船水、貫禄の優勝!早大勢、大健闘!

軟式庭球

 全国の精鋭たちが集い、日本一のシングラーを決める全日本シングルス選手権。早大からは6名が32強入りして層の厚さを見せつけた。中でも船水颯人(スポ3=宮城・東北)は万全のコンディションでないにもかかわらず、決勝までわずか6ゲームしか落とさない圧倒的な戦いぶりを見せ、見事2度目のシングルスチャンピオンに輝いた!

 安藤優作(社3=岐阜・中京)は昨年の同大会ではベスト16、全日本学生シングルス選手権(インカレ)では3位と、シングルスで頭角を現してきた。並みいる強豪たちを下して迎えた準々決勝。相手は昨年敗退した増田健人(和歌山県庁)だ。「ただ打つだけだった」と昨年の自分を振り返ったが、ことしの安藤は一味違った。強烈なバックハンドにも受けの姿勢になることなく、積極的にネット際に詰めたり、ツイストで仕掛けたりと挑戦し続ける。1−4ゲーム目まで全てのゲームでジュースの熱戦を繰り広げたが、さすが相手は日本を代表するシングラー。後一歩が及ばす1−4で敗退した。しかし結果は昨年からさらなる飛躍を見せて堂々のベスト8。上級生になり船水と共に後衛の2枚看板として、早大を引っ張るという意気込みが感じられるような力強さを見せた。

昨年より成長した姿を見せた安藤

 1日目から順当に勝ち進んだ船水は、8強入りを懸けて丸山海斗(明大)と対戦。いきなり3ゲームを連取し、難なく勝つかと思われたが、巻き返される。前後に揺さぶられる攻撃を受け、ゲームカウント3−2に。それでも柔らかい体を生かしたカバーリング力の高さを発揮し、勝利を収めた。船水は「足がつっていたが、バレると攻撃されてもっと苦しくなる」とタイムを取らずに乗り切った。その後の試合は、元々施していたテーピングに加え、さらに量を増やして望む。準々決勝は、井口雄介(スマッシュイグチクラブ)と対戦。足の状態が万全ではないにも関わらず、ほとんど相手を寄せ付けず、ゲームカウント1−4で準決勝に駒を進めた。準決勝の相手は一昨年、昨年の覇者、増田だ。船水は昨年、この準決勝で姿を消している。第2ゲーム、相手のサービスエースに加え、短いコースを狙った球がネットをしたり、ストレートコースへのバックハンドストロークが風に流されたりと、ミスが続き、ゲームカウント1−1に。しかし、その後は粘り強さと突き刺さるようなストロークで、ラリー戦を制し、3ゲームを連取。終わってみればゲームカウント4−1で決勝進出を決めた。4強の顔ぶれは、昨年と全く同じ。そのなかで勝ち進んだことは、船水の成長ぶりがうかがえる。

圧巻の強さを誇った船水

 迎えた決勝戦。立ち向かうは昨年準決勝で対戦し、敗戦を喫した長江光一(平22スポ卒=現NTT西日本)。第1・2ゲームは、相手を左右に揺さぶる攻撃を軸に淡々と進める。失ったポイントは、2ゲーム合わせてわずか3。相手を応援する観客も、唸りをあげる堂々ぶり。船水の圧勝かという雰囲気が漂うなか迎えた第3ゲーム。長江も黙ってはいない。船水は深めの球で相手を差し込ませようとするが、粘り強く返球される。前後の揺さぶりを含めた広範囲に動かされる攻撃にも遭い、足への負担が重くなる。ジュースに持ち込まれ、アドバンテージを握られた。しかし、ここで集中力を切らさないのが船水。すかさずジュースに戻すと、ここまであまり仕掛けなかったカット回転をかけてネット前に落とすボールを打ち、バックアウトを誘う。今度は逆にアドバンテージを握ると、ラリーを丁寧に続け、第3ゲームを奪取。この時点で、流れはほとんど船水サイドへ。このまま勝ち切りたい第4ゲーム。大事な1ポイント目は、ここまで武器にしてきた左右に振る作戦で確実に得点。さらに2ポイント目も左右に振り、2回続けたストレートコースへの打球は、相手の逆を突いた。その瞬間、船水は、勝利を確信したかのような、一層大きな雄叫びをあげた。会場を味方につけ、最後は相手のネットでゲームセット。すぐさま後ろで応援をしていたチームメイトに向かって両手を上げ、吠えるように力強く腕を振り下ろした。兄・船水雄太(平28スポ卒=現NTT西日本)との兄弟対決を制した2年前のタイトル獲得に続く2度目の栄冠。この優勝は1年時のように、勢いに乗って舞い込んできた優勝ではない。ソフトテニス界を引っ張るまでに成長した男の戦略が詰まった、紛れもない完全優勝だ。

 船水の優勝に加え、早大勢が健闘を見せて、層の厚さを見せつけたワセダ。これからの戦力にも十分な期待を持てそうだ。次なる栄光へ向けて、目線は既に先にある。

(記事 吉澤奈生、吉岡篤史 写真 吉澤奈生)

2年振りに優勝を果たした

コメント

安藤優作(社3=岐阜・中京)

――昨年はベスト16という成績を残しましたが、今大会の目標は

昨年は全然上を狙っていなくて、正直勝てると思っていませんでした(笑)。ことしは狙ってベスト16に入れたなら良いなと思っていたのですが、それより後のことはあんまり考えていなかったですね(笑)。初日から結構きつかったので、目の前の試合を勝とうという気持ちでやりました。

ーー先週は関東学生春季リーグ戦(春リーグ)、その前はナショナルチームの合宿がありましたがその疲れがあったのでしょうか

はい、ありましたね。先週のリーグではシングルスの後にダブルスがあったのですが、結構足に疲れが来ていたので、シングルスは途中で棄権することになってしまいました。

ーー昨年は全日本学生シングルス選手権でも3位入賞し、シングルスで良い戦績を残していますがシングルスの取り組み方に変化はありましたか

特に自分の中で意識してシングルスを頑張ろうとした訳ではないのですが、昨年の成績は結構良かったと思います。でも、全ての大会で頑張って上位に行こうという気持ちは今までより強く持つことができるようになったのかなと感じています。

ーーそれは上級生になったことが影響しているのでしょうか

それもありますね。下の子たちも上手いし、僕の同期である船水(颯人、スポ3=宮城・東北)や星野(慎平、スポ3=奈良・高田商)だったりとは刺激し合って常に高め合うことができていると思っています。後輩に対して自分はあまり口でいろいろと言えるタイプではないと思うので、結果で示して引っ張っていけたらいいかなと。

ーー準々決勝はジュースが何度も繰り返される展開でしたが、振り返っていかがですか

昨年やった時には0-3まで何もできずにミスをして追い込まれて、そこからは割り切って2ゲーム取ったけれど負けてしまうという結果でした。今回は1ゲームしか取ることができなかったけれど、その時より良い試合運びができたと思います。最初から4ゲーム目まで全部がジュースでした。その中で自分のゲームポイントもあったのですが、そこで簡単に取らせてくれない相手でした。でもそこで結果としてミスにはなりましたが、自分もいつもと違う攻め方や仕掛け方を試したりして挑戦できたので、自分もやることはできたかなと振り返って思います。

ーー昨年とことしとでご自身で成長したと思うことはありますか

昨年色々な試合をやってきて、自分もただ打つだけではなくて変化を入れることを意識して取り組んでいました。そこが自分の成長したと思うところです。

ーーこれからの団体戦への意気込み

春リーグではとりあえず優勝することができましたが、これから控える日本学生大学対抗競技大会(東インカレ)、一番重要である全日本大学対抗選手権(インカレ)などでも明大や日体大などの力のある大学とも戦っていきます。勝負してみないと本当にどうなるかは分からないので、頑張って勝てるように努力していきたいです。やはり団体戦で勝ちたいという思いは特に強いので、自分も勝利に貢献できるように、また技術を磨いて頑張っていきたいです。

船水颯人(スポ3=宮城・東北)

――決勝戦を振り返えると

去年負けていたので、去年と同じようにならないように。まあでも正直なところ、決勝もそうですけど、準決勝から去年と同じ4強のメンバーで、どういう勝負になるか予想がつかなかったです。ただ、間違いなく激しい試合になることは承知してたので、そこでどれだけ自分からいけるかというのをちゃんと頭の中で決めてやりました。

――技術的な面でいうと、前後より左右の揺さぶりが多かったと思います

そうですね。僕の足の状態も良くなかったので、やっぱり自分から先に相手を前に出すと、自分が動かされることもあるので、その面で、横の方が勝負ができるかなと思いました。それも、直前の春リーグがあって、シングルスの選手権の時にはいけそうだなという感触はつかんでいたので、良かったと思います。

――足の調子は良くないですか

いや、できないというほどではないです。

――途中からテーピングの量が増えていましたが

ただ、もう2日目に残ったので、いくしかないなということで。(笑)

――横の風が強かったですが、それに関しては

全然気にならなかったです。左右で攻めようと思ってたので、逆にそれはプラスに働きました。

――プラスに働きましたか

そうですね。左右を意識していたので、いい感じのところに入りました。まあ試合の流れもずっと良い流れでいけたかなと思います。

――試合中は、ブツブツと何か自分に言い聞かせているような場面が多かったですが、シングルスでのメンタルの扱い方で意識していることはありますか

倒れないように、自分で攻め続けようとずっと言い聞かせてますね。

――意識的に自分で言葉を発しているんですか

そうですね。

――いつもより強めのガッツポーズでしたね

いやー、もう、ここまできたら。狙いにいけるところまでやってきたので。(笑)4強に残ったメンバーは、世の中でもシングルス強いメンバーだというのは間違いないですし、そのメンバーとシングルスができる機会も少ないです。それに、しっかり勝ち上がってきたなかで勝つことに価値があると思ったので、そこは本当に勝負をかけてやりました。

――5回戦での丸山海斗選手(明大)との試合では、ゲームカウントを3連取してから第6ゲームまでもつれましたが、その試合を振り返って

ストレートで終われないとは自分でも分かってました。1ゲーム取られた後、ラリーが長くて、左足がすごいつってたんですけど、一回タイムとかを取ると相手にバレて、攻撃されてもっと苦しくなると思ったので、威嚇しながらというか、バレないようにずっと走ってました。(笑)それで終わった後からテーピングの数が増えたと思うんですけど。(笑)でも、春リーグでも試合をやって、(丸山選手が)こういうふうにくるだろうというのは分かってたので、やっぱり春リーグは大きかったですね。

――試合が続いて疲れはありましたか

ありますけど、どっちかというと春リーグには(調子の)ピークを合わせていなかったので、最後はこっち(今大会)に合わせられるようにもっていけたらいいなと思っていました。大会期間中の練習のコントロールとか、全部しっかり管理して、こっちに合わせていたので、結果がついてきて良かったと思います。

――今後に向けて

まず、体の状態はあまり良くないので、万全に治すことです。あと、シングルスで日本一を決めるのはこの大会しかないので、あとは、天皇賜杯全日本選手権とか全日本大学対抗選手権(インカレ)とかでタイトルを取れるように、ペアも変わったので、新しい気持ちで頑張ります。