準決勝に勝利し、迎えた決勝戦。昨年敗れた台北市大(台湾)と再び顔を合わせる。若い力で先に2勝を挙げるも、そこから5番勝負にもつれ込んだ。昨年と同様の立場に立った加藤顕成(スポ4=広島翔陽)が、1年前王座を逃した悔しさをバネにして、コートで躍動する。気迫のこもったプレーで、相手を圧倒。昨年の雪辱を自らの手で晴らし、見事王座奪還を果たした!
準決勝では忠北大(韓国)をストレートで下し、迎えた台北市大との決勝戦。昨年と同じ対戦カードとなる。1番は内本隆文(スポ1=大阪・上宮)・星野慎平(スポ2=奈良・高田商)組だ。「絶対に勝たなくてはならない」(内本)という思いで、臨んだ相手の大将ペアとの一戦。序盤はカットサーブに対応できず、浮いて返ったレシーブをコートにたたき込まれてしまう。ファーストサーブが入らず、ダブルフォワードに攻め立てられて2ゲームを落とし、劣勢に立たされた。粘りを見せたい3ゲーム目からは、ダブルフォワードに対して内本と星野が後ろに下がりロブなどで対応する。そのカウンターでパッシングを打ち込んだりといった緩急をつけた攻撃で流れを引き寄せるかと思われたが、相手も強敵、簡単には逃げ切らせてくれない。強烈なスマッシュを打ち込まれながらも、好機を伺いながら粘り強く拾い続ける。1点取るごとに大きくガッツポーズをして、自らを奮い立たせた。勝負はファイナルへともつれ込む。落ち着いて臨機応変に陣形を変化させ、貴重な白星をつけた。続いてシングルスに船水颯人(スポ2=宮城・東北)が登場。危なげない試合運びで4-1で勝利をおさめる。下級生の活躍が光り、王座奪還をぐっと引き寄せた。
プレッシャーをはねのけ、チームを勢いづけた内本・星野組
しかしそこからが苦しかった。安藤優作(社2=岐阜・中京)・松本倫旺(スポ1=熊本・済々黌)組は力みが見られ、ストレートで敗退する。続くシングルスの名取敬恩(スポ4=秋田・大館鳳鳴)もカットサーブに苦しみ、反撃の糸口を見つけられずに0-4で敗れた。勝負の行方は長尾景陽(社1=岡山理大付)・加藤組に委ねられた。昨年の王座の決勝でも、同じ相手に5番勝負で敗れている加藤はこの一戦に並々ならぬ思いがあった。昨年の負けの悔しさをこの1年間忘れていなかったという加藤は、1ポイントを取るごとに、自身を盛り上げるように声をあげガッツポーズを見せる。ダブルフォワードの相手に対して、落ち着いて低めにボールを集める。勢いそのまま3ゲームを連取するも、相手が粘りを見せた。3-3と追いつかれるが、ここからペアでコミュニケーションを取って昨年の結果を連想させるような空気を振り切る。チームの声援も2人を後押しした。長尾は「(4年生を)何としてでも勝たせたい」という気持ちで懸命にボールをつなぐ。加藤はコートを駆け回り、要所でコースを突いたスマッシュを打ち込む。そして迎えたマッチポイント。最後は加藤がコートの状況を瞬時に把握し、ダブルフォワードの頭上を通してゲームセット。王座奪還の瞬間、メンバーたちが2人に駆け寄り加藤の目からは涙がこぼれた。
王座奪還を達成し喜びを爆発させる長尾・加藤組
今大会では下級生は4年生を勝たせたいという気持ちを持って躍動し、4年生は昨年先輩を勝たせられなかったという悔しさを力に変えた。そして試合に出ていないチームのメンバーも精一杯声援を送ることで、出場する選手たちに力を与えた。チームが1つになって、見事チームの総合力で悲願の王座奪還を果たした。安藤圭祐主将(スポ4=岐阜・中京)が不在ながらここまでの結果を残せた経験は、必ず全日本大学対抗選手権(インカレ)にも活きてくるはずだ。さらなる成長を遂げる早大軟式庭球部から目が離せない。
(記事 吉澤奈生 写真 熊木玲佳、吉田安祐香)
笑顔で王座奪還を果たした
結果
▽準決勝
○早大 3-0 忠北大
○内本・星野 5-2 Jang Hyun Tae・Youn Ji Hwan
○船水 颯人 4-0 Kim Hyoung Kun
○安藤(優)・松本 5-2 Kim Yong Jun・Jang Myung Ho
▽決勝
○早大 3-2 台北市大
○内本・星野 5-4 葉 ・余
○船水 颯人 4-1 林 佑澤
●安藤(優)・松本 0-5 陳(宗)・林(聖)
●名取 敬恩 0-4林 韋傑
○長尾・加藤 5-3 陳(湘)・沈
コメント
加藤顕成(スポ4=広島翔洋)
――優勝おめでとうございます!今の率直なお気持ちは
もう本当にとっても嬉しいです!それだけです。
――昨年と同じ場面で回ってきましたが、どのように試合に臨みましたか
きょねんと全く同じ相手で、その時は0-5で負けてしまいました。1個上の先輩たちを勝たせてあげられなかったことが本当に悔しくて、1年間その負けた時の思いが残っていました。そういうのを忘れないようにしようと思って1年間やってきて、今回は入りから良い流れで試合運びが出来て、ペアの長尾(景陽、社1=岡山理大付)もよく頑張ってやってくれたのが良かったです。きょうは勝ち負けなどよりは最終学年の4年生として気持ちを見せようと思っていたので、結果として表れたのが何よりでした。
――ダブル前衛の相手に対する対策は
きょねんやったのも同じペアだったので、やはり同じことを同じようにやられて2回は負けられないなと思っていました。きのうも夜寝る前にきょねんの(ビデオ)を見て、その負けた時の悔しさを忘れずに臨機応変に対応していこうと長尾と話し合っていました。
――1点入る度に大きく喜びを表している姿が2日間通して印象的でしたが、やはりそれだけ思い入れの強い試合でしたか
安藤主将(圭祐、スポ4=岐阜・中京)がいない中、4年生としての立場というのと、自分も3年連続で5番勝負なのでこれもまた運命なのかなと思って、すごく気合いが入りましたね(笑)。
――途中失速する場面もありましたがどのように立て直されましたか
自分たちもやろうとしていることは合っているのですが、それが少しづつずれてきてミスに繋がる時がありました。ゲームカウント3-3になった時に長尾と少し時間を取って、お互いやっていることは合っているから自分のやるべきことをしっかりやろうと話し合って、そこからは何とか上手くいったので良かったです。
――主将不在の中、王座奪還を達成したことには大きな意味がありますか
普段なら主将が出てしっかりとやってくれるとは思うのですが、主将不在の時も4年生のチームであることに変わりはないので、その底力を見せられたことは大きなプラスだと感じました。
――今大会の結果は4年生の活躍と下級生の活躍によってみんなで手にした優勝だと感じました
団体に出ていたメンバーのほとんどがジュニア時代から有名な選手たちで、ナショナルチームとかアンダーのチームで活躍している選手も多く、そのような一人ひとりが力を出し切って総合力で勝つことができたと思います。先輩後輩関係なく声かけをして、ベンチからドンマイとかナイスプレイなどの応援をすることで良い雰囲気の中で出来たと思います。プレーしやすかったです。
ーー今後に控える大会への意気込み
この王座での勝利を弾みとして、4年生からしっかりと団結してまた頑張っていけると思うので、インカレ史上初の5連覇に向かって一生懸命まずは東日本インカレから戦っていきたいと思います。
安藤優作(社2=岐阜・中京)
――今大会にはどのような意気込みで臨まれましたか
昨年は台北大に5番勝負で自分が負けたので、勿論台北大に勝つのもそうですけれど、他のチームも強いですし、優勝を目指して1つ1つ勝っていくという感じでした。兄がいなかったので、多少は昨年に引き続きそういう感じになってしまったので、少しやりにくいかたちではありました。でも戦っていてそんなに悪かったなという感じではなく、そこそこの手応えや達成感はあったので良かったと思います。
――今回は一年生とペアを組むことになりましたがいかがでしたか
高校の時も後輩と組んだことは無くて、大学に入って初めて後輩と組むことになって最初はどうしたら良いか分からずに、成り行き任せという感じでやってしまっていました。そこは僕が引っ張ってあげなくてはいけなかったなと思います。今までは実力的にはずっとやっていたので兄の方が上で、そういう感じでやっていたので。僕がペアを組んだ松本くん(倫旺、スポ1=熊本・済々黌)はすごく上手な子だと思うんですが、やはり試合に出るのは初めてだったということで、そこは2年生なんですが試合も経験しているので、僕の方が引っ張って行かなきゃいけなかったなと思います。
――決勝では終始後手に回る展開となってしまいましたが
入る前からどうしようと考えて入ってはいました。しかしいざ試合になってみると想定はしていたんですが相手の方が一枚上というか、やることやること上手く対応してきますし、それで力が入ってしまいました。王座は来年再来年もあり、僕はまだ台北大に勝っていないので、リベンジしたいと思っています。
――台北大を意識して対策していたことはありますか
相手は2人前に詰めてくるので、ワセダで一番ストロークが上手い内本くんのペアとかは、2人でストロークで粘って上手く攻めてってやっていたので、僕たちもそうやろうとは思っていたんですけれど上手く出来なくて。それなら前衛を前にして僕が後ろに下がって配球して点を取ろうかなと思ったんですけれど、やっぱり1発で決められてしまうので(2人で)後ろに下がって、というのをやっていました。でも点の取り方というか、もう少しこうすれば出来るというのは見えてこなかったので、そういうところは課題だと思います。
――東日本インカレへの意気込みをお願いします
東日本インカレは、インカレの前哨戦みたいな感じで、特に団体戦の殲滅(せんめつ)戦はインカレと東日本インカレくらいしかないので、インカレの感覚を掴む良い機会になると思っています。ナインゲームマッチの3ペアの選別戦なんですけれど、他の大学が結構強いと思うので、インカレに向けて弾みがつけられたらなと思います。
内本隆文(スポ1=大阪・上宮)
――今大会1年生ながらの出場となりましたが、どんな気持ちで臨まれましたか
僕のペアが星野さん(慎平、スポ2=奈良・高田商)だったので、絶対に負けてはいけないというプライドを持ちながらやりました。
――星野選手は前まで船水颯人選手(スポ2=宮城・東北)と組まれていましたが、その星野選手と組むことに対するプレッシャーはありましたか
星野さんと組むこと自体にプレッシャーはなかったのですが、絶対に勝たないといけないというのは少しありました。
――きょうはガッツポーズも見られて、気合が入っているのかなという印象でしたがいかがでしたか
入っていました(笑)。
――対戦相手はダブルフォワードであったり、カットサーブであったりが特徴的なペアでしたが、どのような対策を練りましたか
最初はカットサーブばかりで全然対策できていなくて。後から監督にも言われたのですが、短くて緩いボールを足元などに入れていくといいと言われたので、がっちり打つ格好をして緩いボールを打つという対策をしていました。
――ロブなども織り交ぜていましたね
僕と星野さんが下がったときに振ったらいつも点を取れたので、高い球を上げてつないで、たまにスマッシュが返ってきたらそれをカウンターで攻めるという戦術でした。
――代表合宿に参加されたと思うのですが、合宿を経て成長した部分はありますか
フィジカルの面ではトレーニングが多いので、学校に帰ってもやって、体からつくっていかないとなと思いました。
――いつも学校でやるようなトレーニングとは違いましたか
トレーニングルームで(ちゃんとやる時間がありました)。
――次はインカレ(全日本大学対抗選手権)の前哨戦とも言える東日本インカレ(東日本学生大学対抗競技大会)が控えていますが、それに向けて意気込みをお聞かせください
団体戦はもちろん優勝を狙っていたのですが、個人戦もしっかり上の方まで残りたいと思います。
長尾景陽(社1=岡山理大付)
ーー優勝おめでとうございます!今の率直なお気持ちは
きょうは準決勝は出番がなく決勝が1試合目で、朝もあまりこの体育館で練習を出来ていなかったんです。その状態で決勝で5番勝負になって。春季リーグ戦の日体大戦では4番の勝負を決める立場で出たのですが、負けてしまっていたので、個人的な借りをこの場で返せたかなとは思いますね。後はこれから控える大会では自分の出る機会も減ってくると思うので、その少ない出場機会をどれだけものに出来るかを考えていて、勝利という結果は本当に良かったです。
ーー加藤選手と組むのは初めてと伺いました
こう動いて欲しいとか言いたいことがあればどんどん言って欲しいと言ってもらって、まめにコミュニケーションを取りながらお互いの要求を言い合えたので、試合でもそれが活きたかと思います。
ーーいつもコート内で声を出しながら元気よくプレーする姿が印象的ですが心がけていることはありますか
今回は特に、引っ張ってくれる4年生の加藤さんとペアで、さらに王座という大会だったので、何としてでも勝たせたいという思いがありました。だから自分のことはしっかりやろうと思い、声出して頑張りました。
ーー1年生からこの大舞台に出れることについてどのようにお考えですか
出ることが出来ない部員もたくさんいる中で試合に出ているので、責任感を感じます。だからこそ、勝利という結果で貢献していきたいなと思います。
ーー決勝の相手に対する対策は
ダブル前衛のペアということは分かっていたので、まずは足元にボールを沈めることを意識しました。僕自身は相手の前衛が動揺というか緊張して気持ちがブレていたと思ったので、そこを攻めました。そうやってひとつひとつ対策を練れたのが良かったです。
ーーカットサーブに関してはいかがでしたか
普段からあまり対策は出来ていなかったので、最初は返せるか不安でした。でもそんなに精度が高くなかったので、自分の感覚で返せたかなと思います(笑)。
ーーこれから控える個人戦も含めた大会への意気込み
団体戦でも出番が無くなる可能性の方が高いので、応援しながら1年生の仕事をして、勝てれば1番かなと思います。