国内最高峰の戦い、全日本選手権がついに開幕した。前回大会銀メダルの島田高志郎(人通4=岡山・就実)が、競技1日目の男子シングルショートプログラム(SP)に登場。ジャンプでミスがあったものの、『Sing Sing Sing』で観客を大いに盛り上げた。76・57点でSP11位となり、後半グループで23日のフリースケーティング(FS)に臨む。
★男子SP
演技を始める島田
会場には「Koshiro」と書かれた鮮やかな青いバナーが揺れていた。大きな歓声を全身で受けながらリンクに立った島田は、落ち着いた様子で最初のポーズを取った。
『Sing Sing Sing』の軽快なドラムの音に合わせて全身でリズムを取り、演技をスタートすると、挑んだのは4回転サルコウ。前日の公式練習から直前の6分間練習まで苦戦していたジャンプだったが、本人も「今シーズン、ショートの中でベストだった」と振り返る出来栄えで着氷した。良い流れに乗れるかと思われたが、続くコンビネーションジャンプは一つ目の4回転トーループで転倒してしまう。「やっぱりそううまくはいかない」と、高難度の構成でジャンプを揃える難しさを感じさせた。最後の3回転アクセルは手をついたものの大きく乱れることなく決めると、見せ場のステップへ。音にぴったり合った動きや豊かな表情で、会場全体を明るく楽しげな雰囲気で包み込むように魅せた。手拍子が響く中、得意のスピンで演技を締めくくると、手を広げ、上を見上げてフィニッシュ。得点源のジャンプでミスがあったものの、大舞台での緊張のSPを終えた島田の表情は晴れやかだった。はにかむような笑顔でリンクの全方向に丁寧にあいさつし、リンクを後にした。
ステップに入る前、指を差す振り付けを見せる島田
今シーズンは右足首のケガなどの影響でグランプリシリーズでは思うような結果を残せず、SPでは構成に4回転を2つ入れることができずにいた。それでも今回、全日本という大舞台で4回転2つに果敢に挑んだ島田。1本は転倒というかたちになったものの、「自分の中で戦う気持ちというものが感じられ、その収穫は大いにあった」と充実感を漂わせた。それと同時に、ジャンプのみならず表現の面でも課題があるという。観客を沸かせながらも、「4回転2本だと自分の表現というものがちょっと疎かになってしまう。動きでもっと見せられるようなスケートがしたい」と振り返った。表現者としてもさらなる進化が期待できそうだ。
島田の得点は76・57点。転倒によりコンビネーションがつけられないミスがありながらも、スピンや演技構成点でしっかりと得点を重ねた。後半グループで80点台後半を叩き出す選手が続出し、順位は11位にとどまったが、FSも後半グループで臨む。FSでは一転、ダークに魅せる「死の舞踏」を披露する。決戦のFSは23日に行われる。
(記事 吉本朱里、写真 及川知世)
結果
▽男子SP
島田高志郎
SP 11位 76・57点
コメント
※囲み取材より抜粋
島田高志郎(人通4=岡山・就実)
――SPの演技を振り返っていかがですか
いやぁ、やっぱりそううまくはいかないですね。結構、良いマインドで臨んでいたつもりだったのですが、6分間でちょっとタイミングがずれたというか、緊張があり、自分の重心をちょっと上にあげちゃったのかなと思います。それでも、4回転を2本組み込んで挑戦することができたのは、自分の中で戦う気持ちというものが感じられましたし、その収穫は大いにあったなと思います。
――ジャンプのミスについてはどのように切り替えますか
そうですね、本当にただただ調整です。冒頭のサルコウとかは今シーズン、ショートの中でベストだったんじゃないかなって思うので、そういった良い集中の仕方をまた練習で再度思い出して、フリーはもっと、さらに良い演技ができるように頑張りたいと思います。
――サルコウ降りた後、いけるかなと思いましたが
僕も思いました(笑)。これ来たんちゃうかなと思って。6分間であまり良くなかっただけに、サルコウが降りられたので、お、流れは来たなと。昨年よりも良い演技ができるんじゃないかと自分の中でも思ったんですけど、やっぱり難しいですね。毎度毎度、完璧な演技をすることの難しさというものを改めて感じました。
――自分の中で失敗の要因というのは
気持ちのブレというか、もちろん自信を持って臨んだつもりだったんですけど、まあ、スリーターンの時にちょっと体が振られて、それをちょっと意識してしまったかなと思います。体が振られても、パーフェクトな入りじゃなくても、跳べる時は跳べるので、そこはあまり考えすぎない方が良かったなと思います。
――終わった後の表情は晴れやかでしたが
グランプリでは、自分で挑戦することすらできなかった4回転2本を組み込むことをできたという達成感と、まだまだできるなというふうに思った充実感から、多分笑顔が出たんじゃないかなと思います。
――大きな歓声が上がっていましたが、観客を楽しませるという点では手応えは
やっぱり4回転2本となると、自分の表現というものがちょっと疎かになってしまうかなと改めて感じました。なので、そこも課題が改めてできましたし、楽しむことはできたのですが、動きでもっと見せられるようなスケートがしたいので。そこはまだまだ成長するところだなと思います。