【連載】インカレ全冠&天皇杯・皇后杯直前特集『FIGHTER』 第3回 船水颯人×星野慎平

軟式庭球

 ルーキーとは思えぬ類まれなる実力を発揮し、東日本学生選手権や関東選手権など数々のタイトルを獲得してきた船水颯人(スポ1=宮城・東北)・星野慎平(スポ1=奈良・高田商)組。全日本大学選手権でも2番で出場しワセダの優勝に尽力した。その二人が初めて臨んだ大学の全国の舞台で感じたものとは――。とどまることを知らない成長株は更なるステージでの活躍を誓った。

※この取材は10月4日に行われたものです。

「この夏までは4年生を勝たせる、その思い一心でやってきた」(船水颯)

1年生ながら団体戦でチームの要として活躍した船水颯

――インカレ全冠優勝おめでとうございます

二人 ありがとうございます。

――インカレ全冠を振り返って

船水颯 いままで兄とチームが被ったことがなかったのでこの夏までは兄や4年生たちを勝たせるという一心でやってきました。あと、高校時代に一緒に早稲田に行こうと誓った安藤兄弟のペアや星野たちとインカレを勝ち取れたので早稲田に来てよかったなと実感しています。

――特に船水雄太選手(スポ4=宮城・東北)を勝たせるという思いが強かったのでしょうか

船水颯 あ、はいそうですね。あと九島(一馬、スポ4=宮城・東北)さんとかも小さい頃からお世話になっていたので、お世話になった分、恩返したいという気持ちは大きかったです。でも、インカレでは最後に4年生が勝って優勝を決めてもらいたっかったんですけど、自分たちが邪魔してしまい、ちょっと申し訳ないという気持ちも残っています。

星野 船水も言ったんですけど、インカレの決勝で自分たちが負けてしまって、4年生の船水・九島組に優勝を決めさせてあげられなかったのが悔しいです。来年以降は、負けなしで行きたいと思っています。

――事前合宿は調子が悪かったと言っていましたね

船水颯 インカレ終わってから、ちょっとずつ、いまは調子上がってきてます。インカレ前はいろんな思いがあったので、無意識のうちに自分を追い込んでしまっていたのかなって思います。自分が調子悪くても、試合入る前にみんなが笑って声援を送ってくれていたので、自分がふがいないところを見せたらだめだと思ってペアの星野とかに笑って声かけたり、自分のプレーを保てるように意識してました。でも、正直なところ、試合始まる前から調子悪かったのでまずいなとは思っていました。

――では調子は上向きの状態だということですか

船水颯 そうですね。インカレの時がいままでテニスやってきた中で一番苦しかった時期なので、それよりかはましな状態にはなっています。
入学してからずっと勝ち続けてきて、それがいきなりインカレ前にガクッと落ちて正直精神的にきつかったです。でも、これが最後の4年生の時とかじゃなく、入学してから1年目だったので、こういう辛い経験が早めにできて、むしろ良かったかもしれません。

星野 僕は調子的には普段とあまり変わりはありませんでしたね。ただ、全国大会特有の雰囲気にのまれて、足が動かなかったり、気持ちの面で引いてしまう場面とかありましたね。

――雰囲気にはやはり違いはありますか

星野 六大学リーグとかと比べるとかなり違いがありますね。

――インカレ4連覇がかかっていたということも関係しているのでしょうか

星野 そうですね。船水・九島ペアを勝たせるために、自分たちが負けたらあかんっていうプレッシャーとかありましたね。

――唯一の4年生だった船水・九島組の活躍を見て4年生はどのような存在だとおもいましたか

船水颯 絶好調ってわけでもなかったと思うんですけど、僕たちの後ろには4年生がいるってことが力強かったです。また僕たちや安藤兄弟が途中まで全勝できてたので多少は信頼されてたと思うので、そこは嬉しいです。

星野 顔とか見てそう思ったわけではないんですけど、インカレ4連覇がかかっているからか4年生たちも緊張をしていたように感じました。船水が言ったように、4年生たちから信頼されるように出場できたことがうれしかったですね。

――2番は気持ち的に楽でしょうか

船水颯 インカレでは安藤兄弟ペアの仕上がりが良く、毎回勝って僕たちにつなげてくれるし、後ろに船水・九島ペアがいたので気は多少楽でした。でも、試合が始まるとそんなこと考えなくなるし、やることをちゃんとやれば結果は出てくると思っているので、真ん中だから楽というのは特にないですね。

――決勝で安藤兄弟が優勝を決めた瞬間はみんなが駆け寄って喜んでいましたね

船水颯 みんなそれぞれ違うこと思っていたと思うんですけど、僕は前半戦不調だった同級生の安藤やケガをしてチームを離れていた安藤さんたちが優勝を決めた瞬間、二人の今までの思いとかいろんなものが伝わってきて感動しました。

星野 僕が高校1年生の国体の決勝が今回と同じ場面でした。そのとき国体で優勝を決めてくれたのが3年生の先輩で嬉しいけど、自分は負けてしまい足を引っ張ってしまって。悔しいみたいな気持ちです。

――では、次にダブルスについてですが、準決勝では中大の丸中・鈴木組との対戦になりました

船水颯 近くにダブルフォワ―ドのペアがいないのでちょっとそこは苦戦しましたね。あと、当時の僕の調子から言うと準決勝まで行けたのがほぼ奇跡に近いのでペアの星野に助けてもらって、なんとかという感じです。当時の調子はあからさまに悪かったですね。本当に。たぶん、星野もやっていて感じていたと思います。

――星野さん、気づいていましたか

星野 そうですね。空振りとか普通にしてて、途中で「あれ」って感じるところが多かったですね(笑)。

船水颯 そうなんですよ。試合中に5本くらい空振りしていました(笑)。からぶるたび、「あーもう、どうしよう」と思ってしまって。でも、そこを星野がうまくカバーしてくれてうまく準決勝まで行くことができました。あと、ダブルスは3日間あったおかげで1日の試合数も少なかったですし、そこが良かったのかもしれないです。

―丸中・鈴木のペアと対戦した準決勝の内容は振り返っていかがですか

星野 僕自身、前衛なのでストロークする機会とか少なくて、あんまりできないのでダブルフォワ―ドは嫌ですね。あとカットサーブとかの返球とかにも苦労しました。これから相手がダブルフォワ―ドだとしてもしっかり対応できるようにしていきたいです。特にカットレシーブだったり、後ろ下がりながらのスマッシュとかですかね。

――丸中・鈴木ペアは東北高校出身の先輩ですが

船水颯 そうです、先輩です。ナショナルチームの合宿とかで対戦したことはあります。あと高校の時に1回、大学に入ってからは東日本インカレの団体戦の時に当たりました。でもそれくらいしかないし、ダブルフォワードの有名なペアが丸中・鈴木しかいないので難しいですね。

――その丸中・鈴木ペアを倒して安藤圭祐(スポ3=岐阜・中京)・安藤優作(社1=岐阜・中京)組は優勝を決めました

船水颯 チームとしてはうれしかったです。同じ1年生として入った安藤が優勝を決めたということだったので悔しい気持ちもありましたね。うらやましいっていう感情じゃなくただ悔しいっていう感情です。

――安藤兄弟の様子を外から見ていかがでしたか

船水 弟の方のオーラがやばかったんですよ。団体の時以上にやばかったですね。隣で試合してたんですけど、途中で気になっちゃいました(笑)。今までで見たことないようなプレーしかしないんでびっくりしました(笑)。お兄さんの方もいつもはミスするところも全部決めてきたりとか、やっぱりあの時はキていましたね。

――シングルスで6冠を達成でしたが、船水雄太選手が優勝した時の様子は

船水颯 とにかく喜んでいましたね。あと、できれば兄弟対決とかしてみたかったです。会場が山形だったので、たくさん知り合いとか来ていたので見せたかったっていうのもありますし。狙ってはいたんですけど準々決勝で負けてしまって、あれを勝っていたら、もしかしたら行けたかもと思うので悔しいです。

――3-0からファイナルまでもつれこんで激しい試合をものにしました

船水颯 緊張ではなかったと思うんですけど、ホッと安心してしまったんじゃないですかね。相手も下手くそじゃないので一瞬のスキを突いてきたんだと思います。あと、そんな簡単に勝てる相手ではないだろうっていうのはわかっていたので相手はどこかのタイミングでどうにかしてくるだろうと思ってました。

――全冠には女子部の存在も欠かせませんが、特に団体戦を振り返ってみていかがですか

船水颯 最後はかなりの差で負けていて、正直負けるかもって思ったんですけど、そこからいきなり(小林さんの)球筋が変わって、うわ、いきなりここで本気出してきたーって思って(笑)。本当にすごかったですね。

――自分が同じ状況にいたらどうですか

船水颯 いやあれは無理です。ギアの上げ方がやばかったですよね。あの時の小林さんは本当にすごかったです。世界の小林です(笑)。

星野 僕は佐々木さんがすごいなって思いましたね。マッチ取られているのに出るなんて僕には無理ですね。(小林さんについても)実際、自分が前衛で後衛にそんな人いたらめっちゃ心強いですね。

――ワセダの強みとは

星野 他大学と比べるとワセダが1番練習している所と試合での雰囲気ですかね。やっぱり試合での雰囲気が良いと内容につながってくるし、勝利にもつながってきていると思います。自分は高校でもそういう環境でやってきてたんですけど、大学に入って改めて雰囲気や日々の努力の成果の重要性を実感しましたね。

――大会を見ていてワセダは他大学とは違う雰囲気がありますね

星野 なんか違いますよね。応援が特に違うと思います。ワセダが1番伝統をきちんと守ってやっていると思っています。

船水颯 僕はワセダの練習では毎回監督が練習に来ないので、そこが強みだと思ってます。自分たちから行動を起こして、考えて練習しています。選手1人1人の自主性を重んじるってことも強みだと思いますね。ワセダは他大学とは違ってみんな寮じゃないんですよ。他大学と違って良い意味でも悪い意味でも自己責任が求められている中で結果が出せているっていうのは本当にすごいことだと感じています。

「勝ち負けは自己責任という環境だからこそ、勝利に価値がある」(船水颯)

――では、ここから普段の練習やプライベートについてお伺いしていきます。まず強豪・ワセダではどのような練習をされていますか

船水颯 平日は主に自主練です。時間も指定されていて、自分で練習を考えて自主的にみんなやってますね。みんなでまとまって練習するってことはほとんどないです。誰とでもペアを作って練習してます。

――練習でのペアは星野さんと組まれるのが多いのですか

船水颯 そういうわけでもないですね。主に前衛は前衛で後衛は後衛でって感じです。見て学べますし、練習を真面目にしている先輩をお手本にしています。

――監督不在ということですが高校時代とのギャップは

船水颯 僕の高校はほとんどワセダに近いような環境だったので特にありません。ただ、高校時代よりは練習時間が減ったので最初の方は空いてる時間に無理やりでも練習するようにはしています。でも、今は短い時間の中でどれだけ質を高められるかってのを意識して練習できています。

――東北高校の監督の指導法は

船水颯 星野の高校は監督が引っ張るタイプなのですが、それと違って、ああしろ、こうしろということは言われなくて、自分で考えてやれって感じでした。

――船水さんは高校時代に主将をされていましたね

船水 僕もあんまり人にどうこういうタイプではないので、とにかく練習中とかで声出すくらいしかできていませんでしたね。どちらかというと背中で語るタイプだと思います。

――では、お兄さんと結構似ている感じですか

船水 高校では兄と被ってなかったのでわからないです。大学は伝統の重みとかいろんなプレッシャーがあって高校とはだいぶ違うと思います。でも、4年後自分がそこに立ったときどうすべきかを考えながらこれからやっていきたいです。

――星野さん出身の高田商はいかがですか

星野 土日とかも朝8時からの朝練に監督がいたり、練習が終わるまでずっといるんですよ。監督がずっとつきっきりで教えてくれていたので今の環境とは全く違いますね。あと練習時間も今の方がかなり少ないですね。高校時代は先生が直接教えてくれていたからテニスがうまくなれたと思うんですけど、今はそういう環境にいないので、平日の練習では高校時代の先生のアドバイスを思い出したりしています。あと、大学に入って自分でしっかりと練習していかないと堕落してしまうのでそこは気をつけてやっています。

――監督がいないということですが、スランプの時はどのような対処をされていますか

船水颯 それは人それぞれだと思います。僕はあまりフォームとか気にしないタイプなのであまり意識したことないですね。でも、試合中とかにフォームがおかしいなって思った時とかは試合中に微調整をして、型にはまらないようにやっているつもりです。理論的というか感覚的にテニスをやっています。感覚派だと調子が悪い時は考えれば考えるほど悪くなっていくので、あまり考えず、その時しっくりいく打ち方で打ってます。

――監督が練習に来られないということで上級生の作るチームの雰囲気が重要になってくるのではないでしょうか

船水颯 上級生は前衛と後衛で雰囲気がまるで違いますね。前衛は声を出してにぎやかに練習してるんですけど、後衛は黙々と練習こなしてるって感じですかね。たぶん見たらすぐ前衛か後衛かってわかりますよ(笑)。

星野 なんでかな(笑)わかるな(笑)。

船水 でも、先輩方は優しいので聞いたらなんでも教えてくれます。特に九島さんは高校時代からお世話になってました。

――星野さんは同じ前衛の九島さんに教わることは

星野 教えたり、教えてもらったりしていましたね。フォアボレーのやり方とか教えました。九島さんには東北高校特有のジャンピングスマッシュのやり方とかを教わりましたね。でも、結局ジャンピングスマッシュは僕にはできなかったです(笑)。難しかったです(笑)。こういう情報の交換ができるっていうのは高校に無いので、良いと思っています。

船水颯 これもワセダの強みの一つかなって思います。

――後衛の皆さんはストイックな性格なのですか

船水 いや、そういうわけじゃないと思います。たぶん、後衛の方が球を打つ回数が多いし、球を追いかけることでいっぱいだから口数が減るんだと思います。試合になったら前衛は少ないチャンスをどれだけミスなく確実に点を入れるかが重要になってくるので、前衛の人たちはふざけているようで結構集中してると思います(笑)。

――では前衛は度胸が必要なのですね

星野 そうですね。大事な場面で飛び出して行ったり、結構難しいですよ。というか、なんで前衛と後衛であんなに雰囲気違うんやろ(笑)。

船水颯 あからさまに違うもんな(笑)。練習は毎回5時には終わるんですけど、そこから後衛は2人1組になって残って練習したりするんですけど、前衛はポジションを入れ替えたりして遊んだり、騒いでますね(笑)。ソフトテニスあるあるです(笑)。

二人で笑いあう姿からは関係の良さが感じられた

――オフの日は何をされていますか

星野 基本寝ていますね(笑)。寝てるか同級生とどこか遊びに行きます。

船水颯 僕は同じ高校の人も結構いますし。田口、大津は高校三年間同じクラスでもあったんで(笑)。田口とかはペアも組んで寮も一緒だったんで仲はいいですね。僕はオフの日はラケットを一切握らないって決めているので、ぐだぐだして体を休めています。

星野 あしたオフで一限なんで寝ます(笑)!

――学年を超えての関わりは

星野 僕は九島さんと同じアパートなんですけど、最初来た時に歓迎会など開いてくれましたね。みんなかわいがってくれるのでうれしいです(笑)。

船水颯 その代わり練習が始まったらオンとオフの切り替えがはっきりしていますね、雰囲気が変わるというか。でも逆に言ったら練習が終わったらすぐにワイワイして楽しいです。さっきの話でも出ましたが、ご飯も前衛の人中心に誘ってくれますね。安藤さんだったり九島さんだったり。なんか分かんないですけど全員前衛なんですよね(笑)。後衛はなんだろ、真面目なんですかね、あんまり誘われないですね(笑)。僕は後衛ですけど誘ってもらえるとうれしいので一緒にワイワイしてます。

――大会で忙しい毎日を送られていますが、学校生活との両立は

船水颯 授業にあまり出られないのがきついです。合宿とかに行くと1週間全部に出られないときもありますよ。でも、練習を遅くまでやっているわけでもないので僕はうまくやれていると思います。

――スポーツ科学部は出席重視ですが

星野 そうですね。でも、公欠がきいたりするのでまあ大丈夫ですかね。学校休む回数が多くて最初は戸惑ったんですけど、社学の人たちを見てるとスポ科は楽ですね(笑)。

――成績はお2人とも納得のいく成績でしたか

星野 お前は完璧やったやろ(笑)。

船水 あーうん。まあ、まあまあですかね(笑)。

――スポーツ科学部は様々なスポーツをされると思いますが、好きなスポーツは

船水颯 ラケットが使える種目ならできますけど、使わないのは無理ですね。特に水泳とかできないです(笑)。

――星野さんは水泳得意ですか

星野 いいえ、僕も不得意です(笑)。スポ科の授業では取ってないんですけど苦手ですね。

船水 いま、スポーツ方法実習水泳Ⅱを取るかどうか悩んでます(笑)。水泳Ⅱはバタフライがあるので厳しいんですよね(笑)。

――過去にテニス以外のスポーツはやられていましたか

星野 僕はサッカーをやってましたね。でも、部活中にボールを使ってやるメニューがあるんですけど、うまくないです(笑)。

船水 ボロが出ますね(笑)。

――長い間テニスをしていて、ほかの競技に興味をそそられることは

船水颯 僕は小さい頃にピアノやってました。コンクールでみんなの前で失敗してすぐにやめました(笑)。その次にサッカー始めましたね、でもサッカーしてるとテニスの試合の日と被ったりしてたので結局やめました。あと、野球もしてました。いっぱいスポーツ経験できたのはテニスをあまり真剣にやってなかったからでもあります。父が学校の先生で、母がいなくて暇なときに遊び感覚で父のいる学校の練習場でラケット持って遊んでたくらいですね。テニスを真剣にやり始めたのは小4くらいの時だったんです。

星野 僕はテニスより先にサッカーをやってって、兄がテニスをやり始めて、試合を何回か見るうちにやりたくなってテニスもやり始めました。それでテニスとサッカーどっちにするって聞かれてテニスを選びました。あと、僕もピアノやってましたね。小学5年生くらいまではやってました(笑)。

――結構長い間ピアノやられたんですね。

船水颯 あ、でも、片手でしかピアノをひくことできませんよ(笑)。もう無理ですよ(笑)。

星野 僕は両手でひけてましたね(笑)。

船水颯 でも、さすがに今はできないでしょ(笑)。

星野 無理だわ(笑)。

――さまざまなことからソフトテニスを選ばれたということですが、ソフトテニスの魅力は何でしょうか

星野 僕はやっぱり前衛なので、相手の後衛との駆け引きですね。あとはプレッシャーがかかることもありますが、後衛が打って上がったチャンスボールをしっかり決めることとか。やっぱり後衛の打ったボールを自分が決めてポイントを獲るというのは気持ちが良いです(笑)。あとは自分が誘って、相手後衛が自分の思った通りに打ってくれたりとか、そういったところに前衛としては魅力を感じますね。

船水颯 小さいころは小学生の大会とかに出てもあんまり勝てなかったので、ただ楽しいっていうだけでやっていたんですけど、だんだん勝てるようになってからはそこにもっと強くなりたいとか、日本一になりたいとかそういった気持ちも加わってきました。それでいまに至る感じですね。僕はシングルスが得意なので、前衛が前にいたらまた違った、かわしたりだとかの駆け引きもあるんですけど、シングルスは例えばツイストで前に走らせて次のボールはロブで振ってだとかそういった風に自分の思い通りに相手が動く感じが楽しいです。ダブルスだと、ペアとの関係も大きく関わってきますし、そういうのは要所でしかないんですけど、やっぱりシングルスだと1対1の分、ほとんどが自分の思い通りに行くので、言い方は悪いかもしれないですけど相手の疲れた顔とか見るのが楽しいですね(笑)。「あ、疲れた顔してるからもう一本同じところ狙おうかな」とか、そういった気持ちがあるのでシングルスが得意なのかもしれません。相手の顔とかよく観察して、息上がってたら疲れてるなとか、もっと言えば、大学の試合はプレッシャーがかかるのでトスする時にすごく手が震えている相手とかもいましたし、じゃんけんする時に「この試合は勝ったな」と(笑)。

――そこまで細かく見ているのですね

船水颯 まあ、見てないように見えるんですけど結構そういったところは見ています。乱打でわざと短いの打って足動いてなかったら短いのが苦手だと記憶しておくし、逆に自分の調子が良い時は得意なコースをわざとミスしたりしてそこに試合中打ってもらえるようにしたりとか考えています。ゲーム内はもちろんですけど、表情から読み取ったりとか、僕はシングルスの考え方をダブルスに生かしてるようなものなので相手の隙を見つけたもの勝ちですね。

――ワセダに入ってから組まれて、お互いの印象は

船水颯 慎平が前に立つと後衛が打てなくなるんですよ。僕も高校の時そうだったんですけど、高校の団体戦決勝が高田商で(笑)。高校3年間の中で初めて僕はあの時団体戦を0ー4で負けて、個人戦で見てもそれは初めてのことでしたし、しかもそれがインターハイ決勝っていう。だから、もう「あー、こいつとはやりたくない」って感じでした(笑)。いまは組んでいるので良いですけど、やってる相手側から見たら魔法にかけられたみたいにミスり始めるんですよ。だから、「よかった、ペアにしといて」って感じです(笑)。

一同 (笑)。

星野 合宿とかで組んだことはあって、その時の印象は、「(自分が)抜かれても取ってくれる」ですかね。足めっちゃ速いんで。もう、全部取ってくれるんで安心です。のびのびできます。抜かれても後ろ向いたら「あ、いる」って、瞬間移動みたい(笑)

――先ほど船水さんが安藤さんを誘われたという話が出ましたが星野さんのことも誘われたんですか

船水颯 もともと中学生の時から組みたい気持ちはあって、だから「一緒の高校行って」みたいな話はあったんですけど。

星野 こいつが来なかったんです。

一同 (笑)

船水颯 いや、ちょっと僕出身青森で遠すぎたんで(笑)。高田商の先生に「組んだら面白いんじゃない」と声かけていただいたんですけどお断りして、練習もキツくて僕そういうの苦手だったんで。

星野 俺はそのきつい練習に耐えたんやぞ(笑)。

船水颯 だから僕は東北高校に進んだんですけど、組みたいっていう気持ちはずっとそれからとあったので大学進学をきっかけに話し合って決めました。ワセダに行けないとしても組もうと思っていたので。

――ワセダを選んだ理由は

船水 いろんな人に情報聞いたりもしたんですけど、やっぱり僕の兄から聞いたことが決めてですかね。結構相談はしたんですけど、環境がすごくいいということで、でもその一方で大学は指導者がいない分、自分次第というか高校の時強かった人が実力を落としたり逆に高校の時無名だった人が勝ち上がって行ったりだとか結構あることだよっていう話をしてもらいました。やっぱり入ってみていい環境はあるけど勝ち負けは自己責任とかそういった厳しさは日々感じてますね。でもそういった中で勝つことにこそ価値があると思っているので、僕はワセダに決めました。

星野 僕は本当は関西の方の大学に行こうと思っていたんですけど、そしたら先生に「あほか」って言われて(笑)。「高校でも勝ってるんだから、大学でも日本一の大学に行け」って。日体大とも迷ったんですけど、大学日本一に一番近い大学に行きたいなと思って、ワセダがそれだったら一番かなと思って選びました。

――代替わりされましたが、今後チームのどのような存在になりたいですか

船水颯 立場が変わったというか、大将の船水・九島がいなくなって、気持ち的には僕らがしっかり大将としてというのがあります。オーダー的にもたぶんそうだと思うんですけど。次は2年生ですし学年も上がるのでチームを引っ張っていくというか、勢い付けたいなって思っています。逆に言ったら4年生になって船水・九島みたいなペアになるのではなくて、ことし、来年からチームの信頼を得られるようにと思っています。

星野 絶対的存在が抜けたので、その穴は大きいと思うんですけど僕らで埋められるように、大将として頑張りたいです。一回辛いですけどインカレ決勝で負けているという経験もあるので、今回からしっかり全勝、一つも落とさないというのを意識して頼られる存在になりたいです。

「挑戦者の気持ちで向かっていく」(星野)

今後更なる躍進を誓う星野

――次の個人戦として大きな目標にされている大会は

船水颯 天皇杯ですね。

――天皇杯での目標は

船水颯 優勝というのはもちろん狙っているんですけど、チャンスというのもなかなか来ないものだと思いますし、大学1年目のこともあって結構注目されているとは思うので、そういったプレッシャーがある中で勝ち進むことが本来の実力かなって思っています。天皇杯はそんな何回も獲れるものではないので若いうちに獲りたいというか大学1年生で日本一というのにも勝ちがあると思うので、ことしは狙いに行きたいです。インカレは3位だったので、その悔しさも力に変えたいですね。

星野 優勝狙っていきたいですし、船水も言ってたんですけど、そんなに何回も優勝できる大会ではないので勢いがついているいまの時期に獲れたらラッキーぐらいの社会人が多いので向かっていく気持ちで自分の力を発揮したいです。上で活躍している選手も多いので挑戦者の気持ちです。

――お二人で調整している点は

船水颯 ダブルフォワードとかかな。

星野 社会人とかはやはりダブル前衛とか多いので、ストロークとかレシーブもその相手に対抗するのに磨かなくてはと感じています。

船水颯 いままでの結果からしてもダブル前衛に負けてるっていうので、雁行陣相手だと行けると思っているんですけど、丸中・鈴木とか篠原・小林(日体桜友会・ミズノ)組とかほとんど負けているのはダブル前衛なので。逆に雁行陣相手だったら勝ち上がれる力はあるのかなって思っています。そんなに何回もまぐれで勝ち上がれるわけはないと思っているので、それは実力としてプラスに捉えて、逆にいろんな陣形で攻められたときに勝てれば本当に強いペアになれるのではないかなと思っています。

――星野さんはストローク力を磨きたいとのことですが、JOC杯、シングルスの決勝で当たった時の印象は

一同 (笑)

星野 決勝ぼこぼこやったんで(笑)。自分はフォアストロークが危うい状態で、準決勝は優作に0-3で負けていてなんかまぐれで勝ったんですけど(笑)。その時はフォアのストロークが全然入らなくて、やはり前衛だと打つ量が全く後衛と違うので難しいです。

――決勝まで残ったことに関してはいかがですか

星野 自分ではなんでかなと思います(笑)。

一同 (笑)

船水颯 僕は、星野のこと結構強いと思っているので、自分ではこう言ってますけど(笑)。前衛はバックのストレートへの長しが上手いのがこちら側からしたらいやなので、だから前衛だったらバックよりもフォアの方が有効な気がしますね。後衛だったらフォアが強い人ばかりでバックが強い人はあまりいないので、最後の決め球はバックに打ってなんですけど、前衛だとそれがまた逆になるのでフォアに打って決めるというのはカウンターもあってリスクが高いことなのでやり辛さがありました。でも何より近い存在とやるのがやっぱり一番嫌ですね。始まる前にこの前も近い存在だからこそだらけないように、いつもより過剰に真剣な雰囲気を出して臨みました(笑)。星野に「おお、マジだこいつ」って思わせるように(笑)。

星野 ビビりました(笑)。「よし、やってやらあ」みたいな感じでコート入ったら、「あれちょっとこれそういう雰囲気ちゃうな」って(笑)。

船水颯 ずっと当たる前から、「お前のこと倒してやる」ってふざけながら言われてて、そしたら本当に決勝で当たっちゃったので気持ちを引き締めさせるためにも、わざとそう言った雰囲気を作りました(笑)。

――天皇杯で意識しているペアは

船水颯 やはり篠原・小林、丸中・鈴木のダブル前衛ですかね。あと、組合せ的にどこで当たるかわかりませんけど船水・九島ですかね。

星野 高校生だったらさっきのJOC杯で当たった内本・丸山(上宮高)ですね。マッチポイント8本取られたんです。向かって来られる勢いも実力もすごかったです。

<p class=”mt20”><strong>船水颯 高校生でもすごくいいプレーをする選手もいるので、これといったペアを意識しすぎずに一試合一試合大切にやれれば結果はついてくるかなって思います。

――最後に今後の競技人生への意気込みをお願いします

星野 僕は日本代表に入りたいなっていうのがあります。ソフトテニスをしていてやはり1番上に行くには日本代表になって勝たないといけないのでそれが目標です。大学に限れば、いままでで全小、全中、インターハイ獲っているので、在学中に一回はインカレも獲りたいです。

船水颯 僕も日本代表になりたいです。今度インドにもサポートメンバーとして付いていくんですけど、来年はアジア選手権があるのでそれを狙っています。またインドネシアでアジア競技があるので、それはソフトテニスの中で一番大きい大会で、どの国もその大会に向けて標準を合わせてくるのでその大会で勝つというのが、ソフトテニスで本当の強さというのを証明できる一番の道かなと。学生のうちにあるので、社会人になってからではなくここで獲りたいと思っているので、ことしはサポートメンバーでしたが来年は選手として戦えるよう頑張っていきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 本田京太郎、三佐川唯)

最後はワセダポーズで締めくくっていただきました!

◆船水颯人(ふねみずはやと)(※写真左)

1997年(平9)1月24日生まれ。身長170センチ、体重65キロ。宮城・東北出身。スポーツ科学部1年。「隙がないテニス」と兄である船水雄太選手に評されるほど相手にチャンスを与えない展開を作り出す船水選手。オールマイティーにどのスポーツもこなせそうですが、水泳だけは大の苦手のよう。水泳の授業では自分が部活生だと隠していたそうです!

◆星野慎平(ほしのしんぺい)(※写真右)

1996年(平8)9月21日生まれ。身長183センチ、体重71キロ。奈良・高田商出身。スポーツ科学部1年。小さいころからピアノを習っていたと楽しそうに語ってくれた星野選手。得意な曲はポケモンの主題歌だとか!その手先の器用さが前衛のボレーコントロールに生きているのかもしれません!(笑)