チーム一丸となり伝統の一戦で勝利

庭球男子

 今回で180回目を迎える早慶対抗試合(早慶戦)。ここまで34連勝中と圧巻の強さを誇っている早大だが、慶大も年々実力を上げており、今回も白熱した試合が繰り広げられた。5セットマッチのこの戦いでは精神力や体力、さらには仲間の応援が大きく影響する。1日目にはダブルス3試合が行われ、2勝1敗で翌日のシングルス6試合へ。2日目は先に2敗を喫するも、松崎勇太郎(スポ3=神奈川・湘南工大付)の勝利で優勝が決定。最後はシングルス1の今井慎太郎主将(スポ4=神奈川・湘南工大付)がストレートで白星を勝ち取り、見事6勝3敗で35連覇を決めた。

貴重な一勝をチームにもたらした栗林・坂井(左)組

 関東学生トーナメント(春関)とはペアを入れ替えて臨んだ初日のダブルス。まず1番に勝利を勝ち取ったのは松崎勇・小堀良太(スポ3=東京・大成)組。気迫のこもったプレーでチームを勢いづけた。優位に試合を展開するかに予想された春関優勝ペアの今井・河野優平(スポ2=福岡・柳川)組は、思わぬ苦戦を強いられる。第1セットを6-0で奪うも、その後は相手の積極的な攻撃に押されがちに。フルセットの末、悔しい黒星を喫した。ダブルス2の栗林聡真副将(スポ3=大阪・清風)・坂井勇仁(スポ1=大阪・清風)組も簡単には勝利をつかめない。2セットを先取するが追い上げられ、最終セットまでもつれ込む。しかし3-5から4ゲームを連取。勝負所でしっかりとポイントを奪い、ダブルスを2勝1敗とした。

チームの勝利を決めた瞬間、空を仰ぎガッツポーズをする松崎勇

 翌日のシングルス6試合では、3勝以上で早大の勝利が決定する。まず行われた3試合では、春関王者の上杉海斗を相手に迎えた村松勇紀(社3=青森山田)、そして岩崎歩(スポ2=神奈川・湘南工大付)が必死で食らいつくも敗戦。一方で、シングルス6の巽寛人(スポ3=福岡・柳川)は接戦を繰り広げていた。セットカウント1-1で迎えた第3セットはタイブレークまで持ち込んだ末に落としてしまう。だが、「自分のことだけに集中していた」と語るように後半に入っても気持ちを切らすことなく安定したプレーを続ける。4セット目を奪い取ると、最終セットは6-0で勝利。シングルスでの1勝目をもたらした。

 シングルス3の松崎勇は高校の同級生でもある高田航輝と対戦。第1セットを落とすも、2セット目をもぎ取る。渡辺隼コーチ(平19スポ卒=静岡・庵原)から「周りは気にしなくていい。絶対にやってくれる」と激励され、その後はひるまず自分のプレーを披露。隣のコートで順調に得点を重ね先に勝利を収めた栗林に続く白星で、早大の単複通算5勝目を挙げ優勝を決めた。最後に登場したのは、ダブルスで敗戦を喫し人一倍の強い気持ちを持ってシングルスに臨んだ主将の今井。強烈なサーブと力強いフォアハンドで相手を圧倒する。見ている者に安心感を与えるプレーでストレート勝ち。シングルスも4勝2敗で勝ち越し、大会を終えた。

 「負けられないという気持ちがすごく強かった」(今井)。チーム全員のこの思いが実を結び、勝利した今大会。だが実力は均衡しており、今後の戦いに油断は許されない。秋の団体戦、そしてその先に控える全日本大学対抗王座決定試合に向け、より一層のチーム力の向上が求められるだろう。

(記事 吉原もとこ、写真 吉原もとこ、山本葵)

結果

▽男子

○早大6-3慶大

ダブルス1

●今井慎太郎・河野優平(6-0、3-6、5-7、6-4、3-6)高田航輝・上杉海斗

ダブルス2

○栗林聡真・坂井勇仁(7-5、6-4、3-6、4-6、7-5)逸崎凱人・畠山成冴

ダブルス3

○小堀良太・松崎勇太郎(3-6、6-2、7-5、6-2)渡邊将司・韓成民

シングルス1

○今井慎太郎(6-0、6-2、6-0)谷本真人

シングルス2

○栗林聡真(7-5、6-1、6-1)渡邊将司

シングルス3

○松崎勇太郎(3-6、7-5、6-3、6-4)高田航輝

シングルス4

●村松勇紀(3-6、3-6、6-7(3))上杉海斗

シングルス5

●岩崎歩(5-7、5-7、4-6)逸崎凱人

シングルス6

○巽寛人(6-1、3-6、6-7(8)、6-3、6-0)韓成民

※通算成績=97勝83敗

早慶戦で男女共に勝利した庭球部

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コメント

※1日目終了時

今井慎太郎主将(スポ4=神奈川・湘南工大付)

――伝統の早慶戦(早慶対抗試合)ですが、どのようなお気持ちで臨みましたか

慶大はレベルもかなり上がってきていて、あっさり勝てる相手ではないということは昨年でもう思い知っていました。その中で向こうは思い切り向かってくるのに対し、こちらは連覇がかかっているプレッシャーの中で試合をしなければならないので、やはり引いてしまう部分もありました。ただ、それを押し返すくらいの気持ちで、いままでの練習で得た自信を前面に出して臨もうと思っていました。

――春関(関東学生トーナメント)以降、ご自身の調子はいかがですか

春関の3週間前くらいから自分の調子を少し崩していて、そのまま(調子を)上げていくことができずに春関に臨んであのような結果になってしまって。その後もいろいろとあってなかなか自分の調子を上げることはできない状況なのですが、なにが足りないのかということをしっかり考えて練習にも励んでいますし、状態は徐々に良くはなっています。とりあえずあしたのシングルスは自信を持って、いまできることを全て出して臨みたいです。

――第1セットは6-0と幸先の良いスタートでしたが、試合を振り返って

序盤は向こうもまだ本来の調子を出していなかったというのもありましたけれど、やはり自分たちが2セット目からの変化に受け身になってしまったということが敗因だったと思います。そこをずるずると引きずってしまって、相手がどんどんプラス思考の方向に進む一方でこちらはやばいやばいと焦ってしまいました。あのような場面で相手がどのような変化を与えてきても自分たちのプレーをし続けて、相手を押し返すような自信やプレーの質を身に付けていかなければならないと本当に反省しています。

――具体的にはどのような変化があったのですか

動きもかなり多くなってきましたし、すごく積極的になってきました。(第1セットを終えて)向こうは負けてもともとという気持ちでやっていると思いますし、思い切りやろうと判断した時の彼らの強さは尋常じゃないと思うので、そこが変化した部分かなと思います。

――きょうのチームとしての戦いをどのようにお考えですか

本当にチームのみんなに助けられたなと思います。自分も最初に6-0で取って周りに勢いをつけることはできましたが、結局2セットダウンになってしまいました。周りに悪い影響がないように、声だけは出して元気よくやっていこうと思ったのですが、プレーにつなげることはできず本当に申し訳ないの一言です。ここでしょげていても仕方ないので、あした挽回できるように自分のテニスをやるだけだと思っています。

――あすのシングルスに向けて意気込みをお願いします

きょう負けてしまったので、あすはみんなのためにという気持ちを強く持って勝ちを1本取ってこられるよう全力で頑張ります。

栗林聡真副将(スポ4=大阪・清風)

――早慶戦への思いはどのようなものでしたか

ラスト1年ですし、思い入れはすごく大きかったです。

――高校の後輩でもある坂井勇仁選手(スポ1=大阪・清風)とのペアでしたが、組んでみていかがでしたか

春関では梶(修登、政経4=東京・早実)と組んでいて、坂井とは急きょ一緒に出ることになったのですが、やはりテニスクラブも同じで昔から知っているというのもあって組みやすかったです。プレー的にもすごくいいテニスをしますね。

――お二人のペアとしてのプレースタイルは

どちらかというと僕よりも坂井の方がボレーに出るというかたちです。でも坂井もストロークも打てるので、結構オールマイティーな感じでやろうと思っていました。ただ慶大がすごく対策をしてきていて、僕らがやりたいようなプレーをなかなかさせてくれなかったです。

――試合は後半に追い上げられてしまいました

2セットアップで気を抜くつもりはなかったのですが、抜いていなくても少し落ち着いてしまいました。あそこでファイナルセット後半くらいの気迫でやっていれば、ファイナルまではもつれなかったと思います。慶大はその隙をしっかりついてくるのはさすがですし、そこは反省しているのであしたはしっかりそれを生かしていきたいです。

――最終セットはゲームカウント3-5まで追い詰められましたが、その時のお気持ちは

正直もう開き直ってプレーしていました。なんだかんだ取れたなという感じだったのですが、4-5になった瞬間に「ここは勝負だ」と思って。相手は絶対に緊張すると思ったので、そこから攻めてブレークして5-5にできたところからうまくいったと思います。

――ではあすのシングルスへ意気込みをお願いします

絶対に勝ちます。

※2日目終了時

※渡辺隼コーチのコメントは女子テニス記事に掲載されています

今井慎太郎主将(スポ4=神奈川・湘南工大付)

――優勝おめでとうございます!いまのお気持ちは

ありがとうございます。うれしいという気持ちもあるのですが、安堵感がかなり強いですね。途中何度も負けるかもという場面がありました。それでも本当に後輩が頑張ってくれてワセダに勢いを取り戻してくれたので、後輩には感謝しています。

――これで35連覇ということですが、そのプレッシャーもあったのでしょうか

連覇がどうというよりかは、負けられないということがすごく強かったので。負けてしまったらということを考えてはいけないのですが、どこかにその悪魔というか、魔物のようなものがあって(笑)。襲ってきているような感じがしたので、それをどうにかしなければならないということで試合の前も想像していました。プレッシャーはかなり強かったですが、本当に乗り越えられて良かったです。

――ご自身の試合は圧勝でしたが、良かった点は

きのうダブルスで負けてしまい本当にチームに迷惑をかけてしまったので、持てる力をすべて出しました。スコア的には圧勝ですが、正直自分の力を出せたかといえばもっとできた部分もあったので、課題も見つかりましたね。常に自分のペースで試合を運べたというのは良かったのではと思います。

――やはりきのうの敗戦がかなり大きかったのですか

かなり大きかったですね。だいぶ応えましたし、「あした絶対に勝ってやる」という気持ちになりました。

――主将として、いまのチームをどのようにご覧になっていますか

正直に言えばまだまだ甘い部分もありますし、自分も含めてですがもっと良い集団にしていかないと、今後食われてしまうと思います。全員が一つの目標に向かって臨んでいける姿勢を作っていかなければいけないと思います。

――ことしの慶大の印象は

昨年から感じてはいますが、本当にレベルが均衡してきていると思います。彼らの中にも「勝てる!」という気持ちがあってそれを前面に押し出してくるようになったので、その気迫に押されてしまう選手も多くて。自分のきのうのダブルスもそうでしたし、そこが今回の接戦の原因なのかと。それを跳ね返すぐらいの自信とかをつけていかなければなと思います。

――今後も対戦が予想されますが、対策などは

今回の大会でいろいろ慶大の特徴を見ることができたのでそこを分析して、どういった対策をするかをもう一度考え直して夏に臨みたいです。

――ユニバーシアードなども控えていますが、今後の目標は何でしょうか

ユニバーシアードもありますがまずはインカレ(全日本学生選手権)で優勝することが目標ですし、その後にあるリーグ(関東学生リーグ)で王座(全日本大学対抗王座決定試合)の切符をつかんで王座で優勝する、まあこれが当たり前の目標なのですが(笑)、僕が最後の学年になっている以上はそこを目標にして、全力で頑張っていきたいと思います。

松崎勇太郎(スポ3=神奈川・湘南工大付)

――早慶戦を勝利で終えて、いまのお気持ちは

6勝3敗で終えて、勝てたことがうれしいです。けれども何よりチームが一つになった瞬間を一緒に味わえたことが大きかったですし、うれしく思っています。年々シングルスでは出る場所が上がって勝負しなくてはいけない立場でやっている中で、より応援の心強さや仲間の大切さを感じることが増えています。団体戦は一人で戦うものではないと思うので、本当に仲間とともに勝てて良かったなというのが、率直な感想です。

――シングルス3での出場でしたが、プレッシャーはありましたか

僕が入った時はダブルスでリードしてはいたのですが、岩崎(歩、スポ2=神奈川・湘南工大付)が落としたり、巽(寛人、スポ3=福岡・柳川)がどちらに転ぶか分からない試合をしたりしていて。僕も試合中に負けに転ぶ瞬間も勝ちにつながるかもしれないという瞬間もあったなと思っています。それでも僕がしなきゃいけないことは、チームがどう転ぼうが、一本を絶対に持って帰るということでした。最初自分が勝たなきゃいけないと思いすぎてしまって、第1セット固くなってしまったのは事実だと思います。それ以降、2セット目は自力で取り返して、渡辺隼さん(平19スポ卒=静岡・庵原)がベンチに入ってくれて、「周りは気にしなくていい。絶対やってくれる。信じろ」と言われた時に、自分が取ればチームは勝てるという風に確信しました。巽が取ってくれたのも分かりましたし、隣で栗林さん(聡真副将、スポ4=大阪・清風)がいい流れで試合を進めているのも見て取れていたので、勝利は決まっていなかったですが、気持ちとしても少し楽になりました。そこに関しては周りに感謝したいなと思います。

――相手は高田航輝選手でした

(高田とは)2年前のリーグで対戦して。ぼこぼこにやられてしまったのですが、その時は僕が団体戦初出場で右も左も分からず真っ白になってしまって、何もできなかったという思い出の相手です。高校の同期で、ずっとライバルでもあり切磋琢磨(せっさたくま)した仲間でもあります。

――チームとしての戦いを振り返って

慶大は上杉(海斗、慶大)をシングルス4に落としていて、勝負に徹したオーダーでした。でも上が3人ともしっかり勝負できれば勝てると確信していたので、3人で何とか頑張ろうという話は(シングルス1、2の2人と)していました。自分のプレーに集中させてくれる周りの環境のありがたさを本当に感じました。

――今後への意気込みをお願いします

これでチーム戦は一度終わりますが、あすからまたリーグに向けてスタートしていくという気持ちは切らしてはいけないと思います。慶大以外にも明大や法大という強豪チームがあって、それに向けて個人個人が能力アップしなくてはいけない部分ももちろんありますし、チーム力という面でもまたここから上げればワセダの時代を築き上げることができると思っています。この早慶戦の勝ちを選手だけでなくて、チーム全員が自信にして、またいいチームを作っていければと思います。インカレ(全日本学生選手権)も個人的には優勝したいという目標もありますが、このような団体戦の1試合1試合が個人戦にもつながると思っているので、夏に向けてもう一回自分自身で作り直していきたいです。

巽寛人(スポ3=福岡・柳川)

――早慶戦に出場して雰囲気はいかがでしたか

いままで対抗戦や昨年のリーグの初戦と2戦目には出ていたのですが、早慶戦はやはりすごくプレッシャーがかかりますし、また違うイベントだなというのは感じました。でもその中でしっかりと最後まで戦い抜けたということは、今回僕にとっていい経験ができたかなと思います。

――接戦となりましたが、試合を振り返っていかがですか

ファーストセットを楽に取れてしまった分、セカンドセットは守りに入りすぎたのかなと思っています。3セット目もタイブレークまでいって均衡しているまま落としてはしまったのですが、それでも最後の2セットは精神的にもプレーの質的にも落ちることなく最後までプレーできたので、そこが勝因かなと思います。

――隣で行われていたシングルス4、5は先に落としてしまいましたが、プレー中にプレッシャーはありませんでしたか

シングルス4、5を落としたのは周りを見ていて感じ取れたのですが、それでもやることはやらないといけないと思ってやっていました。しっかり自分のことだけに集中していたので特にそのプレッシャーは感じなかったです。

――新進(関東学生新進選手権)からご自身で成長した部分は感じていますか

技術的には変わったところはあまりないのですが、ことしの2月の新進から5月上旬にあった春関を通して、体力的にも精神的にも向上し続けているなというのは感じています。技術的な面はこれから克服していかないといけない部分があると思います。

――では今後に向けて一言お願いします

これからまずインカレで自分の納得いく結果を出せるように努力することと、またリーグに出ることができれば、出た試合でしっかり全部勝ってチームに貢献したいです。