アジア選手権展望

軟式庭球

 4年に一度のアジア選手権がいよいよ開幕する。16年ぶりとなる国際大会の日本開催に、ソフトテニス界はいま大いに活気づいている。早大からは男女合わせて5人代表に選抜された。普段はエンジのユニフォームをまとい戦う彼らが、日の丸を背負いアジアの舞台ではどのような姿を見せてくれるのだろうか。アジア選手権での見どころに迫る。

 まずは代表選手一人一人を見ていきたい。男子部からは船水颯人(スポ2=宮城・東北)、内本隆文(スポ1=大阪・上宮)が選抜された。船水は早大に入学してから数多のタイトルを手にしてきた。昨年は全日本シングルス選手権で最年少優勝(18歳と113日)を果たし、ことしはインカレ3冠を達成。その勢いは留まることを知らず、先月行われた天皇賜杯全日本選手権(天皇杯)でも頂点に立った。(ペアは星野慎平、スポ2=奈良・高田商)代表経験は昨年の世界選手権から2度目となる。大会直前の急な招集だったにもかかわらず、金メダルの懸かる国別対抗決勝にシングルスで出場し、見事優勝を決めた。どんな状況にも対応できる精神面の強さも世界の舞台ですでに証明されている。ストイックなトレーニング量に裏付けされたスタミナと、カバーリングを武器にシングルスを得意とする。ことしは4種目全てに出場する船水。早大のエースは今や日本のエースでもある。「(出場種目)全てで優勝して4冠」と目標を語るように、瞳は頂点から逸れることがない。内本はことし高校2冠の看板を背負って鳴り物入りで入学してきた。ルーキーイヤーながら全ての団体戦に出場し、早大のインカレ5連覇に大きく貢献した。内本はことしが代表初選抜。持ち味である低い重心から放たれるストロークはアジアの舞台でどれほど通用するのか、期待がかかる。そして小学校から高校までペアを組み、別々の大学へと進学した丸山海斗(明大)とのペアの再結成にも注目だ。早大と明大でそれぞれ力をつけた二人はどんなコンビネーションを見せてくれるのだろうか。

四冠を目標に掲げる船水

 一方の女子部からは、3年生から3人が代表入り。平久保安純(社3=和歌山信愛)は二年連続日本代表に選抜された。昨年は国別対抗の決勝で韓国に敗れ悔しい幕切れとなったが、それから一年間その経験を糧に着実に力をつけてきた。韓国の後衛陣に刺激を受けて、バックハンドに磨きをかけた。その鍛錬の成果は結果になって表れる。ことしのインカレでは大学対抗とシングルスでの二冠。日本屈指のシングラーとなった。普段はクールに淡々と正確なショットをコートに打ち込むが、時折見せる内なる熱い闘志も見逃せない。そして女子部の大将ペアも初選抜。女子部のインカレ連覇にも大きく尽力した、杉脇麻侑子(スポ3=東京・文化学園大杉並)・佐々木聖花(スポ3=東京・文化学園大杉並)組だ。杉脇はロブなどで相手を翻弄(ほんろう)するプレーが印象的だが、逆に振り回された時にも強さを発揮し、軽いフットワークでコートを縦横無尽に駆け回る。来季の頼れる女子主将だ。佐々木も昨年、前日本代表として活躍した小林奈央(平28スポ卒=香川・尽誠学園)とペアを組み、多くの経験を積んだ。ミスが少なく、要所でのポイント力に優れる。「チャレンジしていけたら」と初の代表入りでもプレッシャーをばねにし挑戦していくことを誓った。文化学園大杉並高時代から培った二人のペアリングで、表彰台を狙う。

エースとしての活躍に期待がかかる平久保

 日本以外の優勝候補として挙げられるのは韓国と中華台北だ。個人で特筆すべきは韓国男子のキム・ドンフン。頂点を狙う上では必ず目の前に立ちはだかる存在になるだろう。船水も「この人に勝てたら本当の強さが手に入る」と言う。韓国は男女共にパワーとスピードが圧倒的だ。しかし、ことしは今大会の会場は日本に有利な砂入り人工芝。強敵だが勝機は十分にある。

 ことし早大軟式庭球部は多くの日本一のタイトルを手にした。その日本一の先は国際大会でのタイトルだ。国内開催で多くの重圧もあるはずだが、それをも跳ね返してのびのびとプレーし、表彰台で笑顔の早大戦士たちが見たい。

(記事、写真 吉澤奈生)