船水颯人(スポ3=宮城・東北)が1年越しにシングルスチャンピオンの座に舞い戻ってきた!ついに終わりの時を迎えた真夏の熱戦。全日本学生選手権(インカレ)最終日のシングルスには7人が出場した。連戦かつ強烈な日差しが選手の体力を削るなかで、船水は前年度王者の意地を見せ躍動。見事連覇を達成した。
ベスト8にまで駒を進めたのは船水、内本隆文(スポ2=大阪・上宮)、上松俊貴(スポ1=岡山理大付)の3人。内本は惜しくも準々決勝で姿を消すが、準決勝に駒を進めた船水・上松は奇しくも同校対決かつ同ペア対決に。普段の二人とは違う、緊張感が走る中始まった注目の一戦。先に優位に立ったのは船水だった。隙あらば前へと攻める上松にかわすロブで対応、3連続のデュースゲームを取り切り、ゲームカウント0-3とした。しかし、あと1ゲームも落とせない状況を前に上松も集中力を増していく。序盤上松のツイストで消耗された船水にショートコースのボールを積極的に仕掛け、ポイントを奪い返す。第5ゲームには前衛ならではのボレープレーが光り、ストレートでゲーム奪取。3-2の第6ゲームには激しいラリーの応酬が展開し、意地のぶつかり合いに。船水の気迫に押されたか、最後は上松がサイドアウト。4-2で注目の一戦は船水に軍配が上がった。「誰かが(船水を)切り崩さなければならないと思う、一番近いのが僕だと思うのでこれからもお互い切磋琢磨(せっさたくま)して頑張りたい」(上松)。「いつも一緒に試合していて、ペアとしても相手としても本当に実力のある選手」(船水)。互いに良い刺激となってさらに上を目指せるペア、それが船水・上松組だ。これからもペアとして、そしてライバルとしての二人の戦いぶりに期待だ。
1年目のシングルスで3位と健闘した上松
準決勝で上松との激戦を制した船水の最後の相手は星野雄慈(日体大)。序盤は星野の好プレーが光る。左右に振られ、鋭いシュートボールを打ち込まれると、入りの1ゲームを献上した。「第1ゲームの時は負けると思った。だけどこっちにも意地がある」(船水)。球威のある星野にラリー戦に持ち込ませぬよう速い展開で勝負。相手にも細かいミスが出始めると、船水が3ゲーム連取し戦況を逆転させた。立て続きの強豪との連戦に体も限界だったが「さあもう一本!」と自ら鼓舞。最後は相手に1ポイントも譲ることなく最終ゲームを奪い、見事2年連続シングルス王者の座に就いた。
昨年王者の意地を見せた船水
『復活』、軟式庭球部伝統の部旗に書かれていた船水のメッセージ。三冠を果たし大車輪の活躍を見せた昨年度から一転、ことしはケガに苦しみ思うように活躍できなかった。それを一番もどかしく感じていたのは本人の船水。「周りに船水は終わったと思われている。だからこそ、このシングルスタイトルは絶対に獲りたかったし、獲らなくてはいけなかった」。このタイトルは船水が取ってきた数あるタイトルの一つではない。一年間の苦しみを乗り越えワセダに頼れるエースが帰ってきた、大きな意味のある優勝だ。
(記事、写真 吉田安祐香)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
シングルス連覇を果たした船水
結果
船水颯人 優勝
上松俊貴 3位
コメント
船水颯人(スポ3=宮城・東北)
――優勝おめでとうございます。いまの率直なお気持ちをお願いします
3種目あるうちの、団体戦はもちろんですけど個人戦も必ずどちらか勝たなければならないという責任感を持って臨んでいました。そんな中で、ダブルスは自分でもふがいない試合になってしまったので悔しくてなかなか気持ちも切り替えられなったんですけど、ベスト16からは今日のシングルスで自分のテニスができるようになってきました。狙って取りに行ったものだったので優勝が実現してうれしいです。
ーー準決勝は同じペアの上松選手でした
そうですね、事前合宿とか普段の練習から上松には練習相手になってもらっています。お互い手の内を知り尽くしている相手なのでどうしようかなと最初は様子を伺いながらやっていたんですけど、コートのサーフェイスやボールの違いもあっていつも通りの展開になりませんでした。お互いにボールが吹いてしまうのがあったので、僕はとりあえず返していこうと。そしたら僕が何するでもなく相手もミスが出てきてくれたので、最後は技術的な部分ではなく体力面や気持ちの部分で勝っただけかなと思います。3-0で普段は自分に回ってくることがないので途中戦略面でも迷って相手のペースになってしまったんですけど、終盤は巻き返して自分が主導権握ることができました。
ーーペアでなく、相手としての上松選手はどういった印象ですか
さっきも言ったんですけど、いつも試合していて実力あると思いますし、良い選手です。試合中も本当に堂々としていて一回受けに回ってしまうと押されてしまいますね。でもこっちもこっちで意地があるんで、絶対負けられませんでした。今回も勝ち切れた理由はやっぱり本当に体力とか精神面とかだけでもし、どうなるかわからない試合でした。
ーー決勝はいかがですか
いや、普通に負けると思いました(笑)。1ゲーム目相手の動きがすごく良かったのでこのまま戦っていたら負けるなと。最後の相手のボールももし入っていたら負けていたかもしれませんし、ちょっとした部分で本当に勝ちを手に入れられたなと思います。体力も本当に連戦で限界でしたけど、僕がケガでこの1年間思うようなプレーができなかったことや、やっぱり1年間の集大成といったらこの夏の試合なのでどうしても勝ちたい、タイトルを獲りたいし獲らなきゃいけないという思いが強くて、本当に最後は意地ですね。
ーー部旗に復活と書かれていました
いや、世間にも周囲にも船水は終わったというふうに見られていたので。この1年間精神的に本当にきつかったですし、ケガ的にも冬にずっとケガをして出れるようになってからはまた完治していないのに出場してしまってまた別の部分をケガをして、苦しかったし、自分何やっているんだろうなと思ってしまってインカレ前にも、一旦部の練習を全てやめていました。東インカレでちょっとしたアクシデントなどもあって、自分がコートに立てないことにすごく自分自身に対して腹が立っていましたし、悔しい思いもありました。一旦休養して心も強く保たなければこのままコートに立っても簡単に勝てるような甘い世界ではないと分かっていたので、チームメイトには迷惑かけましたけど、なんとかそれが間に合って結果がついてきて良かったです。復活と書きましたけど、周囲にもう一度良いプレーを見せてやるよというそんな自分への追い込みの意味をかけて書きました。
ーー3年生のインカレが終わりました。総括して
1年目のインカレは全然ダメで、2年目のインカレは三冠しましたし最高の夏で。悪い思いもいい思いも知った上で迎えた3年目の夏だったので自分ではいい方向にコントロールして持っていけると思っていました。しいて挙げれば、団体戦で少し燃え尽きてしまったかなと(笑)。団体戦では本当に自分の思い通りのプレーができましたし、自分のやってきた取り組みが存分に発揮できた良い団体戦だったんですけど、欲を言えば三冠したかったです。ダブルスで負けてしまってなんか、萎えました(笑)。でもその分、春も全日本シングルス優勝している身としては勝たなきゃいけない立場なので、余計シングルスに気持ちが入りましたし、タイトルが獲れてうれしいです。
ーー来年の意気込みを教えてください
長尾・松本も頑張っていますし、今のワセダは4、5番目までは層が厚いチームなんですけど、レギュラークラスの人とそれ以外の人との意識の差や目標のギャップというのを埋めていかなければと思っています。強いと言われていた今年も最後はもつれて、苦しみましたし、来年はさらに連覇が重なっていく分チーム力を上げなければ隙が生まれると思います。レギュラーが多く残るんですけど、全体のチーム力を上げてみんなが本気で日本一を目指せるチームをつくり出したいです。どっかで俺はいいやと思っている人がいるチームでなく、下の人も全員チームのために力を合わせられて、みんなの力で勝てるチームになりたいです。
上松俊貴(スポ1=岡山理大付)
――きょうの総括をお願いします
優勝したかったです。初めてのインカレのシングルスだったのでどこまで勝ち上がれるかは僕自身わかりませんでしたが、調子も悪いわけではなかったので、やれることはやってやろうと思っていました。ベスト8決めで中大にいる僕の高校の同期と当たりましたが、あそこで勝てたことが大きかったと思います。あの試合を乗り越えることができれば上にあがれるなと自分自身では思っていました。次もいける、勝てるなという自信がついたので、そのあと勢いよくいくことができました。準決勝では同ペア対決ということで、特別意識したことはありませんでしたがいい試合ができたらと思っていました。デュースが続いて競った試合展開になったので、僕の中では手応えがあって満足もしています。最後の最後まで勝ちきることができないのは痛かったのですが、1年目で3位に入ることができて自分としては上出来かなと考えています。自分はダブルスが不甲斐ない結果で終わってしまって、シングルスは頑張りたいと思っていたのでよかったです。
――初めてのインカレはいかがでしたか
独特の雰囲気でした。1年目で初めて臨んだ状態だったので、来年のためにもやれることをやろうと思っていました。団体戦は自分の中で取りたいという思いがあったので、4年生のためにもどんな状況でも攻め抜くことを意識して、非常にいい状態でいることができました。ダブルスでは団体戦にかけすぎていたり、団体戦で優勝して1つの目標を達成したような満足感やホッとしてしまっていたりして、そこは勿体無かったかなと思います。やはりダブルスを取りにいくという気持ちが足りなかったのが反省点です。長い大会の中で目標設定を変えて自分の中でも入れ替えて臨まなくてはならないので、今回ダブルスを落としてしまったことはとても悔しいです。らいねんのインカレは自分の地元の岡山で開かれるので、次回のインカレではワセダが団体、ダブルス 、シングルスで3冠を達成できるようにしたいです。そういったことがらいねんに向けての収穫になりました。
――準決勝で船水選手と当たってみていかがでしたか
普段から校内で練習試合は行なっているのでお互いがどういう感じかよくわかっている状態でしたが、このコートサーフェイスであったりとか、ボールの影響もあって多少は違った部分もありました。「いつもとは少し違う展開だったね」という話を2人でしたりしていました。今回は最初に3-0でリードされたのですが、いつもは2-1で常にどちらもゲームを取ってから3ゲーム目に進んでいました。ボールやコートの違いでお互いの策略がいつもと違っていたので。いつもと違う状況でもお互いにいい試合をすることができたのはやりきったなという思いです。あとは勝ちきることができたらなと思います。ファイナルにいけると自分の中では思っていたので、そこは反省点です。シングルスは連続して試合が入ってきて体力面ではしんどかった面もありましたが、ここで体力が切れてしまったわけではなかったので、体力面ではまだ余裕があるかなと思っています。ただらいねん3冠を目指すとなってくるときついと思うので、この1年で体力や筋力強化をしていかないといけないですね。
――よく試合中に応援しているチームメイトの方を向いていましたね。
心細かったというのもありましたし…(笑)、相手の真面目な雰囲気にのまれないようにしようと思って、自分の雰囲気をつくるためにやっていました。最後の方は自分の中で結構集中してできたので、最初の3ゲーム目までは本当に勿体無かったです。
――きょう戦ってみて船水選手の強さはどこにあると感じましたか
勝ちたいという気持ちや連覇がかかっているプレッシャーもあったと思うのですが、それを本当に勝ちきることができたのはすごいと思います。あととてもタフだなと思いました。そこをどう崩すかは自分の中で考え直していかなければならないと思います。とてもいい刺激になったので、お互いを磨き上げていくことができたらなと。らいねんは僕がシングルスに出たら3シードで決勝でしか当たらないので、決勝の舞台でまたペア対決でいい試合がしたいです。らいねんはお互いにいい状態で試合に臨むことが目標ですね。相手は常に勝っていて、でも誰かがそこを崩さなければいけないと思います。一番近いのが僕だと思うので、崩せるときに崩せるようにお互いに磨きをかけたいです。
――今大会の収穫は
大会期間が長くて、悪くなったときに気持のリセットがうまくいかなかったこともあったので気持の準備はもっとしていかないといけないと思いました。勝ちたいという気持ちはみんな同じで、そのなかで勝ちきることができるように技術面や体力面でまだ磨きをかけられる部分があると思うのでこれから頑張っていきたいです。
――らいねんに向けての意気込みをお願いします
ことしはシングルスはまぁ3位だったので僕の中ではよかったのですが、ダブルスが取れなかったことが大きかったです。船水さんの最後の年に、団体はもう絶対に取ることが条件だと思うので、団体を取って、ダブルスもとって、最後にシングルスは決勝でペア対決をして、最高の締めくくりにしたいです。そのために1日1日をおろそかにせずに、努力し続けていきたいと思います。