【連載】王座直前特集『全てはこの日のために』 第6回 辻恵子副将×金井綾香

庭球男子

 関東大学リーグ(リーグ)で全勝優勝を果たし、王座に向け現在波に乗っている女子部。そのリーグの勝利に尽力したのはシングルス4、5に出場し全勝を挙げた辻恵子副将(教4=東京・早実)と金井綾香(社3=東京・早実)だ。2年からのレギュラー出場、同じく早実高出身と境遇が似ている二人はダブルスパートナーとしても互いに高め合ってきた。さまざまな戦況をくぐり抜けてきた二人は集大成となる王座にどのような思いを懸けるのか。一年間の振り返りと共に日本一への意気込みを伺った。

※この取材は9月24日に行われたものです。

「林と戦えてよかった」(辻恵)

最後のインカレでは単複ともに林女子主将と対戦した辻恵

――春からの個人戦を振り返って

辻恵 春関(関東学生トーナメント)はベスト16で、ダブルスも慶大に負けてしまいました。自分的には不甲斐ない結果だったと思います。そこからインカレ(全日本学生選手権)を迎えて自分の調子は良かったんですけど単複共に林(恵里奈女子主将、スポ4=福井・仁愛女)に負けてしまいました。悔しかったんですけど最後の個人戦で内容的にはいい試合ができたので良かったかなと思います。リーグは4戦全勝で、いままでリーグで必ず負けてしまっていたので全勝ができた点が良かったです。

金井 春関、インカレどちらも優勝を目指してやってきましたが、それがかなうことはなかったです。インカレのシングルスは残念な結果でしたが、早慶戦(早慶対抗試合)で負けた向井マリア(慶大)にちゃんと勝つことができて自分の成長を感じています。いま夏関(関東学生選手権)の最中ですが、自分はシングルスでベスト4に入っていてまだ優勝の可能性が残っているので、結果的にも状態的にも良いですし、夏関で優勝して王座にいい流れで向かっていきたいですね。

――辻選手はインカレの最終戦はどちらも同士打ちでした。振り返ってみていかがですか

辻恵 林と外の大会で当たるのは1年生のインカレのベスト16で当たる以来だったので楽しみでもありました。当たって対戦している時もやはり同期には勝ちたいという思いがあったので、気合を入れてはいたんですけど実力的に届かなかったかなと思います。

――収穫としてはどういったことが挙げられますか

辻恵 春関で負けてしまった試合から弱点を克服することができたり、気持ちの面でも諦めないというか、攻守の駆け引きが良くなってきたりというのはあります。早慶戦後から、練習してきたことがしっかり出せたかなと思います。

――春関の時に出ていた弱点とはなんだったのですか

辻恵 その時はサーブと、あとこれはいつもなんですけど強く打つことが苦手でした。でもあのインカレの時は自分の中でかなり強く打てたので、試合の中で挑戦することができたかなと思います。

――金井選手はインカレを振り返っていかがですか

金井 シングルスはさっき言った向井と当たるということで、早慶戦で負けたという印象が強くて。その気持ちで入ってしまってファーストセット取られてセカンドセットも4-5という負ける寸前までいったんですけど、仲間の応援だとかそういった周りのサポートも力にして取り返すことができました。そこで挽回できたことは成長だなと思ったんですけど、次の加治さん(遥、園田女大)との試合はインドアということもあって速い展開の試合内容で。分かってはいたんですけどそこで相手のペースについていけなくなってしまいました。残念というかもっと自分はできてのではないかと思いましたし、去年と同じベスト16という結果になってしまって悔しかったですね。

――ダブルスに関してはいかがでしょうか

辻恵 林・上(唯希、スポ2=兵庫・園田学園)とやる前の試合が小林夏実・押野紗穂組(ともに慶大)との試合で結構遅くまでかかってしまったんですけど、その試合がすごく私たち二人とも良くて。

金井 本当に良かったですよね(笑)。過去で1番でした。

辻恵 ね、本当にビックリするくらい良くて(笑)。二人で、「あしたはいけるね!」と話をしていたんですけど。

金井 本当に勝ちたかったですよね。

辻恵 やはり普段団体戦でも林・上は出ていますし、経験の差や、ゲームメイクの部分で差が出てしまったかなと思います。かなり自分たちでは自信を持って臨めたんですけど、結果につながらなかったなという感じです。

金井 言う通りなんですけど、その前日の試合がすごく良くて二人で「絶対明あしたは勝とうね」って言っていました。最初は良くて、3-1の40-15までいっていてそこのゲームを取れていればという感じだったんですけど、そこで取れずに流れをうまくつかめなかったです。2人でムキになってしまった部分もあって気づいたら11ゲーム連取されていて(笑)。冷静になりきれていない部分もありましたし、相手のダブルススキルが高かったなあと試合が終わってから冷静になった頭で思いました。

――1ゲーム取り返した場面はどのように切り替えられましたか

金井 もうあんまり思い出せませんね。

辻恵 とにかく気合いという感じでした。粘って、ロブでしのいで。私は個人戦として最後の試合だったので「これで終わりたくない!」という意地で1ゲーム挽回したという感じでしたね(笑)。

――辻選手にとっては最後のインカレということでしたが、改めて4年目のインカレを振り返っていかがでしょうか

辻恵 調子としてもすごく良かったですし、優勝も狙っていましたが早いところで林に負けてしまいました。林が優勝してくれたので、優勝した人と戦って試合ができたというのは良かったと思います。でも悔しかったですね。

――そういった年に辻選手と組まれたことはいかがですか

金井 あんまり最初は意識してなかったんですけど終わってみてから最後だったんだなと寂しくなる部分がありましたね。(辻恵選手が)試合に負けて、ベンチで一人たそがれていて。

辻恵 たそがれてないよ!(笑)

金井 そうですか?(笑)。でもそういった姿を見て申し訳ないと思いました。やはり最後だったので、勝ちたかったなって。

「4年生に甘えていられない」(金井)

3年生になりチームの核としての自覚が生まれた金井

――新チーム発足してからここまでの戦いぶりを振り返って

辻恵 昨年のリーグで慶大に負けて危機感があったまま王座に入りました。そのままの危機感がしばらく続いていて、練習の集中力やチームの緊張感が冬もずっと続いていて、良い意味で厳しい気持ちをもって新チームに入れました。負けた時の怖さというか、あれを2度と味わいたくないという気持ちはみんな味わったと思うので。そういった部分もあって、ことしのリーグは取られても一本しか落とさなかったという結果につながりました。

金井 去年のリーグで負けてしまって、それまでワセダはずっと負けたことはなかったですし、去年の敗北があったからこそ「ワセダが勝つ保証はどこにもないんだ」ということを確認できたと思います。ことしのリーグにもその危機感がもちろんいい意味で残っていました。けど今はリーグですごく良い勝ち方をした分、気の緩みだとかが王座に出てくる可能性も考えられるので、今一度気を引き締め直していこうという話はリーグ後にみんなで話し合いましたね。

――やはり昨年の慶大戦の敗戦がチームとしてはターニングポイントだったのですか

辻恵 そうですね、負けたことでいい意味でチームが1つになることができましたし、金井が言った通り私たちが勝つ保証はどこにもないということを改めて意識することができました。対抗戦とか、リーグ本番でもあの試合があったからこそみんなが思いをかけて戦うことができたのかなと思います。

――チーム内での変化はありますか

金井 最初の方はこういった戦い方をしている選手はまずいのではないかという人がいても言えなかったんですけど、リーグが近づくにつれてこのままではダメだという意見が出てきました。個人的にも結構言うことがありましたね。

辻恵 勝つためには言いにくいことでも言わなければとは思っていますね。自分が違うのではないかと思ったことをそのままにしておいてはいけないなと。

金井 自分も上級生なので(笑)。去年は自分が好きなようにしていたんですけど、3年生になってからは4年生が就職活動で自分たちの代が1番主体的になってやらなくてはならない時間もありました。頼まれることも多くなって、自分は上級生なんだなという自覚は生まれました。

辻恵 3年生はチームのことをすごく考えてくれているなというのが伝わってきます。昨年度に比べて、ミーティングとかでも発言してくれますし、自己分析などもするんですけどしっかりそういった場面でも動いてくれていて。力を発揮してくれているなと思います。

――辻選手自身は副将として変わられた部分はありますか

辻恵 人のことを気にかけるようにはなりました。例えば練習中にケガから復帰してきつそうな子や体調悪そうな子には声かけるようになりましたし、チーフの雰囲気にも敏感になりました。周りに気を配るというか、今どうなのかなと思うことが多くなって、自分のことよりもチームのことを思う時間の方が多くなったという点で変わったかなと思います。

――副将をやってきて大変だったことはなんでしょうか

辻恵 うーん…。

金井 いつも大変ですよね(笑)。

辻恵 そうなんです(笑)。同期でも意見が割れることがあるんですけど、そういった中でも次の日一緒に練習しなきゃいけないのでやはりチームをまとめるのは大変です。でもみんながチームを良くしようと思っての発言だったり行動だったりというのは私もわかっているので良いことなのかなとも思いますね。

――お二人の互いの印象をお願いします

辻恵 高校の時の金井はわがままだなという印象があったんですけど(笑)。ここ1、2年くらいですごく大人になったなと感じます。

――わがままというのはどういったエピソードからの印象でしょうか

辻恵 敬語が使えないとか…。あ、今もか(笑)。

金井 そこですか?(笑)

辻恵 なんでしょう、甘え上手で子どもっぽかったんですかね?3年生はみんな基本的にみんな子どもっぽくて自由人が多いんですけどね(笑)

――やはり高校時代からの仲の良さが伝わってきます

金井 はい、本当に慕っています(笑)

――ダブルスパートナーとしての印象はいかがですか

辻恵 以前は一回インカレインドア(全日本学生選手権)で組んで、当時は私もケガで本調子ではないというのもあったと思うんですけど二人ともかみ合ってなかったですね。お互い実力出せずという感じでした。二人とも団体戦で最初から出ていたわけではなくて、2年生から出始めて一本として使ってもらえるようになって。

金井 そうですよね、立場というか境遇が似ているから話しやすいですし、距離感は近いですね(笑)。

――金井選手からみた辻選手の印象はいかがですか

金井 テニス面では本当に高校の時から尊敬していて。

辻恵 えっ、そうなの?(笑)。

金井 そうですよ!高校の団体戦の時すごくて!私が経験した中で一回どこかで負けたくらいでそれ以外は辻さんが負けているところ見たことがなくて。それは大学入学してからも一緒で。去年の春の早慶戦で相手が小林さんでもしっかり勝っていて、そういうのが本当にすごいなと思います。

――コート外での印象はいかがですか

金井 節約家です(笑)。

辻恵 趣味が貯金なんです(笑)。

金井 なんかケチですよね?(笑)

一同 (笑)

辻恵 他の人はみんな一緒にご飯とか行くんですけど、私が実家通いなので早めに誘ってくれないと私は母がせっかく作ってくれているので(笑)。だから食べにおいでって言ってます。

金井 だから一回、辻さんのお母さんにお弁当を作ってもらったことがあって。ポテトサラダがとてもおいしかったです(笑)。

――各学年の雰囲気はいかがですか

金井 4年生は静かですよね。

辻恵 そうだね、3年生がすごくうるさいというか
元気いっぱいです。4年生は個々でという感じで、みんな一人一人自分の世界観を大切にしている子たちなので(笑)。3年生がみんなで遊んでいるのを見て微笑ましいですね。

金井 3年生はすごく仲良いですね。1年生の時から同期会とかやっていて、最近は春にやったんですけど、毎回次のチーフを決めるんです!その子が次は幹事として動くみたいな(笑)。人数が多いので来れない子もいるんですけど、誰が誰と集まっても基本的にうるさいし、仲がいいですね。

――どういったことをされるんですか

金井 カラオケが多いですね。同じ曲を人数分入れて、点数を競うんです。

――金井選手は歌うのが得意なんですか

金井 すごく上手です!

辻恵 うそうそ、音痴なんです(笑)。本物の音痴です(笑)

金井 本当は崖の上のポニョで50点台くらいで(笑)。出だしが難しいですよね、歌って(笑)。

――林主将の印象を教えてください

金井 テニスが上手ですよね。

辻恵 うまいのでインカレでも二冠で主将としてかなり頼りになりますね。リーグは2敗してしまったのですが、それでもやはり強いので何よりもテニスでチームを率いてくれているなという印象です。

金井 一個上ということで、1年生の頃からよく怒られていました。楽しくなっちゃってつい敬語が使えなくて(笑)。よく怒られたのを思い出します。そういった細かいところまで見てくれます。

――ことしのスローガンが『変革』と『自覚』ですが、個人的に変革した、もしくは自覚したエピソードはありますか

辻恵 チームのことになってしまうんですけど、今までは1年生の雑用の仕事がすごく多くて。それを今年は見直して、早く帰らせる努力をしたり、仕事分担を学年関係なくできるところは回したりしました。全員がテニスに集中をできるように、王座を取るのに全員が尽力できる環境づくりというのを今でも試行錯誤しながら変えていっています。変えたことで、去年に比べて個人戦で勝ち上がる選手が下級生でも増えてきて全体のレベルが上がってきたかなと思います。

――自覚に関してはいかがですか

辻恵 10連覇しているということで、庭球部でない人でも私たちのことを知ってくれていたり、他大の選手からの注目も年々高くなってきていますし、OB・OGの先輩方もすごく協力的にしてくれています。そういった方々に恥じないようにあるべき姿で行動しなければいけないなと思います。

――金井選手はいかがですか

金井 変革に関しては、私は2月にオーストラリアの試合に行かせていただいたんですけど、そこで感じたのは何事も経験だということです。オーストラリアから帰ってきた時に、言葉の壁とかで苦労した分こっちではできる環境に感謝してアグレッシブになりました。

――オーストラリアでつらい経験も多かったのですか

金井 つらいというかわたしのへなちょこエピソードなんですけど、タクシーでホテルの部屋番号を聞かれた時にわたしは乗る人数を聞かれた時に思って、4人って答えたんですよ。それをすごい笑われて。失敗は誰にでもあるし、何事も経験だなと捉えています(笑)。結構人見知りやシャイな部分が自分にはあるんですけど、少し変わったかなと思います。

辻恵 結構意見を言ってくれるようになりましたね。練習メニューについて言ってくれたり、優柔不断な部分が少なくなったなと思います。あと国際大会に出たことも変わった要因かなと。

金井 国際大会で強い人も多いので、練習相手を見つけることも大変で。最初は話しかけるのもままならなくて、でも行かないと何も始まらないし断られたら断られたでいいや!と挑戦するようになりました。いい意味で度胸が付いたかなと思います。

――自覚に関してはいかがですか

金井 やはり上級生としての自覚はつきましたね。あと20日で引退されるのでそしたら私たちが最上級生ですし。4年生に甘えてられないなって思っています。

――リーグ全体を振り返っていかがですか

辻恵 全てダブルスが2-0で勝ってくれて、私たちシングルス4、5で戦う選手にとってはすごく戦いやすかったです。去年、一昨年は1-1で何とか一本取ってシングルスにつなげようというスタンスでした。ことしは冬にだいぶダブルスの練習を重ねた成果が出ていて、安定感がすごくあってありがたいです。1-1だとやはりシングルス4、5の選手が勝たなければつながらないというプレッシャーがすごいので。2-0だと、もう私たち2本で決めてしまおうくらいの強い気持ちで戦うことができますね。ことしは一番戦いやすさとして気持ちの部分が違ったなと思います。

金井 去年のリーグ戦の早慶戦でわたしには0-2で回ってきたんですけど、その時はもう頭が真っ白になってしまいました。何も考えられない状態というのを経験しているので、逆にことしはこちらが2-0ということで相手が去年の私の立場ですよね。自分が経験した思いというのを思い返したら強気でプレーできます。

――お二人とも4戦全勝でしたね

辻恵 ことしの目標が、自分の中でリーグ全勝だったのでそれを達成することができてよかったと思います。やはり4年の意地というか必ず自分が一本取ってくるという思いが強かったです。最終戦や専大との試合は7-6、7-6の試合でしたし、競った場面でも応援の力を借りてしっかり自分の力に変えて戦うことができてよかったと思います。

――辻選手は長い試合でも勝ち切る場面が多く見られました

辻恵 体力には自信があるので、何とか長期戦に持ち込もうという一心で。相手が疲れてくれたりするので、ラッキーと思いながらやっています(笑)。個人戦の時と意識的には戦い方を変えていて、個人戦では打っていくタイプなんですけど、やはり団体戦になると1ポイントの重みというか自分だけのポイントではなくなって、みんなの思いとかも背負うので大事にやってしまいます。確実に決められるチャンスは決めにいって、そのチャンスまでひたすらに粘って待つというプレースタイルですね。

金井 そうすると相手が結構疲れてきたり、待てなくなってミスしますよね(笑)。

辻恵 ラリーが続くと、長いラリーに慣れていない人はミスしてくれます。

――金井選手はご自身の試合を振り返っていかがですか

金井 早慶戦で去年のリーグも負けて、春も負けて早慶戦で勝ったことがなくて。他の大学との試合はやはり、隙があるというか意識の面でも取り組みの面でもワセダが勝っていますし、しっかり勝ちきることが目標で達成できました。でも自分自身慶大戦では一勝もできていない分、プレッシャーもありますし、強い選手も多くてシングルス4や5でも油断できなかったです。案の定、私の相手もインカレでベスト4に入る強い相手でした。でもさっき言った通り相手からしたら0-2スタートということで緊張しているのがわかって、しかもその相手は初めての早慶戦ということもあって私の方が経験は上でしたし、強気でプレーすることができました。早慶戦で勝てたあの試合は、私の経験にもなりましたし、この先も早慶戦で勝てるような選手になりたいと思いました。

――筑波大もまた王座出場を決めましたが、チームとしての印象はありますか

辻恵 すごく実力主義のチームだなとは思います。学年は関係なく、強い人を出すという感じで。でもその通り、すごく戦力は揃っている大学なので王座といった本数が減った試合ではその方が有利だなということも感じますね。

金井 シングルスの上2本がすごく強くて。リーグでは6-0で勝てましたが、それはワセダのチーム力で勝てたという印象があります。ダブルスについてもインカレ2位のペアがいますが、ワセダの応援の力、準備の力などみんなの力が合わさっての2-0でした。その2-0で波に乗ってシングルスも4本取れたのでチーム力では私たちの方が上だなという自信があります。でも王座は5本ということで、上2本が強い筑波大はもっとリーグよりも強敵になる気はします。

――やはり王座では本数が減る分戦い方なども変わってきますか

辻恵 そうですね、やはりダブルスの重要度がさらに上がってきますし、一本の重さが増すので出る人はものすごいプレッシャーの中で戦うことになります。

――その他の大学の印象はいかがでしょうか

辻恵 年々力が拮抗(きっこう)しているのは感じていて、筑波大もそんなに今まで怖いと思ったことはなくて。新勢力の1、2年生が各大学に分かれたという印象があるので毎年大変ですし、これからも苦しい戦いが続くと思いますがチーム力で勝ち切りたいです。

金井 リーグ戦で感じたのは、他の大学もかなりストローク力とかが上がっていたのでワセダももっと頑張らなくてはと感じました。

――力が拮抗(きっこう)している中でもワセダが勝ち切れた理由は何でしょうか

辻恵 やはりチーム力はリーグの6校の中では一番だと思います。試合に出る人が応援の人に感じている感謝だとか、逆に応援の人が試合に出る人に向ける思いだとかはどの大学よりも強い自信はあります。王座に向けて、さらにサポートと試合に出る人のつながりを上げていければ優勝できるのではないかなと思います。

金井 やはりダブルスが強かったのはことしの良かったところですね。全部2-0にできたのがシングルスでも思い切ったプレーにつながりました。あとは分析だとか、試合の中だけでなくその試合に向けての準備が他大とは違うので。ハードなスケジュールで他の大学は疲れていてもワセダは普段の練習量から違うので、あまり疲労も感じることなくできたのが大きいです。取り組み方が一流という部分ですね。

――チーム力を高めている秘けつは何でしょうか

金井 全員が王座アベック11連覇という目標を見据えているからだと思います。全員が同じ方向を向ける目標があるのは大きいので。

辻恵 (連覇が)10となるといったいどこまで続くんだろうという先の見えない部分はありますが、私がいる間は連覇するワセダを見続けたいということがあります。そのために自分ができることなら何でもやりたいですね。

「私が残せるものはすべて残したい」(辻恵)

後輩に対する思い、先輩に対する思いが垣間見えた取材となった

――王座を間近に控えて現在のチーム状況はいかがですか

辻恵 夏関が長引いてしまっていて、全員で練習するという時間が少なくなってしまっています。あと20日しかないので夏関が終わってからみんなでしっかり練習して気持ちの面で王座アベック11連覇ということをしっかり統一してから王座に臨みたいです。

金井 私は今夏関に集中したいけどいつ始まるか分からない、でもチームとしては王座に集中したいという難しい状態です。主将からも危機感を持たなければいけないという話をされたばかりなので、本当に間近に迫っているんだなと改めて思いました。

辻恵 インドアがある学校がワセダと慶大だけなのでそういった環境はありがたいなと思います。

――間近に控えた心境はいかがでしょうか

辻恵 やはり最後の王座なので、あと20日で全てが終わってしまうんだなと思って1日1日を全力でやることだけを考えています。学年が1つ上がって自分が最上級生になってから急に危機感が湧いた部分もあったので、頑張りきれていない子も自分がいる間は頑張らせてあげたいなと。とりあえず自分が全力で取り組んで、王座に向けてというより後輩に向けて背中を見せたいと思っています。

金井 本当に時間がないなということは感じていて、あと20日で全てが決まってしまうと思うと寂しい気持ちもありますが、最後は絶対優勝したいという気持ちが一番ですね。連覇と言われていますが、このチームで日本一になるということをみんなの統一意識としてやっているので、そのためにいま一人一人やるべきことをやらなくてはと思います。本当に優勝したいです。

――王座とはお二人にとってどういったものですか

辻恵 王座を取るためだけにこの一年間やってきているので、毎年すごく過酷です。練習が終わらないこともあり、100本ダッシュだとかつらいものばかりなんですけど、でも勝った時の達成感とか喜びというのはこの10年間ワセダしか味わえていないものですし譲るわけにはいかないですよね。王座優勝のためにみんなで頑張っているので、毎年思うんですけどことしも優勝したいです!

金井 毎年王座の円陣で「全てはこの日のために」と言うんですけど本当にその通りで。全てはこの日のためにやってきたんだなと思います。つらい練習とか、色んな気持ちを味わってきたけど、全てはこの日のためなんだなと思い起こせるというか、チームの集大成ですね。

――王座の優勝の瞬間はやはり他のタイトルとは違いますか

辻恵 そうですね、うれしいという気持ちよりもまず肩の荷が降りるというか勝った瞬間安心感と喜びが入り混じる感情があふれます。

――辻選手は最後の王座となりますがどういった思いがありますか

辻恵 やはり私はこのチームがすごく好きなので、このチームで勝ちたいし王座を取りたいです。だから今できることは全てやりますし、後輩にも背中を見せて私が残せるものは全て残したいです。王座で優勝して、一年間また新たなチームで王座に挑むというように人も変わるので、そのチームで勝ちたいしこのチームが好きだというのは毎年思いますが、今年は4年生ということもあって去年と気持ちの大きさも全然違いますし、このチームで王座にという思いだけです、今は。

――金井選手は4年生へどういった思いがありますか

金井 1年生からずっと指導してきてくださって、一番濃い時間を共に過ごしてきた先輩なので最後は4年生に笑顔で終わってもらいたいです。

――王座に向けて強化している部分は

辻恵 個人的には中で勝負ですね。一本の重みがすごいのでもったいないミスをなくして、最終調整しています。夏関が終わったらダブルス強化したいんですけど(笑)

金井 夏関が終わらないんですよー!(笑)。私はどんどん前に入っていくということを意識しています。ボールを待ってしまうことが多いので前に出て攻撃的なプレーをしていきたいということはインカレ後からずっと思っていて、最近それが合ってきたので王座でハマったらいいなと思います。

――最後に王座に向けての意気込みをお願いします

辻恵 庭球部人生の集大成、最後の試合となるので必ず優勝したいです。連覇して、この伝統をまたその下の代にも続けていきたいのでとりあえず今できることを全力で取り組んで王座に臨みたいです!

金井 試合に出れる数は少ないですし、自分がどういった立場になるかはわかりませんがどの立場になっても全力で。チームが優勝するための行動をしていきたいです。

(取材・編集 三佐川唯)

※インカレへの意気込みを書いていただきました!

◆辻恵子(つじ・けいこ)(※写真左)

1994年(平6)9月6日生まれ。身長165センチ。東京・早実高出身。教育学部4年。今季の主な戦績は全日本学生選手権シングルスベスト16、ダブルスベスト8。全日本学生ランキング女子シングルス25位、女子ダブルス11位(2016年9月付)。副将として一年間チームを支えてきた辻選手。コメントの端々から後輩、同期、チームへの愛が伝わってきました!最後の王座に臨む辻選手の雄姿に注目です!

◆金井綾香(かない・あやか)(※写真右)

1995年(平7)10月11日生まれ。身長158センチ。東京・早実高出身。社会科学部3年。今季の主な戦績は全日本学生選手権シングルスベスト16、ダブルスベスト8。全日本学生ランキング女子シングルス16位、女子ダブルス20位(2016年9月付)。昔は甘え上手だったという金井選手ですが、最近は上級生の自覚が出てきたそう。辻選手もそんな金井選手の姿を頼もしく感じているそう。海外大会も経験し一回り成長した金井選手のプレーに期待です!