またしてもあと1勝、届かなかった。ここまで熱戦が繰り広げられてきた全日本学生選手権(インカレ)もついに最終日を迎え、単複で決勝が行われた。男子の方ではここまでシングルスで勝ち上がってきた丹下将太(教3=東京・早実)が慶應の藤原智也と対戦。高校2年生の時以来となる全国大会決勝の舞台で初の全国タイトルの獲得を目指したが、試合は3-6、2-6と慶應の次期エースに完敗という結果に終わった。春の関東学生トーナメント(春関)に続いての準優勝。トップレベルでの戦いの中で優勝するために足りないものを痛感させられることとなった。
決勝もバックハンドでのラリーが続いた
藤原との決勝、丹下は苦しい立ち上がりとなった。丹下のサービスゲームから試合が始まったが、第1ゲームでは40-15から追いつかれ、デュースの末にキープするという展開。序盤から丹下の強みであるフォアハンドを封じ込めようと、バックハンドにボールを集められ、なかなか攻撃できない。「数少ないチャンスでフォアで仕留めるという気持ちが少し強く出すぎてしまって」(丹下)というように、バックハンドのラリーが続けられたことがフォアハンドのミスにつながってしまい、第3ゲームには早くも相手にブレークを許してしまう。直後の第4ゲームには相手のミスも絡み、ブレイクバックに成功するも、第5ゲームにはバックハンドの調子がいい相手に先に攻められ、再びブレークされてしまった。なんとか追いつきたい丹下は第7ゲームをフォアの強打が決まったこともあり、4ポイント連取でキープし、第8ゲームも40-30とする。しかし、そこから相手に2本のファーストサーブを入れられるなどして、ブレイクバックならず。すると、第9ゲームも15-40からデュースには持ち込んだが、相手を抑えることができず、3-6で第1セットを落とした。
丹下のトイレットブレークを挟んで試合は第2セットへ。なんとか相手の流れを断ち切りたい丹下は第1ゲーム、40-15としてブレークのチャンスを迎える。しかし、相変わらずバックハンドのラリーが続く中で「まだバックハンドに自信が持てていないので、それが試合中の簡単なミスとして出てしまった」(丹下)と、ミスから4ポイント連続で落とし、ここもブレークすることはできず。直後の第2ゲームにはブレークされてしまい、またもや劣勢の展開となった。第3、第4ゲームには2連続でデュースとなるも、ミスで2ゲームとも相手に明け渡してしまい、もどかしげな様子を隠せない。その後の第5ゲームでは、相手を食い止めようと修正し、「コートの真ん中でもいいから1球でも多く返す」(丹下)という意識を持った丹下が、ブレイクバックに成功。さらに第6ゲームには積極的に打ちにいったフォアハンドが決まり、このセットで初めてサービスゲームをキープする。しかし、反撃はここまでだった。第7、第8ゲームは勢いに乗った相手を止めることができず、あっという間にポイントを取られゲームセット。試合終了後、自分のテニスが全くできなかった丹下は悔しげに天を仰いだ。
敗れた瞬間、天を仰ぐ丹下
試合後、丹下は優勝するための課題としてバックハンドと大舞台でのプレーの質の2つを挙げた。特にバックハンドは喫緊の課題だろう。準決勝、決勝とバックハンド狙いのラリーが続き、準決勝は勝つことができたものの、決勝では自分のミスにつながってしまった。今後は対策が必要になってくる。そして、大舞台でのプレーの質。決勝では劣勢の展開となったことでプレーも消極的になってしまった。どんな展開になっても跳ね返せるようなプレーが今後、大舞台で求められるだろう。「今回は負けてしまいましたが、全国の決勝に行けたということを前向きにとらえてまた頑張っていきたい」(丹下)。タイトルには届かなかったものの、決勝を戦えたことは経験値になった。今回の悔しさをばねに、さらなる飛躍を誓う。
準優勝となった丹下
(記事・写真 山床啓太)
結果
男子シングルス
▽決勝
●丹下将太 [3-6、2-6] 藤原智也(慶大)
コメント
丹下将太(教3=東京・早実)
――準優勝となりました。今の率直な気持ちからお聞かせください
うれしい気持ちもある半面、悔しい気持ちもあります。試合が終わって負けが決まった瞬間は一番悔しかったです。
――相手の藤原選手の印象はいかがでしたか
何度か対戦したことがあって通算で言うと勝ち越している相手だったのですが、だいぶ前に対戦した選手なので、僕が勝った時よりも強くなっているだろうなと試合前から警戒はしていました。
――序盤からブレークされて苦しい立ち上がりとなりました。この展開を振り返っていかがですか
最初から最後まで追う展開になってしまったので、やはり僕の持ち味である思い切りのいいプレーは、少し消極的になってしまったかなという感じはしました。
――今日もバックハンドでラリーが続く展開となりましたが、この辺りのプレーについてはどのように考えていますか
バックを狙われるということは試合前から予想していたことなのですが、やはりまだバックハンドに自信が持てていないので、それが試合中の簡単なミスとして出てしまったかなという感じはしました。
――得意のフォアハンドでミスが多く出てしまいましたがこの部分については振り返っていかがですか
試合を通してフォアハンドで打てる回数が少なかったので、その数少ないチャンスでフォアで仕留めるという気持ちが少し強く出すぎてしまって、それがミスにつながってしまったのかなと感じています。
――デュースで決めきれないゲームが多かったですが、この部分についてはいかがでしょうか
特に序盤はブレークポイントやゲームポイントがあったと思いますが、そこで取りにいきたすぎて少し守りに入ってしまうというか。そこでもう少し勇気を出して攻めきったりできていれば、もっと展開がいい方向に傾いたのではないかなと思います。
――相手の流れを断ち切るために修正しようとしたところはありましたか
まず相手よりも先にミスしてしまっていたので、コートの真ん中でもいいから1球でも多く返すということは考えてやっていました。
――春関に続きインカレでも準優勝となりました。あと1勝をつかみ取るために何が必要になってくるのでしょうか
やはりまず技術的な面でバックのクロスとストレートの打ち分け。フォアがいい分、バックを狙われるという試合が今後増えてくると思うので、そうした中での戦い方や打開策をしっかり自分の中で用意しておくというのが一つというのと、決勝という舞台で戦って最後はチャンピオンになるという、そういう大舞台でのプレーの質というのをもっと突き詰めて。それはやはり経験しないとできるようになっていかないと思うので、今回は負けてしまいましたが、全国の決勝に行けたということを前向きにとらえてまた頑張っていきたいと思います。
――今後に向けて一言お願いします
これからもしかしたらリーグ、王座があって団体戦のシーズンになってくると思います。今回は早稲田の中では僕の準優勝というのが最高成績になると思うので、うちのエースの白石(光 スポ3=千葉・秀明大秀明八千代)がダメなら丹下で勝負するというそれぐらいの心の準備というのをしっかりして、誰かがダメならその穴を誰かが埋めるというチームを作っていきたいと思います。