【連載】インカレ直前特集『TO THE TOP』 第6回 小堀良太主将×平尾優主務×坂井勇仁

庭球男子

 連載の最終回に登場するのは、ペアを組み3度のタイトルを手にしてきた小堀良太主将(スポ4=東京・大成)と坂井勇仁(スポ2=大阪・清風)、そしてベンチコーチとしてチームを支える平尾優主務(政経4=埼玉・早大本庄)の3人だ。早大庭球部を支える両4年生の思い、そして小堀・坂井組の強さの秘訣などを伺った。

※この取材は7月31日に行われたものです。

「全員が主役で、全員でチームを作っていく」(小堀主将)

主将としてチームを率いる小堀

――いまの段階で強化してやっていることは何かありますか

小堀 春関(関東学生トーナメント)のシングルスでは不甲斐ない結果に終わってしまったので、インカレでは1つでも多く勝ち進んで、4年生で最後の大会でもあるので悔いが残らないように最後まで(力を)出し切って、それが結果につながればいいと思います。ダブルスに関しては、夏関(関東学生選手権)、そしてインカレインドア(全日本学生室内選手権)でも勝つことができて自信を持って(タイトルを)取ってきました。インカレで優勝するためにここ1年間大学生活をやってきたので、インカレで優勝できるようにこれからももっと頑張ってやっていきたいと思います。

坂井 僕も春関のシングルスでは早い段階で負けてしまってそれをどう克服するかを考えて、一般の大会にも挑戦しました。単複勝ち上がることが目標だったので、自分なりにいろんなことを変えてやってきました。それが最近少しずつかたちになってきたと思っています。インカレ本番まであと10日くらいですけど、インカレでも単複勝ち上がれるように最後の調整をして、体力負けと熱中症で負けるのが一番やりたくない負け方なので、そこだけ気をつけてやっていきたいと思います。

平尾 チームとして強化しているのは、ことしは2年前、3年前と比べると断トツにトップの選手がいない中で、ずっとダブルスを強化してきました。インカレインドアや春関でダブルスがかなり上位に食い込むようなチームになってきたのに比べて、シングルスでタイトルを取れていない状況の中で、これからもうすぐインカレ始まります。もちろんダブルスでタイトルを取ることに加えて、シングルスでもワセダで上位を独占できるように、いまは切磋琢磨(せっさたくま)できていると思います。

――昨年の夏関からダブルスでタイトルを取り続けてきましたが、何か要因はありますか

小堀 (昨年の)フューチャーズで満足のいく結果を残すことができて、それで春関の時におごってしまったというか、油断していた部分があってすぐ負けてしまいました。それは振り返って、正直なところ油断をしていたと思います。それをなくそうと二人で話して、夏関でタイトルを取ったあとも、それにおごらずにインカレインドアはまた一つの大会として取り組んで、その次の春関も一つの大会として取り組んできました。決して優勝までの道のりは簡単ではなく、相手にマッチポイントを握られることもあり、ファイナルのスーパータイブレークでどっちに転ぶか分からない状態での勝利だったので、おごれるようなポジションでもありません。負ける可能性も大いにあるので、インカレでもそうですが、一戦一戦が大事になってくると思います。

――ペアとして成長を感じてきている部分はありますか

小堀 対校戦など、このペアでいろいろな(相手と)対戦していく中で、悪い状況の中でも何とか勝ちにつなげられるように二人が助け合いながら、悪い部分を良い部分に変えられるように片方が頑張って、双方でいいダブルスとしてやっていけるかたちでやっていますね。

――平尾さんから見て、小堀・坂井組の姿はどのように映っていますか

平尾 小堀は1年生のころからダブルスでずっと団体戦に出ていて、いまは主将としてやっている中ですごくプレッシャーもあるとは思いますが、絶対に負けられない、必ず1つ取るペアとしてこれからも勝ち続けてくれるペアだと思います。

――これまでのチームの戦いぶりは、主将としてどのように振り返られますか

小堀 毎年エースという存在が上級生の中にいて、それを軸にダブルス3や、シングルスの4、5、6がしっかり土台としてやっていくのがワセダのチームの強みでもありました。ダブルス3がシングルス6本とダブルス3本の中でも最もカギになってくるというか。そのダブルス3の一本が取れていないのがあるので、そこの強化がまずは第一優先なのかなと思います。シングルスに関しても、もちろん上級生も出ている部分がありますけど主に下級生が出ています。ダブルス3本とシングルスの4、5、6で上級生がしっかり勝ち星を決めて、下級生はのびのび試合をさせられるようなチームを作っていきたいと思っています。

平尾 断トツの選手がいるわけではないので、チームの総合力で戦っていかないといけないのは最初から分かっていることで、リーグと王座がもうすぐ始まりますけど、それまでにチームの完成度を高めていかなければいけないです。まだまだチームとしても甘い部分も多くて、一人一人の選手やそのサポートなど学年ごとにベンチコーチや審判など色々な役割が与えられていますが、一人一人がいまの役割を全うしきれていないという部分もあって。個人としての戦いもあるので、そこからチームとしてどう戦っていくかというところに意識をもっていくことに課題があります。

――主将、主務としてそれぞれどのようにチームをまとめていいますか

小堀 4年の中でミーティングをして、先ほども言いましたけどエースという存在がいないですし、その中で全員が主役で、全員でチームを作っていくというのが俺らのチームとしてあるべき姿だというのは言っていて。それに規律であったり挨拶であったり、テニス以外での部分でおろそかになっているのが現状としてあったので、そういうところから隙のないチームを作っていくというのは課題として徹底していこうというのはあります。

平尾 一つは、ことしはチーム力が大事だと感じていて、なるべくテニスの実力に限らず一人一人の個性を発揮できるように、風通しのいいチームにしたいなというのはあります。もう一つは、このように毎年テニスに打ち込める環境を様々なところから支えてくださっているので。こうしたテニスに打ち込む環境を続けていくためにも、普段の授業など当たり前のことをきちんとやるというところから、テニスに一生懸命打ち込めるようにしています。

――今の立場で大変なこと、苦労されていることはありますか

平尾 自分は去年も似たような役割をやってきたので、それほど大きな変化はないですけど、いま一番大変だなと感じているのは、4年生としての役割ですね。個性があって我があるのは別に悪いことではないですけど、チームを引っ張るためには4年生の気持ちが一緒でないといけない、4年生の中で付いてこいくらいの度胸がないといけないと思います。残り2か月と少しで終わってしまうので、最近は本当に4年生で話す機会を増やして、自分たちの思いは一つにして、チーム全体を引っ張っていかないといけないというのが一番の課題です。

「いい意味で上下関係が減ってきた」(平尾主務)

ベンチコーチとして小堀・坂井組を支える平尾

――テニス以外の場面でも風通しのいいチームになっていきていますか

平尾 ここ最近では上下関係がいい意味で減ってきて、部室でも学年問わず楽しくしゃべったり、下級生の雑用もなるべく全学年でできるようにしながら、いい意味で仲良くなれたらなとは思っています。

――4年生の二人の印象はいかがですか

坂井 二人とも優しくしてくれて、僕から言うのもあれですけど、二人ともしっかり者なんですよ(笑)。何かを言われても、すごく説得力があるので、「はい」としか言いようがないですね。普段ちゃんとしていない人からそう言われると、下級生でも表面上では、はいと言いますけど「自分は普段やっていないのに」となりますが、そういうのがないというのは、いい主将と主務なのかなと思います。平尾さんは小論文のころからお世話になっていますけど、実は僕の同期の女子を一人泣かせてしまったことがあるんですよ(笑)。

平尾 勉強を教えるというのがあって。

坂井 僕が高3の時にお世話になって。受けてる方は結構楽しかったですよ(笑)。いま思うと朝9時から夜7時くらいまで勉強しましたけど、楽しかったので。

――缶詰めになってやるのですか

平尾 地方にいる人は1週間くらいこちらに来てもらって、来られない人にはFAXでやり取りをしながらですね。今までずっとテニスに打ち込んできた人がいきなり勉強というのは、教える側よりもやる方は大変だと思いますけどね。

――全体でのイベントは何かあったりするのですか

平尾 本当に大きな時にしかやらなくて、早慶戦で勝つ、リーグと王座のこの3つが大事で、あまり何度も何度も盛り上がるというわけではないですけど、大きい目標が達成できたにあとには、しっかりそれに対して自分たちで頑張ってきたことをお互い触れ合いながら、また次に向かってやっていっています。みんなこのあたり(東伏見)に寮であったり、一人暮らしで住んでいるので、練習が終わったあとはご飯に行ったり、オフの前の前日とかは多いですね。

――全員でどこかに出かけたりするといったことは、なかなか難しいのでしょうか

平尾 そうですね。テニスコートも常に誰かが使えるように、誰もいない時間帯はなるべくないようにコートを充実して使えるようにしているので、休みの日もそれで人によってどんどんずれていくこともあるので、休みの日がかぶればその人たちとカラオケに行ったり、ボーリングや買い物に出かけたりすることもありますけど。みんなで休んでというのはあまりないですね。

坂井 何かしたいですね(笑)。

平尾 全員で海とか?(笑)

坂井 僕は富士急に行きたいです(笑)。

一同 (笑)。

「去年とはまた違った気持ちで臨むので、すごく楽しみ」(坂井)

単複でインカレでのタイトル獲得を狙う坂井

――岐阜のコートは暑いことで有名ですが、それぞれ暑さ対策などは何かありますか

小堀 僕は暑いのは好きで、寒すぎるより暑すぎるほうがいいです。暑さ対策としては、日中そこで運動して、それに慣れて。もちろん帽子であったりアイシングなど、体を冷やす道具も持って行って、サプリメントもそうですね。できることは全部やっています。東京の方は少しからっとしていて、岐阜のほうは少し湿度が高かったり、重いような暑さはありますね。

坂井 暑さは好きですけど、雨が降るとすべてインドアになってしまうので、できるだけ外で試合はしたいですね。

――そういった環境の中で試合を進めていくにあたって何かポイントになる点はありますか

小堀 暑さは相手も嫌がっている部分があると思うので、体力勝負で最後は勝ちたいなと思っています。特に暑さから逃げるというより、暑さには一生付き合っていくものだと思うので、それに対してめげないようにしています。

――それぞれプレッシャーには強い方ですか

坂井 僕はあまり気にしないです。

小堀 あまり強くないです…。いや、プレッシャーは得意です(笑)。「これだけやってきたんだ」というのがあるので、それを自信に変えて、プレッシャーを払しょくするようにしています。

――平尾さんはチームのメンバーに試合中、声をかけることも多いかと思いますが

平尾 そうですね。このペアのベンチコーチをやっているので、3人といろいろと話をしながら、お互いのいい部分が出ているか、思い切ってできているかなどを話していますね。

――小堀・坂井組の調子がいいと感じるのはどのようなときですか

平尾 調子がいいと感じているときは、小堀がどんどん坂井に声をかけて、引っ張っているときはいいですね。逆にお互いが静かになっていって、会話が減ってくるとあまり調子が良くないという感じですね。また、最終的には小堀が何とか引っ張って。坂井はずっと淡々とやっているので(笑)。

――ペアとして日ごろから心がけていることはありますか

小堀 坂井の場合は、すごく積極的にいくプレーがありますが、その分ミスがあり、スーパーショットもあります。すごいショットもあれば、すごいミスもあるんですよ(笑)。そのすごいミスに対して、(坂井は)コーチの方々に強く指摘をされていますけど。自分自身があまり強打や積極的なプレーができず、安定してポイントを取りにいくことしかできないので、僕はそれを特に指摘はしていません。逆に安定したプレーが坂井にはできなくて。僕ができない積極的なプレーが坂井にはできていて、坂井がミスをしないように(コートに)入れていくようなショットにしてしまうと坂井の良さが消えてしまうと思います。普段から、「坂井はミスすることが仕事だ」というようなことは言っていますね。その分、ミスが出ていてもそれくらいすごいショットがあるのだと見せつけられるので、ポイントは落としていても精神的なダメージとかを考えてもプラスマイナスゼロなのかなと思っています。坂井はかなり言われるので、僕からあまり言うことはないのかなと。すごいミスが続いた時は言いますけど、多少のミスは付き物なので。

坂井 最近だいぶ収まってきましたけど、昔のほうがミスはもっとひどくて。僕は自分のやることをやろうとずっとやってきて、小堀さんの調子があまり良くないときは、一言声をかけないといけないとは思っています。逆に僕が悪いときは小堀さんが待ってくれるので。そういったことをこれから僕ができるようになりたいと思っています。他の人と組む時は、もう少し丁寧にやろうとしますけど、小堀さんと組む時は攻めに集中できていると思います。

――最近の東海中日選手権では、1年生の島袋将選手(スポ1=三重・四日市工)とペアを組まれて出場されました

坂井 島袋と組んだ時は僕のミスを減らそうとして、小堀さんのように立場になってやっていました。最後は関大のペアとやりましたけど、普段やっていないことに僕が挑戦したので、(島袋を)引っ張り切れず、セカンドセットを落としてしまいました。

――シングルス、ダブルスでどちらが好き、得意というのはありますか

小堀 僕は前までシングルスが好きでした。自分で決断して、一人で勝ちをもぎ取ってくることができるので。ダブルスは二人でやるので、たとえ自分の調子が良かったとしても負けてしまい、苦い思いをすることもあります。ですが大学に入ってペアにも恵まれて、二人でやる試合も楽しいですし、最近ではダブルスの方が好きですね。

坂井 僕はどちらも好きですね。嫌いになるのはシングルスですけど。シングルスは調子が悪いと負けますけど、ダブルスは調子が悪くてもペアの調子が良ければ勝てるので。やることが決まっているので、勝てたりします。最近はシングルスとダブルスを別の競技だと考えるようにはしています。団体戦だとダブルスをやって、シングルスをやりますが、サーブの配球やストロークの弾道もそれぞれ違いますし、単複の切り替えはうまくやるようにしています。

――試合前のルーティンは何かありますか

坂井 靴下は履き変えますね。朝練をしてそのまま入ると気持ち悪いので。

小堀 分からないでもない(笑)。

坂井 平尾さんは何かします?

平尾 祈る(笑)。「つらないでくれ」って(笑)。

――平尾さんはこの二人にどのような活躍を期待しますか

平尾 ダブルスは優勝。(坂井の)シングルス優勝、(小堀は)まあまあまあ(笑)。この二人のダブルスに期待したいです。小堀のシングルスはあまり興味がないので(笑)。

小堀 僕のシングルスにはみんなあまり興味がないと思うので(笑)、いい意味で期待を裏切れるように頑張りたいと思います。

――最後にインカレでの目標、抱負をお願いします

小堀 先ほども言いましたが、シングルスは最近満足のいく結果を残せていないので一戦一戦悔いの残らないようにやっていきたいです。こうやってテニスに打ち込めるのも最後の大会でもあるので、テニス人生の集大成としてやり切りたいと思っています。ダブルスは一戦一戦やった先に、優勝できるようにやっていきたいです。単複とともに優勝目指して、その先にリーグ、王座と続くので僕たちの結果もそうですけど、ワセダが単複共に上位を占められるようにいい状態にもっていきたいと思います。

坂井 シングルスは予選からなので、まずは本戦に上がることですね。本戦に上がったら1試合1試合、いいプレーができるように準備をしていきたいです。シングルスの最終目標は優勝です。食べ物や飲み物をしっかり考えて、足がつったり熱中症になったりするのは本当に避けたいです。去年とはまた違った気持ちで臨むインカレになるので、そういった意味ですごく楽しみにしています。それほど気負わずに一戦一戦やっていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井口裕太)

※インカレへの意気込みを書いていただきました!

◆小堀良太(こぼり・りょうた)(※写真中央)

1994年(平6)8月19日生まれ。身長177センチ、体重65キロ。東京・大成高出身。スポーツ科学部4年。今季の主な成績は関東学生トーナメント男子ダブルス優勝。全日本学生ランキング男子シングルス23位、男子ダブルス1位(2016年7月6日現在)。たくさんの人に試合を見られるのは得意ではないと明かしてくれた小堀選手。「ひっそりと試合をやりたいですね(笑)」と希望していました。注目が集まるインカレで、どのようなプレーが見られるのか楽しみですね!

◆平尾優(ひらお・ゆう)(※写真右)

1994年(平6)7月2日生まれ。身長170センチ、体重60キロ。埼玉・早大本庄高出身。政治経済学部4年。小堀・坂井組のベンチコーチとして二人には大きな支えとなっている平尾主務。インカレでのタイトル獲得に向けて、陰ながらの活躍に期待したいですね!

◆坂井勇仁(さかい・ゆうと)(※写真左)

1996年(平8)8月12日生まれ。身長178センチ、体重65キロ。大阪・清風高出身。スポーツ科学部2年。今季の主な成績は関東学生トーナメント男子ダブルス優勝。全日本学生ランキング男子シングルス7位、男子ダブルス1位(2016年7月6日現在)。試合前の前日にはみかんゼリーを必ず食べるという坂井選手。このルーティンは高校生のころから始めたとのこと。このインカレでもみかんゼリーを食べて、満足のいく結果を残してほしいですね!