大会3日目を迎えた全日本大学対抗王座決定試合(王座)。早大は準決勝で関西第一代表の関大と対戦した。関大は4月の対抗戦で敗れた因縁の相手。リベンジに燃える早大であったが、ダブルスで1-2とリードを許す苦しい展開に。しかし、シングルスで5-1と巻き返し、結果として6-3で勝利。リベンジを果たし、決勝進出を果たした。
ダブルスで先勝し勢いをつけたい早大であったが、苦しい立ち上がりとなった。積極的に前に出てくる関大ペア相手になかなかペースをつかめず、競り合う展開となる。立ち向かってくる相手に押され、3組とも第1セットを落とすという波乱の展開に。チームに嫌な雰囲気が漂い始めた。ダブルス1、2ともに第1セットの悪い流れを断ち切れずストレートで敗戦。上級生ペアがチームに流れをもたらすことはできなかった。隣のコートに立っていた齋藤聖真(スポ2=神奈川・湘南工大付)・髙村佑樹(スポ1=千葉・東京学館浦安)組もチームの状況を感じ取っていた。「ここで自分が弱気になるわけにはいかない」(齋藤)、「絶対僕らが勝ってやる」(髙村)とここから下級生ペアが奮起する。第2セット途中からベンチに入った渡辺隼ヘッドコーチ(平19スポ卒=静岡・庵原)の「二人で!」の声もペアを後押しした。「無駄なミスが減り、それまで静かだったペアが声を出し始めた」(髙村)と振り返るように、徐々に調子を上げ、6-3で第2セットを奪う。終盤は観客とチームの視線を一身に受ける緊張感の中、齋藤のフォアハンド、高村のボレーがさえ渡り、最終セットは6-4。齋藤・高村組がまさに「2人で」チームに貴重な1勝をもたらした。
ダブルスで貴重な一勝をチームにもたらした齋藤・髙村組
1-2とリードを許して迎えたシングルスで、早大は関大を勢いに乗らせなかった。はじめにコートに入った松崎勇太郎副将(スポ4=神奈川・湘南工大付)、巽寛人(スポ4=福岡・柳川)、古田伊蕗(スポ2=静岡・浜松市立)の三名共に気迫のこもったプレーを展開する。小堀主将ら4年生は「彼らがしっかりやってくれれば絶対に勝てる」と信じ、ベンチに入り声をかけ続けた。それに応えるように、選手たちは自ら声を出して自分を奮い立たせ、コートを走り回り、泥臭くポイントを重ねていく。3人とも接戦を制し、チームを勢いづける活躍を見せた。ここでシングルス1に登場したのはワセダが誇るエース、小林雅哉(スポ1=千葉・東京学館浦安)。「自信を持ってプレーできていた」(小林雅)と、関西屈指の実力者、竹元佑亮(関大)相手に圧巻のプレーを披露。6-2、6-3のストレート勝ちで早大の勝利を決めた。島袋将(スポ1=三重・四日市工)はストレートで敗れたものの、坂井勇仁(スポ2=大阪・清風)はダブルスでは敗れた相手にフルセットの激闘の末、勝利。シングルスで5-1とし、計6-3で決勝へと駒を進めた。
エースとして圧巻のプレーを披露した小林雅
関大相手に春の借りを返すことに成功したものの、ダブルスで負け越すなど課題の残る結果となった。決勝で待ち受けるは明大。リーグでは辛くも勝利を収めたが、簡単に勝てる相手ではないだろう。「泣いても笑ってもこのチームで戦えるのは1試合しかない。チームを信じて自分を信じて全員でやっていくしかない」(小堀)。チームとしての集大成、決勝で有終の美を飾れるか。前人未到の12連覇へ、さあ、舞台は整った。
(記事 松澤勇人、写真 佐藤亜利紗)
結果
○早大6-3関大
ダブルス1
●小堀良太・松崎勇太郎6-7(4)、1-6染谷和隆・林大貴(ともに関大)
ダブルス2
●河野優平・坂井勇仁5-7、6-7(4)中村侑平・矢多弘樹(ともに関大)
ダブルス3
○齋藤聖真・髙村佑樹4-6、6-3、6-4島田達也・高村烈司(ともに関大)
シングルス1
○小林雅哉6-2、6-3竹元佑亮(関大)
シングルス2
●島袋将6-7(7)、2-6染谷
シングルス3
○坂井6-4、4-6、6-4中村
シングルス4
○松崎7-6(5)、6-3加藤隆聖(関大)
シングルス5
○巽寛人6-3、6-4矢多
シングルス6
○古田伊蕗1-6、6-2、6-2林
コメント
小堀良太主将(スポ4=東京・大成)
――今春の対抗戦で敗れていた関大との試合でしたが、まずはどのような気持ちで臨まれましたか
借りを返すというか、新体制となって最初の試合で負けた相手だったので、対戦したかった相手と王座(全日本大学対抗王座決定試合)で戦えたというのは良かったかなと。関西遠征で(対抗戦に)行っていたメンバーと、行っていなかったメンバー全員が関大との試合を楽しみにしていました。もちろん勝つために、借りを返さなきゃいけないという思いもあったのですが、選手とサポートが一丸となった結果、こうやって勝ちをもぎ取れたのかなと思います。
――ダブルスは苦しい展開が続きましたが、振り返って
3試合共、ファーストセットダウンという展開で。最後に齋藤(聖真、スポ2=神奈川・湘南工大付)・髙村(佑樹、スポ1=千葉・東京学館浦安)が取ってくれたのですが、正直きつい時間帯でしたね。というのも僕を含め上級生か下級生に頼りがちなチームで、ダブルスでも上級生が取れない中で、(上級生が)勝ちをもぎ取ってチームにいい影響を与えるべきところで貢献できていなくて。選手として出ている以上、勝ち星を挙げなければいけないのですが、今までの練習や準備期間が甘かったのかなと思う部分もあります。かといって、別に甘えていたわけでもないのですが、本番で自分のプレーができていなかった結果、(ダブルス)1、2が落としてしまったのかなと思います。
――関大はやはり挑戦者として立ち向かってきていましたが、印象としてはいかがですか
ストロークも通っていて、サーブも入っていて。最初は(向こうも)緊張していて僕らが先にブレークしたり、逆にブレークされたり、というゲームでした。苦しい展開の中でファーストセットを取られて(相手を)勢いに乗らせてしまって、自分たちのプレーが消極的になったり、ミスが出てしまったりで。受け身になっていたわけではないですが、気持ちをぶつけてもっと自分たちから積極的にいかなければいけないなと。相手というより自分たちがやってきていれば勝てたのかなと思います。やっていなかったわけではないですし、難しいのですが。もやもや感がありますね。
――シングルスで5-1と巻き返しましたが、どのように試合を振り返りますか
結果を見てみれば何とか巻き返して勝ったことにはなるんですが、0-2スタートから一気に4試合取れたのは本当に良かったですね。もちろん上に下級生が控えていた分、下でしっかり勝負をつけたかったというのはあるので。ダブルスでリードしなければいけないところで、シングルスの支えによってこうやって勝ちにつながったので、プラスに考えるとあすにつながるのではないかなと思います。シングルスの人たちはみんな本当に良く頑張ってくれたと思います。
――苦しい展開となった場面で4年生がベンチコーチに入っていましたが、どのような言葉をかけられていましたか
僕は坂井(勇仁、スポ2=大阪・清風)と古田(伊蕗、スポ2=静岡・浜松市立)のベンチコーチに入って、気づいたことをとにかく言っていて、これだけを言っておこうというのは特になくて。彼らがしっかりやってくれれば絶対に勝てると思っていたので、いつものパフォーマンスを試合でもしっかり出せるように声をかけていましたね。
――あすはいよいよ決勝戦でもあり、明大との一戦となりますがどのような戦い方をしていきたいですか
リーグ(関東大学リーグ)では僕らが優勝というかたちで終わったのですが、それは輝かしいものではなくて、悔しいといったマイナスのイメージから始まるものだったので。その中でもう一度王座という舞台で、明大と当たることができるのは良かったなと思います。きょうこれだけ苦しい試合をやったので、もう怖いものはないですし、それ以上にきつい練習を朝から晩までずっとやってきました。このチームの集大成として、最後泣いても笑ってもこのチームで戦えるのは1試合しかないので。明大が相手だとか関係なく、チームを信じて自分を信じて全員でやっていくしかないですね。
齋藤聖真(スポ2=神奈川・湘南工大付)・髙村佑樹(スポ1=千葉・東京学館浦安)
――関大戦にはどのような意気込みで臨まれましたか
髙村春の対抗戦と同じペアと当たるので、前回は団体としては負けてしまったのですが、今回はチームに勢いを与えられるような勝ち方をしたいと思ってのぞみました。
――第1セットは競る展開の中で落としだと思いますが
高村相手に決められたというよりは、僕らのミスが目立って取られてしまったゲームだったので、まず僕らが今できることを話し合って、それを忠実にまずはやっていこうと話しました。
――隣のコートでも苦戦を強いられているのはわかりましたか
高村隣のコートのスコアは見れていて、第1セットを落としたのは分かっていました。僕はダブルス1を落としたのは試合終わってから知って、もしわかってたら自分たちのプレーも違っていたのかな、と思います。でも下手にプレッシャーを感じることなく、絶対僕らが勝ってやると思ってプレーしました。
齋藤1コートで関大の選手がポイントを取って声をあげて握手をしに行ったので、(ダブルス1は)落としてしまったんだな、とわかりました。0-2なので、勝たないとまずいとは思いましたが、ここで自分が弱気になるわけにはいかないと思って、シングルスを少しでも楽にするためにダブルスを1つ取ろうという気持ちでプレーしました。
――第2セット途中から渡辺隼ヘッドコーチ(平19スポ卒=静岡・庵原)の「2人で!」という声かけが印象的でした
高村1人でストロークで攻めてミスをしてしまった場面があったので、声をかけられたんだと思います。2人で考えながら攻めたほうが楽だと思うので。それからは無駄なミスが減り、それまで静かだったペアが声を出し始めました。
齋藤僕らはミスをしたり苦しい状況の時ほどペア間のコミュニケーション不足になりがちなので、そこをアドバイスのおかげで支え合いながら、声を掛け合いながらプレーもできたのは良かったと思います。
――第3セットは観客やチームメートの視線が集まる中での試合となりましたが、緊張はありましたか
高村普段本当に緊張している時は震えたりするんですけど、今回はそれもなく良い意味で緊張感を楽しめたんじゃないかなと思います。
齋藤体が硬くなってるのは感じましたが、ここで決めないとという気持ちで踏ん張りました。
――終盤はフォアハンド、ボレーが2人ともさえている印象でしたが
高村緊張感の中で、集中してプレーできていたと思います。
齋藤全然覚えてないですね(笑)。ありがとうございます。
――ダブルスを1-2で終えたことについては
齋藤シングルスにつなぐという意味でも、1本でも取れたのは良かったんじゃないかなと思います。
高村0-3と1-2とでは全く違うので、僕らの役割であるダブルス3を確実に取るというのは全うできたと思います。
――あすの明大戦への意気込みをお願いします
齋藤僕らは下級生が多いチームですけど、試合に出れば学年は関係ないので、チーム一丸となって優勝したいと思います。若さを出して頑張ります。
高村王座(全日本大学対抗王座決定試合)初出場の選手も多いですが、緊張せずにいつも通りのプレーをして明大を倒したいと思います。
小林雅哉(スポ1=千葉・東京学館浦安)
――きょうは関大との一戦となりましたが、どのような気持ちで臨まれましたか
4月のはじめに早関戦があって、関西の方まで行きました。悔しい負けだったのですが、きょうはそのリベンジができたのかなと。僕も早関戦でシングルス1として出させていただいて、相手もきょうと同じだったのですが、初めての団体戦ということもあって、すごく緊張もしていて。自分のプレーができなかったというのが悔いとして残っていて、自分に(勝敗が)かかっていたというのも初めての経験だったので。いい経験だったとは思うのですが、勝ちに導けなかったというのが悔しかったですね。今回リベンジということで同じ相手に勝てたというのは僕としてもうれしかったです。チームとしてもしっかりと勝ち切れたというのは良かったのではないかなと思います。
――初めての王座(全日本大学対抗王座決定試合)になりますが、大会の雰囲気などはいかがですか
雰囲気としてはリーグ(関東大学リーグ)と少し違うなというのはありましたが、そこはあまり気にせず思い切ってやることだけを決めていたので、そこは良かったのかなと思いました。
――きょうはチームの勝利が決まっていない中での試合となりました
コートが移動する前までは3面続いていて、(他の選手の)スコアが見れる状態で。僕は一番端で試合をしていて、ファーストセットが終わった直後にシングルス2、3のスコアを見てしまって、ちょっとこれは危ないのかなというのを感じてしまいました。島袋(将、スポ1=三重・四日市工)もファーストセットでタイブレークをやっていて、落としてしまって。シングルス3の坂井さん(勇仁、スポ2=大阪・清風)もファーストを取っていたのですが、セカンドで3-5になってしまっているのを見てしまって。コートを移動してからはスコアがあまり見えなかったので、そこは良かったというか自分の試合に集中できたのかなと思います。
――調子はいかがですか
僕自身インカレ(全日本学生選手権)で優勝してから、自分のプレーに自信が持てるようになってきていて、今大会でも自信を持ってプレーできていて。相手も相手でどう思ってたか分からないですけど、良かったかなと思います。
――試合内容は振り返ってみていかがですか
セカンドセットは1-3でリードされてしまったのですが、そこはしっかり集中できて。緊張ではないですが、我慢強くできたのが良かったかなと思います。
――あすはいよいよ決勝の明大戦ですが、意気込みをお聞かせください
相手も決まってますし、今のところは(対戦成績としては)勝ち越しという感じで。本番はもうあしたなので、やるだけですね。自分のプレーを最後まで貫き通せればいいかなと思います。