思います。

杉田、加藤 (笑)

――最後に加藤さんの印象はいかがでしょうか

杉田 一見馬鹿そうに見えるんですけど……

加藤 うるさい(笑)

杉田 めちゃくちゃ責任感があります。

――一見そのように見えるのはどういったところからなのでしょうか

杉田 やはり誰からもいじられキャラなのでどうしてもいろいろな人になめられてしまうんですよね。

 それでもふざけているように見えて実はちゃんとしていて。仕事でもそうだしテニスでもそうだし、あまり表に出ない真面目さが本当はあるけどなかなか気づいてもらえないから(笑)

――それを聞いて加藤さんはどう思いますか

加藤 ちょっと人生損した気分です。

杉田、乾 (笑)

――4年間で印象が変わったなと思う人はいますか

 梨々子が一番そうだったと思います。

杉田 梨々子がね。最初と全然。

 それこそ最初の方はふざけている面が目立つ感じだったのですが、4年になるにつれて責任感とかそういった面の方が目立つようになりました。

――今の4年生はどういった学年だと思いますか

加藤 役割ははっきりしているよね。

杉田 うん、はっきりしたね。

加藤 4年になって一人一人の自分の役割を見つけながら1年間やってきた感じ? だよね。

杉田 一生懸命、自分たちなりにこのチームでどういうポジションで何ができるかを見出してがむしゃらに考えながら。主力となる選手がなかなかいない状況の中で、自分たちがチームにどう貢献できるかを一生懸命考えながら、頑張ってやってきた学年なのではないかなと思います。

――皆さんの役職についてお聞きしたいのですが、それぞれの内容について説明してもらえますか

杉田 私は主将で一応、主務も兼任してやらせてもらっているのですが、主将になってからは主務の仕事は乾にまかせっきりになってしまっていて。申し訳ない気持ちは大きかったのですが、主将になってからはチームをプレーで引っ張るというよりは、一人一人を支えつつチームをマネジメントして、みんなに寄り添いながらやってきたという感じです。

加藤 私は副将と分析委員長をやっているのですが、副将は主将の杉田を支えながら、私はどちらかというと後輩とかと積極的にコミュニケーションを取ってチーム全体を見る立場だったと思います。

 私は主務に就いていて、コート外のマネジメント全般をやっています。会社でいう総務だったり人事だったり何でもやっている感じで、大学とのやり取りだったり監督、コーチ陣とのやり取りだったり、OB、OGとのやり取りだったり、特に一番大きい通常業務はお金関係の扱いです。オフコートのことは全部やったようなかたちです。

――それぞれ役職をやっていて大変だなと思うところはありましたか

杉田 やはり主将はどうしてもチームの中では厳しいことも言わないといけないし、嫌われるような選択とか決断をしなければいけないポジションで。私自身は元々そういうキャラクターではなくて、2人が言ったように平和に生きていければそれでいいなと思っていたので、わざわざチームを乱すようなことを言うのが苦痛でした。それでもやはりチームのことを考えるとここで言わないといけないなとか、そういった責任が芽生えてきて、ここぞという時で自分で決断する力というのは身につけられたのではないかなと思います。

加藤 私は正直、副将はそれほど大変だったとは思わないのですが、どちらかというと分析の方が大変でした。自分自身が団体戦でプレーする立場ではない中での分析だったので、他大学の選手を分析しながらどういったプレーが効果的なのかということを考えるのが難しい部分ではありました。

 私はいろいろなことを仕事としてやってきたのですが、どの仕事でも通しで大変だったと思うのは私が全て責任を負わないといけない、それで頼れる人というのがなかなかいなくて、責任感と頼れる人がいないというのは大変な部分でした。この仕事が特にという意味ではコンプライアンス関係が大変で。今年はコロナ禍での活動だったので活動の規制などで部員から理解を得ながら規制するというのは、なかなかしづらい部分もありましたし難しいところでした。

――コロナ禍でいうといろいろな要請に対応するのは大変でしたか

 そうですね。活動の基準も状況に応じて変わったり、ルールも変わったりするのでそれに対応しつつ。世間の目も気にしないといけない部分もあったので外出をなるべく控えるように、とか人の多いところには行くな、とかそういったものがありました。

――杉田さんが主将をしている姿は他の2人の目にはどのように映っていますか

 元々熱いタイプだったのですが、主将になって一気にその熱さが増したなと思っていて。その熱さがチーム全体に伝播していって、元々ネガティブな選手が多いチームだったのですが、今思い返すとその雰囲気はかなり変わったなと思います。みんなポジティブにテニスに取り組めているというのは杉田の熱さが大きな要因なのかなと思います。

加藤 元々、私たちの代では杉田が一番テニスに対する熱さみたいなものでは1年生の時から抜けていたのかなと思いますし、乾も言ったようにその熱さがチームのカラーになっているような気がします。

――杉田さんはそういったところは意識されていますか

杉田 うーんと……(笑)。元々テニスは4年間頑張ろうと思って入学してきたところがあって。そういう自分のテニスに対する温度感が実際のテニスには結びつかなかったのですが、周りと一緒に頑張りたくて。大学入学前までずっと個人でやっていて、団体でやるというのにすごくあこがれていて、みんなと同じ温度感でやっていきたいというのは入学当初からあって、周りに一緒に練習しようよとか熱い言葉を言っていた記憶はあります。それが主将になってからチームや後輩とかに伝わってくれていたならすごくうれしいなと思います。

「後輩は大好き」(加藤)

――この1年の試合の振り返りをしていきたいのですが個人戦を振り返っていかがですか

杉田 個人戦は最後、インカレ予選まで行けて。正直もっと上に行きたかったなという気持ちはありましたが、1年生の時にインカレ予選に初めて行けて、そこから2、3年で挫折してなんだかんだ地道にやってきて4年目でインカレ予選に戻ってこれたのは自分の中でも終止符としてはいいかたちだったなと思います。それでもなんせ周りのレベルが高い分、もうちょっとみんなにくらいついてインカレ本戦にも上がってプレーしたかったという思いもどこかにあるので、そんな悔しさが残りつつもやりきったという感じです。

加藤 私もインカレ予選で今年は負けてしまったのですが、1年生の時のインカレが終わってすぐに手術をして、1年間テニスができなかった期間があって。4年間を通して考えると自分が思うような結果は全然残せなかったのですが、その1年間の期間を経て4年目でインカレに予選ではありますが戻ってこれたのは辞めずに頑張ってきて良かったなという点ではあります。それでも個人戦は悔しいかたちで終わってしまいました。

 私は高校まで勉強もしないといけない環境だったので、なかなか高校を卒業した時にやれきれなかったので体育会に入ったという経緯がありました。大学生活でテニスをやりきって終わりたいという思いがあって入ったのですが、2年生の途中から主務や副務の仕事を始めていたのでなかなかテニスをする時間がなく、4年のリーグ前のミーティングでも個人戦では悔いが残ったという話をしてしまったぐらい、その時までは悔いが残ったなと思っていました。それでも最後に夏関(関東学生選手権)に出場して、全然テニスができていない中での最後の引退試合になりました。その試合が5-4、3-5、6-10で負けてしまいましたが、今の実力は存分に発揮できた試合になって部員からもいろいろメッセージでリアクションをもらえて。それで最後の最後に出しきれたかなと思っているので、2人は悔いが残ったと言っていましたが、今できることは全て出しきって個人戦を終えられたかなと思っています。

――加藤さんはけがで1年間テニスができなかったということでしたが、その期間で何か考え方など変わったところはありましたか

加藤 最初は1年間ラケットを握れないとは思っていなかったので、部室に来てみんながテニスをしているのを見て、どんどん周りが強くなっていくのを見ているだけだったので、本当に辞めてやろうと何回も思いました。その中で学生トレーナーやコーチの方々がいつも励ましてくださったり、私がサボっている時とかにしっかり怒ってくれたりして。自分が復帰するためだけにリハビリをやるのではなくて、周りをもっと頑張らせるというか、周りにいい影響をもたらせるようにリハビリをやろう、みたいなチームのためにという考え方にその辺りから変わりました。その1年で自分のためというよりかはチームのためを考えて行動するようになりました。

――杉田さんと乾さんは加藤さんがリハビリをしている姿をどのように見ていましたか

 結構、その頃はけがをしている人への風当たりが強い中だったのですが、それに対してブツブツ言いながらもけがをしている選手として誰よりもストイックに頑張っていた選手というのは間違いないなと思っています。

杉田 なんか泳ぎに行って……。

加藤 やめてよ(笑)

杉田 なんか市民プールに1人で泳ぎに行って体力強化していたり。

 なんか体幹トレーニングをしすぎてお尻がめっちゃ硬くなっていて(笑)

杉田 ボディビルダーみたいな体になっていました(笑)

――団体戦ではサポートや応援という立場でしたが、その中で意識していることはありますか

杉田 やはり私たちにできることというのは本当にどれだけ選手を奮い立たせられるか、精神的に支えられるかというところしかないと思っていて。テニスでも引っ張れないので本当にそこだけは。自分たちのことはどれだけ犠牲にしてもいいから、後輩や選手のことを優先して考えて行動するようにしていました。その中でも応援とかは後輩のサポートの子たちも結構いるのですが、その中でも4年が全力で一番大きい声を出して一番大きい拍手をして、応援の方でも振る舞い方を見てもらってサポートの後輩も奮い立たせられるかという感じで、常に全力でやるようにしていました。

 本当にその通りで特に2年生の時の連覇が止まった時とか少し前の早稲田は、本当に細かいところまで突き詰めていて。細部に神は宿るみたいな感じで小さいことまで突き詰めてやろうという方針だったのですが、それだけだとそれこそネガティブな雰囲気になってしまったり、小さいことでも気が立ってしまうような雰囲気があったので、まずは選手ファーストにという意識に変わったなと思います。

加藤 4年とかは特にベンチコーチに入る機会が多くて、杉田が言っていた選手の精神的な面のサポートというところで4年目とかは特に選手とコート上ではもちろんですが、オフコートでもしゃべったり、遊びに行ったりして。信頼関係を築く中で選手が思いきってプレーできるようなサポートをするように心がけていました。

――後輩たちが試合に出ている中で、後輩たちへはどのような思いがありますか

杉田 本当に素直で頑張り屋さんな後輩が多くて、本当に全員大好きで心から応援したいような選手ばかりで。そういうところに関しては本当に迷いなく、全力を出そうというよりは自然に全力が出ちゃうなという感じで応援できています。

 私は今の1年生の勧誘を担当していて、特に思い入れが強いではないですけど、一緒にリクルートして一緒に受験勉強もして入ってきてくれた後輩で。その1年生がコートで活躍している選手もレギュラーに入っていない1年生も頑張ってくれている姿は本当に素直にうれしいなと思います。

加藤 杉田と同じになってしまうのですが、後輩は大好きですし、後輩が頑張っている姿とか特に1年生なんかはリーグとかで勝ちを決めてくれた選手もいますし。こういう活躍している姿を見ると上級生の私たちが元気をもらえるというか、勇気をもらうではないですけど後輩に助けられるという場面が多かったと思います。

――王座出場校決定トーナメントでは準決勝の筑波大戦が印象的でしたが振り返っていかがですか

 思い出しただけでも鳥肌が(笑)

杉田、加藤 (笑)

杉田 本当に私の人生の中でトップの思い出になるような試合だったのですが、誰のおかげというよりかは全員が力を出してそれが相互にいい影響をもたらして勝ちにつなげられたなというのがあって。負けた試合とかでもそうですし、苦しい試合が多かったのですが、その中でも気持ちだけは落とさずに王座に出たいという気持ちを全員が持っていたからこそ暗い雰囲気にも一切ならなかったです。隣とかが苦しい試合をしていたとしても、隣のコートが頑張っているから私も頑張れる、応援の人たちが気持ちを出しているから私も頑張れる、みたいにいい意味で周りを見ながら全員が戦えて。それで最後の最後で梶野(桃子、社1=京都外大西)が(相手の)マッチポイントを2本ぐらいしのいで勝ちきってくれましたが、それも本当に全員の力があってこそだと思います。

 全員が全力すぎてどれもいい試合すぎて。言葉を選ばずに言えばですが、勝っても負けても後悔はないなと後半からは思えていました。

加藤 チーム、戦っている選手がゾーンに入っているというか、サポートも全員がゾーンに入った、という状況だったんですよ。最後の方は本当にすごくて。鳥肌が立つような、チームが一つに集結した試合だったと思います。

――慶応がやはり王座を獲るためには乗り越えなければならない相手だと思いますが、慶応の印象はいかがでしょうか

杉田 やはり強いなというのがあります。春の早慶戦でまさか勝てるとは思わなくて勝った後もびっくりという感じで、そこから私たちもいい流れに乗れるだろうなと思ってやってきたのですが、慶応はその分、悔しさを努力に変えて改善してきたのがこの間のトーナメント決勝戦での1-6という結果につながりました。こっちもその強さを見せつけられましたし、勝負強さというのも見せつけられて、やはり負けられないなとこっちも思えてきました。強いですけどもちろんこっちはチャレンジャーだし、いい意味でみんなももう1回再燃したというか、もう1回頑張らなければという火がついたと思うので、王座でもしあたることができたら、向かっていきたいなと思っています。

 慶応の印象としてはすごく組織としてしっかりしているというか、仕上がっているチームだと思っていて。早稲田は私がさっき言ったように細かいところを突き詰めるというよりは、というチームに切り替えてきたのですが、慶応は常にその細かいところまで、という詰めがしっかりしている印象があります。

加藤 個人戦の結果とかを見ても頭一つ抜けているのが慶応なので。春の団体戦では勝っていましたが、団体戦だから何が起きるかわからないというか、団体戦ならではの戦い方があると思っていて、早稲田もチャンスは十分にあると思っているので、王座であたれたら絶対に勝ちたいと思います。

「最高の笑顔で終わりたい」(杉田)

――王座もいよいよ直前となりましたが今の心境はいかがですか

杉田 愛媛に全員で行けないので、明日でここで練習するのもみんなに顔を合わせるのも最後なんですよね。ということをしみじみ感じる夜なのですが、そう考えると感慨深いなと思って今日寝られるのかなと。たぶん寝られるんですけど(笑)。

乾、加藤 (笑)

杉田 本当にいろいろあったなと思って。最後を王座で終われるというのが本当にうれしくて、このチームだからこそ実現できたことだと思います。本当に周りの部員もそうですしいろいろな人に感謝しているのですが、本当にこのチームが大好きなので、王座に出てうれしいですがそこで満足して負けて終わりたくないし、みんなの王座を決めた時の最高の笑顔が私も忘れられなくて。本当に最後は最高の笑顔で終わりたいなと思っているので、私自身もそうですしこの4年の集大成を見せることでチーム全体が盛り上がってみんなもついてきてくれると思うので、最後はみんなでやりきって笑って終わりたいなと思います。

 王座に向けて今の心境としてはよく言うかもしれませんが不安半分、期待半分というところで。主務として王座のセッティングを全て担当してきたので、そこの抜け目がないのか、また王座に行くのが3年ぶりになるので想像しきれていない部分があるのではないかとかそういう不安があります。その一方で期待としては、やっと奪還のチャンスが目の前に迫っている、後輩たちに王座の景色を見せることができるチャンスがある、しかもチームの雰囲気としてもこのチームなら戦えると思える状況にあるということからの期待半分というような気持ちです。

加藤 私は期待でいっぱいなんですけど……

杉田、乾 (笑)

加藤 本当にやっと巡ってきた奪還のチャンスなので絶対に優勝したいし、このチームなら本当にいけると思って今までやってきたのと、私は個人的には17年間やってきたテニスの集大成なので、最後は絶対にこのチームで笑って終われるように、はい。頑張ります!

杉田、乾 (笑)

――王座に向けて改めて意気込みをお願いします

杉田 4年間、つらいことの方が多かったのですが、それを全部力に変えて。もちろん私だけではなくてみんなも悔しい思いとかいろいろしてきて、つかみ取った王座という舞台でこれまでの屈辱全てを。あとは先輩方、去年の先輩もそうだしおととしの先輩もそうだし、王座で戦えなかったり、王座を逃してしまった先輩方がたくさんいるので、いろいろな人たちの思いを力に変えて全力で戦って優勝したいと思います!

 4年間の全てをかけて、私たちで王座を経験している最後の世代になってしまわないように後輩たちに王座の景色を見せられるように全力を尽くすということと、私は日本一の主務に慣れるように愛媛で全てを出しつくしたいと思います!

加藤 私たちの王座の言葉として「全てはこの日のために」という言葉があって、4年間本当にこの日のために頑張ってきたので絶対に王座、獲ります!

――ありがとうございました!

4年生の集大成に注目です!

(取材・編集 山床啓太)

◆杉田栞(すぎた・しおり)

埼玉・山村学園高出身。社会科学部4年。

◆乾和歌(いぬい・わか)

奈良高出身。文学部4年。

◆加藤梨々子(かとう・りりこ)

山口・野田学園高出身。スポーツ科学部4年。