白石光(スポ2=千葉・秀明八千代)は全日本学生選手権(インカレ)単複優勝を目標に掲げ、今大会に臨んでいた。前日のダブルス準決勝でファイナルセットの末に敗れてしまったことにより、シングルス制覇への思いはより一層強くなっていた。決勝の相手は春関(関東学生トーナメント)覇者で、準決勝で第1シードの今村昌倫(慶大)を破るなど勢いに乗っている田形諒平(筑大)。強烈なサーブに加え、力強いフォアや積極的なネットプレーが武器の田形と、多様な球種を織り交ぜ粘り強くプレーすることができる白石の対戦は、決勝に相応しい大熱戦となった。
白石は決勝でも粘り強くボールを拾った
「アップテンポの時は羽澤(慎治、慶大)と似ていて強いタイプなので、自分からゆっくりやっていく」。準決勝同様にスローなテンポでのラリーから、展開していくことを想定していた白石。しかしファーストセット、「ゆっくりプレーした時に相手が思っていた以上に打ってきた」と相手がミスを恐れず攻めてくる。そこで白石は、気持ちが引いて守りに入るのではなく、いつも通りのプレーを見せた。コート奥への深いストロークだけでなく、臨機応変にコート全体へと球を散りばめていくなど、自身の持ち味を存分に発揮。すると相手は徐々にミスを重ねる。肩で息をする場面も見られるなど、田形の動きは精彩を欠いていった。「僕の守りに対してハマってくれた」と相手に思うようなプレーをさせず、6-3でファーストセットを獲得した。
しかし続くセカンドセットは、後がなくなった相手がファーストセット以上に積極的なプレーを見せる。サーブアンドボレーを多様するなど、強引に流れを変えようとしてきた。「前に出てきたし、すごく戸惑ったのですが」と語るようにブレークこそ先に許しはしたが、白石も粘り強いプレーで応戦。5-5で迎えた相手サービスの第11ゲーム、白石はここで終わらせたいと集中して臨んだ。先にゲームポイントを掴みはしたが、相手も執念を見せて、逆にゲームポイントを握られてしまう。幾度となくアドバンテージを握られたが、その度に驚異的な粘りで凌ぐ。しかし最後は気持ちで上回った田形がキープ。続く第12ゲームをブレークされてしまい、勝負はファイナルセットへ突入した。
迎えたファイナルセット。「グイグイくるなと思って。ここ引いたら負けるな」と感じた白石は、サーブアンドボレーに加え、ラリーの中で前に出ていく場面を増やすなど、積極的なプレーを見せる。その結果、ファイナルセット序盤はお互いが一発で仕留めていく場面が数多く見られた。キープする場面が続いたが、久しぶりに訪れた第5ゲームのブレークのチャンスを白石はしっかりとものに。そこから勢いに乗ると、相手に最後まで1ゲームも許すことなく勝利を決めた。
積極的に前に出る白石
優勝だけを見据えて臨んだ今大会。白石は決勝まで1セットも失わないなど、余裕を持って勝ち上がってきた。もし決勝で敗れていたら、男子部としては16年ぶりにインカレで無冠に終わることにーー。全日本大学対抗王座決定試合を15連覇している早大。各世代において、『頼れるエース』の存在が栄冠をもたらしてきたことは言うまでもないだろう。インカレを制したことで、紛れもなく早大の『頼れるエース』に白石もなったはずだ。王者早稲田をけん引する存在として、今後の活躍にも期待したい。
(記事 大島悠希 写真 山床啓太)
結果
男子シングルス
▽男子シングルス 決勝
○白石光 [6-3、5-7、6-2] 田形諒平(筑大)
チャンピオンスピーチ
白石光 まず初めに、この大会を開催するにあたって携わってくれた方々、ありがとうございました。そして、大会運営やボーラーをしてくださった学連の皆様、ありがとうございました。そして応援してくださった弥起(監督)さん、部員の皆様、ありがとうございました。僕は2年前、この三重の地でインターハイ(高校総体)を優勝することができて、今回三重の地でインカレが開催されるということで、良いイメージを持って初日からプレーすることができました。うれしいです。多分来年も出場するのでその時も優勝できるように頑張りたいと思います。ありがとうございました。
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コメント
白石光(スポ2=千葉・秀明八千代)
――インカレ優勝した今の率直な気持ちをお願いします
今大会始まる時から優勝は目指していたし、こうやって実現できたことは素直にうれしく思います。
――決勝までの勝ち上がり方はどのように感じていましたか
今大会は危ないとこがなく、自分の中で体力温存できました。最後まで見据えていた部分もあって、序盤から温存し戦えていたのが良かったと思います。
――大会前に比較的ドローがいいお話をしていましたが、大会を終えてどのように感じますか
勝たないといけない相手と試合する方がメンタル的にはキツかったのですが、比較的負けるドローではなかったと。ベスト4からの羽澤、田形に向けて温存できたので、良かったと思います。
――決勝の対戦相手が田形選手に決まった時はどのように感じましたか
正直デカイとは思いました。今村さんに勝ってきたのもあり、ダブルスで負けていたのもあり、ノリノリなのは分かっていたのでいい準備をして入りました。
――試合序盤は狙い通りの展開でプレーすることができましたか
はい。でも僕が思ってるより、ゆっくりやりたかったんですけど。ゆっくりプレーした時に相手が思っていた以上に打ってきて、それに合わせずに。今までの対戦では合わせてくれて自分がいこうと思った時にいけたのですが、すぐ攻めてきたので戸惑いはありました。今日はかわすよりもいい打ち合いを。打ち合おうと思い、真っ向勝負でいきました。いい試合だったと思います。
――その中でファーストセット取ることができましたが
先にブレイクされて。結論から言えば、僕の守りに対してハマってくれて、自分からいかなくても相手が慌ててくれたり。ボレーのミスをしてくれたりと。ラッキーな部分が多かったと思います。ワンブレイクアップで取れた感じです。
――セカンドセットの内容を振り返ると
ファーストセットを終えて、田形選手がアグレッシブに打ってきました。前に出てきたし、すごい戸惑ったのですが。気持ち的にも引かずに、3-3からブレイクして4-3までいくことができました。4-3から集中力が切れて自分のミスが増えてしまい、5-6からのニューポールになった時にも自分のミスが増えてしまいました。反省点で言えば4-3をキープして5-3に。しょうがないんですけどファイナルにはいってはいけない。いくべきではなかったです。
――第11ゲームは長いデュース合戦となりましたが振り返ると
あそこもブレイクしてたら、マッチゲームだったので勝ち寸前。何回もゲームポイントを取られ、気持ちが切れてしまった感じでした。
――第11ゲームに入る前にここが勝負だと声を出していましたが
やはりファイナルセットにいきたくないので、正直体も疲れていたし。そこで田形選手も上げてきたので、勝られた感じです。
――ファイナルセットはお互い積極的に前に出てきて決める場面がありましたが
グイグイくるなと思って。ここ引いたら負けるなと思い、自分からいくようにしました。自分からボレーいったり、サーブアンドボレーしたりと。リターンゲームもワンチャンスでした。ミスをするとしたらフォアだと思うので、フォアに集めたりしました。
――相手の展開を見て、自身のプレーを積極的にした感じですか
はい!
――最後のプレーを振り返ると
5-2とはいえ、ゲームを取られたら5-3になり、相手のサービスゲームで5-4になるとは思い。5-2を5-4だと思い、プレーしました。このゲーム取られたらやばいよとの気持ちで。最後もサーブアンドボレーできましたし、しっかりプレーできたと思います。
――優勝することができた一番の要因は
ちゃんと準備した結果だと思います。当たり前のことですが早く寝たし。アップ、クールダウン、ケアをしたり。そういうルーティンの部分から。自分でしっかり自己管理できたので、最後までけがなくできました。
――今大会はサーブ好調でしたが、それも大きかったですか
そうですね。今日は緊張でダブルフォルトもあったのですが、基本的にはサーブが速くなって、サーブアンドボレーも有効でした。
――去年はインカレで上位進出できませんでしたが、1年間で最も成長できた点は
去年はベスト16で満足というか。1年生だから負けてもいいのかなというのがあったのですが、今回は最初から優勝を狙いにいったので、気持ちの差だと思います。テニスも攻撃的になってきたと思うのですが、一番はメンタル的な部分です。
――来年以降の目標をお願いします
インカレは優勝できたのですが、チャレンジャーの気持ちで。来年出ることがあれば2連覇を狙いたいと思います。