早慶杯奪還に燃える 激闘の末、初日ダブルスは一歩リードをとる

庭球男子

第197回早慶対抗庭球試合 6月15日 慶應義塾大学日吉キャンパス蝮谷テニスコート

 2日間に渡って行われる男子部の早慶対抗庭球試合(通称早慶戦)。197回目という伝統あるこの一戦は、晴天の中慶應義塾大学蝮谷テニスコートにて行われた。開会式では慶大からの早慶杯の返還がなされた。早大は早慶杯を取り戻すべく、初日のダブルス戦では3組のペアが慶大に挑んだ。

 ダブルス1組目は山口柚希(スポ4=鹿児島・鳳凰)と森田皐介(スポ2=福岡・柳川)が慶大の下村、高木の主将、副将ペアと対峙する注目の一戦となった。試合が開始されるや否や全力の打球が飛び交う。試合は一進一退の攻防となりなかなか点差が開かない。ゲームカウント6-6で1セット目からタイブレークに突入する拮抗した戦いとなった。この第1セットを何としてでも取りたいところだったが、ここにきて早大のミスが連発してしまう。7点先取されてしまい、1セット目は慶大のものに。 続く第2セットは、慶大が1ゲームリードしたまま、同じく拮抗した試合が続く。しかし、相手の強烈なサーブを的確に相手コートのサイドライン上に返す見事なレシーブを見せるなどして、ブレイクを果たす。そのまま6-4でセットを奪い返した。次の第3セットは、慶大が反撃に出た。長年培ってきたであろう4年生同士の見事な連係プレーを見せつけられる。ブレイクされ、そのまま3-6で慶大が奪い返し、早大は後がない状況になってしまう。時刻は正午を回り、暑さが最も厳しくなる第4セット前。早大はMTO(メディカルタイムアウト)と10分休みを同時に取る。「卑怯をして、長く時間を使いたかった。これが上手くいった」と後に山口は振り返る。休憩後、テニスコートに現れた山口と森田はユニフォームを新しいものに着替え、気持ちもリセットされた様子が見られた。この作戦が上手くいき、5セット目は早大コンビの見事な連係プレーがさらに連発する。どちらもサービスラインまで攻め上がる強気なフォーメーションで相手にプレッシャーを与える。最後までリードを守りきり、試合をファイナルセットに突入させた。ここでも早大ペア二人の勢いは留まることを知らず、サービスエースで観客を沸かせるなどますます強くなった。ネット前での完璧なボレーで相手の強烈なストロークをねじ伏せる姿に観客から感嘆の声が上がることもあった。流れを完全に自分たちのものにした山口と森田は、ゲームカウント6-2で慶大の主砲ペアを打ち破り、大きなガッツポーズを見せた。早大が初勝利をあげた。

サービスライン前でレディポジションを取る山口と森田

 第2コートでは、栗山晃太郎(スポ3=兵庫・相生学院)と本山知苑(スポ1=三重・四日市工業)の3年1年ペアが慶大の脇坂・眞田ペアを相手に奮闘する。序盤は一進一退の攻防で拮抗すると思われたが、早大ペアが一足早くブレイクする。相手のサーブに対して冷静に対処し、コートの空いているところにストレートを打ち込む。ドロップショットとロングショットを巧みに使い分け、相手を翻弄(ほんろう)し、第1セットを競り取った。しかし、次の第2、3セットは慶大の反撃を攻略することが出来ず、1セット目では決まっていたボレーショットもネットに引っかかるようになってしまう。第2、3セットを連続で落とし、これ以上は負けられない状況になる。話し合いをする姿が見られ、逆転の策を講じた栗山・本山ペアは5-5でデュースまで持ち込む。粘りを見せた早大ペアだが、調子を完全に取り戻すことが出来ずに第4セット5-7で無念の敗北となった。

 ダブルス3組の中で、最も長い試合となったのは早大の藤田大地(スポ3=兵庫・相正学院)・前田優(スポ1=兵庫・西宮甲英)と慶大の菅谷・石島ペアの激突であった。気合の入ったスタートダッシュを切った藤田・前田ペアは第1セットを6-4で勝ち取る。しかし、慶大も執念のプレーで巻き返し、3-6で2セット目は慶大が取り返す。続く第3セットも慶大の勢いを止めることが出来ずにタイブレークを許し、奪取は叶わず。しかし、ここで早大ペアの勝負強さを見せた。相手からのドロップショットや畳みかけるスマッシュも、足を止めることなく拾い続け、相手にポイントを取らせない。長いラリーを制し、4セット目をものにした。他の試合が終わりコートの周りに応援の声が集まる中、最終セットが始まった。激しい点の取り合いが続き両チーム疲労が見え始めた頃、先にタイブレークを制したのは早大だった。藤田の強烈なサーブで相手のレシーブを崩し、前田が冷静にネット前でのボレーで決めるなど、完璧なチームワークを見せる。4時間以上にわたる熾烈な戦いはセットカウント3-2で早大に軍配が上がった。

長時間にわたる激戦を制し、抱擁する藤田と前田

 1日目のダブルスは3組とも長きにわたる接戦を最後まで戦い抜き、2-1で早大が一歩リードして終えた。やはり、前年王座優勝を果たした慶大相手に一筋縄ではいかず、1つの負けが勝敗を左右することになるだろう。気を抜くことは全くできないが、勝てる相手だということを今日の3ペアが証明してくれた。明日のシングルスでも慶大の優位に立ち、今年のチーム早大の底力を見せつけたいところだ。

(取材・執筆 中村由愛、編集 大日結貴・中村由愛、写真 佐藤結・中村由愛)                              ※掲載が遅れてしまい、申し訳ありません

結果

〇D1山口柚希・森田皐介3-2(6(2)-7、6-4、3-6、6-3、6-2)下村亮太朗・高木翼

●D2栗山晃太郎・本山知苑1-3(6-3、3-6、2-6、5-7)脇坂留衣・眞田将吾

〇D3藤田大地・前田優3-2(6-4、3-6、4-6、6-2、6-3)菅谷優作・石島丈慈

コメント

山口柚希(スポ4=鹿児島・鳳凰)

――試合を振り返っての率直な感想をお願いします

一ダブルス1として、エースとして、絶対に持って帰りたかった一勝だったので、勝ててすごくほっとしています

――休憩後流れが変わったと感じたのですが、意識した点はありますか

卑怯な手ですが、MTO(メディカルタイムアウト)と10分休みを同時に取ったことですかね。長く時間を使いたかったんですよね。それが上手くいきました

――最後の早慶戦だと思うのですが、その辺の気持ちを教えていただけますか

主将の鈴木蒼平とは小学校4年生の時からの付き合いなのですが、主将のために、鈴木のためにと思いながらずっとテニスをしていました

――今日の試合、長きにわたった接戦に勝利した時に大きなガッツポーズをしていたと思うのですが、その時の気持ちを教えていただけますか

勝ててほっとしたっていうのと、ペアの森田と、練習では上手く噛み合わずにインカレインドア(全日本学生室内選手権)から苦しい時期を過ごしてきたので、やっと報われたなという嬉しさもありました

――明日もまだ早慶戦が続きますが、意気込みをお願いします

絶対に勝ちます!!