『令和2年度卒業記念特集』番外編 第1回 藤井竣介×山田菜津子(3/26)

庭球男子

 対談初回は、3年時から主務を務める藤井竣介(商4=愛知・昭和)選手と、山田菜津子(文構4=石川・大聖寺)選手が登場。1人の部員として練習に励みながら、部の運営では中心となりチームを支えてきた。私達の発信活動が成り立っているのも、お二人の支えがあったからこそといえる。同期・後輩からの人望が厚い2人にとって、早大庭球部とはどのようなものだったのか。4年間を振り返ってもらった。

「肩の荷が降りた」

時折身振り手振りを交え質問に答えてくださった山田選手

――早慶対抗試合(早慶戦)が終わってからは、どのように過ごされていますか

山田 高校生の小論文指導と面接対策をしました。2人しか私は担当していないのですが、小論文と面接の対策は時間がかかるので、その指導を中心にしています。

藤井 僕も同じでスポーツ科学部と社会科学部の自己推薦入試のサポートをしていました。(取材日は)山田と一緒にスポーツ科学部の対策に行っていました。あとはアルバイトを始めました。主務の経験を少しでも生かそうと思って(笑)

――どのようなアルバイトをされているのですか

藤井 近くの飲食店です。一番後輩ということで、1年生のつもりで今は必死に覚えている最中です。

――アルバイトには慣れてきましたか

藤井 慣れはあります。主務として2年間培ったものが発揮できてるんじゃないかと(笑)

――お二人はもう少し部に関わるのですか

藤井 そうですね。(11月)22日の社会科学部の自己推薦入試が終わってから完全引退となります。

――主務終えてから、どの部分が一番変わりましたか

山田 まだ受験指導があるので「完全に終わった〜」という感じではないのですが。藤井よりも全然仕事がないのでおこがましいですが、肩の荷が降りた感じはあります。気が楽になったというか、あとは頼んだぞ!という感じです。

藤井 変わった点としては「タスクのやり残しがあるのでは?」という不安に駆られる日々ではなくなった。何か忘れているのではという気持ちがなくなったので、何も気にせずに四六時中過ごせるようになりました。プレッシャーがなくなってきました。

――藤井さんは2年連続の主務でしたが、変化はありました

藤井 すごいありました。1年目は3年生ということでチームの運営は当時の4年生にお任せして、ただ回ってきた仕事を頑張るだけでした。2年目は最上級生ということでチームの業務も行ってきましたし、主将との連携の部分では2年目の方が圧倒的に増えたので違う仕事と言ってもいいくらい大きな変化です。

――山田さんはどうですか

山田 去年までが悪かったとかではないのですが。今年は後輩もしっかりしていて、一緒に主務となった藤井もしっかりしていました。本当に働く人が良すぎました。テニスをしたいなと思うことは多かったですが、働きやすく頑張れました。人に助けられながら仕事ができました。

――お互い、どのような主務でしたか

山田 神!(笑)。ちゃんと書いといてください!

藤井 これ載るのかー。あー(笑)

――どの部分が神でしたか

山田 仕事を全然嫌そうじゃなく引き受けてくれたりとか。細かいところもやってくれたりと。自分が動けてない時にすぐに動いてくれたので。本当に感情がないのかと思うくらい動いてくれるので、できた人間だなと思います。

藤井 山田は主務とテニスを両方やれるのがすごいなと。自分は正直仕事が多くてテニスをする余裕がなかったのですが、その部分は真似をできないなと思います。あとは、特に女子部員が困っている場面でフォローしたりすることが何度もありました。そこは私が良くできていなかった部分なので良かったと思います。

山田 めっちゃうれしい。聞いた?(同じ部屋に偶然いた藤岡選手にむかって)

藤岡 はい、聞きました。

――藤岡さんから見て、お二人の主務はどうでしたか

藤岡 優秀すぎます!

山田 お、めちゃくちゃ上げてくれる!

藤岡 本当にテニスに集中できる環境を用意してくださって良かったです。

山田 ありがとう!

藤岡 来年も続けてほしいです(笑)

支えとなった両主将の存在

――主務をしていく中で、支えとなった部員はいましたか

藤井 特定の人を挙げるのは難しいですが、やはり一番接点があったのは男子主将の木元(風哉、社4=埼玉・早大本庄)です。普段の運営から関わる機会が圧倒的に多かったですし、部員の前で何か話す時には事前に打ち合わせもしました。木元自身主将として大変だったと思うのですが。彼が変わっていく姿を見れたのはうれしかったと思います。最後に木元が決めてくれたところはすごく印象に残っているので、いい関係で1年間頑張れたと思います。

――どの部分が変わったのでしょうか

木元 早慶戦前にチームの雰囲気が自然と厳しくなっていく中で、なかなか4年生も雰囲気をつくることができない期間がありました。普段のキャラクターとは全然違う、覚悟を決め、本来は演じたくないキャラクターを演じてくれたと思います。それがチームをいい方向へ持っていったと思います。

山田 藤井が主将を挙げましたが、私もです。清水(映里、スポ4=埼玉・山村学園)は選手としても活躍しないといけないですし、主将としてチームをまとめないといけなく大変であったと思います。特にコロナ期間は例年と違って難しい部分が多くあったと思うのですが、その中でどうやったらしっかり練習できるか、コート上でチームを引っ張っていけるか。私も最上級生が少ない中でコートから引っ張っていけないと思いもあったのですが、主将を中心に副将も引っ張ってくれたので、私は集中して受験指導などに打ち込めることができました。本当にありがたいという気持ちが多かったです。

――どのようにコロナ渦は関わっていましたか

山田 女子は関わりが少なくなったのでラインで出来事を言い合ったり、zoomも頻繁にしていました。仕事の関係もあり、女子は特に関わる機会が例年だと少なくなってしまうのですが。コロナだったらこそ、どうでもいい話題を共有できました。一緒に部活できなかったことは寂しく辛かったですが、違う形で部員と関われたのは、悪い部分だけではなかったなと思います。

藤井 男子も同じようにほとんどの部員が実家に帰省していたので、一番関われたのはzoomです。フリートークもありながら、部に帰属する意識を持ち続けたらいいなと思いで同期が提案してくれました。チーム運営の部分では谷垣(絢也、スポ4=東京・足立学園)や本多(映好、社4=岩手)などが主体となってくれた部分はありがたかったです。

――zoomはいつ頃から始まったのですか

藤井 男子からお話しすると、練習ができなくなった直後の4月からです。先程言った谷垣、本多が中心となってくれたと思います。

山田 くだらない話系は谷垣、本多が発案したのに乗っかりました。トレーニングなどは和歌(乾、文構3=奈良)とかの後輩からです。(乾は)実現すると思ってなかったと思いますが、それがきっかけで始まりました。

――自粛期間中に筋トレされている部員が多かったように感じるのですが

一同 (笑)

藤井 それは結構前からウエイト部が発足していて。頻繁に活動が行っていなかったらしいですが、最近は結構プロテイン購入した部員も多いらしいです。大胸筋が付きすぎていると噂を聞くので、ほどほどにですね(笑)

――誰がウエイト部のメンバーなのですか

藤井 現役だと新井湧己(教3=東京・早実)、丹下(将太、教2=東京・早実)、池田文隆(政経2=カナダ・Glebe Collegiate Institute)あたりです。

――誰が中心となって設立されてのですか

藤井 最初のメンバーは現4年生メンバーが中心だった気がします。あと何人かいるかもです。ちょっと記憶が定かでないです。

――テニス部を引退してからできるようになったこと、してみたいことはありますか

山田 まだしてないですが旅行はめっちゃ行きたいです。部活をしていたら長期の休みは取れないので、今まで遠征はあっても観光地に行くことがなかったので、行きたいなと思います。あとバンジージャンプ行きます!引退してから飛びにいきたいです。まだ決まってないのですが探します!

――旅行はどこに行きたいですか

山田 東北の温泉が雪積もると綺麗だと聞いています。あと島とかにも行きたいです。最近寒いのであったまりにも行きたいと思います。

藤井 明後日から同期7人で新潟に免許合宿に行きます。過半数なので、実質同期旅行と言ってもいいです。あと、やるかどうかは別として、自己研鑽です。社会人スキルを付けたいと思うのですが、やるかどうかは怪しいです(笑)

「冗談抜きに人生が変わった」

2年間主務を務めた藤井選手にとって、早大庭球部は人生を変える場所となった

――これまでの4年間で個人として思い出に残ってる大会はありますか

山田 個人では1年生の時の夏関(関東学生選手権)です。めちゃくちゃ好きな先輩と組ませてもらって、それで結果を残せたのがうれしかったです。団体戦は2年生の時の王座(全日本大学対抗王座決定試合)です。決勝で主将が優勝を決めたのですが、マッチポイントになった時に鳥肌が止まらなく。日本一になった瞬間に「報われる感覚」に陥りました。本当に大好きなチームであったので印象に残ってます。

藤井 個人戦は3年生の春関(関東学生トーナメント)です。名越(大地、社3=兵庫・相生学院)と組んだ試合はすごく楽しかったです、いい時間を過ごせたなと思えます。団体戦はキリがないですが最後の早慶戦ですね。苦労して開催にこぎつけた経緯もあって。まだ早いとは分かっていたのですが、前日からボロ泣きしました。それだけ熱を持ってチームに関われたことを確認できましたし、当日は最高の瞬間を迎えられました。

――前日のミーティングはどのようなものでしたか

藤井 男子から言いますと。基本的にオーダーを発表して、最後に4年生が一言を話すのですが。自分の前に田中(優之介、スポ4=埼玉・秀明英光)が話したのですが、3年生の王座の時にショッキングな敗戦が単複であったことを話してくれました。当時ベンチコーチに自分が入っていて、優勝したのに全然浮かれてない田中の姿をすごく覚えていたので、その話を聞いた瞬間に泣きました(笑)。

山田 女子は部員が一言ずつ話していくのですが、4年生一人一人に話してくれる子が多く。自分は元々すごいテニスがしたく、苦しい思いがあったのですが。部員にはなるべく分からないように努力していたのですが、主務の仕事を頑張ってるところを見てくれていたことがすごい強く伝わりました。頑張ってきて良かったなと思え、私もボロ泣きしました。

――早慶戦後はどのような雰囲気でしたか

藤井 連勝記録を止めてはいけないプレッシャーがあったと思うので、5本取るまでは緊張感がありました。5本取った後は安堵感がありました。試合後はもっと感情に浸るのと思っていたのですが。4年生全体笑顔が多かったです。清々しい勝ち方ができたので、とにかくやり切った印象を受けました。

山田 私は4年生のダブルスのベンチコーチに入ったり、美穂(倉持、商4=東京・早実)のボーラーをしていました。そこで勝ちを持ってこれなかったり、応援で勝ちに結びつけられなかったり。チームとして雰囲気はあまり明るくなかったです。今までずっと頑張ってきましたのですが、負けはしましたがやってきたことは間違ってなかったのでやり切った感じで終えれたなと。ただ結果が付いてこなかったので来年につなげようという感じです。悔しい思いの方が強すぎました。

藤井 その場の感傷に浸って、そこまで覚えてない部分もありますね(笑)

――4年間で思い出に残ってる出来事は

山田 今年の受験指導は一番印象に残ってます。コロナで大会がなくなったこともあり、主務、トレーナーで小論文の添削をしたり、調査書を作ったりと、大変ではありました。乾が場を盛り上げてくれ、きつかったと思うのですが振り返ると楽しかったかなと思います。

藤井 僕は2つあるのですが。1個目は、1年生の前半に苦しかったことです。なんで苦しかったか思い返すと、チームに貢献している感じがなかったからです。主務として責任ある役職を2年間任せてもらえたことが、その後のモチベーションとなりました。テニス以外でも貢献できることを発見できたことが印象に残ってます。2つ目は山田と被るのですが受験指導です。僕は3回目になるのですが。勉強を頑張って早稲田に入ってくれることもうれしいのですが、それ以上に活躍する姿を見るのが何よりうれしいです。本人たちの努力が一番大きいですが、少しでも力になれてたらうれしいです。

――早稲田の庭球部で過ごした4年間は

山田 難しいな。まとめらんないなー。

藤井 冗談抜きに人生が変わりました。日本一とは正直無縁だと思っていたので、この部に何回も携われたことは驚きです。全国15連覇のチームに関わっていることを周りの方に話すと大きなリアクションをしてくれる方が多く、何回も凄さを感じます。そのチームに主務として関われたことは、世界が変わったと思います。

山田 まとめ方がめちゃくちゃうまいね(笑)。似てるようになりますが、自分自身を変えてくれた4年間でした。今までは自分が強くなることしか頭になく、それが楽しかったです。大学に入って、人のためにこんだけ考えても日本一を取れないんだと感じました。皆が好きと普段から周りに言ってるんですけど、本当に好きだなと。人生の中でこれだけ同じ時間を共有することもないからこそ、大事な仲間に出会えて過ごせたのは幸せだったなと思います。

――後輩に向けて、最後にメッセージをお願いします

山田 本当にありがとうと言いたいです。主務として、4年生として至らない部分だらけだったのですが、本当に付いてきてくれて4年生を慕ってくれた。今後結果が付いてこない時に落ち込むこともあると思うのですが、王座奪還は達成してほしいし、今までもそのために活動してきているので最後は『笑顔で』という思いが強いです。ただ結果もですが、最後やり切って終わってほしいです。後悔せず、残りのテニス生活を頑張ってほしいです。

藤井 シンプルですが、後輩には感謝を伝えたいと思います。最後の早慶戦に向かってモチベーションを上げてくれたことには感謝の気持ちです。来年以降ではありますが、誰もが活躍できるチャンスはあると思うので見つけてほしいなと思います。責任ある仕事をするからこそ、必ずいい経験になるだろうなと自分は実感しています。責任感と自分自身を律することをしっかりし、連勝記録を伸ばしていってほしいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大島悠希氏)