船水颯人（スポ２＝宮城・東北）・吉川純平（スポ４＝徳島・脇町）組がダブルスの栄冠を拝した！急造ペアながら、船水の勢いある打球と、吉川の最後のインカレにかける熱き思いがこもったプレーがうまく呼応し見事強敵を撃破。団体戦に続く２つ目のタイトルに、会場がエンジの歓喜の渦に包まれた。
★昨年覇者は悔しい結果に
安藤兄弟にとっては悔しい幕切れとなった。準々決勝進出をかけ、ぶつかった３日目初戦の相手は西森・真野組（同志社大）。第１ゲームからデュースにもつれ込む接戦を繰り広げたが、割り切って攻める相手に受け手に回り失ゲーム。その後も内容的には激しい攻防を展開するも決め手を欠き、ゲームカウント１ー５の悔しい敗戦。「学生の大会もラストで、今年２連覇できるのは僕たちだけの特権ですし、そういった部分で気負いすぎてしまった」（安藤圭）。頂点だけに狙いを澄まし臨んだ個人戦。しかしその思いの強さが逆に体を固くし、自分たちのテニスができなかった。しかし、この敗戦が次なるステージへの新たな燃料投下にもなった。「天皇杯で去年の成績を超えて最終的には優勝を目指す」と最高峰の舞台での活躍を誓った安藤圭。敗北を糧にさらなる成長を遂げた姿に期待がかかる。
★信頼の気持ちで頂点へ！
学生の頂点に立った船水・吉川組
星野の欠場により急きょペアを組むこととなった船水・吉川組。「行けるところまで頑張ろう」（吉川）、「３日目まで残ることが出来たことが奇跡」（船水）と結果に対しては消極的な姿勢を語る２人だったが、その姿勢は勝ちを意識しすぎることなく一本一本を取りに行くプレーに繋がった。迎えた準決勝では中平・米澤組（明大）のサーブに苦しめられながらも、船水の鋭いシュートボールやサーブ、吉川の要所での得点が光りファイナルゲームへ。相手のミスに助けられながら、７－４で決勝への切符をつかみ取った。決勝での相手は同じく明大の立木・平井組だ。序盤に３ゲームリードするが追いつかれてしまう。「相手の前衛も上手くて途中で合わせられて」（船水）と語るように途中リズムを崩される場面もあったが、試合展開は後衛同士の激しい打ち合いへ。船水の強烈なネットすれすれの低い打球と吉川の効果的なモーションで、５－３で勝利を収めた。優勝の瞬間、船水はコートに座り込み喜びをあらわにし、吉川は当時の心境を「信じられないという思いが一番で、その後にじわじわと嬉しい思いがこみ上げてきました」と語る。今回急きょペアを組むこととなった二人だったが、船水の「（吉川に）最後に花をもたせてあげたい」という先輩への思いと、吉川の「ただ自分の出来ることをやろう」という後輩を信頼したプレーで見事に優勝を果たすことが出来た。ワセダのエースの底力は勿論、ワセダの先輩後輩の固い絆がうかがえた一戦であった。
（記事、写真 三佐川唯、吉田安祐香）
コメント
安藤圭祐主将（スポ４＝岐阜・中京）
――個人戦はどういった意気込みでしたか
第１シードということもあって連覇を狙っていました。それが少し空回りしてしまったかなという気はします。学生の大会もラストで今年２連覇できるのは僕たちだけの特権ですし、そういった部分で気負いすぎてしまったのかなといま終わってみて思います。
――結果に関してはどのように感じていますか
そうですね、実力的に自分たちが劣っているとは思わなかったので、せめて同士討ちで最後は終われたらいいなとも思っていました。でも、そんなにうまくはいかなくて、やっぱり自分の思っていたほど甘いものではないのだなということを改めて感じました。
――試合内容を振り返って
そうですね、やはり向かってこられるというのが多くて、いつもはしてこないことを割り切ってやってきたり、いつも以上に調子が良い相手と当たってきました。そういった相手に対して少し受け身になってしまうというか、自分たちのプレーができないことも多かったです。今後自分はテニスを続けていくので、これからもそういったことはたくさんあると思いますし、そこで自分はどう対処するのかということも考えていければと思います。
――特に３日目の試合に関してはいかがですか
いつも負けるときはそうなんですけど、リードして入ったゲームを取られることが多くて、今日の試合も自分たちのそのリードしてても取りきれないという悪い形が出てしまった試合でした。
――船水・吉川組が優勝したことに関して
吉川とはずっと１年生の時から仲が良くて、同じ時間を過ごしてきた存在です。そ今回急きょペア変更があって、お互い第１シード、第２シードとして最後決勝で試合ができたら良いなといった話はしていたんですけど、僕らが負けてしまって、その分吉川たちに勝ってほしいという気持ちは強くありました。なかなかうまくいかないこともあったと思うんですけど、最後はふんばってめげることなく戦ってくれたのでその姿を見て僕も感動しました。
――１番大きな声で応援されている姿が印象的でした
そうですね、もともと応援することとか仲間が頑張っている姿を見ることが好きなので（笑）。特に決勝に関しては吉川は大きなプレッシャーと戦いながらプレーしていたと思うので、僕の応援が少しでも力になれれば良いかなと一生懸命応援しました。
――本日で大学生活最後のインカレが幕を閉じました
そうですね、団体戦で５連覇したこともあって個人戦でも４年連続ベスト４に入れればうれしいなという思いはあったんですけどらまだまだ自分には足りないものがあるんだなとこのインカレで気づくことができました。学生の大会はこれでいったん区切りがつきますが、まだまだテニスをする機会はあるので、そういったステージで４年間のインカレで経験したことを発揮できればと思います。
――今後の個人戦の意気込みをお願いします
社会人１年目などになってしまうと、やっぱり環境も変わってきてテニスに打ち込める時間も余裕も少なくなってくると思うので、今学生でテニスに打ち込めるうちに一番大きな大会である天皇杯で去年の成績を超えて最終的には優勝を目指しています。早い遅いといったことはないと思うので、今年にでもチャンスを逃さず獲りに行きたいです！
吉川純平（スポ４＝徳島・脇町）
―― 優勝おめでとうございます。今大会にはどのようなお気持ちで臨まれましたか
まず自分は出る予定ではなくて、星野の代わりで後衛が船水ということでかなりプレッシャーはありました。ただ自分の出来ることをやろうと思っていました。他の４年生にも言っていたのですが、「行けるところまで頑張ろう」と。ほぼ船水に任せて自分は気楽にやろうと思っていました。
――やはり４年間の思いはありましたか
４年だったのでインカレに出られないということになって落ち込んでいた部分もありましたが、今回のこのチャンスは生かすしかないなと思ってそれがこういう結果になってくれて本当に嬉しいです。
――続いて準決勝を振り返っていかがですか
リードしていたのに追いつかれたので最後はどう動いたらいいか迷っていた部分もあったんですが、最後は船水が打ってくれて、ファイナルも最初からリード出来たので、僕は本当にさっきも言いましたが自分のところだけ、という感じでした。
――苦しい展開になることも多かったですが
僕は自分のところだけどうにかすれば絶対にどうにかなると思っていたので、苦しい時こそ本当にそういうことを考えてやっていました。
――ファイナルゲームはプレッシャーのかかる場面でしたが
追いつかれて流れが向こうに行ってしまうのかなと思って「何かしなければ」と思っていたんですが、追いつかれてしまって…。でもそこは船水がしっかり頑張ってくれたと思います。
――決勝を振り返っていかがですか
決勝もリードしていたところから相手が割り切って来て僕がミスすることも多かったです。最後まで相手の攻めるボールを僕が止められなかったのですが、相手のミスもあって最後には勝つことが出来て本当に嬉しかったです。
――優勝した時のお気持ちは
信じられないという思いが一番で、その後にじわじわと嬉しい思いがこみ上げてきました。あとはやはりいきなり船水と組むことになったので、そのプレッシャーから解き放たれた安心感や開放感がありました。
――船水選手と組んでみていかがでしたか
組むのが初めてだったのでどうなるかなと思っていたんですけれど、普段から仲良くしていているのでコミュニケーションを取りながら出来たのでよかったなと思います。
――ことしの代ももう少しで終わりますが、改めてどんな代でしたか
かなり個性的でやりたい放題やって、という学年でした。とにかく気持ちを１つに日本一になりたいという気持ちだけはどの大学にも負けないようにと僕は思っていました。
――４年としての１年間を振り返って
チームをまとめたりだとか、色んな大変なことが起こってやはり四年がしっかりしないと下級生もついてこないので。色々あったけど本当に楽しい１年でした。
――後輩へ向けて
僕らの代が去年始まって、５連覇に挑戦できるということですごいワクワクと不安とあったんですけれど、多分今の後輩もプレッシャーがかかってきているとは思うんですがプレッシャーをはねのけてその期待に応えて、６連波７連覇とこれから続けていってほしいなと思います。
船水颯人（スポ２＝宮城・東北）
―― 優勝おめでとうございます。今のお気持ちは
自分自身にびっくりしています。ペアが違うというのもありますし。４年生と組むということになって、近くで４年生として頑張ってくれていたのが吉川さんだったので、そこは最後に花をもたせてあげたいという思いがありました。僕自身の状態も良かったのですが、３日目まで残ることが出来たことが奇跡だと思っていました。でも勝ててしまったので本当にびっくりしてますが、嬉しいですね（笑）。
――準決勝を振り返っていかがでしょうか
相手の選手もとても上手かったので、僕らの弱点をどんどん突かれてきたという感じでしたが、要所で吉川さんが動いてくれて、ポイントは少なかったんですが大事なところで一本取ってくれたので助かりました。
――サーブに苦しむ展開もありました
僕の方の２点で取らなければいけないと思っていたので、本当に僕の最初の２本は集中してサーブを一本取りに行こうと思っていました。吉川さんになるべくプレッシャーがかからない状況でサーブを打たせてあげたいという思いがありました。リードしている時は吉川さんに「思い切り行ってください」と言っていたのですが、全体を通して最初に僕が２点取れている時にはセットが取れていることが結構あったので、そこだけは集中して行こうと吉川さんと話していました。
――逆に相手のサーブについてはいかがでしたか
後衛のサーブがすごくいいので、コース来るところは分かっていたんですが、それでも少し苦しかったので、どこかで僕が開き直って一本決めるしかないと思っていました。カットレシーブはちょっと僕の気持ちの焦りが出てしまってネットに引っかかることもあったんですが、途中で修正出来たのでそこは良かったかなと思います。
――ファイナルゲームはプレッシャーのかかる場面でしたが
なるようになれと思っていました。本当に勝ちたいなんて考えていなかったんですが、ただ勝つにしても負けるにしてもここまで来たらやりきって終わりたかったです。去年は大会を通して「ああしておけば良かった」という思いが強かったので、今回はそれだけはしたくないと思っていて、後悔した形で終わりたくなかったです。自分の思ったことや信じていることをやりきることが出来ました。
――ファイナルゲーム全体を振り返っていかがですか
最初に大きくリードすることが出来たのが勝因ですね。
――続いて決勝を振り返っていかがでしょうか
相手の後衛は僕が結構得意で、テンポが結構速いラリーになってしまいました。そこは吉川さんも分かって逃げてくれていたので、吉川さんには自分のところに来たものをしっかり抑えてくれればいいなと思っていたんですが、途中に相手の前衛に仕掛けられてこれはやばいなと思いました。でも結局最後は相手の前衛のミスに助けられて、それも去年からしっかり１年間取り組んできたものを積み重ねて運も味方についたということかなと思っています。
――３ゲーム先取から追いつかれる展開となりました
最初の３ゲーム取ったのは僕が相手の前衛が仕掛けてきたものを抜いて抜いてという感じだったんですが、相手の前衛も上手くて途中で合わせられて、打とうと思ってもなかなか出て来てくれなかったりというのがありました。でも迷って取られた訳ではなくて、打ち切っても取られるものは取られるし、打ち切ってポイントを取られるなら仕方ないと思っていたので、迷った中途半端なミスはなかったかなと思います。
――最後の後衛の打ち合いについてはいかがでしたか
あれが向こうの選手の持ち味なので、最後は「来たな」と思いました。何かしてくるだろうとは思っていて、最後は吉川さんも逃げてくれるのでそこだけは取ろうと思っていました。最後は吉川さんが逃げてサイドアウトが取れたので、僕自身も少し苦しかったんですが前で吉川さんがしっかりプレッシャーをかけてくれたので相手の後衛もやりづらかったかなと思います。
――吉川選手と組んでみて改めていかがでしたか
４年生でチームを引っ張ってくれていた人たちだったので勝たせてあげたいという気持ちはあったんですがまさかここまで勝てるのは思っていませんでした。僕よりも吉川さんの方が物凄くプレッシャーがあったと思うので、上から目線じゃないですけれど、本当に頑張ってくれたなと思います。
――シングルスに向けての意気込みをお願いします
そうですね。三冠した人が鹿島さん（鉄平、平２３スポ卒＝現ヨネックス）っていうOBの方しかいないので、出来ればそこに並びたいですけれど、やはり勝ちを意識すると自分のプレーが出来なくなるので、自分のやりたいことをやって負けるなら仕方がないと思うので、後悔のないように一戦一戦戦いたいと思います。