女子シングルス決勝、3度目のマッチポイント。相手のリターンショットがベースラインを超えると田中李佳(スポ1=兵庫・相生学院)はわずかに表情をほころばせた。関東学生新進選手権(新進)最終日。早大からは男子シングルスの藤井颯大(スポ2=京都・同志社国際)と女子シングルの田中李が決勝へと臨んだ。藤井颯は楠原悠介(法大)に対しストレート負けで優勝には届かず。一方で、田中李はファーストセット、セカンドセットともに接戦をものにし、大学初タイトルとなる新進優勝を果たした!
★藤井颯は楠原に完敗。栄冠にはあと一歩届かず
楠原に完敗を喫した藤井颯
前日の佐藤祥次(スポ3=大分舞鶴)との同士討ちをストレートで制し、決勝へと駒を進めた藤井颯。「優勝しか狙っていなかったので、絶対に勝つという気持ちで」。決勝では昨年の関東学生トーナメント(春関)ダブルス優勝などの実績を持つ法大の楠原と相対した。
ファーストセットは両者一歩も譲らぬラリー戦が続いた。2−3で迎えた第6ゲームに先にブレークを許した藤井颯だが、直後のゲームですぐさまブレークバックに成功。その後もセットを取り合う試合展開となるが、互いに2ブレークで迎えた第12ゲームに3度目のブレークを許し、5−7でファーストセットを献上してしまう。
拮抗(きっこう)した展開となったファーストセットを落としたことで相手に流れが傾いてしまったか。「ファーストセットを取られて、少し悪い流れというか、必要以上に攻めようという気持ちが出てしまったせいでミスが出てしまった」。楠原の強烈なサーブや得意とするネットプレーに翻弄(ほんろう)され、セカンドセット開始から3連続でゲームを奪われる。主導権を握られた藤井颯もその後は食らいつき、互いにキープ合戦となったが、勢いに乗る楠原の前にブレークを奪うことができず。ワンブレークアップでセカンドセットも落とし、惜しくも優勝を逃す結果となった。
あと一歩栄冠に届かなかった。それでも藤井颯は前を向く。「この悔しさを春関やインカレ(全日本学生選手権)でぶつけられるように」。昨年は関東学生リーグ戦、全日本大学対抗王座決定試合でシングルス全勝とブレークを果たした一方で、個人戦では満足のいく結果の残せなかった藤井颯。今大会の悔しさをバネに、今季はどこまで飛躍を遂げることができるか、期待がかかる。
★田中李がストレートで新進優勝!大学初タイトルをつかむ
田中李は最後まで攻めのテニスを貫いた
「大会を通して簡単な試合はありませんでした」。連日に渡る接戦をものにし、頂点にあと1勝まで上り詰めた田中李。決勝は昨年の関東大学リーグでストレート勝ちを収めた吉田明日香(明大)との再戦となった。
「1回当たっているということもあったので、相手のプレースタイルとかもわかっていて。とりあえず最初は落とさないように丁寧にいこうと思って。それでチャンスがあれば自分から行こうと思っていました」(田中李)。しかし、相手の正確なリターンにミスを誘発させられ、思うようにサービスゲームをキープできず。強風の影響もあり、ファーストセットはブレーク合戦の様相を呈した。均衡が破れたのは互いに全てのゲームをブレークし迎えた第10ゲーム。田中李は幾度となくデュースにもつれたこのゲームでキープに成功し、6−4でファーストセットをものにした。セカンドセットも取られては取り返す、シーソーゲームの展開となったが、第6ゲームに田中李が2度目のブレークに成功。直後のサービスゲームもしっかりとキープし、ストレート勝ちで栄冠をつかんでみせた。
「この1年かけて精神面的にも体力面的にも成長できていたので、この大会も優勝できたと思います」。今大会、タイブレークやファイナルセットにもつれたタフなゲームでも常に平常心で、自身の掲げる攻めのテニスを貫いた田中李。自身の成長を示してつかんだ今大会の優勝は、1年時から団体戦で起用されるなどその片鱗を見せてきた『新進気鋭』のブレークを予感させる。
(記事、林大貴 写真、石﨑開)
優勝した田中李(左)と2位入賞を果たした藤井颯
結果
男子シングルス
▽決勝
●藤井颯 5−7、6−4 楠原(法大)
女子シングルス
▽決勝
◯田中李 6−4、6−4 吉田(明大)
最終結果
男子シングルス
▽2位
藤井颯大
▽ベスト4
佐藤祥次
▽3回戦
古賀大貴副将(スポ3=大分舞鶴)
樋口廣太郎(スポ2=福岡・柳川)
▽2回戦
本多映好(社2=岩手)
名越大地(社1=兵庫・相生学院)
武藤洸希(スポ1=東京・大成)
▽1回戦
堀凌輔(スポ2=福岡・柳川)
男子ダブルス
▽ベスト8
佐藤祥次・本多映好組
▽2回戦
小林雅哉(スポ3=千葉・東京学館浦安)・樋口廣太郎組
▽1回戦
髙村佑樹主将(スポ4=千葉・東京学館浦安)・名越大地組
藤井颯大・武藤洸希組
女子シングルス
▽優勝
田中李佳
▽3回戦
今村南(社3=大阪・城南学園)
松本妃那(スポ1=福岡・柳川)
▽2回戦
山田菜津子(文構2=石川・大聖寺)
▽1回戦
大石真珠美主将(文3=東京・早実)
下地奈緒副将(社2=沖縄尚学)
米原さくら(スポ2=埼玉・秀明英光)
女子ダブルス
▽2回戦
山田菜津子・田中李佳組
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コメント
藤井颯大(スポ2=京都・同志社国際)
――決勝戦、どのような気持ちで臨みましたか
この大会は優勝しか狙っていなかったので、絶対に勝つという気持ちで挑みました。
――風がとても強かったですが、気になりましたか
気になりましたね。試合前の練習とかはほとんどラリーが続かない状態だったので、どう戦ったらいいのか分からない状態になってしまいました。
――サーブやネットプレーで苦戦しているように見えました
サーブの強化はもちろんなのですが、ネット(プレー)でもポイントを取れるように練習していかなければと思いました。
――試合中、気持ちが切れてしまったことはありましたか
ファースト(セット)取られて、少し悪い流れというか、必要以上に攻めようという気持ちが出てしまったせいでミスが出てしまったと思います。
――男子シングルス2位という結果をどのように捉えていますか
もちろん優勝はしたかったんですけれども、大事な大会は春関(関東学生トーナメント)とインカレ(全日本学生選手権)になるので、そこでしっかり勝てるようにするための準備大会という意味もあると思うので、この悔しさを春関やインカレでぶつけられるように頑張りたいです。
――改めて今大会を振り返ってみていかがでしたか
1つの大会を戦い抜く大変さを実感した部分がありました。競った試合になってしまうと、次の日の試合への負荷になってしまうと実感しました。
――体力的な部分で苦労したと
はい、そうですね。7日間くらい戦い続けるので、余力を持って次の試合に挑めるように、スッと勝ち上がっていかなければいけないと思いました。
――今後に向けての意気込みをお願いします
インカレで(ベスト)4に入りたいと思います。
田中李佳(スポ1=兵庫・相生学院)
――優勝おめでとうございます
ありがとうございます!
――今の率直な気持ちとしてはいかがですか
コーチの方々にも「最低目標は優勝」って言われていたので、優勝しなきゃいけないなっていうプレッシャーは多少なりとも自分の中にあったので、素直に今ホッとしている部分が大きいです。
――きょうの決勝はどういった気持ちで臨みましたか
1回当たっているということもあったので、相手のプレースタイルとかもわかっていて。ラリーが長くなる相手だということや、きょうは風が強かったりもしたので、とりあえず最初は落とさないように丁寧にいこうと思って。それでチャンスがあれば自分から行こうかなと思っていました。
――きょうは風が強いコンディションの中での試合でしたが影響はありませんでしたか
風が本当に嫌いで(笑)。試合前に先輩たちに「風とお友だちになれば大丈夫だよ」と言われていたので、風とお友だちになりました(笑)。
――ファーストセットはブレーク合戦となりましたが、どういった意識でプレーしていましたか
きょうはあまりお互いサーブが安定していなくて、いつもより遅いサーブになっていたので、リターンの方が攻撃しやすい展開にはなっていました。そういう展開でもブレークはできていたのでよかったかなと思います
――マッチポイントの場面では少し固さも見られましたが振り返っていかがですか
5−3でも5−4でも1回ずつあって、3本目で決まったんですけど、(落とした)両方のマッチポイントも自分から打てなくて相手に仕掛けられる部分もあったので。3本目は自分からしっかりと仕掛けて行こうと決めて、相手のリターンミスに助けられた部分もあったのでよかったです。
――あまり試合で緊張することはないとおっしゃっていましたが、実際緊張はありませんでしたか
試合前は全然大丈夫で、試合中も緊張はしなかったんですけど、マッチポイントの時は「あ、優勝できるかも」みたいな感じで少し雑念が入ってしまいましたね(笑)。
――今大会全体を総括していかがですか
1回戦からどの試合も簡単な試合はなくて、フルセットだったりタイブレークだったりとメンタル的にも体力的にもタフな試合が多かったんですけど、この1年かけて精神面的にも体力面的にも成長できていたので、この大会も優勝できたと思います。
――今回の優勝で非常にいいスタートが切れました。今年はどんな1年にしていきたいですか
去年は個人戦で成績が残せなかったんですけど、団体戦にも出させてもらって、チームに貢献できた部分が大きかったと思うので。今年は個人戦でも結果を出してもっと自分をアピールできればいいかなと思いますし、団体戦もメンバーに入れるように頑張っていきたいと思います。