【連載】 春関直前特集『Winner!!』 第5回 大城光

庭球男子

 学生王者として大学テニス界を率いる早大庭球部。ことし、このチームの顔となるのは大城光(スポ4=埼玉・秀明英光)だ。主将として臨むラストイヤーの幕が、関東学生トーナメント(春関)によっていよいよ開かれる。その胸中はいかに――。

 ※この取材は4月12日に行われたものです。

「テニスに対する使命」

大城

――昨季、自身で課題として取り組んだことはありますか

気持ちを安定させることを常に意識していました。プライベートの部分でもストレスをうまく解消させようと取り組んできましたね。そのおかげで気持ちが安定して、団体戦での全勝やインカレインドア(全日本学生室内選手権)での優勝につながったのかなと思います。

――プライベートではどのようなことに意識を

オンとオフの切り替えを大切にしていました。フリーの時にしっかりと休んだり、治療へ行って体をリフレッシュさせたりしました。自分の体を大切にするように心掛けていました。

――では、ストレスになったと思う原因は

大学は高校までとは全然違った環境で、団体行動の中で自分はどうしたら良いのかと、自分を見失ってしまう部分もありました。1、2年の間はそういうところでストレスを感じていました。自分の弱い部分だったと思いますね。

――昨年の関東学生選手権(夏関)男子シングルスでは、2年ぶりの優勝を成し遂げました。振り返っていかがですか

その出来事は(自分にとって)大きな出来事でした。1年目のときはノンプレッシャーで、いけいけどんどんという部分がありましたね。そういう気持ちの中で取り組んだので、偶然と言いますか…(笑)。実力でタイトルを取ったというよりは、失うものはないという思いでやっていました。2年目も気持ち的に不安定な部分がありました。ですが、きょねんはその部分を克服でき、タイトルを取れたのだと思っています。特に夏関では、その部分が大きかったからこそ優勝できたのだと思います。

――インカレインドア男子シングルスでは自身初の全国優勝を達成しました。そこで得られたものは何ですか

全国優勝という夢を掲げたのは、中学校3年生の時でした。それで地元を離れて埼玉の高校へ進学してみると、(全国優勝というのは)全然甘いものではなくて。どこかもどかしさというか、いくらやっても駄目だなと思うこともありました。でもずっと信じてやり続ければ、こうやって結果もついてくるんだというのを経験することができました。一番大きな財産を得たと思っています。

――信じ続けることができた根底にあったものとは

とにかく全国優勝に懸けてきました。それを取ったら何も残らないというくらいそれにしか力を入れてこなかったので、いろんなものを犠牲にして、楽しい高校生活や大学生活を捨てる覚悟でやってきました。テニスに対する使命という感じですね。

「一人一人がサバイバルで構わない」

悲願の全国制覇を達成したインカレインドア

――主将になり、チームに意識的に取り組んでもらっている点はありますか

強制力で押さえつけるというのを自分は嫌っているので、一人一人が主体的に取り組むようにと言い聞かせていますね。そこが難しさでもあって。一人一人が主体性を持ちつつ意識を保つというのは難しいです。自分の頭で考えさせつつも、時には厳しさもなければいけないので、どこまでを固めなければいけないのか、どこから自分たち自身でしなければいけないのかを考えながらやっていますね。

――主将になられた経緯は

全日本(全日本テニス選手権)の最終日に監督(土橋登志久監督、平元教卒=福岡・柳川)から告げられました。田川さん(翔太、平26教卒)のミックスダブルスの応援が終わって、その後のロッカールームで。

――その時の心境はどのようなものでしたか

やはり、不安が大きかったですね。上級生になってからは主将としてやっていくことも考えながら活動をしてきたのですけれど、いざ任せられるかという選択を迫られたときは不安が大きかったですね。

――いままでとの違いは

自分のことよりも周りの仲間のことを考える機会が増えましたね。基本的にマイペースにやってきた人間なので(笑)。主将というのは高校時代もしたことがなかったのですが、自分のできる限り、周りのことを考えながらやっていきたいですね。

――土橋監督との関係の変化は

ダブルスのペアリングを決めるなど重要な話をするようになりました。毎日監督がいるわけではないので、部員たちと毎日やっていくなかでは自分が役職上トップで。常に組織の中を見ることができるのは自分なので、監督やコーチ陣に対して本音で話さなければなりません。これまでは監督と話したりというのはなかったんですけど、常に向き合って話し合うというのが多くなりました。

――ことしから特別に始めたメニューなどはありますか

きょねんは、(団体戦で)ダブルスを一本も落とさずに3-0で折り返すという試合をやっていて。それが良い勝ち方だと思うので、ダブルスに対して強化を図っていくということに力を入れています。

――いまのチームの雰囲気はいかがですか

4月に新入生も入ってきたばかりで、もっともっとチームの雰囲気を固めていかなければいけないのですが、正直に言えば未完成ですね。全くまとまっていないわけではありません。ただ、王座(全日本大学対抗王座決定試合)で優勝するためには普通のまとまり方ではいけなくて。悪い状況ではないのですが、いまのままではいけないという危機感は持っています。常に理想を追い求めて、一人一人が良くしていくために努力をしなければいけないと思います。

――チームをまとめるために意識していることとは

コミュニケーションはチームづくりの上で一番根っこの部分であると思うので、まずは上下に関係なく信頼関係を築き上げて、その上で固める部分もつくって一人一人に主体性を持ってもらうというのが一番重要かなと思っています。

――春関に向けて、個人として意識していることはありますか

春関うんぬんではなく、早慶戦(早慶対抗試合)、リーグ戦(関東大学リーグ戦)、王座と、個人として心掛けたいことは、自分が見本となれるようにし続けたいということです。いくら言葉でかっこよく飾り付けても、自分の行動が伴っていなければ周りが認めないと思います。自分が3年間やってきた中でワセダのあるべき姿を感じ取ってきたと思うので、そういうことを意識して戦っていきたいですね。チームとしては戦力が拮抗(きっこう)しているので、一人一人がサバイバルで構わないから、自分が一つでも勝ってやるという意地を持ってほしいです。一人でも多くのワセダの選手が上位に食い込んでくれればうれしいですね。試合をしていく中、チーム内で切磋琢磨(せっさたくま)していけたら良いなと思っています。

――シングルス、ダブルス、それぞれへの対策は

シングルスは体力強化ですね。自分は就活もあってそんなにやっているわけではないですけれど、(体力を)最低限保つか、それ以上にいくまでやっておきたかったので。ダブルスは、ボレーの決定力がずっと課題ですね。ただチームでやっているので、自分の課題だけをやっているというわけではありません。結局、チームの課題というのも自分の課題とマッチしている部分もあると思います。

――注目している他校などはありますか

全てのチームですね。ワセダも含めて、実力に大差はないと思います。先日、(関大との)早関戦がありましたが、5-4のぎりぎりで勝った状況です。関東の他大を見ても、慶大、法大、明大などがフューチャーズ大会でも勝っているので、ことしは全ての大学がライバルになってくるなと思います。

――春関までの残りの日数をどのように過ごしたいですか

予選は1週間後に始まるので、ノンレギュラーはそこから勝負が始まります。ノンレギュラーの頑張りというのはレギュラーにも影響を与えると思うので、頑張ってもらいたいと思います。春関で良い流れをつくってその後に続く大会に臨みたいので、やれることを全てやって挑みたいなと思います。

――春関に懸ける思いとは

(全国の)タイトルを取った現時点でのチャンピオンとして、優勝しかないですね。単複優勝を目指してやっていきたいです。勝つことで実力を示せると思うので、タイトルを勝ち取りたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 久良佳菜子)

◆大城光(おおしろ・ひかる)

1992(平4)年5月29日生まれ。173センチ、60キロ。埼玉・秀明英光高出身。スポーツ科学部4年。昨季の主な実績は関東学生トーナメント男子シングルスベスト4、関東学生選手権男子シングルス優勝、全日本学生室内選手権男子シングルス優勝。今年度の主将を務め、新たな歴史を刻むべく努力を重ねる大城選手。そんな責任感のある主将から、ことしも目が離せません!